通貨統合 第5回 国際金融論.

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マクロ金融論 ポートフォリオ・アプローチ. マクロ金融論 ポートフォリオ・アプローチの 特徴 内外資産が不完全代替( ← 為替リス ク) 分散投資(ポートフォリオ)によって リスクを軽減可能。 経常収支黒字累積 → 外国資産流入 → 国 際ポートフォリオ → 為替相場.
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国民所得 エンゲル係数:生活費に占める食事の割 合 所得の増加と逆に動く指数 食費:所得が増加してもそれほど増えな い なぜなら 娯楽費:所得が増加すると増加する このエンゲル係数を国際比較すれば、各国の生活水準を比べることができ る しかし ある国の衣服費だけ上昇したとする 生活費は上昇する、が、食費は上昇しないエンゲル係数は低下する.
経常収支とは?  一国の国際収支を評価する基準の一つ。  この 4 つのうち、 1 つが赤字であっても他で賄え ていれば経常収支は黒字となる。 貿易収支 モノの輸出入の 差 所得収支 海外投資の収益 サービス収支 サービス取引額 経常移転収支 対価を伴わない 他国への援助額 これらを合わせたものが経常収支.
『マクロ金融特論』 ( 2 ) 一橋大学大学院商学研究科 小川英治 マクロ金融特論
1 IV 長期における貨幣と価格. 第11章 貨幣システム 物々交換 欲望の二重の一致 1.貨幣の意味 貨幣の機能 – 交換手段 – 計算単位 – 価値貯蔵手段 富 流動性 貨幣の種類 – 商品貨幣 金本位制 – 不換紙幣.
貨幣の役割と貨幣市場 経済学B 第 9 回 畑農鋭矢 1. 貨幣の役割 価値尺度 財の価値を表す共通の尺度 交換手段 物々交換⇒欲望の二重の一致 貨幣によって交換が容易に 価値の保蔵手段 安全資産としての保蔵手段.
短期均衡 (2) IS-LM モデル 財市場 IS 曲線 – 財市場の均衡 – 政府支出の増加,減税 貨幣市場 LM 曲線 – 貨幣需要,貨幣市場の均衡 – マネーサプライの増加 IS-LM モデル – 財政政策の効果,金融政策の効果 – 流動性の罠 – 実質利子率と名目利子率の区別 貨幣供給.
QE 出口戦略 利上げ先行型. 前提 主張 1 超過準備対策として利上げは有効である 主張 主張 1 超過準備対策として利上げは有効である 主張 2 保有資産の売却は経済に悪影響を与える 主張 3 利上げは経済の安定に寄与する 以上三点により、 QE 出口戦略利上げ先行 型を主張します.
第10章 国際通貨体制 社会・政治制度をつなぐ歴史的秩序.
世界ソブリンバブル衝撃のシナリオ 第8章国債バブル崩壊のシナリオ
Ooshiro・Sanada・Nishimura・ Miyamoto・Wakabayashi
アジア共通通貨導入の是非 否定派 蔵内 小柴 鶴間.
15 パクス・アメリカーナの時代 1 アメリカの戦後構想とIMF体制 2 IMF体制の成立と発展,ドル危機 3 固定相場制の崩壊と変動相場制
貨幣の役割と貨幣市場 経済学B 第11回 畑農鋭矢.
第16章 総需要に対する 金融・財政政策の影響 1.総需要曲線は三つの理由によって右下がりである 資産効果 利子率効果 為替相場効果
購買力平価 MBA国際金融2015.
為替相場制度の理論と実証 MBA国際金融2015.
マネーサプライを増やせ! 岩田・伊藤・浜田・若田部・勝間
第3章 実態経済に大きな影響を及ぼす金融面の動向
グローバル・インバランスと世界金融危機の中の国際通貨問題
購買力平価 一橋大学商学部 小川英治 マクロ金融論2016.
3 外国為替市場と  外国為替相場 1 外国為替相場 2 為替取引と為替相場 3 為替相場の決定理論.
