海洋流体力学(地球流体力学) 担当:島田 予習復習用教材置き場:   

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第2回:力・つりあい 知能システム工学科 井上 康介 日立キャンパス E2 棟 801 号室 工業力学 補足スライド Industrial Mechanics.
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予習復習用教材置き場: http://www2.kaiyodai.ac.jp/~koji/gfd2014/ 海洋流体力学(地球流体力学) 担当:島田 予習復習用教材置き場:  http://www2.kaiyodai.ac.jp/~koji/gfd2014/   海洋流体力学とは、海洋に関する流体力学。本講義では、海洋のみならず、大気も含めた地球流体力学について学ぶ。     Fluid Dynamics(流体力学)     Geophysical Fluid Dynamics(地球流体力学) 目標  海洋・大気大循環のイメージを描けるようにする。  海洋・大気に現れる波について理解する。  身近な自然現象を面白く観れるようになること。 重視すること  方程式とは、左辺と右辺のバランスである。  左辺、右辺を構成する項は、全て同じ大きさではない。  注目する現象により、各項の相対的な大きさは変わる。  重要な項だけ、考えるのが地球流体力学の真髄  細かいことは気にせず、大掴みで現象を観る心が大事

= 圧力勾配項とバランス できるのはどれか?  地球流体力学は、詳細にこだわることよりも、大局感を重視する。 写真で詳細まで再現するセンスではなく、一筆書きで特徴を捉えるようなものである。  方程式と向き合ったとき、全ての項が大事であるように思ってきたかも しれない。方程式とは釣り合い(バランス)を表現するものである。ある 項が無くてもほとんどバランスするようであれば、その項は無視したほ うが全体を掴むためには見通しが良くなる。 = 圧力勾配項とバランス できるのはどれか?

物理学 物事をできるだけ単純に考え、共通点(一般性)を見出し、エッセンスを理解し、分かることを実感すること。 研究を行うには、「問題設定が大事」 問題設定するために必要な力は、基礎をきちんと理解しているかに掛かっている。 問題解決能力(解析手法や数値計算)は、知りたい情熱があれば、そのとき、なんとかなる。

質点力学と流体力学 高校及び大学1、2年次に物理学について学んできた(必修科目)。そこで対象とした力学は質点(系)力学であった。そこでは、質点の運動を記述するものであり、運動する質点に乗って方程式を構築した。その方程式とは、ニュートンの第二法則  であった。(これだけは覚えていてくださいね)

流体の捉え方 (離散的な物体から連続体へ) 空気は1cm3 中に2.69×1019 個の分子を含む。質点力学のように1つ1つの分子の動きを追う方法も可能であるが実際的ではない。そこで、流体力学では、質点のように個々の離散的物体の運動を追うのではなく、連続した物体であるとし、その運動を考える。 そこで、流体力学では、微小体積のBOXを想定し、そのBOXに対してニュートン第二法則を適用する。 微小なBOXの中の分子は、同じように振舞うと仮定するのである。実際、風や流れがある場合に、ごくごく近くにある分子の動きはほとんど同じである。

圧力や摩擦など、面を押したり擦ったりする力:面に働く力 流体運動も、ニュートン第二法則で記述される。 質点力学のニュートン第二法則 質量 加速度 力 流体力学のニュートン第二法則(流体方程式) 重力や浮力など:体積に働く力 質量 力 面積力 体積力 加速度 圧力や摩擦など、面を押したり擦ったりする力:面に働く力

流体運動は、固定された場所での 変化を考えたほうが分かりやすい 運動とともに流体は変形する。よって、質点力学のように流体を構成する一粒一粒の水分子の運動を考えて方程式を組み立てるのは実際的ではない。そこで、空間に固定されたBOXに注目する。 海洋や大気観測では、ある場所での流速、温度、塩分を観測し、循環の全体像を考える。例えば、天気図などは、固定観測点におけるデータを基にして作成したものである。 ラグランジュとオイラーの方法 運動に従って考える方法をラグランジュの方法とよぶ。これは質点力学の見方。 固定された場所での運動を考える方法をオイラーの方法と呼ぶ。これが流体力学の一般的な方法。

ラグランジュとオイラーの方法 ラグランジュの見方 オイラーの見方 収支を考える方法! どこに移動 しても人数は 変わらない ある固定された領域では、 (出る人数)-(入る人数) だけ、人数が変わる ラグランジュの見方 オイラーの見方 収支を考える方法!

