国民経済計算研究会 専修大学 2015年3月14日(土) 福井県立大学経済学部教授 服部茂幸

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復興財源 国債 VS 税 国債派 新井・柏嶋・小柴. 主張 1. 国債ならば迅速・確実に財源確保が出来る 3. 増税は被災者・低所得者の負担を増大させ る 2. 増税は景気を悪化させる 以上の 3 点から、我々は 「復興財源は全額国債で賄うべきである」 と主張する.
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岩本 康志 2013年5月25日 日本金融学会 中央銀行パネル
国民経済計算研究会( ) 趣旨説明 専修大学 経済学部 作間 逸雄.
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古典派モデル(1) 基本モデル 生産要素市場の均衡(労働市場,資本市場) 生産関数 消費関数,投資関数 財市場の均衡 政策の効果
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国民経済計算研究会 専修大学 2015年3月14日(土) 福井県立大学経済学部教授 服部茂幸 異次元緩和はデフレ脱却を進めたか 国民経済計算研究会 専修大学 2015年3月14日(土) 福井県立大学経済学部教授 服部茂幸

目次 1.はじめに-2つの予想 2.輸入インフレと付加価値デフレ 3.消費は増加していたのか 4.そもそも日本は停滞していたのか 5.まとめ

1.はじめに-2つの予想 服部茂幸『アベノミクスの終焉』岩波新書、2014年8月 その時には、消費増税の駆け込み需要の反動減は小さい。このまま 日本経済は順調に成長すると思われていた。思っていたのは政府・日 銀だけでなく、企業・マスコミなども同じ 今となっては誤り。 10月末の日銀の追加緩和、来年の消費増税延期論

経済成長の見通し(2014年度) 政府の経済見通し 2014年2月 1.4% 2015年1月 -0.5% 日銀政策委員(7人のうち、最大値と最小値を除く) 1月 1.2%-1.5%(中位は1.5%) 10月 0.2%-0.7%(中位は0.5%) 2015年1月 -0.6%--0.4%(中位は-0.5%) 参考:安倍政権はこれから10年の成長率を2%と目標にし、日銀は消費増 税の反動減は0.7%と試算している。 ESPフォーキャスト調査 1月 0.84%、10月 0.34%、15年1月 -0.60% 今年度はマイナス成長となることはほぼ確定

現在はデフレに戻っている 物価目標の達成は失敗した 日銀は2%の物価目標を設定 2013年1月 現在の日銀体制 2013年3月 日銀は2%の物価目標を設定 2013年1月 現在の日銀体制 2013年3月 2年程度で物価目標を達成 消費者物価(生鮮食品を除く総合)上昇率 2013年6月 プラスに転換 2014年6月3.4% 2015年1月(2.2%) デフレに逆戻り(消費増税分は2%) 目標は達成不可能 図1参照

公式見解は正しいのか? 消費者物価上昇率の低下は原油価格の低下 経済の悪化は消費増税 物価の上昇は輸入インフレ 経済の停滞は消費増税だけか? 総務省「家計調査報告」「追加参考図表1過去の消費税導入時等との 比較」 図2 消費の落ち込みは圧倒的に悪い

2.輸入インフレと付加価値デフレ 輸入インフレ 円安→輸入物価の上昇→製品価格の上昇 輸入物価の上昇が製品価格に完全に転化されない場合、付加価値 ベースではデフレが悪化する 内閣府政策統括官室 (2013) 『日本経済2013-2014-デフレ脱却へ の闘い,次なるステージへ』 付加価値デフレ 製造業では存在しないが、非製造業では存在する

『国民経済計算確報』のデータによる分析 図3,表1 産出デフレータは上昇。中間投入デフレータはそれ以上に上昇 物価上昇はコスト・プッシュ型 輸出産業(一般機械、電気機械、輸送用機械、精密機械)の付加価値 デフレータは急上昇(電気機械の上昇率はマイナスであるが、過去と の比較では急上昇) 内需型産業では付加価値デフレは悪化 製造業でも、輸出産業でなければ、付加価値デフレが悪化しているも のは少なくない。

結論 輸入インフレで製品価格が上がっても、付加価値デフレが生じている。 そもそもデフレ脱却は初めから進んでいなかった。 輸入デフレと付加価値デフレの効果 輸入価格の上昇を製品価格に転嫁ができない 転嫁されれば、消費者が損失 国内産業と消費者が損失 ただし、円安による輸出価格の上昇で、輸出産業は利益を受ける

