星の教室 2013 SCIENCE PARTNERSHIP PROJECT SUPER SCIENCE HIGH SCHOOL 高等学校 班 氏名 . 東京大学大学院理学系研究科 天文学教育研究センター木曽観測所
木曽観測所の105cmシュミット望遠鏡 木曽観測所の主力観測施設は、有効口径105cm(世界で4番目の大きさ) のシュミット望遠鏡です。この望遠鏡の特徴は広い視野に渡って、鮮明な 画像が得られる点にあり、一度に6度四方(これは満月にして、144個分に 相当する大きさ)の領域を撮影することができます。 現在はこの焦点面にKWFC(木曽広視野カメラ)を取付けて観測しています。 また、この望遠鏡は300m離れた本館から、ネットワークを経由して自由に 制御することが出来るようになっています。 補正板口径 1.05 m 焦点距離 3.30 m 鏡筒長 8 m 主鏡直径 1.50 m 総重量 69 t 補正レンズ 口径105cm 焦点距離 330cm 主鏡 直径150cm F/3.1 105cmシュミット望遠鏡 望遠鏡本体は Nikon 製
木曽観測所の観測装置紹介 KWFC KWFCで撮影した「ばら星雲」です。3色で 撮影し、画像合成したものです。 東京大学木曽観測所では現在、主力観測装置として800万画素のCCDを8個配置したモザイクカメラ(KWFC)を開発し平成24年度から観測に使用しています。これにより約2度四方が一度に撮影できます。KWFCは淡く拡がった天体の研究やサーベイ観測などの研究に活躍しています。 検出器 米国SITe製 2048×4096×4枚 米国MIT 製 2048×4096×4枚 画素サイズ 15μm×15μm 受光面サイズ 126mm×126mm シュミット主焦点 2.1°×2.1° 動作温度 -100℃ KWFCデュワー(真空容器)に納められたCCDチップ CCDチップ1枚(3cm×6cm) KWFCで撮影した「ばら星雲」です。3色で 撮影し、画像合成したものです。 中央の空洞部分にある星の集団が約200 万年前に誕生し、それらが放つ強い紫外線 によって周囲のガスが熱せられて光ってい ます。空洞の上から右にかけて見られる黒く 抜けた粒々模様はグロビュールと呼ばれる 冷たくて濃いガスの凝集部分で、ここから星 が生まれようとしています。 KWFCで撮影したバラ星雲(3色合成画像) KWFCは様々な波長の光で観測するため 現在12色のフィルターを揃えています。右の 画像の白い部分は、部品の組み立てなどに 使われる汎用ロボットです。 このロボットを駆使して、どのような姿勢でも フィルターが交換出来るシステムを開発して います。 フィルター交換用の汎用ロボット
完全自動リモート望遠鏡 KISO 0.3m TELESCOPE(K.3T) 直径2.8mドーム 望遠鏡本体 口径(直径) 0.3m 焦点距離 3.6m 案内望遠鏡 赤緯軸 極軸 (地球の自転軸と平行な回転軸) フィルター 格納ケース 冷却CCDデジタルカメラ ドーム・望遠鏡制御パソコン
観測所での生活 東京大学木曽観測所にようこそ! 木曽観測所は東京大学大学院理学系研究科の付属施設で、普段は東京大学をはじめとする全国の大学の研究者に利用されています。みなさんも“星の教室”の間は、観測所内のルールを守り、マナー良く諸施設を利用するように心がけてください。 □観測所内にはいろいろな実験器具などありますが、必要もなくむやみに 触らないようにしてください。また、非常時以外には、指定された場所以外に は立ち入らないようにお願いします。 □スタッフとの交流を図るため出来る限り名札をつけてください。 □食事(夕食)の後の食器は指定の箱の中に整頓して入れてください。 □冷蔵庫内には飲み物があります。各自お金を払って利用してください。 □食堂以外の場所での飲食は原則禁止とします。特にコンピュータ前での飲 み食いはしないようにしてください。 □就寝時間は設けませんが、夜中や、早朝は寝ている人に配慮し、仮眠室 を含む2階では絶対に騒がないようにしてください。ドアの開け閉めにも注意 し、音楽を流したりすることもないようにしましょう。(話がしたければ食堂で) □夜間は、観測の妨げとならないように、窓のカーテンを必ず閉めてください。 □夜間の勝手な外出は避けてください(特に単独行動は危険です)。事故に あっても責任はとれません。 □最終日の朝、各自使った『掛・敷シーツ(2枚)』と『枕カバー 』のみをはずし、 部屋の外に出しておいてください。 □最終日、部屋を退室する際は、鍵はかけないでください。 □体調が悪くなったり、困ったことがあったら、スタッフあるいは先生に早めに 申し出てください。 □星の教室は2日目が重要です。無駄にすることがないように、1日目の夜は 睡眠時間を十分にとりましょう。 □木曽観測所の活動紹介などのために、個人が特定できない程度に、写真を 撮りますが、使用を希望されない方は、お知らせ下さい。
