(第8週) 先週のおさらいとキーワード ◆ 有効需要原理(J.M.ケインズ[1936]) ◆ 短期モデルにおける国民所得の決定

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資本市場論 (9) 債券投資分析 - 金利の期間構造 - 三隅隆司 1. 短期金利と長期金利の関係 1990 年 12 月 1994 年 6 月 1992 年 4 月 1993 年 2 月 1996 年 6 月 1999 年 1 月 1994 年 1 月 日本銀行 HP のデータより作成 2 はじめに.
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第8章 貯蓄,投資と金融システ ム 1.アメリカ経済における金融機関と市場 ( ↑ 日本経済でもほぼ同じ) 金融システムは、ある人の貯蓄と別の人の投資 を結びつける。投資の例として、 起業のための設備投資 住宅を購入する 金融システムは、金融市場と金融仲介機関の2 つのカテゴリーに分けられる 1 8.
1 (第 14 週) 第5章 間接金融の仕組 み § 1 銀行の金融仲介機能 ( p.91 ~ 98 ) ① 仲介機能 ② 情報生産機能 ③ 資産転換(変換)機能 ④ 銀行貸付けにおける担保の役割 § 2 貸付債権の証券化とサブプライム問題 ( p.99 ~ 104 ) § 3 銀行以外の金融仲介機関.
マクロ経済学初級I タイプIIクラス 白井義昌
金利、金融政策及び資金循環 金利の概念 金利体系 日本銀行の政策手段 資金循環. 金利の概念 金利とは:資金の貸借取引における資 金の価格である。 金利の機能:資金の配分や景気の調整。
1 IV 長期における貨幣と価格. 第11章 貨幣システム 物々交換 欲望の二重の一致 1.貨幣の意味 貨幣の機能 – 交換手段 – 計算単位 – 価値貯蔵手段 富 流動性 貨幣の種類 – 商品貨幣 金本位制 – 不換紙幣.
金融経済論(小川英治) 1 貨幣供給. 金融経済論(小川英治) 2 ハイパワードマネーとマネー サプライ ハイパワードマネー or マネタリーベース or ベースマ ネー =中央銀行が供給する現金通貨。 ハイパワードマネー( H )は、公衆保有の現金通貨 ( C )と銀行保有の支払準備( R )から構成される。
貨幣の役割と貨幣市場 経済学B 第 9 回 畑農鋭矢 1. 貨幣の役割 価値尺度 財の価値を表す共通の尺度 交換手段 物々交換⇒欲望の二重の一致 貨幣によって交換が容易に 価値の保蔵手段 安全資産としての保蔵手段.
金融概論(小川担当分) 貨幣供給. 金融概論(小川担当分) ハイパワードマネーと マネーストック ハイパワードマネー or マネタリーベース or ベースマ ネー =中央銀行が供給する現金通貨。 ハイパワードマネー( H )は、公衆保有の現金通貨 ( C )と銀行保有の支払準備(
短期均衡 (2) IS-LM モデル 財市場 IS 曲線 – 財市場の均衡 – 政府支出の増加,減税 貨幣市場 LM 曲線 – 貨幣需要,貨幣市場の均衡 – マネーサプライの増加 IS-LM モデル – 財政政策の効果,金融政策の効果 – 流動性の罠 – 実質利子率と名目利子率の区別 貨幣供給.
貨幣について. 講義概要 貨幣の概念 名目と実質貨幣ストック 貨幣に対する需要 政府による金融政策.
貨幣需要 ケインズの General Theory の15章 The Psychological and Business Incentives to Liquidity.
IS-LM 分析 マクロ経済分析 畑農鋭矢. 貨幣の範囲 通貨対象 M1M2M3 広義流動性 現金通貨(日銀券 +補助通貨) 預金通貨 (普通預金・当座 預金など) 主要銀行・信 用金庫など ゆうちょ銀 行・信用組合 など 準通貨 (定期預金など) 主要銀行・信 金など ゆうちょ銀 行・信用組合 など.
1 第1章 貨幣と決済の仕組み テキスト対応箇所:p. iii ~i v ,1~ 13 ◆ 準備学習(p. iii ~i v ) ◆ 序章(p. 1 ~ 3 ) ◆ 第1章 貨幣と決済の仕組み (前半部、p. 5 ~ 13 )
1 第1章 貨幣と決済の仕組み(2) 前回の確認: ● (序章)金融の意義:2つの視点 ● 貨幣( money )=決済手段 ● 発行主体としての政府と日銀 ● 通貨( currency )=現金通貨+預金通貨 先週分の続き Q5) 通貨には何が含まれるか Q6) クレジット・カードや電子マネーは貨.
金融経済論(小川英治) 1 貨幣の機能と貨幣需要. 金融経済論(小川英治) 2 貨幣の機能 計算単位(価値尺度) 交換される商品の価値をある貨幣の数量で 一元的に表示する機能 交換手段 貨幣がすべての商品と交換され、すべての 商品の交換の媒介となる機能 価値貯蔵手段 貨幣が一定の価値を少なくとも一時的に蓄.
1 経済学(第 9 週) 第 3 章 貨幣と金融取引 [1-2] 前回のキーワード: ◆ 資金過不足の発生 ◆ 資金と資産 ◆ 貨幣とは何か ・ 価値基準財(ニュメレール) ・ 決済手段,一般受領性 ・ 流動性と収益性 ・ 通貨の区分( M 1
金融経済論(小川英治) 1 企業の金融活動. 金融経済論(小川英治) 2 企業の意思決定 企業は、第一段階で投資額を決定する。 第二段階で、企業は、どのように資金 を調達するか、資金調達を決定する。