国際収支と為替相場 一橋大学商学部 小川英治 マクロ金融論2016.
マネーサプライを増やせ! 岩田・伊藤・浜田・若田部・勝間
~変貌する国際通貨体制の中のルピーとアジア通貨~
ECの成立へ マーストリヒト条約の成立 通貨統合
第2章 バブル崩壊後における経済の長期停滞の原因をどうみるか
2章 外国為替市場と 外国為替相場 1 外国為替市場 2 為替取引と為替相場 3 為替相場の決定理論
(出所)小峰隆夫(2003)『最新日本経済入門[第2版]』、日本評論社、p.186。
国際収支と為替相場の基礎的概念 MBA国際金融2015.
『手に取るように金融がわかる本』 p.202~p.223 part1~5
EUにおける通貨同盟(ユーロ) 一橋大学大学院商学研究科 小川英治 2016/5/13 EU入門.
14 パクス・ブリタニカの盛衰 1 国際金本位制とポンド体制 2 両大戦間期の国際通貨体制と通貨ブ ロック 3 戦後IMF体制とポンドの凋落
世界金融危機と国際通貨体制 一橋大学商学部 小川英治 マクロ金融論2016.
第8章 国際収支と国際投資ポジション 対外経済関係の鳥瞰図.
第8回講義 文、法 経済学 白井義昌.
第7章 どのように為替レートを 安定化させるのか
固定為替相場制度 vs. 変動為替相場制度 マクロ金融論2010.
金 融 統 計 金融市場の基本概念 金融統計の体系 マネーサプライ統計 金利統計 資金循環分析 証券投資分析.
『マクロ金融特論』 (4) 一橋大学大学院商学研究科 小川英治 マクロ金融特論2016.
(景気が良くなり)ハンバーガーの需要が拡大すると
ギリシャはユーロを離脱するべきか ~肯定派~
三、安定成長期(1973年~1986年) 1 高度成長の挫折 2 産業構造の変化 3 円高と貿易摩擦 4 逆輸入と内需拡大.
4 国際通貨 1 国際通貨の基礎理論 2 国際通貨の機能と選択 3 管理通貨制度下の国際通貨 国際金融2002(毛利良一)
国際経済学入門 11 丹野忠晋 跡見学園女子大学マネジメント学部 2014年1月23日
手に取るように金融がわかる本 PART6 6-11 09bd139N 小川雄大.
国際経済学入門 10 丹野忠晋 跡見学園女子大学マネジメント学部 2013年12月23日
第8章 開放マクロ経済学.
マクロ経済学 II 第5章 久松佳彰.
『マクロ金融特論』 (3) 一橋大学大学院商学研究科 小川英治 マクロ金融特論2016.
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為替介入 MBA国際金融2016.
通貨統合と最適通貨圏 一橋大学商学部 小川英治 マクロ金融論2016.
マクロ経済学初級I 第4回.
中国の資金循環モデルによる 財政・金融政策の考察
最近の中国と通貨に関する動向 08ba231c 松江沙織.
世界金融危機とアジアの通貨・金融協力 日本国際経済学会関東支部研究会2010年1月9日.
前期ゼミまとめ スラックス経済.
2008年までの好景気がつづいた 世界経済が現在同時不況 日本経済?
V. 開放経済のマクロ経済学.
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V. 開放経済のマクロ経済学.
固定相場制のもとでの財政・金融政策の効果
GDPで読み解く世界経済 跡見学園女子大学 山澤成康.
元高の原因を追求    九州産業大学 金崎ゼミ 張 雷 徐 雲飛 .
第7章 どのように為替レートを安定化させるのか
岩本 康志 2013年5月25日 日本金融学会 中央銀行パネル
2009年7月 為替相場講演会資料 株式会社三菱東京UFJ銀行/東アジア金融市場部
IV 長期における貨幣と価格.
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通貨統合 第5回 国際金融論