タイムテーブル 1日目 2日目 13:00 来所 受付、部屋案内 13:30 開校式 13:45 講義 14:20 集合写真 14:30 構内見学 15:15 休憩 15:30 講義・実習1 視角をつかって距離を測る 18:00 夕食 18:50 講義・実習2 銀河までの距離を測る 20:00 講義・実習3 宇宙の年齢を求める 22:00 自由観望(就寝) 起床・朝食 08:30 発表の仕方 08:40 発表準備 10:30 発表会 12:30 講義 12:45 閉校式 13:00 アンケート記入 昼食 14:00 離所
実習その1 視角を使って距離を求める まず、「目で見る大きさ」というのは何でしょう? 下の野球選手の絵は皆さんから何m離れて見えますか? 我々は、遠い人間は小さく見え、近い人は大きく見えることを知っています。そして、人が「このくらいに見える」ときは「距離はこのくらい」という知識が貯えられていて、「目で見た大きさ」から距離を判断しています。 しかし、目でみて、勘で距離を決める方法では、20mか30mかさえなかなか判りません。 今日は、我々が普段やっている、目で見た大きさから距離を知る方法を考え直します。そして、数字で 距離=何m と出すための実験を行い、最後に、遠くに立つ人までの距離を測ってもらいます。 まず、「目で見る大きさ」というのは何でしょう?
例1 目に映る木の姿 (大きさ) 例2 目に映る木の姿 (大きさ) 下の2本の木は実際には高さが倍違います。けれども距離も倍違うために、目で見た時には同じ大きさに見えます。つまり、目の位置から測る角度が等しいと「同じ大きさに見える」のです。 目に映る木の姿 (大きさ) 例2 同じ大きさの木が倍の距離にあると、半分の大きさに見えます。これは目の位置から測る角度が半分になるからです。 目に映る木の姿 (大きさ)
視 角 このように、「目で見る大きさ」というのは目の位置から測った角度のことです。目の位置から測った角度を 視角と呼びます。 距離が倍になると、視角は半分になります。 視角 ここで、問題です。 自分から10m離れたところに立っている、身長1.7mの人の視角θは何度となるでしょうか? 自分の目を中心とした、半径10mの円をかんがえます。そして、身長1.7mの人がその円周の一部(弧)であるとかんがえます。 10m 1.7m θ
つまり、 1.7[m] の人が10[m] 離れると、視角は、約10度ということになります。 円の半径は 10[m] ですから、円周は 2π×10[m]であらわされます。人の身長は 1.7[m]でしたね。その視角をθ[度] とすると、次のような関係が成り立ちます。 360(度) : 2π×10 = θ(度) : 1.7 これを式に直すと、 360×1.7=2π×10× θ ∴ θ=360×1.7 / 2π×10 π=3.14 とすると、 θ= 9.7 (度) となります。 1.7m 10m 9.7度 つまり、 1.7[m] の人が10[m] 離れると、視角は、約10度ということになります。 次に、もっといろいろな場合でも使えるように変数で考えてみましょう。あるものの視角θをもとめます。そのものの実際の長さは X で、距離 Y のところにあります。すると次のような式であらわされることがわかりますね。 θ=360X / 2πY (1-1)式 このように、あるものまでの距離(Y)と、その実際の大きさ(X)がわかれば、その視角(目でみた大きさ)が計算できるのです。 距離 視角 実際の 大きさ
視角の実験(I) ここで、考え方を変えてみましょう。 人までの距離をY[m]、身長をX[m]、その視角をθ[度]とするのはこれまで通りです。 Y m X m θ そのとき成り立つ式は、 θ=360X / 2πY でしたね。 これを Y=の形になおすと、 Y = 360 X / 2πθ (π=3.14) つまり、 Y = (360 / 2×3.14) × (X/θ) (1-2)式 となります。前半の部分は定数になるので、計算しておくと さらに簡単にできますね。 Y =57.3 X / θ (1-2)’式 この式の意味することがわかりますか。 先に、距離と実際の大きさ(身長)から視角をもとめました。上の式は、実際の大きさと視角がわかれば、そこまでの距離が求められるということを意味しています。つまり、長さ(X)のわかっている物体(例えば身長が1.7mの人間)の視角(θ)を測れば、距離(Y)をもとめることができるということです。
