認知学習論 第3回 知識のはじまり 担当: 今井むつみ (ι303).

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キー・コンピテンシーと生きる 力 キー・コンピテンシー – 社会・文化的,技術的道具を相互作用的に活用する力 – 自律的に行動する力 – 社会的に異質な集団で交流する力 生きる力 – 基礎・基本を確実に身に付け,いかに社会が変化しようと, 自ら課題を見つけ,自ら学び,自ら考え, 主体的に判断 し,行動し,よりよく問題を解決する資質や能力.
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第4章 何のための評価? 道案内 (4) 何のための評価? ♢なぜ教育心理学を勉強するか? (0) イントロダクション ♢効果的な授業をするために (1) 記憶のしくみを知る (2) 学習のしくみを知る (3) 「やる気」の心理学 ♢生徒を正しく評価するために ♢生徒の心を理解するために (5)
認知心理学 認知発達 今井むつみ. 問題提起 – なぜ発達を研究するのか – 子どもを対象にした認知研究は人間の認知に ついて何を教えてくれるか? – 人間の知識の源泉は何か? – 人間にとってもっとも自然な概念は何か? – 人間の「学習」とはどのようなものなのか? – 「学習」が可能なためには何を生得的にもっ.
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教育と発達. 能力とは何か(まとめ) 能力=何かできること 教育との関連での条件 – 価値ある能力であること – 訓練で発達可能であること – 教えることが可能であること ふたつの階層性 – 価値的な階層 – 発達の規定性としての階層.
第 5 章 2 次元モデル Chapter 5 2-dimensional model. Contents 1.2 次元モデル 2-dimensional model 2. 弱形式 Weak form 3.FEM 近似 FEM approximation 4. まとめ Summary.
第5章 子どもは心をどのように 理解するか? 道案内 (5) 子供は人の心をどう認識するか 1 準備 (0) 授業を始める前に (1) 発達心理学とはどんな学問か? (2) なぜ発達心理学を学ぶのか? 2 知覚の発達 (3) 子供に世界はどう見えるか 3 認知の発達 (4) 子供はものごとをどう認識するか.
第5章 子どもは心をどのように理解するか?.
表6-1 単元計画の例「明かりをつけよう」 次 学習活動 教師の支援・留意点 第1次 2時間 豆電球に明かりをつけよう
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「ダブルリミテッド/ 一時的セミリンガル現象を考える」 母語・継承語・バイリンガル教育研究会 第6回研究集会 国際医療福祉大学言語聴覚学科
      特別支援学校 高等部学習指導要領 聴覚障害教育について.
自律学習と動機づけ 教育心理学の観点から 2011/2/19 上淵 寿 (東京学芸大学).
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2011 行動分析学特論 (1)行動分析学と 対人援助(学)
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図15-1 教師になる人が学ぶべき知識 子どもについての知識 教授方法についての知識 教材内容についての知識.
文脈 テクノロジに関する知識 教科内容に関する知識 教育学 的知識
感覚運動期(誕生~2歳) 第1段階 反射の修正(出生~約1ヶ月) 第2段階 第1次循環反応(約1ヶ月~4ヶ月)
情報処理の概念 #0 概説 / 2002 (秋) 一般教育研究センター 安田豊.
アノテーションガイドラインの管理を行う アノテーションシステムの提案
2010応用行動分析(3) 対人援助の方法としての応用行動分析
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認知学習論 第3回 知識のはじまり 担当: 今井むつみ (ι303)

前回のつづき

認知科学的アプローチ 動物の学習と人間の学習は質的に同じではない 結果そのものよりも人間の学習の内部メカニズムを知ることこそ重要 既有知識の役割の強調 知識の性質、表象の形を問う 学習(新しい知識の獲得)の内部プロセス 外界(環境)とのインタラクション

認知的学習観 学習は主体的な行為 学習は知識の変容である(累加または再構造化) 学習は先行知識によって導かれる 学習は領域固有である

人間は知的好奇心から学ぶ 人間は自分および自分をとりまく世界について整合的に理解したいという基本的な欲求を持つ存在 環境内に規則性を見いだそうとする 新しく入ってくる情報を既有の知識に照らして解釈。新しい情報が既有の知識と整合性を持つかを常にチェック 抽出した規則を類似の別の場面に積極的に適用

乳児における規則抽出能力 (Marcus et al., 1999) 生後7ヶ月の乳児が抽象的なルールを学習し、表象する能力があることを示す →言語における文法の学習の起源? 音の連なりの中からABAパターンとABBパターンを区別 (ga, ti, ga) (li, na, li)→同じグループ (ga, ti, ti) (li, na, na)→同じグループ Science, vol.283, pp. 77-80.

