1 財政-第 22 講 6. 社会保障財政 (3) 2008 年 6 月 24 日 第 2 限
2 公的年金③ 今後の課題-公的年金制度全般に関して- 将来の給付水準見通し 厚生年金と共済年金の一元化 社会保険方式から税方式への移行 制度上の問題点 未納・未加入問題
3 公的年金③
4 今後の課題 -公的年金制度全般に関して-
5 将来の給付水準見通し ※ 2004 年時点の所得代替率を維持する場合 =給付水準 ÷ 現役世代の平均賃金 国民年金保険料 2017 年度~ :16,900 円 →2017 年度~ :20,700 円 ( 毎年 600 円ずつ引上げ ) 厚生年金保険料率 : 2017 年度~ :18.30 % →2030 年度~ :22.80 %
6 保険料 ( 率 ) 引上げ抑制 ( =現行制度 ) ⇔所得代替率減少 … 資料 22-1 世帯類型別の所得代替率 … 資料 22-2 片稼ぎ世帯>共稼ぎ世帯 or 単身世帯 出生率や経済情勢の動向による変動 … 資料 22-3
7 厚生年金と共済年金の一元化 保険料 ( 率 ): 厚生年金>共済年金 ⇔給付額 : 厚生年金<共済年金 (← 第 21 講 ) 厚生年金と共済年金の一元化 ⇔完全な一元化ではない? ○ 保険料負担 → 保険料率の統一 (2018 年度~ :18.30 % ) × 年金給付 → 職域加算の廃止 (2010 年以降の加入者 ) ⇔新たな上乗せ給付?
8 社会保険方式から税方式への移行 ※年金給付の財源-社会保険方式と税方式 社会保険方式 現役世代の保険料負担 → 高齢者世代への給付 税方式 社会全体による税負担 → 高齢者世代への給付 ※国民年金 ( 基礎年金 ) 給付の財源 現行制度 保険料+国庫負担 ( 国の税金 ) =社会保険方式 ⇒税方式=全額税へ移行? ( 財界や民主党 ) ⇔社会保障国民会議中間報告では両論併記
9 税方式 vs. 社会保険方式 △ 給付 : 高齢者全員 ⇔ 保険料負担者のみ △ 給付の安定性 : 税収 ⇔ 経済情勢や出生率 ○ 無年金・低年金問題 : 解消可能 ⇔ 解消困難 △ 負担 : 全世代 ⇔ 現役世代のみ ○ 保険料未納問題 : 解消可能 ⇔ 解消困難 ○ 第 3 号被保険者問題 : 解消可能 ⇔ 解消困難 ○ 厚生年金保険料事業主負担 : 減額 ⇔ 不変 ○ 事務コスト : 低い ⇔ 高い ○ 記録漏れ問題 : 解消可能 ⇔ 解消困難
10 × 国民年金 ( 基礎年金 ) 給付額への税投入 : 全額 ⇔ 国庫負担分のみ 税方式への移行⇒増税 所得税増税 → 現役世代の税負担増 消費税増税 → 低額の年金受給者も税負担 + 3.5 %~ 12 %の税率引上げ … 資料 22-4
11 税方式への移行⇒解決すべき問題点 財源確保のための増税 年金受給者の税負担 他の社会保険 ( 医療,介護など ) への税投入
12 制度上の問題点
13 未納・未加入問題 国民年金保険料の未納者 (2006 年度納付率 :66.3 % ) ←(a) 景気停滞による収入減の影響 (b) 年金制度に対する不信 ⇒問題点 ①保険料収入減少 ②受給資格喪失
14 厚生年金未加入企業 過重な保険料負担 ( =事業主負担 ) → 厚生年金から脱退 ⇒従業員は国民年金のみに加入 → 第 1 号被保険者
15 国民年金保険料未納問題への対応策 ①納付窓口の拡大+強制徴収 → 納付者数を確保 ②猶予・免除 ( ※年収制限あり ) → 加入年数加算による受給資格の付与 学生納付特例制度 若年者 (30 歳未満 ) 納付猶予制度 保険料免除制度・一部納付 ( 免除 ) 制度
16 学生納付特例制度 → 学生期間は保険料猶予 若年者 (30 歳未満 ) 納付猶予制度 → フリーター・ニート対策 保険料免除制度・一部納付 ( 免除 ) 制度 → 失業者,低所得者対策
17 給付額 猶予・免除期間に応じて減額 全 額 : 全納の場合の 3 分の 1 ≒国庫負担分 4 分の 3: 全納の場合の 2 分の 1 半 額 : 全納の場合の 3 分の 2 4 分の 1: 全納の場合の 6 分の 5 10 年以内に追納可能 → 追納分を給付額に反映 2 年以内の追納は無利子 ⇔ 2 年以上前の追納は利子加算 ( 年約 4 % )
18 第 23 講の予定 6. 社会保障財政 (4) 公的年金④ 制度上の問題点 ( 続 )
19 参考資料の出典等 資料 22-1… 厚生労働省年金局「年金財政ホームページ」 資料 22-2… 厚生労働省年金局「年金財政ホームページ」 資料 22-3… 厚生労働省年金局「年金財政ホームページ」 資料 22-4… 社会保障国民会議 [2008] 「公的年金制度に関する定量的なシミュレーション結果」 参考文献 (5. 財政赤字と公債理論 ) 井堀利宏 [2000] 『財政赤字の正しい考え方』 ( 東洋経済新報社 ) 井堀利宏 [2007] 『「小さな政府」の落とし穴』 ( 日本経済新聞出版社 ) 財務省ホームページ「日本の財政を考える」