しごきスピニング加工の 近似3次元有限要素シミュレーション 塑性加工研究室 明石 和繁 局部的な変形 肉厚分布を持った製品 低い加工荷重

Slides:



Advertisements
Similar presentations
模型を用いたジェットコターの 力学的原理の検討 06522 住友美香 06534 秦野夏希. 平成22年度 卒業研究発表 山田研究室 研究目的 ジェットコースターのコースは、どのような計算に 基づいて作られているのか、研究を通じて理解し、 計算を用いた模型製作を行う。
Advertisements

No.2 実用部材の疲労強度           に関する研究 鹿島 巌 酒井 徹.
円形管における3次元骨組解析への適用事例 平成16年9月17日 (株)アイエスシイ 犬飼隆義.
20. ショットの跳返りを利用した機械部品内面への ショットピーニング加工法の開発
第4章 ねじを使う設計技術 ね じ ★ねじを使わない機械はほとんどない。 ★ねじにはどのような種類があるのか? ★ねじを使うときの注意点は?
概要 基礎理論 1.応力とひずみおよび平衡方程式 2.降伏条件式 3.構成式(応力-ひずみ関係式)
セグメント鏡の研削加工 所 仁志 株式会社ナノオプトニクス・エナジー
大阪工業大学 情報科学部 情報システム学科 宇宙物理研究室 B 木村悠哉
1.Atwoodの器械による重力加速度測定 2.速度の2乗に比例する抵抗がある場合の終端速度 3.減衰振動、強制振動の電気回路モデル
東京工業大学    ○ 青木 康平 正 大西 有希 正 天谷 賢治 株式会社アールテック      清水 利恭 小杉 隆司 名古屋大学      礒田 治夫
株式会社 中田製作所 代表取締役 中田 寛 大阪TLO 鄭 盛旭 大阪府立産業技術総合研究所 谷口 正志、杉井春夫
モンテカルロ法と有限要素法の連成による 焼結のマイクロ‐マクロシミュレーション
3次元での回転表示について.
R&D Division, Polyplastics Co., Ltd. Technical Solution Center
車両工学特論02 タイヤの力学.
コンクリートの強度 (構造材料学の復習も兼ねて)
使用限界状態 コンクリート工学研究室 岩城 一郎.
塑性加工の有限要素シミュレーション 豊橋技術科学大学  森 謙一郎 有限要素法の基礎 鍛造,押出し,深絞り加工への応用.
MPIを用いた最適な分散処理 情報論理工学研究室 角 仁志
ひび割れ面の摩擦接触を考慮した損傷モデル
マイケルソン・モーレーの実験の検証 マイケルソン・モーレーの実験ではもう一つの往復光を垂直方向に分けて行った。
塑性加工 第1回 今日のテーマ 塑性変形とは(塑性変形した後どうなる?) (応力(圧力)とひずみ(伸び)、弾性変形) 金属組織と変形
本時の目標 「相似な図形の相似比と面積比の関係を理解し、それを用いて相似な図形の面積を求めることができる。」
高出力Nier型イオン源の開発 環境計測学研究室 清水森人 高出力Nier型イオン源開発の報告を始めます。
FPCCDバーテックス検出器における ペアバックグラウンドの評価 4年生発表 2010/03/10 素粒子実験グループ 釜井 大輔.
4章:曲げモーメントを受ける部材 キーワード:非線形挙動、断面解析、終局耐力、 等価応力ブロックによる塑性解析、
メンバー 梶川知宏 加藤直人 ロッケンバッハ怜 指導教員 藤田俊明
3次元での回転表示について.
材料強度学の目的 機械とは… 材料強度学 外部から力を加えて、人に有益な仕事をするシステム 環境 力 材料 材料の破壊までを考える。
集積回路中における 絶縁膜に加わる熱応力の緩和
古代の難問と曲線 (3時間目) 筑波大学大学院 教育研究科 1年                 石井寿一.
