どうして苦手? 偉そうな顔する神経内科医 まれな病気 治らない 診察が難しい
神経内科医は偉そう? マッシー池田が教えます でも,偉くない神経内科医が書いているこの本をお読みの皆さんは一切心配ご無用である.
どうして苦手? マッシーが教えます まれな病気?← 治らない 診察が難しい
Absolutely Not ! 稀だったら悩んでいない! 神経疾患は稀な病気ばかり? Absolutely Not ! 稀だったら悩んでいない!
神経内科の病気 頭痛 しびれ めまい,ふらつき 脳卒中
どうして苦手? マッシーが教えます よくある病気 治らない? ← 診察が難しい
神経難病患者を支える パーキンソン病:12万人 脊髄小脳変性症:2万人 筋萎縮性側索硬化症:0.5万人 デュシェンヌ型筋ジス:数千人? 筋強直性ジストロフィー:数千人~1万以上? デュシェンヌ型の発生率は出産男子100万人について140ないし390 埼玉県内神経難病だけで推定8000人 / 教育施設11
神経難病診療 専門医だけでは不十分 適切な支援を早く開始する 在宅での支援の必要性 日常生活動作障害が必発 地域社会での生活 家族との関わり 長い病悩期間と多彩な合併症
どうして苦手? マッシーが教えます よくある病気 病者を支える 診察が難しい←
診察が難しい? 診察やめちゃいましょう
(専門医でも) 病歴8割以上 診察2割未満 専門医でも診断の中で病歴の占める割合は8割以上で,診察は2割以下だと言います.だったら,専門医以外はその8割だけでいいですよね.神経学的診察なんか全然できなくたっていいじゃないですか.だからまずはじめのお話は,神経内科で,病歴の占める位置,意味付けについて,具体例を挙げながらお話していきます.
Farewell to the arms 現場の一瞬が勝負であり,画像診断の様にいつでも所見が再現できるという代物ではないし,書物を読んで補えるものでもない.その上,こんな道具の数々を使いこなさなくちゃならない.これじゃまるで007だ.本当にこんな物々しい道具が必要なのだろうか?今日は,神経疾患の診断には,こんなものは一切要りませんというおいしいお話をします.
診察やめちゃいましょう→ 病歴へのこだわり→ 患者さんの訴えを大切に 感度の良さ:運動・日常生活の自然の負荷 緩徐進行 経過が長いから病歴が豊富:手がかりの宝庫 系統変性や障害筋に対応した症状 問診なくして診察なし
苦手とは言わせない マッシーが教えます よくある病気 病者を支える 問診だけで診断
“職人芸”としての問診の問題点 病歴に科学を!! 一代限りでおしまいの危険性 共有・継続・発展性の欠如 誰もが納得できる必要 独善・批判されない 品質が保証されない 病歴聴取や診察の技術はartと称して職人芸と割り切ってはならない.職人芸と割り切ってしまうと,教育の材料にしようとする努力を半ばdiscourageしてしまう.ある特殊な才能を持った人だけが使える技術に成り下がってしまう. 病歴に科学を!!