3.消費は増加していたのか 異次元緩和が経済を回復させる経路 1.円安→輸出拡大、輸入縮小 実際には円安にもかかわらず、輸出は伸び悩み、輸入は急増 外需主導で経済が回復したと主張する者はいない 2.一般的な説明 金融緩和は消費を増加。消費増税が消費回復の水を差した

岩田規久男  2014年5月26日の講演 輸入インフレ論を否定 理論的な問題点 1.原油価格の低下が輸入デフレを引き起こすならば、円安による広 範に輸入品の価格高騰は輸入インフレを引き起こすはず 2.円安が輸出ブームを引き起こせば、輸入インフレと経済の拡張は 両立する。ただし、2013年後半には外需は逆に減っていたことを踏ま えていればよい

消費抑圧とスタグフレーションは起きていた! 表2 消費が増えていたのは、耐久財消費の急増のため (民間住宅投資も急増した) 賃金と家計可処分所得の減少→消費の減少 消費増税前の駆け込み需要は、異次元緩和の成果ではない 政府支出、耐久財消費、民間住宅を除くと、経済成長率はマイナス

2013年度に経済は本当に成長していたのか 図4 GDPと民間消費は増加している GDP 政府支出、民間住宅、耐久財消費を省くと減少 民間最終消費支出 耐久財消費を除くと減少 雇用者報酬も減少 経済が成長していたのは、政府支出と消費増税前の駆け込み需要の 結果 経済の回復は見かけだけ

4.そもそも日本は停滞していたのか デフレの中での経済停滞 政治的効果 ベンチマークの引き下げ 儲かる医者のやり方 経済成長率がプラスになれば、異次元緩和の成果 それでは、アベノミクス前の日本経済は停滞していたのか 図5 一人あたりで見れば、日本もアメリカも成長率は変わらない

内閣府による景気循環日付 循環 谷 山 期間 拡張 後退 全循環 第13循環 平成11年1月 平成12年11月 平成14年1月 22ヵ月 14ヵ月 36ヵ月 (1999年1月) (2000年11月) (2002年1月) 第14循環 平成20年2月 平成21年3月 73ヵ月 13ヵ月 86ヵ月 (2008年2月) (2009年3月) 第15循環 平成24年4月 平成24年11月 37ヵ月 7ヵ月 44ヵ月 (2012年4月) (2012年11月) (暫定)

今までの日本も経済は成長していた いざなみ景気は6年間、世界同時不況からの回復期は3年間好況が 続いていた。 2014年1月が景気の山だとすると、景気の拡張期は14ヶ月 (戦後最短の好景気) たかだか1年あるいは6ヶ月程度の好況をもって、日本経済を復活さ せたとは言えない。 世界同時不況においても、日本の不況は1年程度 外生的なショックで不況が生じても、半年か一年で経済は回復してい る

経済回復はアベノミクスのためか 安倍首相の首相就任は、2012年12月。異次元緩和の開始は、2013 年4月。景気の谷は2012年11月。 異次元緩和が実施されると経済成長率がマイナスへ転落 アベノミクスや異次元緩和が景気回復の原因であるわけがない。 景気回復期の成長率としてはそれほど高かったわけではない。 (しかも、この時期は消費増税前の駆け込み需要もあった) 経済の回復の原因は、ユーロ問題が小康状態になったため。

新薬の試験 薬を投与して、病気が治っても、新薬の成果が実証されたことにはな らない 他の要因も考慮しなければならない 経済が回復したからといって、それだけで異次元緩和の効果が立証 できたと主張するのは短絡的 デフレ脱却ができていないのに、デフレ脱却によって経済が回復した と主張することはできない

5.まとめ 初期の段階で物価が上昇していたのは輸入インフレによる 国内産業は輸入インフレによって付加価値デフレを悪化させていた 輸出産業は円安により利益を拡大させていた 輸入インフレと付加価値デフレは賃金停滞と消費停滞を引き起こした 2013年の経済成長は政府支出と消費増税前の駆け込み需要の結果 輸入インフレが終われば、デフレに戻る デフレになったからといって経済が停滞するわけではない