アキシャル成形 主要設備構成 2 成形シリンダーと 同心マンドレル装置 1 2 分割式チャック 3 3 成形ダイス 5 4 マンドレル
図形の移動 穴吹中学校  磯村  淳.
中3数 三平方の定理の利用 内 容 2つの三角定規の3辺の比 平面図形への利用 座標平面上の2点間の距離を求める。
舗装材料小委員会 資料  改質バインダの混合温度および締固め温度 (出典) NCHRP REPORT 459
応力(stress, s, t ) 自由物体図(free-body diagram)において、外力として負荷荷重P が作用したとき、任意の切断面で力の釣り合いを考慮すると、面における単位面積あたりの内力が存在する、それを応力といい、単位は、Pa(N/m2) で表す。面に垂直に働く垂直応力、s と平行に働くせん断応力、
VRML とJavaによる 3次元動作シミュレーションの実現
(株)ナノオプトニクス・エナジー 高橋啓介 11/14 技術検討会@岡山
X線望遠鏡用反射鏡製作のための スパッタマスクの開発
FEM勉強会 (第3回).
リングの回転成形の 近似3次元有限要素シミュレーション 塑性加工研究室 平松直登 一般化平面ひずみを用い た近似3次元FEM
金属加工学 “材料に形を与える” 材料プロセス工学専攻 材料加工工学講座 湯川伸樹.
第1回、平成22年6月30日 ー FEM解析のための連続体力学入門 - 応力とひずみ 解説者:園田 恵一郎.
4章:曲げモーメントを受ける部材 キーワード:非線形挙動、断面解析、終局耐力、 等価応力ブロックによる塑性解析、
たわみ角法の基本式 長さl,曲げ剛性EIのラーメンの一部材ABが中間荷重を受けて,移動,変形したときの材端モーメントMAB,MBA (時計回りが+)は,
情報経済システム論:第13回 担当教員 黒田敏史 2019/5/7 情報経済システム論.
円管の口絞り加工におけるカーリング現象の 有限要素シミュレーション
(株)ナノオプトニクス・エナジー 高橋啓介 6/5 @名古屋大学
5年 算数 「面積(平行四辺形)」.
曲げを受ける鉄筋コンクリート部材 (状態III)
第4班 王 健強 倉本吉和 須賀孝太郎 和田英志 服部修策 池内 玄
対象:せん断補強筋があるRCはり(約75万要素)
乗用車用スチールホイールディスクの 多段プレス成形における加工条件の決定
管材のしごきスピニング加工 における加工限界 塑性加工研究室 安部洋平 ロール角度, 送り量, 肉厚減少率の影響 ロール v マンドレル
リングローリング加工における プラスティシンを用いたモデル実験
1.5層スペースフレームの 接合方法に関する研究
軸対称近似を用いたしごきスピニングの 有限要素シミュレーション
7 乗用車用スチールホイールの一体プレス成形法の開発
ここでは、歪エネルギーを考察することにより、エネルギー原理を理解する。
ステンレス多段深絞り容器の表面粗さの低減
鉄筋コンクリートはりの 曲げ耐力の算出 コンクリート工学研究室 岩城一郎.
大型ホイールのディスク成形における 有限要素シミュレーション 有限要素 シミュレーション 工具と素材形状の最適化 材料の歩留り向上
塑性加工 第2回 今日のテーマ ・応力ーひずみ線図の正しい見方 (ヤング率はなぜ異なるのか?) (引張と圧縮は同じ?)
コンクリート構造物の 力学を学ぶために コンクリート工学研究室 岩城 一郎.
ベクトル関数の回転(カール、ローティション)
自動車ホイールのディスク成形に おける肉厚分布を持つ円環の加工 加工能率低下 図 ディスク成形 塑性加工研究室 中川原 大助 スピニング
振幅は 山の高さ=谷の深さ A x A.
各種荷重を受ける 中空押出形成材の構造最適化
RCはりをU字型補強した連続繊維シートによる
Presentation transcript:

しごきスピニング加工の 近似3次元有限要素シミュレーション 塑性加工研究室 明石 和繁 局部的な変形 肉厚分布を持った製品 低い加工荷重 塑性加工研究室 明石 和繁 円管 ロール 素材 マンドレル テーパ状ディスク 局部的な変形 肉厚分布を持った製品 低い加工荷重 しごきスピニング加工の近似3次元有限要素シミュレーションに関して発表をおこないます. 塑性加工研明石和繁です. スピニング加工は回転する素材にロールを押しつけ 肉厚を減少すると同時に肉厚分布をつける加工法です. この加工法は局部的な変形をくり返す 肉厚分布を持った軸対称製品の製造が容易 その加工荷重が低い という特徴があり, 大型部品の厳しい加工への適用が盛んになりつつあります. しごきスピニング加工は 製品直径が変化しない円管のしごきスピニング加工と 製品直径が変化するテーパ状部品のしごきスピニング加工に分けることが出来ます. 本研究ではこの2種類についてそれぞれ有限要素シミュレーションをおこないました.

近似3次元計算による 比較的短時間での計算 しごきスピニング加工 ロール 3次元FEMの問題点 素管 膨大な計算時間 複雑な境界条件 マンドレル 3次元FEMの問題点 膨大な計算時間 複雑な境界条件 近似3次元計算による 比較的短時間での計算 3次元加工であるしごきスピニング加工の 3次元モデルによる有限要素法解析は 分割した要素が多くなります. また,回転しながら加工が行われるため,時間ステップも多くなります. そのため計算時間が数十~数百時間と膨大となってしまいます. さらに境界条件の設定が複雑になります. そのため実加工のへの適用は困難と言えます. そこで本研究では比較的短い時間で計算が可能となるような 近似3次元有限要素シミュレーション法の提案を行いました.

円管のしごきスピニング加工 一般化平面ひずみ近似 vz Lz :通常の四角形要素 y x z Lz:接触長さ まずはじめに円管のしごきスピニング加工を取り扱いました. 回転する円管をロールで圧下する回転鍛造として計算を行います. このときに軸方向への速度vzが断面内で一定と仮定して, 一般化平面ひずみ近似を行います. 断面内のひずみ速度εx,εy,γxyは通常の4角形要素で計算します. そして各断面における軸方向へのひずみ速度εzをこのようになります. 通常の平面ひずみ問題の有限要素法にこのεzが1つだけ変数として追加されます. y x z Lz:接触長さ Lz

軸方向のせん断ひずみ変形 Lz 剛体回転 せん断変形 計算はロールが素管と接触をはじめるロール入り口から, 接触が終わるこのロール出口まで行います. 一般化平面ひずみ理論では各断面は均一に伸びるため軸方向のせん断変形は無視されます. しかし,しごきスピニング加工では素管の断面形状が徐々に変化するため, 軸方向のせん断変形の影響が大きくなります. そこで,剛体の回転からの差が軸方向のせん断変形であるとして,このように定義します. このほしが外部から円管が回転させられる速度です.

シミュレーション結果 ロール マンドレル ロール PentiumⅡ 400MHz 128MB SDRAM 約20分 素管材質:A1050 変形抵抗: MPa送り速度:v=0.2mm/s 肉厚減少率:R=30% 回転数:70rpm マンドレル 計算の結果を示します. 計算と実験の条件はこのようになっています この緑色の格子が素材,オレンジの物がロール,灰色がマンドレルです. 素管が回転するに従いロール径が増加し素管が圧下されていることが分かります. 計算時間はペンティアムⅡ400MHzのパーソナルコンピュータで約20分でした. このように普通のパソコンを用いても比較的短い時間で計算が出来,実加工への応用が出来ます. PentiumⅡ 400MHz 128MB SDRAM 約20分 ロール

ロール入り口部の盛上がり (a) n=0回転 (b) n=1.4回転 (c) n=2.4回転 v=1.0mm/s R=30% 実験で加工不良となった条件で計算された各断面です. nは素管の回転数です. 送り速度が大きいと加工途中でロール入り口部で盛上がりが大きくなります.   (a) n=0回転 (b) n=1.4回転 (c) n=2.4回転 v=1.0mm/s R=30%

ta tb ロール入り口部における盛上がり率の定義 ロール 素材 マンドレル 盛上がり率 盛上がり R:肉厚減少率 n:ロールの個数 実際の加工ではロール進行方向に盛上がりが生じ加工不良となりますが 本計算ではロール入り口から計算が始まるためにこの盛上がりは計算できません. ロール入り口での盛上がりが大きくなるときには ロール前方での盛上がりも大きくなるため, ロール入り口部での盛上がりを計算することにしました. ロール入り口部での盛上がりをこのように定義します. 盛上がり率  R:肉厚減少率 n:ロールの個数 m:総回転数 盛上がり 送り方向

