日本型市場経済システム 社会システム論 第 11 回
様々なタイプの資本主義 資本主義の中にも、様々なタイプがあ る。 その国の歴史、文化的背景によって 違いが現れる。
日本型市場経済システムを めぐる論調の変化 日本の戦後高度経済成長の秘密を 日本のシステムに求める。 “Japan as No.1: Lessons for America” Ezra Vogel ( エズラ・ヴォーゲル) 90 年代以降の日本の低迷を、日本の後進 性に求める。
日本は特殊か 日本の経済システム 古典派経済学の資本主義像に当てはま らない 日本は特殊である。 資本主義にはさまざまなタイプのものが ある。
日本型市場経済システムの特徴 長期的関係を重視 多様な関係者からなる共同 体的性格 横並びを重視 集団内の公平性指向
1.企業内関係 日本的経営の 3 種の神器 ① 終身雇用制 ② 年功賃金制 ③ 企業別組合 ジェームズ・アベグレン『日本の経 営』 労使協調
従業員重視 従業員をはじめとする利害関係者からな る共同体 『イエ社会』に例えられる 会社は「全利害関係者のために」ある。 (株主、経営者、従業員、顧客など) アメリカ・イギリス 「企業は株主のため」と対照的
労使協調 高い忠誠心 企業業績を労使ともに重視する。 労働組合:無理な要求をしない。 会社側:首切りをしない。 福利厚生の充実 柔軟な生産調整 残業、配置転換などへの労働者の柔軟な対 応
雇用構造の特徴 新卒者の一括採用 OJT を中心とした研修 ジョブ・ローテーション 柔軟な職種・職場の転換 属人性の高い給与体系(年功給、生活 給) 転職の少なさ
グループ指向 チームとしての成果を評価する。 個人が突出するのを嫌う。 階層間の壁が低い 現場の労働者にも一定の権限が与えられ る。 高い品質管理 「カイゼン」活動 QOC 活動を移入・発 展
長期的視点での経営 長期的な成長を重視した経営戦 略 短期的な利益よりも シェアの確保を重視した長期的経営
技術革新の特徴 プロセス改良型の漸進的な技術革新を得 意とする。 基礎研究よりも、応用研究、製品開発を 得意とする。 現場の問題点を開発現場が吸い上げる。 長期的視点に立った継続的な研究開発体 制
2.企業間関係 長期的取引関係の重視 メインバンク・システム 安定株主の存在
二つの形 企業グループ 旧財閥系の異業種の連合 親会社ー下請けの関係 完成品メーカーと部品メーカー 系列 長期的取引関係
旧財閥:企業グループ 銀行を中心とした旧財閥系のグループ 役員の派遣 危機における救済 例)三菱自動車
親会社ー下請け関係 継続的な部品調達関係 価格競争は行わない 共同体的協力関係 納期 コスト削減 新製品開発
メインバンクシステム 間接金融 銀行を中心にした資金調達 (長期・短期とも に) 銀行による株式の所有 通常は経営に口出ししない 危機のときに強い介入(役員派遣等)
株式の相互持合い 2 社あるいは複数の企業が互いの株式を 持ち合って協力関係を維持する。 取引先企業と、互いの株を持ち合う メインバンクが融資先企業の株を持 つ 企業経営の自由度の確保 買収に対する安全性の確保
3.政府と企業の関係 官僚指導型の産業政策 業界団体ー監督官庁ー政治家の関係 許認可・行政指導
産業政策 通商産業省が中心となって 日本の産業界の戦略的育成 戦後の傾斜生産方式
監督官庁の役割 強い指導力 許認可権 行政指導 業界団体との密接な関係
護送船団方式 業界内から落伍する企業を出さないよ うに、官庁が中心となって、業界全体 をコントロールする方式 典型:金融業界 効率性の点で問題が指摘される。 非効率な企業を温存
日本型システムの利点 平等主義的分配 安定的・長期的発展
日本型システムの問題点 外部に対する不透明性 非効率性 既得権益の温存