マクロ経済学 II 第10章 久松佳彰.

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1 「マクロ経済学Ⅰ」 蓮見 亮
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マクロ経済学 I 第 2 章 久松佳彰. GDP をどちらから見るか GDP は一国の総生産額(付加価値の合 計)でした。 – 生産(=供給)側から見る見方と – 需要側から見る見方がある。 二つの見方はともに大事。 三面等価の原則から言うと、「生産=付 加価値」の見方と、「支出=需要」の見 方。
終章 結論~迷走する経済学~ E班 堀口・石川・細野・武井・赤見・伊藤 デフレの原因はマネーサプライでもない!人工減少でもな い!ではデフレの正体は何か … この章ではその正体を含め、歴史的に見る経済低滞とデフレ の関係性、デフレの害悪、そして現在の経学の現状について も論じていく。 1.
需要と供給. 需要と供給の概念 需要:ある財の価格の下で、消費者が買 いたい(消費したい)と思う量。 (注意:実際に買った量だとは限らない) 供給:ある財の価格の下で、企業が売り たいと思う量。 (注意:実際に売った量だとは限らない)
『マクロ金融特論』 ( 2 ) 一橋大学大学院商学研究科 小川英治 マクロ金融特論
1 IV 長期における貨幣と価格. 第11章 貨幣システム 物々交換 欲望の二重の一致 1.貨幣の意味 貨幣の機能 – 交換手段 – 計算単位 – 価値貯蔵手段 富 流動性 貨幣の種類 – 商品貨幣 金本位制 – 不換紙幣.
貨幣の役割と貨幣市場 経済学B 第 9 回 畑農鋭矢 1. 貨幣の役割 価値尺度 財の価値を表す共通の尺度 交換手段 物々交換⇒欲望の二重の一致 貨幣によって交換が容易に 価値の保蔵手段 安全資産としての保蔵手段.
短期均衡 (2) IS-LM モデル 財市場 IS 曲線 – 財市場の均衡 – 政府支出の増加,減税 貨幣市場 LM 曲線 – 貨幣需要,貨幣市場の均衡 – マネーサプライの増加 IS-LM モデル – 財政政策の効果,金融政策の効果 – 流動性の罠 – 実質利子率と名目利子率の区別 貨幣供給.
貨幣について. 講義概要 貨幣の概念 名目と実質貨幣ストック 貨幣に対する需要 政府による金融政策.
IS-LM 分析 マクロ経済分析 畑農鋭矢. 貨幣の範囲 通貨対象 M1M2M3 広義流動性 現金通貨(日銀券 +補助通貨) 預金通貨 (普通預金・当座 預金など) 主要銀行・信 用金庫など ゆうちょ銀 行・信用組合 など 準通貨 (定期預金など) 主要銀行・信 金など ゆうちょ銀 行・信用組合 など.
GDPとは? GDP(Gross Domestic Product:国内総生産)
第6章 閉鎖経済における短期のマクロ経済理論
労働市場マクロ班.
貨幣の役割と貨幣市場 経済学B 第11回 畑農鋭矢.
第1章 国民所得勘定.
マクロ経済学 II 第7章 久松佳彰.
第11回講義 マクロ経済学初級I タイプIIクラス.
第16章 総需要に対する 金融・財政政策の影響 1.総需要曲線は三つの理由によって右下がりである 資産効果 利子率効果 為替相場効果
<キーワード> 景気循環 総需要・総供給モデル
マクロ経済学 I 第3章 久松佳彰.
第2章 バブル崩壊後における経済の長期停滞の原因をどうみるか
<キーワード> 生産関数、労働、資本 限界生産物
第8回講義 文、法 経済学 白井義昌.
IS-LM分析 経済学B 第10回 畑農鋭矢.
7: 新古典派マクロ経済学 合理的期待学派とリアル・ビジネス・サイクル理論
マクロ経済学 II 第9章 久松佳彰.
(景気が良くなり)ハンバーガーの需要が拡大すると
マクロ経済学入門 第4話 失業の原因 立命館大学経済学部 松尾匡.
第4章 IS-LMモデル 労働市場との関係 IS・LMの交点(Y0, i0)は財市場と貨幣市場において,それぞれ需給均衡が達成しているが,労働市場において需給均衡を保証していない。 例えば,賃金の硬直性などの理由により,非自発的失業者が存在する可能性は十分にある。 完全雇用GDPがYFであるとすると,この経済にはY0YFに相当する所得不足が存在することになる。この不足は有効需要の不足によって発生したものである。
短期均衡モデル(3) AD-ASモデル ケインジアン・モデルにおける物価水準の決定 AD曲線 AS曲線 AD-ASモデル
第10章 失業と自然失業率 失業率はマクロ経済学においてGDP(5章)、インフレ率(6章)と並び重要な指標 各国の失業率(2012年、%)
第8章 開放マクロ経済学.
6: 失業とインフレーション/デフレーション
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硬直価格マネタリー・アプローチ MBA国際金融2016.
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<キーワード> 景気循環 総需要・総供給モデル
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第4章 投資関数.
前期ゼミまとめ スラックス経済.
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市場経済 商品を買 いたい人 商品を売 りたい人 市場 (いちば) 外国と交易し, 商品範囲を広げる 商人は 利得を拡大 客の要望 が増大.
動学的一般均衡モデルについて 2012年11月9日 蓮見 亮.
デフレ・スパイラル 2009年以降の事例から 長谷川 正
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マクロ経済学初級II タイプIIクラス 白井義昌
第8回講義 マクロ経済学初級I .
第5回講義 マクロ経済学初級I  白井義昌.
固定相場制のもとでの財政・金融政策の効果
マクロ経済学体系のフローチャート 財 市 場 (IS曲線) IS・LM モデル 総需要 曲 線 所 得 と 物価水準 の 決 定 インフレと
マクロ経済学初級I (春学期) 2005年 白井 義昌 4月19日 マクロ経済学初級I.
7: 新古典派マクロ経済学 生産要素の完全雇用 ケインズ経済学の中心的な考え方(需要サイド,4章と5章のIS/LMモデル) ↑ ↓
第6章 IS-LMモデル.
公共経済学(第5講 市場メカニズムの機能と市場均衡 )
マクロ経済学初級I タイプIIクラス 白井義昌
第9回講義 マクロ経済学初級I タイプIIクラス.
第6回講義 マクロ経済学初級I  白井義昌.
経済学(第7週) 前回のおさらい 前回学習したこと(テキストp.16,19) ◆ マクロ経済学における短期と長期 ◆ 完全雇用とはなにか ◆ 短期のマクロ経済モデルの背後にある考え方 (不況の経済学/有効需要原理) ◆ 民間部門はどのように消費や投資を決定するか ◆ ケインズ型消費関数とはなにか ◆
市場と価格について学習してみよう スタート スタート.
マクロ経済学初級II タイプIIクラス 白井義昌
マクロ経済学初級I 第12回 今学期のまとめ.
12章 貨幣量の成長とインフレーション 1.インフレーションの古典派理論 物価水準と貨幣の価値は逆数の関係
経済学入門 ミクロ経済学とマクロ経済学 ケインズ経済学と古典派マクロ経済学 経済学の特徴 経済学の基礎概念 部分均衡分析の応用.
IV 長期における貨幣と価格.
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マクロ経済学 II 第10章 久松佳彰

