第10章 青年期の問題と心理学
道案内 1 準備 (1) 授業を始める前に * 2 知覚の発達 (4) 子供に世界はどう見えるか? 1 準備 (1) 授業を始める前に * (2) 発達心理学とはどんな学問か? (3) なぜ発達心理学を学ぶのか? 2 知覚の発達 (4) 子供に世界はどう見えるか? 3 認知の発達 (5) 子供はものごとをどう理解するか? (6) 子供は心をどう理解するか? 4 感情の発達 (7) 子供に愛情を注ぐこと 5 性格の発達 (8) 性格とは何か? (9) 性格は測定できるか? 6 青年期の問題 (10) 心の病気と青年期 7 まとめ (12) 試験問題発表 * (11) 青年期の問題と心理学
メインメッセージ10 現実から目をそらしては いけない
1 スクールカウンセリング カウンセリング(来談者中心療法) クライエントの悩みや訴えに、 共感的な態度で耳を傾ける。 クライエントの悩みや訴えに、 共感的な態度で耳を傾ける。 「〜しなさい」という指示は行わない。
(1) 相談内容 行動・性格上の問題 非社会的問題行動:不登校、場面喊黙、 対人関係が持てない 反社会的問題行動:非行、家庭内暴力、いじめ 対人関係が持てない 反社会的問題行動:非行、家庭内暴力、いじめ その他:無気力 感情のコントロールできない
(1) 相談内容 能力上の問題 知的発達の遅れ 身辺自立の遅れ 学習障害(LD) 注意欠陥多動性障害(ADHD)
(1) 相談内容 身体上の問題 摂食障害 心身症 (円形脱毛症、抜毛症、過換気症候群など)
(2) 生徒指導と教育相談の違い 生徒指導 教育相談 生徒の約束違反や逸脱行為、不適切な言葉遣いなどを指導する 生徒指導 教育相談 生徒の約束違反や逸脱行為、不適切な言葉遣いなどを指導する 生徒集団を対象とした指導も行う 速効性が求められる チームワークが必要 表面的行動にとらわれず、生育暦や家庭間強などを把握し、生徒を理解する 個別の働きかけが主 時間かかる事が多い 二者関係が中心
サブメッセージ10.1 教師の役割とカウンセラーの 役割は違う
2 不登校 30日以上の欠席(文部省, 1998) 「身体的な病気や経済的理由など特別な原因が見当たらないのにもかかわらず、何らかの心理的要因によって登校しない、あるいは登校したくてもできない状態」 (法務省人権擁護局, 1989)
(1) 不登校の件数
(2) 不登校の分類
(3) 不登校のきっかけ
(4) カウンセリングマインドと指導援助 ①早期発見・早期対応 ②学校生活上の問題の再点検 ③問題の理解 (性格、家庭環境、生育暦、友人関係、きっかけ)
④症状の理解(孤独感、孤立感、自己否定感、焦燥感、身体的症状など) (4) カウンセリングマインドと指導援助 ④症状の理解(孤独感、孤立感、自己否定感、焦燥感、身体的症状など) ⑤指導目標 再登校のみを目標としない ⑥保護者への援助的姿勢 ⑦再登校に備えての体制づくり
指導援助のポイント 原因追求をし過ぎない プレッシャーを与えない 立場ではなく一人の人間として関わる
発達課題とは? 各年齢で達成または克服 されなければならない 心理的、行動的な課題
Eriksonの心理社会的発達段階 信頼 対 不信 乳児期 (0ー1歳) 養育者からの愛情を受けて、基本的信頼を学ぶ 乳児期 (0ー1歳) 信頼 対 不信 養育者からの愛情を受けて、基本的信頼を学ぶ <失敗した場合>基本的信頼を獲得することができず、情緒不安定になる
Eriksonの心理社会的発達段階 自律性 対 恥・疑惑 早期児童期 (1ー3歳) 身の周りの事を自分ですることができるという自信をつける 早期児童期 (1ー3歳) 自律性 対 恥・疑惑 身の周りの事を自分ですることができるという自信をつける <失敗した場合>過剰な羞恥心、猜疑心を身につけてしまう
Eriksonの心理社会的発達段階 積極性 対 罪悪感 遊戯期 (3ー6歳) 外界への積極的な関わりの結果、様々な知識を身につける 遊戯期 (3ー6歳) 積極性 対 罪悪感 外界への積極的な関わりの結果、様々な知識を身につける <失敗した場合>過剰な罰の結果、罪悪感を過剰にもってしまう