◇業界研究レポート 金融業界 SIGNAL.
第4章:資産価格とそのバブル P.115~137 08bc134k 畑 優花.
第1章 金融の基本的要素 Q.4~Q /5/6 棚倉 彩香.
乗数効果 経済学B 第6回 畑農鋭矢.
第6章 閉鎖経済における短期のマクロ経済理論
市場経済 金融市場メリット 需要と供給 2つの金融 経済循環 証券取引所・証券会社 資本主義経済 銀行
(第7週)第2章(3) 前回のおさらいとキーワード: ■ システミック・リスク ■ セーフティー・ネット ・ 競争制限的規制
貨幣の役割と貨幣市場 経済学B 第11回 畑農鋭矢.
第9週(第3章[2]) §2 資金過不足と貯蓄・投資の関係(p.49~65) Q1) 家計部門 Q2) 企業部門
第16章 総需要に対する 金融・財政政策の影響 1.総需要曲線は三つの理由によって右下がりである 資産効果 利子率効果 為替相場効果
現代の金融入門   -第1章 金融取引- 08BA210Y  一二三 春菜.
現代の経済学B 伊東光晴「ケインズ」第3回 一般理論の骨組み(ii) 現代資本主義とケインズ経済学 京大 経済学研究科 依田高典.
市場の効率性と政府の介入.
貨幣の定義と貨幣量 通貨とは 貨幣の機能 貨幣の定義 (C) Katsuhiro YAMADA.
(第12週)第4章 直接金融の仕組み(2) §1 直接金融と間接金融(p.69~74):確認 ◆ 短期証券(約束手形、CPなど)
第5章 発展する金融市場と 新しい金融商品(前半)
前回分(第1章 準備,1-1):キーワード ・ 生産,分配,消費 ・ 市場と組織 ・ 競争市場と均衡 ・ 市場の失敗と政府の介入
第8回講義 文、法 経済学 白井義昌.
マクロ経済学 II 第9章 久松佳彰.
第7章 どのように為替レートを 安定化させるのか
金 融 統 計 金融市場の基本概念 金融統計の体系 マネーサプライ統計 金利統計 資金循環分析 証券投資分析.
[第10週]第4章 直接金融の仕組み(1) §1 直接金融と間接金融(p.69~74) Q1) 企業の発行する短期証券とは
(景気が良くなり)ハンバーガーの需要が拡大すると
経済学(第10週) 第3章 貨幣と金融取引[2-1] 前回の確認とキーワード ■ 貨幣需要と債券需要 ・ 証券の利益を構成する2つの要素
4 国際通貨 1 国際通貨の基礎理論 2 国際通貨の機能と選択 3 管理通貨制度下の国際通貨 国際金融2002(毛利良一)
第4回講義 マクロ経済学初級I  白井義昌.
マクロ経済学初級I 第4回.
マクロ経済学初級I 第5回講義.
中国の資金循環モデルによる 財政・金融政策の考察
第4章 投資関数.
キャッシュマネジメント 桝 岡 源 一 郎.
第3章 消費関数.
第1章 貨幣とは何か③  §3 貨幣の定義 (1)貨幣の範囲・定義 (2)決済システム (3)貨幣価値 第4回 
経済入門 ⑦ 西山 茂.
貨幣の流通速度 貨幣が平均して1年間にいくつの経済主体 の間を移動するのかを表わす MV=取引総額(年間) Vは流通速度あるいは平均回転率.
V. 開放経済のマクロ経済学.
V. 開放経済のマクロ経済学.
第8回講義 マクロ経済学初級I .
日本の経常収支黒字  → 外国に失業輸出? 高齢化の進展 → 日本の国内貯蓄超過の減少         → 日本の経常収支黒字は減少へ.
貨幣供給・需要 専修大学 経済の世界 作間 逸雄.
第5章 貨幣と金融市場.
財務サイクルと情報フロー                田宮治雄.
第1章 貨幣とは何か①  §1.貨幣の機能・役割 第2回 
7: 新古典派マクロ経済学 生産要素の完全雇用 ケインズ経済学の中心的な考え方(需要サイド,4章と5章のIS/LMモデル) ↑ ↓
マクロ経済学初級I タイプIIクラス 白井義昌
古典派モデル(1) 基本モデル 生産要素市場の均衡(労働市場,資本市場) 生産関数 消費関数,投資関数 財市場の均衡 政策の効果
第9回講義 マクロ経済学初級I タイプIIクラス.
経済学(第7週) 前回のおさらい 前回学習したこと(テキストp.16,19) ◆ マクロ経済学における短期と長期 ◆ 完全雇用とはなにか ◆ 短期のマクロ経済モデルの背後にある考え方 (不況の経済学/有効需要原理) ◆ 民間部門はどのように消費や投資を決定するか ◆ ケインズ型消費関数とはなにか ◆
2009年10月7日 企業ファイナンス(2) 株式と債券の評価 佐々木 隆文.
マクロ経済学初級I 第12回 今学期のまとめ.
経済学入門 ミクロ経済学とマクロ経済学 ケインズ経済学と古典派マクロ経済学 経済学の特徴 経済学の基礎概念 部分均衡分析の応用.
IV 長期における貨幣と価格.
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(第8週) 先週のおさらいとキーワード ◆ 有効需要原理(J.M.ケインズ[1936]) ◆ 短期モデルにおける国民所得の決定 (第8週)  先週のおさらいとキーワード ◆ 有効需要原理(J.M.ケインズ[1936]) ◆ 短期モデルにおける国民所得の決定 ◆ 45°線分析 ◆ 節約のパラドックス,合成の誤謬 ◆ 過少雇用均衡,非自発的失業 ◆ 政府支出乗数 ◆ 均衡予算乗数