人間は内発的な興味から学ぶ 本吉の観察  幼稚園児が自分たちで「どうして氷ができるのか」という問題を掘り出し、実験をし、自分たちなりの答えを出したことを報告

人間は「できる」を超えて学ぶ カーミロフ・スミスの実験 4~9歳までの子供にさまざまな積み木を与え、平均台のレールの上にバランスよく置くように指示 「うまくできる」ことよりも、この事態を整合的に説明できる「理論」を自分なりにつくり、それを試すことをめざす

状況論的学習観 認知的学習観が個人の内的認知プロセスを強調しすぎると批判 学習は社会的文脈の中で行われる 正統的周辺参加 アフォーダンス 教育への応用

状況論的学習観 学習は社会的・文化的参加を通じて起こる (徒弟制度の見直し)    (徒弟制度の見直し) 知識は個人の心の中に貯蔵されているのではなく、社会や道具との間で分散的に保持されている

状況論的学習観の背後にある理論 学習における「活動」の重要性 「発達の最近接領域」

発達の最近接領域(1) 「学び」とは所与の知識や技能を受動的・機械的に習得することではなく、対象であるモノや事柄や社会に働きかけて問題を構成することから始まる 「学び」とは教えられるものではなく、文化の中にいる他者を観察・模倣することにより自分で獲得するのである

発達の最近接領域(2) 最適な学習環境  →学習者よりも少し熟達度の進んだ他の学習者が手本を示す

知識のはじまり

学習の根本原理は何か 行動主義学習観→極端な経験論 認知的学習観→学習は既有知識に大きく制約される 問題 では学習の始まりは? 乳幼児は少ない既有知識でどのように学習するのだろうか?

学習の根本原理(2) 最近広く受け入れられている考え方 人間はある特定の概念領域において、ある種の知識・認知バイアスを(あるいは乳児期の非常に早くから)持って生まれる その知識がそれ以降の学習の礎となり、それ以降の学習を導いていく

乳児が早期から持つ知識 (1)物体の基本的性質と運動についての 基本的原理 (2)物体と物質の存在論的な違い (3)生物・非生物の本質的区別    基本的原理 (2)物体と物質の存在論的な違い (3)生物・非生物の本質的区別 (4)数についての基本的認識 (5)言語に関する知識

乳児が持つ知識の測定方法 おしゃぶりを吸う速さで測定する方法

乳児の持つ知識の測定法(2) 標準的な方法→馴化・脱馴化パラダイム 馴化(habituation) 脱馴化(dishabituation) 乳児は「同じ事象」を繰り返し見せられると、飽きて注意が持続しなくなる 脱馴化(dishabituation) 馴化された事象と異なる事象(乳児の期待と異なる事象)を見せられると、注意が回復し、じっと見つめる

物体の基本的原理の理解 (1)物体はまとまっている 遮蔽されて目に見えない部分は目に見える部分と連続的に繋がっている    遮蔽されて目に見えない部分は目に見える部分と連続的に繋がっている (2)物体は運動の際に全体がまとまって共に動く    →Kellman & Spelke(1983)の実験

乳児(生後5カ月)は棒が一つの連続したものであることを期待し、 期待に反する事象(2つに分断された棒)を見せられると長く注視 する Figure 3.9 Stimuli used by Kellman and Spellke (1983). For the baby to be able to clearly “see” the bar represented below on the left, and not two segments, the two segments visible above and below the occlusion must move in concert. 乳児(生後5カ月)は棒が一つの連続したものであることを期待し、 期待に反する事象(2つに分断された棒)を見せられると長く注視 する

物体の基本的原理の理解(つづき) (3)物体は世界に永続的に存在するものであり、視界から隠されてもその存在は消えない(object permanence)     →Baillargeon(1987)の実験

Figure 3.14 Schematic representation of the habituation and test events used in Baillargeon (1987b). In (1b) a white object sits behind the track, and thus does not interfere with the movement of the locomotive in (1c). In (2b) the object has been shifted forward slightly and sits on the track, making the locomotive’s reappearance in (2c) impossible.

乳児は不可能な事象の方を長く注視し、驚きを示す。 HABITUATION WITH A SMALL RABBIT WITH A LARGE RABBIT TEST SITUATION POSSIBLE EVENT IMPOSSIVLE EVENT 乳児は不可能な事象の方を長く注視し、驚きを示す。

物体についての基本的原理の理解 (4)物体は堅固なものであり、ひとつの物体が別の物体を 通りぬけることはできない (物体に穴があいていない限り) スペルキー  生後2カ月の乳児がこの知識を持つことを示す。 Experimental Familiarization Consistent Inconsistent Control Familiarization Test a Test b

生物・非生物の区別に関する知識 生物→自発的な運動が可能 非生物→自発的な運動はできない        外からの力が必要

Inanimate Object Condition Habituation event Person Condition Habituation event Contact test event Contact test event No-contact test event No-contact event Fig.3.7 Schematic depiction of the events for a study of infants’ inferences about the contact relations between inanimate objects or people.(After Woodward et al. 1993.)

数の基本的概念の理解 乳児は数についての基本概念を持っている  →Wynn(1992)の研究 生後5ヶ月の乳児が基本的な足し算と引き算ができる

Sequence of events 1+1=1 or 2 1.Object planed in case 2.Screen comes up 3. Second object added 4.Hand levels empty Then either : possible outcome or : impossible outcome 5.Screen drops… revealing 1 object 5.Screen drops… revealing 2 objects

Sequence of events 2-1 =1 or 2 1.Objects planed in case 2.Screen comes up 3. Empty hand enters 4. One object removed Then either : possible outcome or : impossible outcome 5. Screen drops… revealing 1 object 5. Screen drops… revealing 2 objects NATURE ・ VOL 358 ・ 27 AUGUST 1992

知識のはじまり:まとめ(1) 人間は生後間もない乳児でも、ある特定の概念領域については非常に豊富な知識を持っている

知識のはじまり:まとめ(2) もちろん、知識の全てが生得的にbuilt-inされている、あるいは非常に早くに自然に学習されるものではない ある概念領域は非常に誤認識が起こりやすく、大人の持つ概念や科学的概念の理解には高いハードルを越えなければならない

幼児の推論、論理操作能力 対象的な推論をする能力 シンボル操作をする能力