Eriksonの心理社会的発達段階 生産性 対 劣等感 学齢期 (6ー11歳) 地域社会や学校で、様々な生産的な知識を身につける 学齢期 (6ー11歳) 生産性 対 劣等感 地域社会や学校で、様々な生産的な知識を身につける <失敗した場合>不満足や失敗などを経験し、劣等感を生み出す
Eriksonの心理社会的発達段階 同一性 対 同一性拡散 青年期 (11ー 歳) 青年期 (11ー 歳) 同一性 対 同一性拡散 「自分とは何か」と問い、様々な価値観を統合して同一性(アイデンティティ;自分らしさ)を獲得する <失敗した場合>自分とはどのような存在なのかがいつまでも定まらない
Eriksonの心理社会的発達段階 親密・連帯 対 孤立 初期成人期 他人と、互いの人格を傷つけることなく、対等で両方向的な関係を築く 親密・連帯 対 孤立 他人と、互いの人格を傷つけることなく、対等で両方向的な関係を築く <失敗した場合>自分とは異なる存在を拒否し、孤立する
Eriksonの心理社会的発達段階 生殖性 対 自己拡散 成人期 他者(子ども、親など)への援助に興味を向ける 生殖性 対 自己拡散 他者(子ども、親など)への援助に興味を向ける <失敗した場合>自分自身を見失ってしまう
Eriksonの心理社会的発達段階 完全性 対 絶望 成熟期 自分の人生を振り返って評価し、それを受け入れる 完全性 対 絶望 自分の人生を振り返って評価し、それを受け入れる <失敗した場合>自分の人生を肯定することができず、絶望する
サブメッセージ10.2 不登校児の心の問題は 「再登校」だけでは解決しない
3 いじめ 自分より弱い者に対して一方的に、身体的・心理的な攻撃を継続的に加え、相手が深刻な苦痛を感じているもの。なお、起こった場所は学校の内外を問わないこととする。
(1) いじめの件数
(2) いじめの分類
(3) 社会心理学から見たいじめ (1) 同調行動 (2) 責任の分散 (3) 服従行動
同調行動 左の線分と同じ長さなのはどれ? 1 2 3
同調行動 人数 N 平均誤答数 37 0.08 1 10 0.33 2 15 1.53 3 10 4.00 4 4.20 8 50 3.84 10-15 12 3.75
冷淡な傍観者(Latane & Darley, 1970)
責任の分散
アイヒマン実験(Milgram, 1974)
服従行動
(5) いじめ解決へ教師がやるべきこと ①児童の不穏な動きに敏感になる
いじめチェックポイント! 教師が教室に入ると同時に、複数の児童がある児童の周りから散っていく 休み時間など、教師の所在を確かめるように職員室にやってくる児童がいる 「どうしてあの子が」と思うような児童がある仲間に加わって行動を共にしている 授業で指名した時に、特定の児童に対して野次が飛んだり、顔を見合わせたりする 班学習や昼食などでグループを組む時に、ある児童だけ席が離れている
(5) いじめ解決へ教師がやるべきこと ②他の教師と共に情報を収集し、発信する (5) いじめ解決へ教師がやるべきこと ②他の教師と共に情報を収集し、発信する 対象児童の近くで過ごす時間を増やし、注意深く、しかもさりげなく観察する 教室が無人の時に、机、ロッカー、ゴミ箱、掲示物などをチェックする いじめに関するアンケート調査を行なう 被害が予想される子や、信頼のおける子に様子を聞く
(5) いじめ解決へ教師がやるべきこと ③いじめの事実は行動レベルで 確かめる ④いじめの訴えにはまず感情レベルで 寄り添う
(5) いじめ解決へ教師がやるべきこと ⑤いじめられた児童は教師全体で守る ⑥いじめていた児童も救われる指導をする ⑦学級、学年の問題として考えさせる
サブメッセージ10.3 人間の「悪さ」を認め、 その上で対策を考えよう
メインメッセージ10 現実から目をそらしては いけない