HT8-PCBキャピラリーカラムによるPCB全異性体分析

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HT8-PCBキャピラリーカラムによるPCB全異性体分析 平成14年11月11日(月):大阪府立公衆衛生研究所 松村千里1), 鶴川正寛1), 中野 武1), 江崎達哉2), 大橋 眞2) 1)兵庫県立健康環境科学研究センター 2)SGEジャパン株式会社

3,4,5,3’,4’-PeCB

【はじめに】 PCBの総生産量 58,000t (1954-1971)に対して、回収され熱分解処理された液状PCB は5,500t(生産量の10%以下)である。適正に管理・保管されているもの、過去に閉鎖系で使用され、粗大ゴミの一部として廃棄物処分場にストックされているもの、開放系で使用され環境へ放出されたもの、古い電気製品のシュレッダーダスト、ノンカーボン紙、蛍光灯の安定器、紙コンデンサー、船底塗料など、さまざまな地域で、さまざまな形で環境へ移行し、大気系、水系、生態系に分布している。PCBは低塩素化物中心のノンカーボン紙・紙コンデンサー由来(KC300)から、高塩素化物中心の船底由来(KC600)まで、特異的な異性体、同族体分布を呈する。

熱安定性 PCBは汚染拡散の重要な指標 化学的 環境中で分解しない。:難分解性 生物学的 使用期間10~20年の環境負荷 異性体 209 : 情報量が多い 海域底質中PCBの鉛直分布 PCB汚染の時間的・経年変化 海域底質中PCBの水平分布 PCB汚染の空間的移動

環境、ヒト、生態系において、PCBの挙動と運命を把握するため、環境および生体試料中のPCBの全異性体分析を実施し、多面的な解析を試みた。

PCB濃度と気温 降雨量 PCB濃度と気圧 大気中PCB濃度変動と気温・降雨・気圧

(ガス状) (粒子状) 大気中PCBの同族体分布

KC300-600 (ガス状) (粒子状) 大気中PCBの異性体分布

同族体分布と起源推定 KC300 KC500 底質 A 底質 B KC400 KC600

母乳・脂肪組織 #153 (2,2',4,4',5,5'-) #74  (2,4,4',5-) #138 (2,2',3,4,4',5'-) #99 (2,2’,4,4',5-) #118  (2,3’,4,4',5-)

23478-PeCDF 2378-TCDD 75 135 75 209 123567-HxCN 3453’4’-Co-PCB

ダイオキシン類 TEF PCDD 7種 PCDF 10種 コプラナPCB 14種 PCN 7種 臭素化PCDD/DF

コプラナPCB コプラナPCBは、PCB製品中の成分の一部としての側面と、燃焼プロセスから発生するダイオキシンと同様の非意図的生成物質としての側面があり、その起源を推定する上で、環境中でのPCB異性体の個々の挙動は重要である。

TEQ値に対する寄与

Co-PCBの異性体 3,3',4,4'-T4CB #77 0.0001 3,4,4',5-T4CB #81 0.0001           IUPAC TEF 3,3',4,4'-T4CB  #77 0.0001 3,4,4',5-T4CB #81 0.0001 2,3',4,4',5'-P5CB #123 0.0001 2,3',4,4',5-P5CB #118 0.0001 2,3,4,4',5-P5CB #114 0.0005 2,3,3',4,4'-P5CB #105 0.0001 3,3',4,4',5-P5CB #126 0.1 2,3,3',4,4',5-H6CB #156 0.0005 2,3,3',4,4',5'-H6CB #157 0.0005 2,3',4,4',5,5'-H6CB #167 0.00001 3,3',4,4',5,5'-H6CB #169 0.01 2,3,3',4,4',5,5'-H7CBs #189 0.0001 2,2',3,4,4',5,5'-H7CB #180 0 2,2',3,3',4,4',5-H7CB #170 0

環境大気 TEQ値に対する寄与

ローボリウムサンプラー

前処理の簡素化・迅速分析 Acrobat•¶‘ 1 Sample 2 n-Hexane 100mL 3 20%DCM/ n-Hex. 60mL 4 Reverse - flow direction Toluene 80mL Syringe Acrobat•¶‘ Syringe     Syringe C1 C1 C2 C2 C2 C2 Fr. 1 Fr. 2 Fr. 3 Scheme 1. Scheme of clean up system for environmental samples. (C1: Multi layer Silica gel column (disposal filtration tube). C2: Carboxen 1000 Reversing tube).

