スマトラ島沖地震による 津波被害と教訓 2005 年 10 月 24 日 (株)荒谷建設コンサルタント 山下 祐 一 (建設・応用理学・総合技術監理部門) 第2分科会 技術リスクと安全、 PL 関連.

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スマトラ島沖地震による 津波被害と教訓 2005 年 10 月 24 日 (株)荒谷建設コンサルタント 山下 祐 一 (建設・応用理学・総合技術監理部門) 第2分科会 技術リスクと安全、 PL 関連

目 次 1.はじめに(目的) 2.スマトラ島沖地震の概要 3.スマトラ島・タイの津波被害調 査結果 3-1 スマトラ島の津波被害 3-2 タイの津波被害 4.教訓と防災への取組み 4-1 津波被害からの教訓 4-2 防災(防災教育)への取組み 4-3 防災教育の実施( 2005 年) 5.まとめ

1.はじめに(目的) ・ 2004 年 12 月 26 日にインドネシアスマトラ 島沖で大地震が発生し、津波による死者・ 行方不明者が 30 万人を超す大災害となりま した。 ・ 2005 年 2 月にタイ(プーケット島やカオ ラック)及び 2005 年 9 月にスマトラ島のバ ンダアチェの津波被害調査に行きましたの で、その調査結果を報告する。 ・津波被害からの教訓をまとめるとともに、 防災への取組みについて提言なり報告をし たい。

2. スマトラ島沖地震の概要 ・発 生 日 時 : 2004 年 12 月 26 日 7 時 58 分 ・地 震 の 規 模 :マグニチュード 9.0 ・死者・行方不明者: 30 万人以上 ( インド洋津波)

2 - 1. スマトラ島沖地震の発生 ・地震の発生:海底の複数の活断層が交差する 近傍で、地殻の破壊により発生 ・発生場所 :スマトラ島北端部ナングル・ア チェ・ダルサラム州の南東沖の シムルエ島北東数十 km の海底 その後地震を起こした地殻の破 壊は、全長 1000 kmにおよぶ大 きな崩壊を形成した。

海洋研究開発機構 HP より

2 - 2. スマトラ島周辺の構造 ・北西ー南東方向に伸びるスンダ海溝に平 行してスマトラ島の海岸線が、内陸に並 行して火山フロントが直線上に分布 ・スンダ海溝には、インド・オーストラリ アプレートが年間 75 ~ 80 mmの速度で、 スマトラ島のユーラシアプレートの下 に沈み込んでいる。 ・プレートは斜めに沈み込むことから、海 溝と平行な方向や海溝と直行する方向に 変形が集中する。

海洋研究開発機構 HP より

1 - 3. 津波の到達時間 産業技術総合研究所 HP より

3.スマトラ島・タイの津波被害 調査 3-1 スマトラ島の津波被害 1)バンダアチェ市の津波被害 ・人口 25 万人のうち 死者・行方不明者 4 万人 ・津波の高さ 最大 10m 程度 ・海岸から 2km はほとんどの家が流される ・海岸から 3km までは残った家と流された家が半々 ・海岸から 4km あたり家屋はほとんど流されず浸入 バンダアチェ中心のモスク-津波高さ 1m 特に海岸では海岸線が 100m 位後退し、道路も消失 ・マングローブの森が全滅 ・津波が道路を遡上した被害 ・社会基盤や家屋の復興はほとんどなされていない

バンダア チェ ロンガ村 レプエン村 スマトラ島バンダアチェ周辺位置図

バンダアチェ市中心部にあるモスク、津波により 1m 浸水するも、モスク 内には津波入らず

バンダアチェ市中心部から北西の海岸線、家屋や道路消失し、海岸線も 100m 後退 家屋の瓦礫が散乱している状況

バンダアチェ市の北東海岸のアルナガの町津波により家屋流出し、廃墟 と化す

バンダアチェ市の北西の海岸近く、マングローブの森が津波により全壊 する 津波は自然環境も破壊した

バンダアチェ市中心部から北西に打ち上げられた船、大きな船のため動 かすこともできず、放置されたままである

2)スマトラ島北端西海岸の被害 ・ロンガ村~レプエン村にかけて調査 ・津波の高さ 15 ~ 20m 位 斜面を遡上して 35m 、さらに 50m の高さが 報告 ・レプエン村では 8000 人のうち 7000 人が死 亡 ・海岸沿いに家屋や幹線道路流出 ・道路は軍隊により仮設道路は作られたが、 そ の後は放置されたまま ・被災後の復旧はほとんどなされておらず、 雨 が降ると村が孤立する危険性がある。

