立石雅昭 (新潟大学名誉教授) (新潟県原発の安全管理に関する技術委員会委員)

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立石雅昭 (新潟大学名誉教授) (新潟県原発の安全管理に関する技術委員会委員) 新潟県政を検証する講演会 2016年2月6日 “豆腐の上の原発”を 動かしてはならない 立石雅昭    (新潟大学名誉教授)    (新潟県原発の安全管理に関する技術委員会委員) 1.再稼働をめぐる動き 2.“豆腐の上の原発” 3.命を守れない防災・避難計画 4.再稼働を止める闘いの展望 東電試算   8時間後格納容器  過温破損 FVなし  南西強風   72時間後積算

2030年でもベースロード電源と位置づけ,なお,20~22%を原発で 1.柏崎刈羽原発再稼働を巡る動き   原子力ムラにとって柏崎刈羽原発再稼働は本命.   規制委適合判断を機に,電力事業者,政府,経済界によって,学者やメディアをも動員した再稼働への動きが一層強まる.再稼働を求める強大な権力機構に対峙しうる県民・住民の運動の大きな運動が求められている.   1) 政府のエネルギー需給計画    2030年でもベースロード電源と位置づけ,なお,20~22%を原発で    まかなう計画,既存の原発全てを動かし,さらに約半分は60年に延長.   それでも足りない,新増設をも組み込んだ計画. 2) 規制委員会の柏崎刈羽原発規制基準適合判断間近   「地盤・地震動」が最大の課題とされていたが,基準地震動に関わる審査がおおむね了承され,審査の山場を越えたとされる.現在,主に敷地内断層(特にF-5断層)の活動時期に関わる審査が継続し,ぎりぎりの攻防が続いている.

柏崎刈羽原発全号機再稼働するだけでなく,60年に延長.さらに,新増設が必要 稼働率70%とし,炉規法の原則40年を適用すると,2030年には18基,1918万Kw.電力の20%をまかなうのに必要なのは3500万kw. 柏崎刈羽原発全号機再稼働するだけでなく,60年に延長.さらに,新増設が必要

3) 知事・県技術委員会の動き 知事の姿勢と県技術委員会の役割 規制委の適合判断が出ても,簡単には県が同意することはできない. 3) 知事・県技術委員会の動き  ・再稼働を止める上で,他県にない新潟の有利な状況    知事の姿勢と県技術委員会の役割    規制委の適合判断が出ても,簡単には県が同意することはできない.      この有利な条件を生かし切れているか,逆にこうした有利な状況に   頼って再稼働阻止の運動が低迷!?  ・「福島原発事故の検証」(知事の主張のベース)     (進行中)課題別ディスカッション (重要な特徴:2~4はソフト面)      1) 地震動による重要機器の影響        2) 海水注入等の重大事項の意思決定        3) 東京電力の事故対応マネジメント        4)メルトダウン等の情報発信の在り方     ・フィルターベントの機能と役割      事故による拡散シミュレーション  2015年度第3回県技術委員会(12月16日)      防災/避難計画策定する上で,どう生かすか.

2. ”豆腐の上”の原発ー柏崎刈羽原発 福島原発の数倍の地下水.事故で汚染されれば,海への汚染水流出を止め 2. ”豆腐の上”の原発ー柏崎刈羽原発    柏崎刈羽原発は設置計画当初から「豆腐の上の原発」と呼ばれ,県民は地震への脆弱性を抱えた原発として大きな不安を抱いてきた.    豆腐の上の原発と呼ばれる地質科学的根拠を県民と共有したい.   1) 異常に厚い新生代の地層の上に立っている.      新しい時代の軟弱な地層が厚く分布し,しかも,その地層が現在も続く断層     に関連した褶曲運動で変形している.重要構造物直下には多くの活断層が走    る.   2) 大きな地震動が襲来.中越沖地震で立証      構造物の設計の基礎となる,基準地震動Ssは2300ガル.東海・東南海地震     の震源の真上に立つ浜岡原発よりも大きい.さらに,この値さえ,震源断層を     過小に評価している可能性がある.   3) 敷地内には膨大な地下水が流入    福島原発の数倍の地下水.事故で汚染されれば,海への汚染水流出を止め    ることはきわめて困難.審査の対象から全く外されている!

原子力発電所の解放基盤面の深さ. 原発プラントの*印は,旧耐震設計審査指針策定(1978)以前に審査された原発:旧審査指針では活断層の年代基準を5万年前としていた.

図1:新潟県中越地域(長岡東方から柏崎市宮川にかけて) の東西方向の地質断面   の東西方向の地質断面 新潟県,2000  新潟県の地質図 およそ,1700万年前から現在までの地層の分布とその構造が描かれている.青が西山層と呼ばれる地層で,原発の立地地盤となっている.原発が立地する中越西山丘陵地域は新潟の中でも,もっとも褶曲や断層が発達している.