2-3 投資関数 (準備) 投資とは何か、その目的は何か ① 個別企業は投資をどのように決定するか 2-3 投資関数 (準備) 投資とは何か、その目的は何か ① 個別企業は投資をどのように決定するか ② 1国全体の投資はどのように決定されるか

投資理論の直観的な理解: ● 実物投資(real investment): 将来収益を得るために、何らかの実物資産(設備)に現在の資金を投じる行為 ※ 金融的投資とは区別する ● 将来収益を現在の価値で評価して、投資の費用より大きければ投資を実行 ● 市場利子率が低い方が、投資の費用が小さい(または、投資収益の現在価値が大きい)ので、投資を実行しやすい

① 投資プロジェクトの現在価値(PDV) ・ 企業家は第1期の期首に投資の実施を検討 ・ 投資物件の耐用期間はn期(年) ・ 毎期の予想収益の流列を{        }で表す [イメージ] 投資収益   Q1  Q2  ・・・・・    Qn 1期 2期 ・・・・・・・   n期 時間 投資の決定

(続き)投資が実行されるための条件 ◆ 投資の予想収益の割引現在価値(PDV): は市場利子率    は市場利子率 ◆ PDVは市場利子率 と反比例の関係にある。 ◆ 投資の費用を   とすると

投資の限界効率(Marginal Efficiency of Investment) ◆ 投資費用CI,予想収益{Q1,Q2,・・・Qn}が既知のとき、  を満たす割引率  が投資の限界効率である。 ◆ PDVとCIの関係、および上式より、投資の条件を  とも表現できる。

② マクロの投資関数 ◆ 社会全体の投資プロジェクトを収益性(限界効率)の高いものから順に並べる ② マクロの投資関数 ◆ 社会全体の投資プロジェクトを収益性(限界効率)の高いものから順に並べる ◆ 社会全体で実行される投資の規模  は、利子率       の水準に応じて決まることから、投資関数を                      と表すことができる。 市場利子率 (実現する投資) 投資