4頭出て、2頭入っている。⇒氷の上のセイウチは2頭減る 10人いる 4頭出て、2頭入っている。⇒氷の上のセイウチは2頭減る

オイラーとラジュランジュ記述の違い いきなり、流体で考えると見通しがよくないので、形状は変わらない連続的な温度分布をもつ物体(棒)で考えてみよう。 一定の温度変化率      で、温度分布 を持った 棒があり、速度uで移動している 時間変数を固定して見ているので、 (言い換えれば)ある時刻の空間温度変化を見ているので、 (さらに言い換えれば) ある時刻にとまっている棒の空間温度変化を見ているので 全微分ではなく偏微分 時刻t 速度uで移動している 時刻t+⊿ t

棒上の特定の場所、例えば、○、△の部分の温度は変わっていない 棒に乗って変化を見ると(ラグランジュの見方) 時刻t 時刻t+⊿ t 速度uで移動している 棒上の特定の場所、例えば、○、△の部分の温度は変わっていない これは、運動する物体に乗って見たときの考え方で、「ラグランジュ的記述」という。これは、質点運動を記述する方法と同じ。 式で書くと、

次に、ある特定の場所での温度変化を考える (オイラーの見方) 例えば、 x =Xの場所での温度が、 t =Δtの時刻に どれだけ変化するかを考えてみる。 時刻t 速度uで 移動している 時刻t+⊿ t

空間位置変数xを固定して変化を見ているので、全微分ではなく偏微分 位置Xでの温度Tの変化 ⊿t経過すると ⊿tの間に変化した温度 ⊿t経過したときの 位置xでの温度 位置xでの 最初の温度       より 空間位置変数xを固定して変化を見ているので、全微分ではなく偏微分 これから、 ラグランジュ微分と オイラー微分の関係

温度に変化をもたらす外的要因(QT:加熱とか冷却)があれば 微小時間⊿tを考えると、考える位置xでの瞬間の速度を考えればよい。従って、一定速度uの場合だけでなく、速度が時間的にも空間的にも変化する場合もこの関係は成り立つ。 一般的に、ラグランジュ微分とオイラー微分の関係は 局所時間変化項 移流項 となる。 温度に変化をもたらす外的要因(QT:加熱とか冷却)があれば となる。

ここまでは、温度分布を持った棒について考えたが、“変形しない”棒でなく、流体のような連続体でも上の関係は成り立つし、考える変数は、温度Tでなくてもよい。例えば、塩分Sであっても構わないし、密度ρであっても構わない。速度uやvやw(運動を表す量)であっても構わない。 Tの代わりにuを、QT (加熱or冷却)の代わりにx軸方向に与えられる力を考えれば、流体の“速度変化(運動量変化)”を記述する、運動方程式になる。(ここでは、x方向だけを考えている。) 仮想BOXに 与えられる力の一般的表現 ここで、 、 である。

流体の運動方程式 流体は、3次元空間に存在するので、移流項はy方向、z方向についてもx方向と同様の形式であらわされる。 体積Vの仮想BOXの面に掛かる力が 面積力(圧力など):     V(F x 、 F y 、 F z)    体積Vの仮想BOXの質量(ρV)に比例して掛かる力が体積力 体積力(重力など):    -ρVg           

【数学の復習】テイラー展開の考え方(1次式近似)

小さい値に小さい値をかけているから更に小さくなる⇒無視 小さい値に小さい値を何度もかけているから更に更に小さくなる⇒無視

圧力があれば、基本的には、その圧力はBOXの内側に向かって働いている。 流体に働く力(圧力:面積力) 仮想BOXのx方向に働く力「圧力差」を考える。 x方向について考えて いるのでy方向は関係なし 圧力があれば、基本的には、その圧力はBOXの内側に向かって働いている。 右側の面を押す圧力は、単純で である。右側の面でx正方向に働く力は、面を引っ張る圧力であるから、符号を逆転させればよい

左の面Aを押す力は、 右の面Bを引っ張る力は、 x正方向に働く力は「面Aを押す力」と「面Bを引っ張る力」 の合力であるから、 V と表現できる。感覚的には「圧力の高いほうから低いほうに 向かって」力が働くと考えればよい。そのため、マイナスの符号が 付いていると考えればよい。

y正方向に働く力も考え方は同じで、 とすればよい。 z正方向には、面を押す力(圧力:面積力) に加えて、重力も働いている。重力は面を押す力ではない。体積(物体の質量)に比例して掛かる力である(もともとは、万有引力)。その大きさは、鉛直方向下向きで、仮想BOXの質量に比例する。従って、方程式中では、 ρVは質量m となっているのである。

まとめると、 となる。

両辺をρVで割ると、 となる。これが、粘性が無い場合の流体の方程式である。 実際の流体には粘性があり、粘性による力も働くが、 粘性を考えない流体のことを完全流体と呼び、 その運動方程式のことを オイラー方程式(Euler’s equations of motion)と呼ぶ。