今日の講義 なぜ通貨統合を推進するのか? 通貨危機はもう嫌だ 通貨統合+経済統合=巨大な市場の出現 通貨の利用者↑・・・通貨の機能↑ 南米通貨危機、アジア通貨危機 通貨統合すれば通貨危機は消滅 通貨統合+経済統合=巨大な市場の出現 競争↑・・・質の高い商品↑・生産コスト↓ 通貨統合には経済統合が不可欠 通貨の利用者↑・・・通貨の機能↑ 一般受容性、ネットワーク効果

固定相場制の欠点:通貨危機のリスク アジア通貨危機

ラテンアメリカ諸国の通貨危機 対ドルレート(指数) 通貨安 出所:IMF

アジア通貨危機 「アジア通貨危機」 前回の復習 今日は「通貨と時間のミスマッチ」に注目 外貨準備は固定相場維持の燃料 復習:通貨危機 投資家の  不安心理 資本流出 アジア  通貨売り・ドル買い アジア  通貨下落 圧力 ドル売り 介入 外貨準備↓ 「アジア通貨危機」 前回の復習 外貨準備は固定相場維持の燃料 外貨準備の枯渇は固定相場の崩壊 今日は「通貨と時間のミスマッチ」に注目 燃料枯渇・・・ 固定相場制崩壊 投資家 通貨当局 ⇒固定相場防衛

アジア諸国の対ドル・レート(指数1980年=100) 通貨安 出所:IMF

通貨のミスマッチ① 資産 100won 負債 1$ 通貨危機 200won 負担増 Won建て ドル建て won 換算分 +100won 銀行・企業のバランスシート 通貨危機 100won 200won 例:1$=100won          例:1$=200won won安より、ドル負債をwon換算すると負担増

通貨のミスマッチ②:まとめ アジア諸国の資産は自国通貨、負債はドル 通貨安は、負債の実質的な負担額を増大 国内金融市場が未発達⇒国際金融市場で調達 国際金融市場はドルが取引 固定相場制で為替リスク↓⇒外国から借金が容易 ただし、リスクは消滅したわけではない 通貨安は、負債の実質的な負担額を増大 負債はドル建て 債務超過で銀行・企業が倒産⇒金融危機

⇒投資家が一斉に資本を引出すと、銀行は対処できない 時間のミスマッチ①:アジアの銀行 資本流出入が激しい  貸出 長期の運用 即、現金化が不可能 短期の借金 短期の海外の資本 すぐに現金 に戻せない 資産 (長期の満期) 負債 (短期の満期) 銀行の金庫に現金はなく、ほとんど貸出し ⇒投資家が一斉に資本を引出すと、銀行は対処できない

韓国の資金調達:長期・短期の資本流入 危機 流入 不安定 流出 出所:IMF, IFS

時間のミスマッチ②:まとめ アジア諸国は国内金融市場が未発達のため、国際金融市場から調達 投資家の不安⇒一斉に資本流出のリスク 資金の大半は欧米銀行の不安定な短期資金 ヘッジファンド等 少数部分は、日本の安定的な長期資金 直接投資:工場・インフラの建設費等 投資家の不安⇒一斉に資本流出のリスク 長期投資を短期資金でファイナンスするので、資本流出⇒破産⇒金融危機

通貨危機と金融危機の相乗効果 相乗効果 ⇒破滅 通貨価値 の下落 負債(ドル)の負担↑ 投資家の 不安↑ 短期の 資本流出 通貨危機 通貨当局の 固定相場防衛 ⇒外貨準備↓ 通貨価値  の下落 負債(ドル)の負担↑ 投資家の  不安↑ 短期の   資本流出 投資家の  アジア通貨 売り・ドル買い 通貨のミスマッチ 相乗効果 ⇒破滅 金融危機 金融危機 期間のミスマッチ

まとめ:通貨と時間のミスマッチ アジアの金融市場は未発達 金融システムが脆い 通貨危機と金融危機の負の相乗効果 負債⇒ドル建て・短期 通貨・時間のミスマッチ(不利な条件で資金調達) 金融システムが脆い 通貨安⇒ドル建て負債の実質負担額が増大 投資家の不安心理⇒短期資本の流出 通貨危機と金融危機の負の相乗効果

敷居が高い通貨制度 通貨統合とは

通貨統合 ECB ⇒域内で、単一通貨が流通し、単一の中央銀行が金融政策を行う ⇒域内は共通通貨⇒為替レートは存在しない!! EU域内 € \ ドイツ € ECB フランス アメリカ $ FRB 交換 \ 日本 日銀 EU域内