日常生活動作の障害 病歴の手がかり:家の中と外 キーワードは リカちゃんハウスとプラレール
日常生活動作障害問診の利点 普遍性:必ず答えが得られる 具体性:明確な回答,記憶に残りやすい 自然な負荷試験:診察が不要 理解しやすい,質問しやすい 教育に応用 予診への組み込み
その病歴を聴取する能力を取得するのがむずかしいのでは? →実は簡単 →“歩く”という最も基本的な日常生活動作から 病歴が重要なのはわかったが その病歴を聴取する能力を取得するのがむずかしいのでは? →実は簡単 →“歩く”という最も基本的な日常生活動作から 病歴で診断できるのはわかったが,それには経験の積み重ねが要るだろう,プライマリケア医がその能力を取得するのは難しいのでは?という問に対する答えを次から展開
日常生活での移動:量負荷順 好きなスポーツ 通勤 階段昇降 負荷のある平地歩行 負荷のない平地歩行 方向転換,狭いところ 寝たきりの人は転びません.転ぶということは立位歩行の障害です.一口に,日常生活の中の立位歩行といっても,要求される運動能力水準は様々です.単に平地歩行といっても,方向転換を要求されたり,放置自転車がある駅前の狭い通路を歩かなくてはなりません.これらの様々な負荷水準の立位歩行を問診することにより,より感度,特異度の高い問診が組み立てられる
歩行の問診 負荷の質別 直進の速さ 方向転換をする: 狭いところを通り抜ける 階段昇降
去年サッカーをやめた51歳男性 45歳:右上肢が動きにくいと感じたが,職場ではサッカー選手として試合に出場 50歳:走るのが遅くなり,攻撃の後,守りに戻れない,首を後ろに反らせず,ヘディングができない→試合に出場できなくなった 51歳:右手が震え,字が書きにくくなった 運動負荷が,病気の症状を顕性化させる例
68歳元歌手の男性 60歳:趣味のヨットを断念←甲板上のバランス不安 62歳:声の張りがなくなり,歌の指導中止 63歳2月:右のカフスボタンがかけにくくなった 63歳11月はじめて左手の震えを自覚 振戦が発症する前に,趣味・職業・日常生活動作の障害が出現
学校体育活動障害のmilestoneによる筋ジストロフィーの鑑別診断 体育の種目の得手・不得手 体力測定の項目別得点 クラブ活動が いつできなくなったか どんな技ができなくなったか
家を出てから,駅まで,駅の中,そして電車の中で,患者さんがどんなことに苦労しているかを考える プラレールの神経学 家を出てから,駅まで,駅の中,そして電車の中で,患者さんがどんなことに苦労しているかを考える
電車通勤での負荷 徒歩で駅まで要する時間:筋力低下+固縮寡動 駅前の放置自転車の間を抜ける:姿勢反射 駅の階段を上る,降りる:筋力・痙性,運動失調 車内で立っている:姿勢反射 つり革に掴まる:上肢筋力 網棚に荷物を上げる:上肢筋力 座席から立ち上がる:姿勢反射+(下肢近位筋) 電車通勤一つとっても,このように多くのチェック項目が出てきます.そしてその中では,この3つの変性疾患の鑑別に役立つ項目もあります.筋力低下ばかりではない.固縮・寡動,姿勢反射障害,筋緊張,運動失調と,様々な能力から成り立っているから,電車通勤に関する問診
パーキンソン病の姿勢反射障害 通勤電車内での負荷と問診 混んだ電車に乗れない →混んだ時間帯を避け,空いた時間帯に乗る すくっと立てなくなる 前に人が立つと、特にだめ 一つ前の駅で立って,ドアの前で待つ
自転車の運転 脊髄小脳変性症:ふらつきで危険 パーキンソン病: 走り出し,とっさの停止ができない
自動車の運転 脊髄小脳変性症 パーキンソン病 ハンドル:遅い アクセル:遅い ブレーキ:遅い ハンドル:切りすぎ アクセル:踏込み過ぎ ブレーキ:急
各部屋,場所で患者さんがどんなことに困っているかを考える ではリカチャンハウスでは? 各部屋,場所で患者さんがどんなことに困っているかを考える
リカチャンハウスでのチェックポイント