連続方程式 仮想BOXの質量収支を考える 入る密度 入る体積 出る密度(  ) 出る体積 入る質量 出る質量

・・・・・・連続方程式

(物理数学を受講した学生にはこちらのほうが簡単) 連続の式の別の導出の仕方 空間中に固定された体積Vをもつ流体の質量変化を考える。 固定された体積Vの流体の質量変化は、その表面から入ってくる質量に等しいから、 ガウスの発散定理: を用いて 左辺は体積が一定なので、 被積分の部分は一致するので、

直感的な理解 発散するということは、膨張しているということである。口を閉じた風船を暖めて、膨らむ様子を想像してみよう。 膨らませる前の風船の“表面”を、空間 に固定された体積の境界としよう。 膨らんでいるとき、固定された仮想体積領域の表面からは、膨らむ速度uとともに密度ρの気体が出てゆく。(気体は風船の中にとどまっているが、固定された領域からは出てゆく)。つまり、単位時間に固定された領域から失われる質量は、 「固定された体積領域の密度ρ」×「膨張速度(表面に直角外向き)」 を表面全体にわたって積分したものになる。

と定義する。fをコリオリパラメータと呼ぶ。 コリオリ力 回転角速度Ωを2倍した値に、速度を掛けたものがコリオリ力となる。何故、2倍になるのか? Youtubeの動画。女の子が投げたボールは女の子のところに戻ってくる。それは回転台が1周ではなく半周回ったときである。 つまり、回転台が1周する間に、ボールは2回転するのである。 と定義する。fをコリオリパラメータと呼ぶ。

コリオリ力を含めてやれば、地球流体力学の運動方程式は、 となる。普通の流体力学と、地球流体力学の方程式の違いは コリオリ力の項の有無だけである! 実は、室内スケールを扱う流体力学でもコリオリ力は働いている。 方程式のバランスを考えると、コリオリ力の項は他の項よりも 小さいので無視されているだけである。本当は、コリオリ力を 含めた方程式が一般的である。

コリオリ力の大きさ >> 圧力勾配項は流体の駆動力で存在するものとしよう。それとバランスしているのは、どの項であるか? 例えば、視界に入っている川の流れを考える。 速度スケールUは流れの速度1m/s、空間スケールLは視界に入っているスケールで100mとしよう。時間スケールTは、100mの距離流れるのに要する時間とすれば、100秒となる。地球の自転角速度は、2π/約24時間=7.26×10-5s-1なので(wは今考えないことにしよう)、各項の大きさは、以下のアバウトに見積もれる。 左辺第1~3項の大きさ コリオリ項の大きさ >> よって、コリオリ力は無視できるのである しかし、10kmのスケールを考えると、 ほぼ同じ大きさになり、無視できない!

コリオリ力の導出(その1) x、yは動かない座標系 (宇宙からみた座標系)、 x’, y’は各速度Ωで回転する座標系 コリオリ力の導出は、嫌気がさすと思うので、講義では詳細を説明しません。f=2Ωになることだけ覚えておいてください。気が向いたら、どうして角速度の2倍になるのかを、以下の資料で確認して下さい。 x、yは動かない座標系 (宇宙からみた座標系)、 x’, y’は各速度Ωで回転する座標系 (地球上にいる人がみた座標系)

回転系の運動方程式 (水平成分) コリオリ力と遠心力の項が加わる。 遠心力は、 回転系にいる観測者が“実際に”観測する力には、遠心力は含まれない⇒後述(ジオイド)の問題 コリオリ力 遠心力

コリオリ力の導出(その2) 静止系(慣性系) 回転系:原点Oまわりに角速度Ω A’ B B A A O O 位置Aにある物体がBに移動する。 その軌跡は、 位置Aにある物体がBに移動するが、 回転系に乗っている観測者の位置はA’に移動しており。観測者からみた物体の移動軌跡は、

演算子<>は 回転系に乗っている観測者が見たときの量 回転系に乗っている人が見た物体の移動距離が変化している。ということは、移動距離の微分で表される物体速度も変化している。

補足:ベクトルの外積 ベクトルの外積

補足:ベクトルの外積

ジオイドの問題 回転系にいる観測者が“実際に”観測する力には、遠心力は含まれないことの説明 (これは、回転系にいる人にとっては、考えていないもの) 回転流体の表面形状は、各大学の大学院入試にはよく出る問題です。

回転系にいる観測者が観測する力は、

ジオイドの理解 回転系にいる観測者が“実際に”観測する力には、遠心力は含まれないことの理解 (これは、回転系にいる人にとっては、考えていないもの)

遠心力が働いているのに静止? 摩訶不思議かと思うでしょうが、そのカラクリを 【右図】 流体を剛体回転させ たときの水面形状と 等圧面

剛体回転する流体の表面形状(ジオイド)を 求めてみよう!