10章 総需要と総供給:物価の決定 マクロ経済学では、総需要と総供給という考え方を利用して、物価についてアプローチする。 10章 総需要と総供給:物価の決定 マクロ経済学では、総需要と総供給という考え方を利用して、物価についてアプローチする。 ケインジアンと新古典派の論争は、総供給曲線の形状によって示すことができる。

名目値と実質値 これまでにGDPや消費や投資を扱うときに、物価の問題をきちんと考えてこなかった。 GDPには名目GDPと実質GDPがある。名目GDPは、生産量が変化しなくても、物価が2倍になったら名目GDPは2倍になる。 同じ名目GDPが2倍になるのでも、物価が上がって(インフレになって)2倍になるのと、生産量が増加して2倍になるのとは大違い。

名目値と実質値 実質的に考える為に、実質変数を導入する。 Y=p・y pは物価水準、yは総生産量を表す。 全ての名目変数は、物価と実質変数の積(掛け算)の形で表すことができる。 実質変数の中で、重要なものに実質貨幣残高(real money balance)がある。

実質貨幣残高 名目貨幣量Mを物価pで割ったもの 現在市中に流通している貨幣量で、どれだけの財・サービスが購入できるかを表したものである。 財・サービスの単位で表した貨幣量 物価pは貨幣と財・サービスの交換比率を表したものと考えることもできる。 1/pを貨幣の購買力と呼ぶ。

物価水準の決定:総需要と総供給 経済全体の需要と物価の関係を、総需要曲線で表し、経済全体の供給と物価の関係を総供給曲線で表す。 物価は経済全体としての需要と供給をバランス(均衡)させる水準に決まる

物価水準 S(総供給曲線) D(総需要曲線) 総生産量、総需要量 財政政策 投資・貿易動向 労働市場 資本設備 技術 資源 財市場 資産市場 生産活動 総需要 総供給 金融政策 物価 ディマンドサイド(需要側) サプライサイド(供給側)

総需要 IS曲線とLM曲線を実質変数で表す IS曲線 Y=C(Y)+I(r)+G 実質化: y=c(y)+i(r)+g LM曲線 M=L(r, Y) 実質化: M/p=L(r, y)

総需要曲線 pが高くなると、LM曲線においてM/p(実質貨幣残高)が減少し、LM曲線は左側にシフトして(貨幣供給を減少したのと同じ効果)、均衡点においてyは減少し、金利は上昇する。 すなわち、pが高くなると、yは減少する。 総需要曲線は、右下がりの線になる。 図10-3

総供給 総供給の短期的変動を引き起こす重要な要因は、失業・操業短縮に伴う労働力投入の増減である。 失業率上昇→総供給低下 長期的には、投資による資本蓄積、技術進歩の程度も重要。 税制は投資に影響を与えるので重要。

雇用量の決定と労働市場 賃金を物価で割ったものを実質賃金率と呼びます。 通常の賃金は、名目賃金率 実質賃金 Ls l* (w/p)** Ld 労働量

新古典派の総供給曲線 賃金も物価もスムーズに動くときには、雇用水準と物価水準には関係がない。常に完全雇用の状態が実現する。 雇用量と強い関係をもつ生産量も、物価水準とは関係ない。 ゆえに、総供給曲線は垂直になる。 物価水準 L* 労働量

ケインジアンの総供給曲線 賃金が硬直的だと総供給曲線は右上がりになる。 賃金は契約によって決まり、柔軟には変わらない傾向がある。 名目賃金が下方硬直性を持つ場合(下がらない場合)を見よう。 物価水準 完全雇用 不完全雇用 L* 労働量

新古典派のケース(1) 貨幣量増大→総需要増大→物価上昇 物価水準 B A y* y

新古典派のケース(2) 海外からの原燃料の供給の減少→総供給曲線が左にシフト→物価の上昇 物価水準 C A y* y* y

ケインジアンのケース 賃金が硬直的だと総供給曲線は右上がりになる。 賃金は契約によって決まり、柔軟には変わらない傾向がある。 名目賃金が下方硬直性を持つ場合(下がらない場合)を見よう。 物価水準 y