日本教育工学会 第22回大会報告 大学院での遠隔教育と 障害学生支援 日本教育工学会 第22回大会報告 大学院での遠隔教育と 障害学生支援 2006/11/05 青木 慎太朗 立命館大学 大学院 先端総合学術研究科 http://www.ritsumei.ac.jp/acd/gr/gsce/g/as01.htm
本報告の背景 立命館大学大学院先端総合学術研究科 在籍者数・・・約120人 →そのうち、遠隔地居住・有職者等で 何らかの配慮を要する院生・・・39人 視覚障害をもつ大学院生が2人在籍 →研究する上で支援の必要 上記2つのニーズにIT技術を活用して対応
先端総合学術研究科の特徴 2003年4月開設の人文社会系大学院 学部がなく学際領域である 5年間の一貫性博士課程 社会人・有職者が多い 遠隔地居住の院生がいる
遠隔地・社会人院生の抱える問題 授業に出ることができない 大学が発信する情報が受け取れない 大学の研究設備が利用できない 論文指導が困難
先端研で工夫してきたこと 掲示板情報のメールマガジンにる配信 メーリングリスト(ML)の活用 週末に研究会等を開催
従来型の支援体制の問題点 MLを活用しているのは一部の教員のみ 議論に参加している院生も少数 ゼミ報告のレジュメ等の共有が添付ファイルでは難しい
検討された支援策 e-learning等の遠隔教育システム 将来的にはありえるかもしれないが、技術や予算の面からも、そして何より、現に今在籍している院生としては、とにかくできるところから早急に取り組んでほしいという要求が出された。 Yahoo!ブリーフケースの利用(2005年) ゼミ報告のレジュメ等を共有 院内限定ホームページ開設(2006年)
院内限定ホームページ .htaccessと.htpasswdによるアクセス制限 ゼミのレジュメなどはウエブ上から提供 スレッド型掲示板(WwwLounge)とリンク 院生専用の情報掲示板も設置
視覚障害院生の支援との連携 視覚障害院生が2名在籍 ゼミのレジュメや掲示板情報へのアクセスが困難だった 院内限定ページからレジュメ等の電子ファイルを入手 → 音声で内容を聴くor点訳 報告者は前日までにデータをTAに提出することが求められる 他の参加者も予習できる
視覚障害学生支援から見た問題 ――大学HP全体に対して言えること―― ホームページのアクセシビリティへの配慮が従来は不十分だった 画像やグラフィックを多用した大学HP 代替テキスト、テキストページの不在
院内限定ホームページの課題 一部の授業・ゼミでしか使われていない 利用が一部の人に偏っている 掲示板の書き込みも偏っている その結果、現時点ではファイル置き場になっている
さらなる課題 画像・数式・グラフ・PDFファイルなど 教員からの論文指導(個別指導) 聴覚障害をもつ院生が入学したら? そもそも、遠隔地院生支援と連動しないと、障害学生支援が発展しないという現実をどう考えるか?
結語 遠隔地院生+視覚障害院生の共通のニーズに応えるための取り組みとその背景 これらは、たいそうな技術を必要とせず、ちょっとした工夫と予算で実現することができる しかし、障害者支援という枠組みでは動かず、遠隔地院生(しかも全院生の約3分の1)の要求と合致して、ようやくその共通部分に対して実現されてきた 障害学生支援固有の問題は、残されたままである
参考URL 立命館大学大学院先端総合学術研究科 http://www.ritsumei.ac.jp/acd/gr/gsce/ 先端総合学術研究科院内限定ホームページ http://coreethics.kir.jp/ ←リンク先には入れません 立岩教授発MLバックナンバー(一例) http://www.arsvi.com/0r/2006p6.htm 大学の障害者支援データベース(NIME内) http://ship.nime.ac.jp/~disable/database-university1.htm 障害学会第3回大会 http://www2.ipcku.kansai-u.ac.jp/~suginoa/jsds/2006/20060603.htm