では、実際に実験してみましょう。物体(人)の視角を決めるには、色々なやり方が考えられますが、今回の実習では、デジタルカメラを使って視角を測ります。
カメラで視角を測る 視角を測るために必要なことは、 (1) 撮った写真の上で1cmが何度かを決める。 (1) 撮った写真の上で1cmが何度かを決める。 カメラには大抵ズームがついていて、拡大率が変えられます。拡大率を一定にして写真を撮るため、ズームを使わないようにしましょう。写真を印刷する際の大きさも一定にします。 (2) 視角を測りたい物体の写真を撮り、印刷する。 (3) 写真の上で長さを測り、(1)で決めた値から視角を出す。 では、まず(1)の実験をしましょう。 この実験では、赤と白に塗られたポールとカメラを使います。手順は、以下のとおりです。 1:縞の長さ Xを巻尺で測ります。 X m Y m 2: カメラとポールまでの距離 Y を巻尺で測ります。 S 3: ポールの写真を撮り、印刷します。 4: 印刷した写真の上で縞の長さ S を定規で測ります。 5: X と Y から、Xの視角θを計算します。 6: θとSから、写真上の1cmは視角で何度かを計算で 求めます。
視角の実験I.ノート カメラとポールの距離 Y= m 縞の長さ X= m 視角 θ= ° カメラとポールの距離 Y= m 縞の長さ X= m 視角 θ= ° (1-1)式、θ= 360X / 2πY を使います。 写真上の縞の長さ S= cm 写真上の1cmは、 θ/S= ( °/ cm) S cm 印刷 Y m X m θ カメラ
視角の実験(Ⅱ) X Z 写真で視角θを決めることができるようになったので、視角の実験Iで求めた(1-2)式を簡単にした(1-2)’式 を使って、人物までの距離を測ってみましょう。手順は、 実験II (1)グループ毎の平均身長Xを求めます。 X (2)全員が適当な距離に立ち、写真を1枚撮ります。 カメラのズームは使いません。 ・かならず、背筋を伸ば しましょう ・足が写っていることを 確認しましょう Z (3)各人がカメラからの距離Zを巻尺で読み取ります。
θ X Y (4)写真を印刷します。 紙の大きさが前の実験と、同じであることに注意してください。 (5)写真に写った人間の長さSを測ります。 紙の大きさが前の実験と、同じであることに注意してください。 (5)写真に写った人間の長さSを測ります。 (6)実験Iの値を使い、Sを視角θに直します。 S cm (7)平均身長Xと視角θを使い距離Yを計算します。 使う式は、 (1-2)’式 Y=57.3×X/θ です。 θ X Y (8)横軸に巻尺で測った距離Z、縦軸に視角で決めた 距離Yをとってグラフに書き込みます。
視角の実験II.ノート 氏 名 身長(m) 実測距離Z m 写真長 S cm 視角 Θ° 視角距離Y m 平均身長= m 0 氏 名 身長(m) 実測距離Z m 写真長 S cm 視角 Θ° 視角距離Y m 平均身長= m 視角距離 Y(m) 0 0 実測距離 Z(m)
銀河までの距離 銀河までの距離を決める時は、デジタルカメラの代わりに大型シュミット望遠鏡を使います。 人間の場合、身長を直接測りましたが、銀河の長さを直接測るわけにはいきません。どうしたらよいでしょう? 105cmシュミット望遠鏡 実験IIでわかったように、正確な身長を使わなければ、正確な距離の決定はできません。しかし、平均身長を使えば、本当の身長がわからなくても、「おおよその距離」を求めることが出来ます。 θ Y X 銀河までの距離
銀河の場合も同じことです。銀河の本当の大きさは測れないのですが、平均の大きさを決めてしまい、その値を使うことにします。 そうすると、銀河までの正しい距離は出なくなるのですが、大体は合っていると考えるのです。科学がそんなにいい加減でいいのかと思われるかも知れませんね。その点は授業の際にスタッフの人たちと話しあってください。 人までの距離 Y θ X