補足:微分演算子変換

補足:微分演算子変換

回転球体(地球)では?

地衡流 大規模な海洋の流れ、大気の風 圧力勾配項とバランス できるのはどれか? 地球流体力学は、詳細にこだわるより大局感を重視すると述べた。  地球流体力学は、詳細にこだわるより大局感を重視すると述べた。 大局感の代表選手が等圧線に沿って流れる地衡流である。海洋学では地衡流、気象学では地衡風と呼ぶ。  方程式と向き合ったとき、全ての項が大事であるように思ってきたかもしれない。方程式とは釣り合い(バランス)を表現するものである。ある項が無くてもほとんどバランスするようであれば、その項を無視したほうが全体を掴むためには良い。  細かいことは、まず“切り捨てる”センスが大事。これが地球流体の思考方法。 圧力勾配項とバランス できるのはどれか?

スケール・アナリシス 現象に合わせて、 時間:T 水平スケール:L 鉛直スケール:D 水平流速:U 鉛直流速:W 圧力:P でスケーリングすると、 運動方程式の各項の 大きさは、右のように なる(w,zを含むスケーリング下記参照) 各項の 大きさ 海洋を考えてみよう。大洋の水深(D)は数km。一方、海洋循環の水平スケール(L)は、数10kmから数1000km。

時間変化項 移流項 コリオリ項

例えば、黒潮の代表流速U=1m/s,水平スケールL=1000km、 f=2Ωsinθ=8.4×10-5s-1を代入すると、 左辺では、コリオリ項が他の項と比べて圧倒的に大きい。この スケールでは圧力勾配とバランスできるものは、コリオリ力を 含む項だけであると考えられる。従って、大きなスケールでは、 のバランスに運動方程式はなっている。これを地衡流バランスの 式という。厳密には、このバランスを100%満たしていないが、 巨視的に見た場合ほとんど、このバランスになっているのである。

500hPaの高度, 2009/10/28 等値線の混んでいるところが偏西風 偏西風は蛇行している その謎は、講義の最後の方で・・・

上空では、どうなっているか? 南 北 地表面では、ほとんど同じ圧力 =上に乗っている空気の質量が同じ 冷たい空気 暖かい空気 質量は大 等圧面の高さ 例えば、500hPaの高度 この高度より上に乗っている 大気の質量を考える 地表面では、ほとんど同じ圧力 =上に乗っている空気の質量が同じ 冷たい空気 暖かい空気 北 南 質量は大 質量は小 高圧 低圧

北 南

鉛直方向のスケールアナリシス 静水圧近似が可能である条件とは? 静水圧近似:

①はよく教科書に書かれているが、②は以外に書かれていないよ 【静水圧近似の条件① 】  水平運動のスケールが 鉛直運動のスケールよりも十分大きいとき静水圧近似可能 ①はよく教科書に書かれているが、②は以外に書かれていないよ 【静水圧近似の条件② 】  地衡流バランスが卓越するとき、つまり、 コリオリ力が運動を支配しているような場合、静水圧近似可能

なんで重力加速度項(g)は大きいものとして 話を進めてきたのか? 海洋の代表的な大きさとして、水平流速1m/s、鉛直流速0.01m/s、水平スケール10km、鉛直スケール1km(δ=0.1) 、時間スケール、1日(~1.0×106)、g=9.8m/s2としてみよう。

温度風の関係(密度分布から流速を求める方法) 水平運動方程式は地衡流バランスが成立している場合には、 これをzで微分し、静水圧バランス(近似)の関係、 を用いると、 となる。これを温度風の式と呼ぶ。

温度風関係式の導出の補足

もしも、ρが一定である場合、 となり、水平流速は鉛直方向に変化しない、 つまり、水柱は深さによらず同じ運動をする。これを、 テイラー・プラウドマンの定理を言う。 (もしくは、テイラー ・コラム[水柱]と言う) 鉛直方向に密度が変化している場合には、(成層がある場合には)、 どうなるであろうか? 密度が一定ではない、 として考えてみよう。

をzで積分すると、 密度ρは水温、塩分、圧力から決めるので、ある深さz0での流速 が分かっていれば、任意の深さの流速は求められる。 こうして、流れを求める方法を「地衡流計算」と言う。 大規模な海洋の流れは、流れを測定しなくとも、水温、塩分観測 から求めることが可能なのである(⇒実習Ⅱ)。(但し、第0近似である)