日常生活動作負荷を左右する因子 書く:職業,読む人,量 話す:聴く人,直接・間接(電話), 着替える:スカート&ズボン,ボタンの位置 トイレ:部屋の広狭
トイレ動作の障害
トイレ動作のチェックポイント 立ち上がり:洋式,和式 手すりの位置:左右・縦横 お尻を拭けるか 下着を下ろす動作の速度 部屋の広さの影響
風呂場・脱衣所での障害 湯船の出入り 頭をうまく洗えない シャンプーが目に入ってしまう 着替えが遅い
ダイニングキッチンでの障害
台所での障害 パーキンソン病の場合 米をとぎにくい 生卵をときにくい 炒め物が苦手
嚥下障害の負荷:量と質 量と速度の負荷 液体,麺類,固形物の正常 ペットボトル,缶から直に ストロー,コップに移し替えて 脊髄小脳変性症:麺類が苦手.ストローも? 筋萎縮性側索硬化症:麺類は得意
電話での障害
電話が嫌いになる ー聞き取りにくいと文句を言われるー 声が小さい・早口:PD 酔っ払い:SCD 声がかすれる:ALS
会話の負荷と問診の感度 負荷軽:家族と直接話す→感度低 負荷中:他人と直接話す→感度中 負荷重:他人と電話で話す→感度高 単に,ろれつが回りにくいですかという病歴ではなく,電話で話すとき聞き取りにくいと言われて,電話が嫌いになりませんか? 電話での会話障害の問診は感度がずっと高くなる
57歳男性,ALS:進行性球麻痺型 55歳,9月:親戚が電話の声が聞き取りにくいと指摘 妻の話:聞き取りにくさは徐々に進行 本人は自覚がなく,トラックの運送業務を継続 56歳,1月:話しにくいと自覚,食事にも時間がかかるようになった
書斎での障害
書字障害の問診 量・質の負荷 大量に書く:年賀状 他人にわかりやすいように書く お客さんへの領収書 教師の板書
キーボードの神経学の検討要 キーボード操作の要素 筋力,協調運動,深部知覚,筋緊張 キーボード操作の障害様式は? 早く打てない 打ち間違い
寝室・睡眠の神経学 Restlessleg 症候群 睡眠時無呼吸 群発頭痛 脳腫瘍 脳卒中 高炭酸ガス血症 ベッド・布団と寝返りの問題
あの難しい病気も問診だけで あなたにも診断できる
43歳の男性:無呼吸を疑われ紹介来院 3ヶ月前から瞼が何となく重く(閉じるまでいかない)睡眠不足かと思っていた。 まぶたをあげようと努力しているので同僚から人相が悪くなったといわれる。左 へ振り返ったときに一瞬ものが二重に見えることが時々あり、片目をつぶればはっ きり見える。同じ頃からからつばやものが飲み込みにくいと感じる事がありのど が狭くなった(少し体重が増えたので)と思った。1ヶ月前から食事(特に量の 多いとき)の後半になると顎が疲れてうまくかめなくなり時間がかかるようになっ た。(やすめばもどる)同時にこのころからシャンプーをしていると右手が重く なり支えないと頭まであがらなくなる。(休めば治る) 池田先生 亀井です。 本日43歳の男性(運送業、既婚、元気そう、確かに何となく眠そうな顔つき)が 瞼が重く眠いとのことで無呼吸を疑われ紹介来院されました。 以下が今日まで来ていた医学部5年の学生さんのとってくれた病歴です。 3ヶ月前から瞼が何となく重く(閉じるまでいかない)睡眠不足かと思っていた。 まぶたをあげようと努力しているので同僚から人相が悪くなったといわれる。左 へ振り返ったときに一瞬ものが二重に見えることが時々あり、片目をつぶればはっ きり見える。同じ頃からからつばやものが飲み込みにくいと感じる事がありのど が狭くなった(少し体重が増えたので)と思った。1ヶ月前から食事(特に量の 多いとき)の後半になると顎が疲れてうまくかめなくなり時間がかかるようになっ た。(やすめばもどる)同時にこのころからシャンプーをしていると右手が重く なり支えないと頭まであがらなくなる。(休めば治る)ご本人は何とか原因を突 き止め治したいとのことで産業医から紹介来院されました。 これは重症筋無力症を疑う病歴でしょうか?(私は病歴を読みながらすぐMG?か と思い見事な病歴と感心しました)そのほかALSも鑑別に入れるべきでしょうか? 追伸)ところで、この病歴を聴いて学生さんはおそらく疾患を思い浮かべて聞い たのだろうと思いましたが、思い浮かべることは難しかったのでなるべくご不自 由に思っていることを一生懸命聴いたそうです。聴く態度があれば疾患が思い浮 かばなくても良い病歴がとれるものだと感心しました。