3-1 貨幣と金融市場 3-2 貨幣市場の均衡 3-3 金融政策 第3章 貨幣と金融取引(1) 3-1 貨幣と金融市場 3-2 貨幣市場の均衡 3-3 金融政策 経済学(第8週)

3-1-1 ① 金融取引とは ◆ ある期間をみると・・・ 収入>支出 → 黒字 収入<支出 → 赤字 の経済主体が存在 3-1-1 ① 金融取引とは ◆ ある期間をみると・・・   収入>支出 → 黒字  収入<支出 → 赤字   の経済主体が存在 ◆ 収支の過不足に応じて「資金」を「融通」 ◆ 現在の所得制約を超えた経済活動が実現でき、効率的な資源配分を達成できる  黒字(資金余剰)    貯  蓄  赤字(資金不足)    投  資

3-1-1 ② 資金(fund)と資産(asset) ◆ 資金不足の主体(借り手)    → 債券を発行し、負債を負う ◆ 資金余剰の主体(貸し手)    → 債券を購入し、債権者となる ◆ 資金市場では 貸し手→(資金)→借り手    資産市場では 借り手→(資産)→貸し手

3-1-2,3① 貨幣の定義と機能 ◆ 貨幣とは決済手段であり、ニュメレール(価値基準財)とよばれる ◆ 前提:一般受領(受容)性   現実に流通する貨幣:通貨(currency) ◆ 貨幣の機能    (A)交換の媒体(決済機能)    (B)価値の尺度(計算単位)    (C)価値の貯蔵

3-1-2,3② 通貨(currency)の範囲 定義:通貨保有主体(一般法人、個人、地方公共団体等)が保有する通貨量の残高  =マネーストック(通貨流通量)の指標=  ● M1:  現金通貨+要求払預金  ● M2:  M1+国内銀行預金  ● M3:  M1+準通貨(定期預金,据置預金,外貨        預金など)+CD(譲渡性預金)  ● 広義流動性:M3+金銭の信託 + 投資信託         + 金融債など

◆ CD(Certificate of Deposit :譲渡性預金)  ・第3者に譲渡可能な預金証書  ・比較的大口の(5000万円~)定期預金の一種 ◆ 2008年まで、日本における主要なマネーサプライの指標はM2+CD   (実体経済や物価との関係が相対的に安定的) → 2008年6月からの改定にともない、国内指標として新M2や新M3が主要指標として扱われてきた

3-1-2・3③ 債券とは何か ◆ 借り手が発行し、貸し手が保有する借用証書 ◆ 市場性を持つ有価証券で、満期を待たずに第三者へ譲渡可能 3-1-2・3③ 債券とは何か ◆ 借り手が発行し、貸し手が保有する借用証書 ◆ 市場性を持つ有価証券で、満期を待たずに第三者へ譲渡可能 ◆ 通常は利付債(クーポン付き債券)  ※ 割引債のように利子が付かないものも存在

■ 証券の発行市場と流通市場 ◆ 新規発行市場(primary market) ■ 証券の発行市場と流通市場 ◆ 新規発行市場(primary market)  赤字の経済主体(企業や政府)が新たに発行した証券(債券,株式など)が取引される市場 ◆ 既発行市場(流通市場,secondary market)  既に発行された証券が、満期を待たずに第三者に転売される市場。第三者に転売可能な流通市場の存在が新規発行を促進し、証券取引を支えている。

3-1-2・3 ④ 証券保有の利益 ◆ インカム・ゲイン  株式の配当や、債券の利払い(クーポン) ◆ キャピタル・ゲイン  価格変動にともなう売買差益  (※売買差損は、キャピタル・ロス)

3-1-4・5・6① 貨幣保有の動機  ◆ 単純化された金融資産の区分   貨幣(money) / 債券(bond) ◆ 貨幣保有の3つの動機   ● 取引動機   ● 予備的動機   ● 投機的動機

3-1-4・5・6 ② 貨幣保有の便益と費用 ◆ 貨幣保有の便益   ・・・ 決済手段としての利便性(流動性) ◆ 貨幣保有の費用   ・・・ 直接的な費用(取引および在庫費用)      機会費用(収益資産を放棄することで       あきらめた利子などの収入)

3-1-4・5・6③  利子率と債券価格 ◆ PA;債券の市場利子率(収益率) ◆ 債券価格と市場利子率は負(反比例)の関係

補足 練習問題[2]の解説