横隔膜浸潤と胸水貯留から呼吸苦を訴えた9500gの 超巨大GISTの1例

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横隔膜浸潤と胸水貯留から呼吸苦を訴えた9500gの 超巨大GISTの1例 医療法人社団松弘会   三愛病院 外科 佐藤政弥 南多摩病院 外科  次田 正

症 例 患 者:53歳男性 主 訴:腹部膨満,呼吸苦 既往歴:1歳~4歳 喘息,小学3年生 頭蓋骨骨折 家族歴:父親;咽頭癌 現病歴:1年前から食事後にお腹の中で水が移動する 感じがした. 3か月前からお腹が張り,苦しかった. 平成24年10月5日夜から腹部膨満および 呼吸苦が増強したため,近医受診後, 精査加療目的に当院紹介受診.

初診時 現症 身長:168㎝,体重:65㎏ 血圧:136/82mmHg, 脈拍:86/min SpO2:92% (Room air) 腹部膨満著明, 頬はコケるい痩あり, 瞼結膜は貧血様

初診時血液検査 TP 7.3g/dl, Alb 3.4g/dl, T-Bil 0.71mg/dl, ALP 693IU/l, AST 24IU/l, ALT 16IU/l, LDH 765IU/l, γGTP 56IU/l, CHE 195IU/l, LDL-Cho 40mg/dl, TG 59mg/dl, BUN 14mg/dl, Cr. 0.61mg/dl, Na 136mEq/l, K 4.4mEq/l, Cl 103.1mEq/l, BS 93mg/dl, WBC 13380/μl, Hb 5.9g/dl, CRP 14.91, CEA 2.2ng/ml, AFP 21.ng/ml, CA19-9 4.5U/ml

初診時Xp 左胸水貯留 消化管の圧排像 2012.10.6

初診時 胸腹部CT 左胸腔内に大量の胸水 胸水ドレナージにて 1900ml排液

初診時 胸腹部CT 巨大嚢胞 右腎 左腎偏位 腫瘍は 横隔膜直下から 巨大嚢胞を伴い 後腹膜面に進展 左腎の右方偏位 も著明で 骨盤内に達する 巨大嚢胞 右腎 左腎偏位

初診時 胸腹部CT

上部消化管内視鏡 噴門部にdelleを有する不整腫瘤

血管造影 上腸間膜動脈 腹腔動脈 左横隔膜下動脈 門脈 下腸間膜動脈 栄養動脈の主体は 短胃動脈と左横隔膜下動脈で, 動脈側のencasementは伴わない 辺縁部を中心とする多血性腫瘍

手 術 食道 胃 横行結腸を 約10cm間置 手術時間;5時間 輸血;MAP4単位,FFP5単位

腫瘍・病理 腫瘍size;43x30x17cm 重量;9500g(脾臓を含むが,巨大嚢胞の内容は術中吸引除去) 病理;胃の筋層を中心に増殖した巨大腫瘍,胃粘膜浸潤(+),    組織像:分裂像が散在,        hyperchromaticな核を有する細長い細胞の密な増殖        腫瘍内に壊死,嚢胞変性,出血を認めた.        C-kit陽性

術後1か月目CT 肝転移の所見なし 左腎や消化管の偏位改善

術後6か月目CT 多発する肝転移を認めた イマチニブ400mg/day 投与開始

イマチニブ投与後CT 全て嚢胞化

考 察 9500gの超巨大GIST 2008年の報告(民上ら)で最大径30cmを超える巨大GISTの日本での報 告は6例,その後の文献で30cmを超えるGISTの報告は1例のみであり, 本症例の43x30x17cmは7例目であり最大といえる. 2011年の大網原発GISTの報告(徳永ら)で,8325gの腫瘍の報告が あったが,充実性部分は2685gであり,5640mlの内容液を含むもの でした. 本症例の腫瘍の重量は,巨大嚢胞の内容を吸引後で9500gと最大と思 われた.

まとめ 左大量胸水貯留を伴い,呼吸苦が著明な 超巨大なGISTを,術前イマチニブの投与 により縮小させることなく摘出した. 術後6か月後に多発性肝転移を認めたが,   イマチニブ投与にて,均一なLDAとなり    完全な嚢胞化を維持している.