パーキンソン病での日常生活動作障害 (必ず片手 or 片足から始まる) 更衣:着替えに時間がかかる,ボタンをかける 整容:歯磨き,整髪 トイレでの動作:狭いところで複雑な動き トイレ内での体位変換,後始末,ズボンを履く 入浴:洗髪,体を拭く,着替える 調理:米をとぐ,千切り 声が小さくなる,字が小さくなる(小さいミミズ)
脊髄小脳変性症でのADL障害 (左右差は目立たない) 料理:大きさが不揃い,指を切る,配膳でこぼす 車の運転:ハンドル,アクセル測定過大 自転車:ふらつき 書字:字が汚くなる(大きいので目立つ) 読書/新聞:飛ばして読んでしまう 電話が嫌いになる マクドナルドに行かなくなる
筋萎縮性側索硬化症でのADL障害 左右差は目立たない 飲食:缶飲料が開けられない、舌で,口の中がうまく掃除できない 通勤:網棚に荷物が上げられない,つり革に掴まっていると疲れる 洗濯物を干すのに腕が疲れる 痩せる 趣味の運動が下手になる:ゴルフ,テニス 筋力低下なので、理解しやすい
56歳男性メッキ工場勤務 52歳: 両手から前腕のこわばり感があって服を着るのに時間がかかった 52歳: 両手から前腕のこわばり感があって服を着るのに時間がかかった 53歳: 仕事場で機材を運ぶのが遅くなった 風呂で体を洗う,洗髪,歯磨きが困難 歩行時に前かがみ,腕を振らなくなった 整形外科を受診したが症状は改善せず 54歳:両上肢に安静時に振戦が出現した 病歴をそのまま読み上げる.さっき3つの病気だけ覚えておけばいいと言いました.その3つの病気の中でどれでしょう→初発症状は震えではないが,典型的なPDの病歴:受講者に質問すれば用意に回答が出てくる.
69歳女性:主訴 歩くときふらつく 62歳:階段を下りるときふらつくので手すり使用 右耳が聞こえにくくなる 69歳女性:主訴 歩くときふらつく 62歳:階段を下りるときふらつくので手すり使用 右耳が聞こえにくくなる 63歳:平地歩行でふらつく,シルバーカー使用 64歳:喋りにくくなり電話で度々聞き返される 包丁:切り身が不揃い,指を切りそうになる 65歳:平地で転びそうになる.料理をやめる 66歳:酔っ払いが歩いているようだと言われる 脊髄小脳変性症の患者さんの病歴.この病歴だけでも,(平地を)歩くときふらつくという主訴で来院するまでに,もっと高度な日常生活動作での障害が,初期から起こっていることがわかる.だから,単に歩行障害と一言で片付けられないほど,何段階かの障害がある.
65歳女性 63歳:2月右足が動かしづらい.歩行時杖使用 64歳:3月椅子,洋式トイレでの立ち上がり困難 5月右下肢を引きずる,左下肢が動きにくい 6月両腕が肩まで上がらなくなった 9月階段を上がれなくなった 65歳:春着替えが一人でできなくなった 6月トイレまで歩けなくなった
鑑別診断スコア表例
疾患特異的な ベンチマークの検討
病歴,症候を科学する これからの課題,みなさんの課題 それぞれの病歴,症候の感度・特異度 重症度で層別尤度比が出るか? 効率良い病歴聴取のアルゴリズム 最終的には,病歴症候学のようなものを,まず変性疾患で組み立てられればと思っている.
神経疾患問診鑑別診断バッテリー 日常生活動作やいつもの仕事での障害を聞き出すことにより神経疾患の診断が誰でも簡単にできるような問診表を作りたい
外来:患者さんとの対局
医療面接ロボット開発の意義 医療面接教育の教員として:SP役 医療面接,診断のプロセスを明らかに