通貨統合 第5回 国際金融論
今日の講義 なぜ通貨統合を推進するのか? 通貨危機はもう嫌だ 通貨統合+経済統合=巨大な市場の出現 通貨の利用者↑・・・通貨の機能↑ 南米通貨危機、アジア通貨危機 通貨統合すれば通貨危機は消滅 通貨統合+経済統合=巨大な市場の出現 競争↑・・・質の高い商品↑・生産コスト↓ 通貨統合には経済統合が不可欠 通貨の利用者↑・・・通貨の機能↑ 一般受容性、ネットワーク効果
固定相場制の欠点:通貨危機のリスク アジア通貨危機
ラテンアメリカ諸国の通貨危機 対ドルレート(指数) 通貨安 出所:IMF
アジア通貨危機 「アジア通貨危機」 前回の復習 今日は「通貨と時間のミスマッチ」に注目 外貨準備は固定相場維持の燃料 復習:通貨危機 投資家の 不安心理 資本流出 アジア 通貨売り・ドル買い アジア 通貨下落 圧力 ドル売り 介入 外貨準備↓ 「アジア通貨危機」 前回の復習 外貨準備は固定相場維持の燃料 外貨準備の枯渇は固定相場の崩壊 今日は「通貨と時間のミスマッチ」に注目 燃料枯渇・・・ 固定相場制崩壊 投資家 通貨当局 ⇒固定相場防衛
アジア諸国の対ドル・レート(指数1980年=100) 通貨安 出所:IMF
通貨のミスマッチ① 資産 100won 負債 1$ 通貨危機 200won 負担増 Won建て ドル建て won 換算分 +100won 銀行・企業のバランスシート 通貨危機 100won 200won 例:1$=100won 例:1$=200won won安より、ドル負債をwon換算すると負担増
通貨のミスマッチ②:まとめ アジア諸国の資産は自国通貨、負債はドル 通貨安は、負債の実質的な負担額を増大 国内金融市場が未発達⇒国際金融市場で調達 国際金融市場はドルが取引 固定相場制で為替リスク↓⇒外国から借金が容易 ただし、リスクは消滅したわけではない 通貨安は、負債の実質的な負担額を増大 負債はドル建て 債務超過で銀行・企業が倒産⇒金融危機
⇒投資家が一斉に資本を引出すと、銀行は対処できない 時間のミスマッチ①:アジアの銀行 資本流出入が激しい 貸出 長期の運用 即、現金化が不可能 短期の借金 短期の海外の資本 すぐに現金 に戻せない 資産 (長期の満期) 負債 (短期の満期) 銀行の金庫に現金はなく、ほとんど貸出し ⇒投資家が一斉に資本を引出すと、銀行は対処できない
韓国の資金調達:長期・短期の資本流入 危機 流入 不安定 流出 出所:IMF, IFS
時間のミスマッチ②:まとめ アジア諸国は国内金融市場が未発達のため、国際金融市場から調達 投資家の不安⇒一斉に資本流出のリスク 資金の大半は欧米銀行の不安定な短期資金 ヘッジファンド等 少数部分は、日本の安定的な長期資金 直接投資:工場・インフラの建設費等 投資家の不安⇒一斉に資本流出のリスク 長期投資を短期資金でファイナンスするので、資本流出⇒破産⇒金融危機
通貨危機と金融危機の相乗効果 相乗効果 ⇒破滅 通貨価値 の下落 負債(ドル)の負担↑ 投資家の 不安↑ 短期の 資本流出 通貨危機 通貨当局の 固定相場防衛 ⇒外貨準備↓ 通貨価値 の下落 負債(ドル)の負担↑ 投資家の 不安↑ 短期の 資本流出 投資家の アジア通貨 売り・ドル買い 通貨のミスマッチ 相乗効果 ⇒破滅 金融危機 金融危機 期間のミスマッチ
まとめ:通貨と時間のミスマッチ アジアの金融市場は未発達 金融システムが脆い 通貨危機と金融危機の負の相乗効果 負債⇒ドル建て・短期 通貨・時間のミスマッチ(不利な条件で資金調達) 金融システムが脆い 通貨安⇒ドル建て負債の実質負担額が増大 投資家の不安心理⇒短期資本の流出 通貨危機と金融危機の負の相乗効果
敷居が高い通貨制度 通貨統合とは