実習その2 銀河までの距離を求める 銀河までの距離測定の方法 天文学で最も難しいことの一つが、天体までの距離の測定です。今回は天文学実習の入門編なので、ここでは一番簡単な作業による天体までの距離測定の方法を紹介します。そして実際に観測データを使って、幾つかの銀河までの距離を測定してもらいます。結果は「銀河までの距離ノート」に記録して下さい。 銀河までの距離測定の方法 ① コンピュータの銀河サンプルから15個以上の銀河を選び、銀河の画像を表示します。 ② 銀河の画像を印刷します。 ③ 定規を使って、画像の視野の大きさが何cmかを測ります。 ④ 定規を使って、印刷した銀河の大きさが何cmかを測ります。 ⑤ ③と④の結果から銀河の視角が何度になるかを計算します。 ⑥ 銀河のサイズを仮定して距離を計算します。
① コンピューターで銀河の画像を検索・表示します。 コンピューター画面には、下図のようなソフトウェア(WEBブラウザー)が立ち上げてあり、距離を測定する銀河の一覧表が表示されています。(画面は多少異なる場合があります。) 距離を測定する銀河が一行にひとつづつ表になっています。 銀河の名前 (同じ銀河でもいろいろな名前を持っています) 後退速度 (km/秒、と Mpc/年) データ引用元 (この実習では 使いません) 銀河の形 (記号) 銀河の 活動性 この中から距離を測定する銀河を15個以上選んで下さい。
銀河の画像を見るために、一番右端の「Image」をクリックして下さい。 天体画像表示ソフトが立ち上がり、画像が見えます。 画像の上で右ボタンを押しながらマウスを動かすと、色の 諧調を調節することができます。
③ 定規を使って、画像の視野の大きさが何cmかを測ります。 ② 目標の銀河の画像を印刷します。 PRINTボタンを押すと 印刷ができます。 終わったら EXITボタンで 終了してください。 プリントアウトした画像は 名前が書かれていませんので、 混乱しないように注意! ③ 定規を使って、画像の視野の大きさが何cmかを測ります。 画像の視野は一律1/12度角×1/12度角です。定規を使ってこれが何cmになるか調べて、実習ノートにメモして下さい。銀河の大きさを測るためには重要なデータです。
④ 定規を使って、印刷した銀河の大きさが何cmかを測ります。 銀河は基本的に真ん中が膨らんだ円盤型をしています。大抵の場合は銀河を傾いた方向から見ることになるので、一般に銀河は横長に見えます。そこでその横長方向での長さが銀河のサイズになります。 視野の大きさ =視野1/12度に あたる長さ S (cm) 1/12 度 銀河の見かけサイズ (cm) 測ったら、実習ノートに銀河の名前と画像中でのサイズ(単位はcm)をちゃんと記録しましょう。 ⑤ ③と④の結果から銀河の視角が何度になるかを計算します。 電卓を使って写真上の1cmを計算し、銀河の視角を求めて下さい。 写真上の1cmは、 θ/S= = ( °/ cm) 1/12 ° S 銀河の視角 (°) = (写真上の1cm (°/cm))×銀河のみかけのサイズ(cm) 測ったら、実習ノートに銀河の視角(単位は度)をちゃんと記録しましょう。
これを繰り返して、全ての銀河について距離を求めましょう ⑥ 銀河のサイズを仮定して距離を計算します。 様々な研究から、私達も銀河(「天の川銀河」や「銀河系」と呼んで他の銀河と区別します)の中に住んでいることが分かっています。そして私達の住む銀河についてはその大きさも測定されています。そこで作業を簡単にするために「全ての銀河は私達の住む銀河と同じ大きさである」という仮定を用いて他の銀河までの距離を計算することにします。 × 太陽系 天の川銀河の大きさ : 直径 0.03Mpc 視角から距離を求める式、 (1-2)’式をつかいます。 Y = 57.3 × (X/θ) すると、以下の式で求められることがわかります。 これを繰り返して、全ての銀河について距離を求めましょう
実習その3 宇宙の年齢を求める 1) 各銀河の後退速度を求める。 <コラム1> 銀河天文学で用いられる距離の単位 ここではいよいよ、宇宙年齢の計算を行います 1) 各銀河の後退速度を求める。 前の実習までで、各銀河までの距離(コラム1参照)は計算できたと思います。今度は、各々の銀河がどれくらい遠ざかっているのか(後退速度)を調べてみましょう。 後退速度を測定するのは、実際はとっても難しいのです (コラム2参照)。なので、今回の実習では、すでに求め られている後退速度を表から調べることにします。 各銀河の後退速度は、コンピュータ上の銀河の表に載っています。 なお、表にある後退速度は、単位が km/sec になっています。この値ではあとあと見づらいので、単位を Mpc/yr に変換しておきましょう。 