盛上がり率に及ぼす加工速度の影響(R=30%) この盛り上がり率を送り速度を変えて計算した物をしめします. 計算対象の節点が変化するたびに盛り上がり率が変動するので 対数近似処理を行いました. 送り速度が大きくなると盛上がり率が大きくなることが分かります. また送り速度が大きいほど変形を受ける回転数が小さくなることも分かります. 加工が終了した点での盛上がり率で比較を行いました.

盛上がり率から求められた加工限界曲線 実験との比較から盛り上がり率が6%を越える場合を加工不良と判定しました. 肉厚減少率と送り速度を変えて求めた加工限界線図をしめします. 断面内の盛上がりによって近似的に加工限界が予測できることが分かりました.

テーパ状ディスクのしごきスピニング加工 スピニング加工 z r 軸対称近似 + 円周方向のせん断ひずみ z r つぎにテーパ状ディスクのしごきスピニング加工を取り扱いました. 一般化平面ひずみ近似では各断面しか計算しないために製品全体を計算できません. テーパ状のしごきスピニングでは製品径が増加するために 加工全体を計算する必要があります. そのためこのようにマンドレルと直径が増加するダイスによる軸対称鍛造加工に近似します. ロールは素材の一部にしか接触しないため円周方向のせん断ひずみ変形を考慮します ロールが素材と接触している点を含む断面を軸方向から見た図で この円周方向のせん断ひずみについて考えます.

円周方向のせん断ひずみ変形 素材 ロール rc 接触長さLθ r θ vr せん断ひずみ速度 マンドレル 押込み量ΔL vr:半径方向速度 軸対称近似ではダイスが素材全面に当たりますが, このようにロールが素材の一部に当たっているモデルを考えます. ロールと素材の接触長さをLθ, ロールと接触している節点における半径方向速度をvrとすると 円周方向のせん断ひずみ速度γrθはこのようになります. 押込み量ΔL マンドレル vr:半径方向速度

シミュレーション結果 35° φ72 マンドレル 素板 ロール PentiumⅡ 400MHz 128MB SDRAM 約15分 回転数:53rpm 送り速度:v=0.1mm/s 変形抵抗: MPa 計算結果を示します. 計算と実験条件はこのようにしました. ロールはマンドレルと平行に移動するようにしています. 計算はさきほどとおなじぱそこんで約15分で完了しました. ロールによって素材がしごかれている様子が分かります. PentiumⅡ 400MHz 128MB SDRAM 約15分

計算と実験の断面比較 計算 (a)ローラ逃げなし 実験 (b)ローラ逃げあり 計算と実験の断面の比較を示します. 実際の加工ではロール等に逃げが生じたためこのように相違があります. そこでロールの軌跡を実験から求め,ロールの逃げを考慮した計算を行うと このようによい一致が得られました. ロール軌跡を考慮できるシミュレータとなっています. (b)ローラ逃げあり

加工荷重の比較 10 20 30 200 400 600 800 ストロークs / mm 荷重P / N 計算 実験 ストロークs / mm 荷重P / N 計算 実験 ロール送り方向の加工荷重を行いました. 計算では軸対称有限要素シミュレーションによって得られた 加工荷重をロールの接触面積比で補正してしごきスピニング加工の加工荷重として求めました. 実験ではロール軸にロードセルと取り付けて測定しました. 得られた加工荷重と実験から得られた加工荷重の比較を示します. 計算で得られた加工荷重は振動していたのでなめらかな曲線で近似しています. 定常域でよい一致が得られます.

まとめ 円管のしごきスピニング加工の 近似3次元シミュレーション法 円管のしごきスピニング加工について 加工限界を求めた テーパ状ディスクのしごきスピニング加工の 近似3次元シミュレーション法 テーパ状ディスクのしごきスピニング加工の 加工荷重を予測 計算に要する時間は短時間