『マクロ金融特論』 (3) 一橋大学大学院商学研究科 小川英治 マクロ金融特論2016.

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『マクロ金融特論』 ( 2 ) 一橋大学大学院商学研究科 小川英治 マクロ金融特論
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『マクロ金融特論』 (3) 一橋大学大学院商学研究科 小川英治 マクロ金融特論2016

為替介入 マクロ金融特論2016

為替介入とは? 為替介入とは? =外為市場において民間部門による外貨の超過需要(超過供給)が発生した場合に、通貨当局が超過需要(超過供給)相当分の外貨を外為市場に供給(需要)すること。 マクロ金融特論2016

為替介入vs為替管理 為替介入=市場メカニズムを利用。通貨当局が介入することによって外国為替市場での不均衡が解消される。 為替管理=外国為替取引そのものを規制する。外国為替市場で不均衡が発生したまま。 マクロ金融特論2016

為替介入の目的 為替相場安定化(スムージング) 為替相場目標(ターゲット) *為替相場ターゲットの目的には、いろいろある。  →貿易収支安定化、経済成長、インフレ抑制etc. マクロ金融特論2016

通貨当局のバランスシート マクロ金融特論2016

為替介入(外貨買い介入) と通貨当局のバランスシート 外貨買い介入による 外貨準備残高増 ハイパワードマネー増 マクロ金融特論2016

為替介入と不胎化政策 為替介入→外貨準備残高増減 ①不胎化政策を伴わない場合  国内信用残高を一定としたまま、外貨準備残高増減がハイパワードマネーの増減に結びつく。 ②不胎化政策を伴う場合  外貨準備残高増減を相殺するように国内信用残高を調整して、ハイパワードマネーを一定に保つ。 マクロ金融特論2016

不胎化政策を伴う為替介入と 通貨当局のバランスシート 国内信用残高減 外貨買い介入による 外貨準備残高増 マクロ金融特論2016

不胎化政策を伴う為替介入 自国通貨の減価を抑える為替介入を不胎化すると、 ①為替介入によって外貨準備残高が減少するが、貨幣供給量は不変。 ②ファンダメンタルズが変化しないために、自国通貨減価圧力が続く。 ③外国通貨売り介入を続けなければならない。 ④いずれは外貨準備残高が尽きる。 マクロ金融特論2016

為替介入の効果(1) 不胎化政策を伴わない為替介入=貨幣供給残高(ファンダメンタルズ)の変化を通じた効果 (例) 円高抑制の為替介入(=ドル買い介入) ⇒貨幣供給量の増加 ⇒金利低下or物価上昇 ⇒円安ドル高 マクロ金融特論2016

為替介入の効果(2) 不胎化政策を伴う為替介入=貨幣供給残高(ファンダメンタルズ)の変化がない。 ⇒金利の変化がない。  ⇒金利の変化がない。 マクロ金融特論2016

為替介入の効果(3) 内外資産が完全代替 ①金利(不胎化政策を伴わない介入) ②シグナリング効果( ) ②シグナリング効果(  )   不胎化政策を伴う為替介入が将来の金融政策の変化を予想させる場合に、有効。 マクロ金融特論2016

為替介入の効果(4) 内外資産が不完全代替 ①リスク・プレミアムを通じた効果  不胎化政策を伴う為替介入=自国通貨建て債券と外国通貨建て債券のスワップ取引⇒bとfを通じて有効。 マクロ金融特論2016

不胎化政策を伴う為替介入と 通貨当局のバランスシート 円建て債券売りオペ ドル建て債券買いオペ マクロ金融特論2016

為替介入の効果(5) 円高を抑制する為替介入 円建て債券売りオペ+ドル建て債券買いオペ ⇒民間部門に利用可能な供給残高(bの増加とfの減少)  円建て債券売りオペ+ドル建て債券買いオペ ⇒民間部門に利用可能な供給残高(bの増加とfの減少) ⇒ドル建て債券に対する円建て債券のリスク・プレミアムが上昇 ⇒ドル高円安 マクロ金融特論2016

為替介入の現実 外貨準備残高の変動から為替介入を推計 財務省の「外国為替平衡操作の実施状況」( http://www.mof.go.jp/international_policy/reference/feio/data.htm )のデータを利用 マクロ金融特論2016

外貨準備残高変動と為替相場 ③ ① ② ④ ⑥ ⑤ マクロ金融特論2016

円高・円安と為替介入 ①③⑤円高進行←ドル買い介入(円高抑制) ②④円安進行←ドル売り介入(円安抑制) ⑥円安進行←ドル買い介入(円安加速) マクロ金融特論2016

125円/ドル This figure shows the Japanese monetary authorities’ foreign exchange intervention volume as well as the exchange rate of the US dollar in terms of the Japanese yen. In Japan, the Ministry of Finance commission the Bank of Japan to intervene in foreign exchange markets. We can find several times of heavy interventions in 1995, 1998, 1999, 2001, and 2003. In April 1995, the Japanese yen appreciated to the historical highest level (US$ 1=JPY80). The monetary authorities made heavy intervention in order to stop the appreciation before April 1995 and to accelerate depreciation of the Japanese yen after the April 1995. The monetary authorities made heavy intervention in order to stop the depreciation of the Japanese yen after the exchange rate exceeded 125 yen/US$ in 1998. They made heavy intervention to sell the Japanese yen in 1999 and 2001. In 2003 and early 2004, the monetary authorities intervened in the foreign exchange markets. However, the interventions have given no effects on stopping the appreciation of the Japanese yen. They made no interventions in the foreign exchange markets since April 2004. マクロ金融特論2016

伊藤隆敏「日本の通貨当局による為替介入の分析」 2001年 マクロ金融特論2016

為替介入の実際 125円/ドルを境にして、それ以上において円買い介入。それ以下において円売り介入。 1995年以前と1995年以降で為替介入が変化。 1995年以前:頻繁かつ小規模 1995年以降:頻度が低下し、大規模 マクロ金融特論2016