Mpcとkmの関係は先ほどの実習でつかったので、もう知っていますね。 yrつまり1年はsecつまり何秒になるか、これは簡単に計算できるはずです。 求まった値は距離の表に書き込んでください。 <コラム1> 銀河天文学で用いられる距離の単位 私達が日常生活で物の大きさや距離を測る時には、メートル(m)を基本とした単位を使い、これに1/100倍を意味するセンチをつけてセンチメートル (cm)、1000倍を意味するキロをつけてキロメートル(km)などと表現します。 天文学では巨大なスケールに合わせた独自の単位パーセク(pc)を使用します。具体的には 1 pc = 3.26 光年 = 3.08×1013 km となります。 さらに巨大な天体のサイズや距離を表現する時には、これに1000倍を意味するキロを付けたキロパーセク(kpc)や、1000000倍を意味するメガを付けたメガパーセク(Mpc)を使います。 1 Mpc = 1000 kpc = 1000000 pc ( = 326万光年)
?? <コラム2> 銀河の後退速度の求め方。 銀河がどれぐらいの速さで運動しているかを、天体写真から推測するのは <コラム2> 銀河の後退速度の求め方。 銀河がどれぐらいの速さで運動しているかを、天体写真から推測するのは 不可能です。これは、たとえば下の救急車の写真を見て、救急車が こっちに向かってきているのか? とまっているのか? バックしているのか? 分からないのと同様です。 ?? しかし、救急車の場合、もし音を聞くことができれば、どっちに向かっているか が分かります。向かっている方向によって、音が高くなったり(近づくとき)、 低くなったり(遠ざかるとき)と変化するからです。これをドップラー効果と言います。 音の高さを精密に測定すれば、その速度も正確に求められるのです。 高い音 低い音 とはいっても、銀河の音を聞くわけには行きません。銀河の後退速度測定では 代わりに光そのもののドップラー効果を使って後退速度を求めます。 光も波の一種なので、音と同様にドップラー効果を起こします。光の場合は 近づくものはより青く、遠ざかるものはより赤くなります。遠くの銀河は地球から 遠ざかっているので、色がより赤くみえるわけです。(赤方偏移と呼びます。) この色のずれを正確に測定すれば、銀河の後退速度を精度よく決定できるの です。 青くなる 赤くなる
2) 距離-後退速度図を作る 宇宙が膨張していることと、宇宙の年齢 ではこれまでに求めた距離と後退速度を後のページのグラフに点として 2) 距離-後退速度図を作る ではこれまでに求めた距離と後退速度を後のページのグラフに点として 書き込んでみましょう。どうなるでしょうか? ハッブルは、このような図を作り、そこから、 宇宙が膨張していることと、宇宙の年齢 を発見しました。みなさんも考えてみましょう。 銀河
銀河までの距離 ノート 画像サイズの視野1/12度角 = ( ) cm 写真上の1cmの視角 = ( ) °/ cm 銀河までの距離 ノート 画像サイズの視野1/12度角 = ( ) cm 写真上の1cmの視角 = ( ) °/ cm 天の川銀河の大きさ=0.03Mpc (メガパーセク) 実習2 実習3 銀河名 画面上での サイズ(cm) 視角 (度) 銀河までの距離 (Mpc) 後退速度 (Mpc/年)x10-9 Mpc/年 = Mpc/yr
距離後退速度図 ノート 宇宙は生まれてから 年 後退速度 (Mpc/yr) x 10-9 銀河までの距離(Mpc) 距離後退速度図 ノート 後退速度 (Mpc/yr) x 10-9 銀河までの距離(Mpc) グラフから宇宙の年齢がわかりますか。 宇宙は生まれてから 年
実習結果発表会 ここまでで、“宇宙の年齢”について考えることができました。まとめとして、得られた結果の発表を班毎に行ってもらいます。時間は10分を目安にしましょう。 Discussion! 正式な発表では、実習のはじめから結果まで、話す必要があります。しかしながら、今回の実習は全員が同じことをやっていますし、発表の時間も限られていますので、自分たちが求めた宇宙の年齢の求め方を中心に、発表してください。 発表は班毎に前に出てきて行ってもらいます。全員が順番に話しても、数名が代表して話すのでもかまいません。ただし、発表会で 全員が何らかの役割を担うようにしてください。 発表のコツ (その1) 発表時間1分につき発表用紙1枚程度をめやすに! (その2) 発表用紙には大きな字で書く!10行以上書くのは厳禁!