ロンガ村の南の仮設橋 仮設橋とはいえ基礎部分に角材が積んであり、不安 定のままである(スマトラ島西側海辺にはこの道路しかない)

レプエン村津波により、家屋や道路が消失した

レプエン村の仮設道路沿いの避難地区

3 - 2タイの津波被害調査 津波高 1) プーケット島 カロンビーチ カタビーチ 4m 前後 ○ パトンビーチ 6m 前後 プーケットタウン 2 ~ 3m サラシンブリッジ 2) カオラック カオラックビーチ 9 ~ 10m(12m) カオラック港 ○ ナントンビーチ 10m 前後 クックカックビーチ ランパカラ 3) バンナムケン

カオラッ ク カロン パト ン プーケットタウ ン

1)パトンビーチ(プーケット島) ・津波高 6 m前後 ・死者 157 人 ・海岸線に近い 1 階部分は半壊状態 ・津波の痕跡がある程度追跡できる。 ・プーケット島で一番被害を受ける。

パトンビーチ(プーケット島)の海岸沿いの建物、1 F 部分が被害を 受ける

2)ナントンビーチ(カオラック) ・カオラックビーチ横の海岸 ・津波の高さ 10 m前後( 12 m) ・建物 2 階まで、一部 3 階まで津波の影響を受ける。 ・ビーチの後方、高台、山となっているため 津波の影響範囲が限定される。高台の道路 まで一部影響する。 ・カオラックビーチより広い ・津波の痕跡が確認できる ・津波被害後の後片付けは終了、多くの家屋 を撤去、新しい建物残存 ・長周期の津波が想定される。

カオラック(タイ)の海岸沿いのホテル 津波により3 F まで被害を 受ける

カオラック(タイ)の陵上から見た津波の被災状況 (リゾート施設、大きな被害を受ける)

4.教訓と防災への取組 み 4-1 津波被害からの教訓 ①防災対策(ハード対策)の重要性 スマトラ島バンダアチェでは多くの死者・行方不明者及 び被害が出たが、タイでは海に面したホテルや構造物が津 波の被害を軽減している。対策の効果を発揮する。 ②防災計画上の注意点 ・津波被害は海底地形や海岸地形により増幅されることを 十分検討する必要がある。 ・スマトラ島バンダアチェでは道路が津波の通り道になっ ている。防災計画上注意する。 ③防災教育・避難訓練の必要性 津波に対する知識が欠けていたことが被害を大きくした 原因である。ソフト対策として防災教育の実施や避難訓練 等の演習を行う必要がある。

4-2 防災(防災教育)への取組み 1)(社)建設コンサルタンツ協会中国支部防 災部会 ( 日本技術士会の人も参加 ) 人 :防災研究組織を形成し、数少ない研 究者・技術者が協働できる仕組みを作 る。 技 術:中央主導でなく、地域特性を踏まえ たきめ細やかな対策に結びつく技術力 を高める。 データ:災害履歴, 地盤データ, 地震・雨量観測 の整備, 都市データの収集・蓄積・分析 を行う。

2)防災部会の実際の活動 地域住民のための防災関係冊子の作成 ・降雨 ・崖崩れ ・土石流 注意事項 小学校高学年や中学生を対照と考えたわかりや すい冊子とする。 防災関係冊子を用いて地域住民に呼びか け、 防災意識を高める。

4-3 防災教育の実施( 2005 年) 1)防災教育のねらい ①災害に関する基礎知識をつける。 ②土砂災害の発生メカニズムや対策につい て各自で考え、知識をつける。 ③警戒・避難についての知識を身につけ、 重要性を知る。 ④特に、自分の身の回りの危険箇所を知り、 安全な避難を考える。 ⑤実際の災害時に役立つ知識、考え方、解 決能力を身につける。

中学校の先生と打ち合わせ

授業の様子

グループ討議の様子

演習状況

成果発表

授業後 生徒と記念撮影

2)防災教育の効果 ①防災教育により災害の知識が向上する ②グループ討議や演習を中心にすると興味 や理解度が増した ③自分の身の回りの危険箇所や避難の認識 が高まった

5.まとめ ①スマトラ島沖地震によるスマトラ島とタイの被 害の状況をとりまとめたが、復興はまだ行われ ていない現状を報告した。 ②津波被害の教訓として、防災対策の重要性、防 災計画上の注意点、防災教育・避難訓練の必要 性について指摘した。 ③防災教育の実施により、災害の認識が高まり、 災害の被害を軽減できる可能性がある。 ― 今後も災害のリスクを軽減できるような活 動を行っていきたい。