通貨統合 ECB ⇒域内で、単一通貨が流通し、単一の中央銀行が金融政策を行う ⇒域内は共通通貨⇒為替レートは存在しない!! EU域内 € \ ドイツ € ECB フランス アメリカ $ FRB 交換 \ 日本 日銀 EU域内
通貨統合のポイント 為替レートを不均衡の調整手段として使えない 域内で共通の金融政策 域内の通貨価値を等しくする 不景気の場合、通貨を安くして輸出を促進できない 人・物・金の移動で調整⇒経済統合の必要性 域内で共通の金融政策 不景気と好景気の国が同居すると難しい 域内の景気循環の同調性⇒経済統合の必要性 域内の通貨価値を等しくする 購買力平価、金利平価で為替レートが動く 域内のインフレ率と金利を等しくする
①不均衡の調整:為替レートの役割 為替が調整可能(変動相場) 通貨同盟 (固定相場) A国 B国 C国 D国 超過需要 超過供給 (不景気) (好景気) ↓ 通貨高 輸出↓ 生産↓ 均衡へ B国 超過供給 (不景気) 通貨安 輸出↑ 生産↑ 輸出 為替 調整 C国 不均衡 インフレ バブル 累積 D国 デフレ 失業 調整手段なし
①通貨統合の理想の調整方法 通貨統合内 C国 D国 人・物・カネの移動 超過需要 ↓ 為替× 労働者↑ 商品↑ 不均衡 解消 超過供給 (好景気) ↓ 為替× 労働者↑ 商品↑ 不均衡 解消 D国 超過供給 (不景気) ↓ 為替× 失業者↓ 在庫↓ 不均衡 解消 為替レート 以外で調整 人・物・カネの移動
①不均衡の調整手段のまとめ 変動相場制:為替レートで調整が可能 不景気⇒通貨切り下げ⇒輸出↑⇒生産↑ 好景気⇒通貨切り上げ⇒輸出↓⇒生産↓ 固定相場・通貨同盟:為替レート以外で調整 不景気から好景気の国へ人・物・金(生産要素)の移動 貿易障壁・関税や規制の撤廃、経済統合の促進 経済統合と通貨統合は一心同体 財政移転⇒財政統合
域内での景気循環の同調性が必要⇒経済統合の必要性 ②共通の金融政策:景気がバラバラ EU ドイツ 好景気 インフレ オランダ 好景気 インフレ 金利を上げるべきか、下げるべきか?? ECB フランス 不景気 デフレ イタリア 不景気 デフレ 金利引上げはドイツは喜ぶが、フランスは困るし・・・ 域内での景気循環の同調性が必要⇒経済統合の必要性
域内での景気循環の同調性が必要⇒経済統合の必要性 ②共通の金融政策:景気が一致 EU ドイツ 不景気 デフレ オランダ 不景気 デフレ 金利の低下で満場一致 ECB フランス 不景気 デフレ イタリア 不景気 デフレ 域内での景気循環の同調性が必要⇒経済統合の必要性
③域内の通貨価値を等しくする 固定相場の維持には労力が必要 為替レートは購買力平価と金利平価に依存 外国為替市場では通貨の需要・供給が激しく変動しており、通貨当局はこれを吸収しないといけない⇒介入 為替レートは購買力平価と金利平価に依存 インフレ率がバラバラだと購買力平価より、調整圧力発生 域内のインフレ率を等しくせよ 金利がバラバラだと金利平価より、調整圧力発生 域内の金利を等しくせよ
復習:購買力・金利平価と固定相場制 et+1=etで1に 購買力平価 金利平価 固定相場では 例えば… 例えば… 一定 米国の物価が低下すれば、日本の物価も引き下げないといけない 米国の金利が上昇すれば、日本の金利は引き上げないといけない
為替相場制のまとめ 大 小 歴史 制度 通貨統合、ドル化 固定相場制度 中間的な制度 変動相場制度 金本位制 ブレトンウッズ体制 変動相場制 金為替本位制 米国に特権的な地位 変動相場制 ドルがますます国際通貨 金との連動制はない 通貨統合?? アジア通貨統合?? 時代が遡るにつれて、金と貨幣の結びつきが弱くなる 通貨統合、ドル化 固定相場制度 中間的な制度 変動相場制度 通貨当局の管理の度合い 小