東電の報告でも30~20万年前の活動を認めている. 第13回 新潟の自然環境 2015/7/15 重要構造物直下の活断層 23本,いずれも活断層  東電の報告でも30~20万年前の活動を認めている. 5~7号機 1~4号機 立石雅昭

柏崎刈羽原発活断層研究グループ 断層の活動年代は,上を覆う地層の年代で推定.東電の非科学性 2月初旬に規制委へ申し入れ 柏崎刈羽原発活断層研究グループ                 2月初旬に規制委へ申し入れ     1)安田層の層序と年代について     2)敷地周辺の地殻変動について        原発立地する西山丘陵におけるここ100年の活動   3)敷地内の断層について   4)敷地に流れ込む膨大な地下水について 断層の活動年代は,上を覆う地層の年代で推定.東電の非科学性

敷地の地質層序:敷地内活動層の活動時期 東電は30万~20万年としているが,その上限は科学的に問題     東電は30万~20万年としているが,その上限は科学的に問題     敷地内の地層は温暖な海面上昇期(現海面とほぼ同じ)に堆積した地層の累重:        沈降の場→その後現在の高度まで隆起に

日本の原発の基準地震動(単位ガル) 東海地震の真上に立つ浜岡原発よりも大きな地震動が襲いうる柏崎刈羽原発 原発名 活断層・地震名 新基準地震動Ss S2 泊 特定せず 550 370 東通 600(450) 375 女川 宮城沖地震(M8.2) 1000(580) 福島1 敷地下方の断層(M7.1) 600 福島2   同 上 柏崎刈羽 F-B断層 2300(1~4号機) 1209(5~7号機) 450 浜岡 東海・東南海地震 (M8.7) 2000(5号機) 1200(3.4号機)(800) 志賀 笹波沖断層 (M7.6) 490 美浜 C断層  (M6.9) 405 高浜 F0-A断層・FO-B断層・熊川断層連動 (M7.8) 700(550) 大飯 856(759)(600) 島根 宍道断層 (M7.1) 456 伊方 620(570) 473 玄海 500 川内 620(540) 372 敦賀 浦底ー内池見断層(M6.9)など 650 532 東海2 380 もんじゅ C断層 (M6.9) 466 六ヶ所再処理 出戸西方断層 (M6.5)

各原発の   地下水流入量  地下水は建屋地下に流入すると,建屋を浮かせる可能性があるので,建屋周辺に多くの井戸(サブドレン)を掘り,くみ上げている.また,地震によって地盤が液状化する可能性がある.  柏崎刈羽原発に流入する地下水はほかの原発に比して,桁違いに多い.これが事故で汚染されると,日本海は壊滅的な打撃を受ける. 

3.命を守れない防災・避難計画 規制委は防災・避難計画を審議しない! 県・各市町村の防災・避難計画は不備だらけ,実効性は多いに疑問!?  規制委は防災・避難計画を審議しない! 県・各市町村の防災・避難計画は不備だらけ,実効性は多いに疑問!?  1)世界最大の総出力821万Kwを誇る柏崎刈羽原発もほかの原発と同じ30km圏内の   計画でよいのか.複数基の同時事故は想定されているのか?  2)最悪の事故を想定した計画になっているのか.    気象条件(降雪・大雨など)・複合災害(地震・津波など)・格納容器破損に至る事故   想定が必要    福島の場合は現場での奮闘とともに,幸運に恵まれて,あのレベルの事故でとど   まったことを十分認識する必要がある.  3)要支援者の避難は想定通りに行くだろうか.しばらく屋内待避する方法も選択肢  4)5km圏内の避難の後,30km圏内という想定は現実的か?  現場を知る住民自身が自らの命を守る課題として,計画を点検することが必要.    住民自治に支えられた自治体の役割がきわめて重要.

シミュレーションは1基の事故を想定.複数基が同時に事故に至るケースは? 東京電力による拡散シミュレーション                                         (DIANA)    2015年度第三回県技術委員会で公表   同時にSPEEDiを用いた原子力安全技術センターによるシミュレーション結果も公表され,比較されている シミュレーションは1基の事故を想定.複数基が同時に事故に至るケースは? 

4.再稼働を止める闘いの展望 しかし,地元住民は揺れている. 原発による“地域活性化”の幻想を打ち砕くこと.   福島原発事故を契機に県民の意識は大きく変わっている.    しかし,地元住民は揺れている. 原発による“地域活性化”の幻想を打ち砕くこと. 原発による地域活性化は原子力ムラが撒き散らかす幻想  ムラは,再稼働すれば,あたかもバブル期が再来するかのような夢をまき散らかしている.   柏崎刈羽原発による地域経済への影響は大きくない.← 自治研・日報調査   就労する労働者数も,事故が起これば増大するが,定常運転時には減少(東電資料) 武本和幸作成

正確な情報を正しく伝えれば,住民は変わる 住民を信頼する 意見の違いを乗り越えて,一致する点での共同を図ることが重要   住民投票で巻原発建設を阻止し,柏崎刈羽原発プルサーマル導入を阻止してきた新潟の運動の教訓を深め,学ぶことが必要.     正確な情報を正しく伝えれば,住民は変わる     住民を信頼する      意見の違いを乗り越えて,一致する点での共同を図ることが重要  夏の参院選・秋の知事選が決定的に重要   自公による中央集権型政治は,柏崎刈羽原発を動かすことを自己目的化し,安全・安心を2の次にして再稼働を押しつけている.その構図は『辺野古』と同じであり,国民の、住民の生存権・人格権を踏みにじる.交付金削減もそうした攻撃の一つ.  命と暮らしを守り,この故郷新潟を守るためには,泉田現知事の姿勢を堅持するだけでなく,さらに再稼働に反対し,住民の命を守れない原発は廃炉にさせる立場にたつ知事を実現する.  この課題は住民が主体的に,多くの県民各層との共同の闘いを大きく発展させることによってはじめて可能となる.