通貨統合のポイント 為替レートを不均衡の調整手段として使えない 域内で共通の金融政策 域内の通貨価値を等しくする 不景気の場合、通貨を安くして輸出を促進できない 人・物・金の移動で調整⇒経済統合の必要性 域内で共通の金融政策 不景気と好景気の国が同居すると難しい 域内の景気循環の同調性⇒経済統合の必要性 域内の通貨価値を等しくする 購買力平価、金利平価で為替レートが動く 域内のインフレ率と金利を等しくする

①不均衡の調整:為替レートの役割 為替が調整可能(変動相場) 通貨同盟 (固定相場) A国 B国 C国 D国 超過需要 超過供給 (不景気) (好景気) ↓ 通貨高 輸出↓ 生産↓ 均衡へ B国 超過供給 (不景気)  通貨安 輸出↑ 生産↑ 輸出 為替 調整 C国 不均衡 インフレ バブル 累積 D国 デフレ 失業 調整手段なし

①通貨統合の理想の調整方法 通貨統合内 C国 D国 人・物・カネの移動 超過需要 ↓ 為替× 労働者↑ 商品↑ 不均衡 解消 超過供給 (好景気) ↓ 為替× 労働者↑ 商品↑ 不均衡 解消 D国 超過供給 (不景気)  ↓ 為替× 失業者↓ 在庫↓ 不均衡 解消 為替レート 以外で調整 人・物・カネの移動

①不均衡の調整手段のまとめ 変動相場制:為替レートで調整が可能 不景気⇒通貨切り下げ⇒輸出↑⇒生産↑ 好景気⇒通貨切り上げ⇒輸出↓⇒生産↓ 固定相場・通貨同盟:為替レート以外で調整 不景気から好景気の国へ人・物・金(生産要素)の移動 貿易障壁・関税や規制の撤廃、経済統合の促進 経済統合と通貨統合は一心同体 財政移転⇒財政統合

域内での景気循環の同調性が必要⇒経済統合の必要性 ②共通の金融政策:景気がバラバラ EU ドイツ 好景気 インフレ オランダ 好景気 インフレ 金利を上げるべきか、下げるべきか?? ECB フランス 不景気 デフレ イタリア 不景気 デフレ 金利引上げはドイツは喜ぶが、フランスは困るし・・・ 域内での景気循環の同調性が必要⇒経済統合の必要性

域内での景気循環の同調性が必要⇒経済統合の必要性 ②共通の金融政策:景気が一致 EU ドイツ 不景気 デフレ オランダ 不景気 デフレ 金利の低下で満場一致 ECB フランス 不景気 デフレ イタリア 不景気 デフレ 域内での景気循環の同調性が必要⇒経済統合の必要性

③域内の通貨価値を等しくする 固定相場の維持には労力が必要 為替レートは購買力平価と金利平価に依存 外国為替市場では通貨の需要・供給が激しく変動しており、通貨当局はこれを吸収しないといけない⇒介入 為替レートは購買力平価と金利平価に依存 インフレ率がバラバラだと購買力平価より、調整圧力発生 域内のインフレ率を等しくせよ 金利がバラバラだと金利平価より、調整圧力発生 域内の金利を等しくせよ

復習:購買力・金利平価と固定相場制 et+1=etで1に 購買力平価 金利平価 固定相場では 例えば… 例えば… 一定 米国の物価が低下すれば、日本の物価も引き下げないといけない 米国の金利が上昇すれば、日本の金利は引き上げないといけない

為替相場制のまとめ 大 小 歴史 制度 通貨統合、ドル化 固定相場制度 中間的な制度 変動相場制度 金本位制 ブレトンウッズ体制 変動相場制 金為替本位制 米国に特権的な地位 変動相場制 ドルがますます国際通貨 金との連動制はない 通貨統合?? アジア通貨統合?? 時代が遡るにつれて、金と貨幣の結びつきが弱くなる 通貨統合、ドル化 固定相場制度 中間的な制度 変動相場制度 通貨当局の管理の度合い 小