PCB異性体分析 PCBsのGC分析用カラム →DB-5及びHT8が多く使用されている。

HT8においても主要な異性体である#44、#74、#101、#118、#105 等の分離が不十分である、#149のフラグメントイオンが#77に重なるなどの問題点があった。 そこで、新規なキャピラリーカラムであるHT8-PCBを用い、PCBs全209異性体の分離条件を検討するとともに、各異性体の溶出順位の決定を行ったので報告する。 しかし、

試 薬 PCBs各209異性体の標準物質 Accu Standards Inc. Catalogue number : C-SET-100 試 薬  PCBs各209異性体の標準物質 Accu Standards Inc.   Catalogue number : C-SET-100 Contents : PCB all 209 congeners Solvent : isooctane in each 209 vials  内標準混合溶液( 13Cラベル化体) Wellington Laboratories   Catalogue number : MBP-CG   Contents : 13C12-labeled mono- to deca-PCB solution /mixture ( # 3, #15, #31, #52, #118, #153, #180, #194, #206, #209 ) Solvent : nonane

Bz#とIUPAC# Bz# structure IUPAC# 107 2,3,3‘,4’,5-PeCB 109 199 2,2',3,3',4,5,6,6'-OcCB 200 200 2,2',3,3',4,5',6,6'-OcCB 201 201 2,2',3,3',4,5,5',6'-OcCB 199

標準溶液 分離状況確認用  PCBs全209異性体の混合溶液(209-Mix、約50ppb)と、KC300、400、500及び600の等量混合溶液(KC-Mix、5ppm)を調製した。 溶出順位確定用  5%フェニルメチルシリコン系、HT8におけるPCB全209成分の分離挙動を参考に、13~14異性体の混合標準液15種(CB-1~CB-15)を調製した。 * CB-1~CB-15、209-Mix、KC-Mixの各標準混合溶液には、内標準混合溶液を予め添加した。

Table2 PCB congeners (IUPAC number) included in 15 type of standard mixture solutions

装置及び、測定条件 GC : HP5890(Agilent Technologies製) Capillary Column: HT8-PCB 0.25mmID x 60m(SGE製) Injector: 280℃ Splitless Injection amount: 1μL Carrier Gas: He 1.0ml/min Constant Flow Mode MS : JMS-700(日本電子製) Interface: 260℃ Chamber: 260℃ High Resolution Mode: Resolution ≧10000

分離条件と溶出順位 PCBs全209異性体の混合溶液209-Mixを用い、異性体の分離状況と溶出時間からオーブン条件を最適化した。 Oven : 120℃ - 20℃/min → 180℃ - 2℃/min → 260℃ - 5℃/min → 300℃ (4min hold) この条件において混合標準液15種CB-1~CB-15を測定しPCBs各異性体の溶出順位を確定するとともに、KC-300、400、500及び600の等量混合溶液KC-Mixについても測定した。

Table4 The number of isomer and peak  

Table5-1 PCB Retention Index with HT8-PCB

Table5-2 PCB Retention Index with HT8-PCB

Table5-3 PCB Retention Index with HT8-PCB * : Predominant isomers in Kanechlor. **: co-PCBs and diortho-substituted isomers. RRT: Relative Retention Time vs average retention time of mass labeled-#52 and #180

Fig. 1-1 Average Mass Chromatogram of monochlorinatedbiphenyl (M1CB) in (a) KC-300, 400, 500, 600 equivalent mixture solution and (b) all 209 PCB standard mixture solution.

Fig. 1-2 Average Mass Chromatogram of dichlorinatedbiphenyl (D2CB) in (a) KC-300, 400, 500, 600 equivalent mixture solution and (b) all 209 PCB standard mixture solution.

Fig. 1-3 Average Mass Chromatogram of trichlorinatedbiphenyl (T3CB) in (a) KC-300, 400, 500, 600 equivalent mixture solution and (b) all 209 PCB standard mixture solution.

Fig. 1-4 Average Mass Chromatogram of tetrachlorinatedbiphenyl (T4CB) in (a) KC-300, 400, 500, 600 equivalent mixture solution and (b) all 209 PCB standard mixture solution.

Fig. 1-5 Average Mass Chromatogram of pentachlorinatedbiphenyl (P5CB) in (a) KC-300, 400, 500, 600 equivalent mixture solution and (b) all 209 PCB standard mixture solution.

Fig. 1-6 Average Mass Chromatogram hexachlorinatedbiphenyl (H6CB) in (a) KC-300, 400, 500, 600 equivalent mixture solution and (b) all 209 PCB standard mixture solution.

Fig. 1-7 Average Mass Chromatogram of heptachlorinatedbiphenyl (H7CB) in (a) KC-300, 400, 500, 600 equivalent mixture solution and (b) all 209 PCB standard mixture solution.

Fig. 1-8 Average Mass Chromatogram of octachlorinatedbiphenyl (O8CB) in (a) KC-300, 400, 500, 600 equivalent mixture solution and (b) all 209 PCB standard mixture solution.

Fig. 1-9 Average Mass Chromatogram of nonachlorinatedbiphenyl (N9CB) in (a) KC-300, 400, 500, 600 equivalent mixture solution and (b) all 209 PCB standard mixture solution.

Fig. 1-10 Average Mass Chromatogram of decachlorinatedbiphenyl (D10CB) in (a) KC-300, 400, 500, 600 equivalent mixture solution and (b) all 209 PCB standard mixture solution.

Table6 The congeners were eluting near by coplanar-PCB on HT8-PCB and DB-5MS3).  

要 約 PCBs全209異性体の混合溶液を用いて、キャピラリーカラム(HT8-PCB) のオーブン条件を最適化した。 要 約 PCBs全209異性体の混合溶液を用いて、キャピラリーカラム(HT8-PCB) のオーブン条件を最適化した。 塩素化物ごとのマスクロマトグラムにおいて計192本のピークが確認された。 この条件を用いて、全209異性体の溶出順位を確定した。