しごきスピニング加工の 近似3次元有限要素シミュレーション 塑性加工研究室 明石 和繁 局部的な変形 肉厚分布を持った製品 低い加工荷重 塑性加工研究室 明石 和繁 円管 ロール 素材 マンドレル テーパ状ディスク 局部的な変形 肉厚分布を持った製品 低い加工荷重 しごきスピニング加工の近似3次元有限要素シミュレーションに関して発表をおこないます. 塑性加工研明石和繁です. スピニング加工は回転する素材にロールを押しつけ 肉厚を減少すると同時に肉厚分布をつける加工法です. この加工法は局部的な変形をくり返す 肉厚分布を持った軸対称製品の製造が容易 その加工荷重が低い という特徴があり, 大型部品の厳しい加工への適用が盛んになりつつあります. しごきスピニング加工は 製品直径が変化しない円管のしごきスピニング加工と 製品直径が変化するテーパ状部品のしごきスピニング加工に分けることが出来ます. 本研究ではこの2種類についてそれぞれ有限要素シミュレーションをおこないました.
近似3次元計算による 比較的短時間での計算 しごきスピニング加工 ロール 3次元FEMの問題点 素管 膨大な計算時間 複雑な境界条件 マンドレル 3次元FEMの問題点 膨大な計算時間 複雑な境界条件 近似3次元計算による 比較的短時間での計算 3次元加工であるしごきスピニング加工の 3次元モデルによる有限要素法解析は 分割した要素が多くなります. また,回転しながら加工が行われるため,時間ステップも多くなります. そのため計算時間が数十~数百時間と膨大となってしまいます. さらに境界条件の設定が複雑になります. そのため実加工のへの適用は困難と言えます. そこで本研究では比較的短い時間で計算が可能となるような 近似3次元有限要素シミュレーション法の提案を行いました.
円管のしごきスピニング加工 一般化平面ひずみ近似 vz Lz :通常の四角形要素 y x z Lz:接触長さ まずはじめに円管のしごきスピニング加工を取り扱いました. 回転する円管をロールで圧下する回転鍛造として計算を行います. このときに軸方向への速度vzが断面内で一定と仮定して, 一般化平面ひずみ近似を行います. 断面内のひずみ速度εx,εy,γxyは通常の4角形要素で計算します. そして各断面における軸方向へのひずみ速度εzをこのようになります. 通常の平面ひずみ問題の有限要素法にこのεzが1つだけ変数として追加されます. y x z Lz:接触長さ Lz
軸方向のせん断ひずみ変形 Lz 剛体回転 せん断変形 計算はロールが素管と接触をはじめるロール入り口から, 接触が終わるこのロール出口まで行います. 一般化平面ひずみ理論では各断面は均一に伸びるため軸方向のせん断変形は無視されます. しかし,しごきスピニング加工では素管の断面形状が徐々に変化するため, 軸方向のせん断変形の影響が大きくなります. そこで,剛体の回転からの差が軸方向のせん断変形であるとして,このように定義します. このほしが外部から円管が回転させられる速度です.
シミュレーション結果 ロール マンドレル ロール PentiumⅡ 400MHz 128MB SDRAM 約20分 素管材質:A1050 変形抵抗: MPa送り速度:v=0.2mm/s 肉厚減少率:R=30% 回転数:70rpm マンドレル 計算の結果を示します. 計算と実験の条件はこのようになっています この緑色の格子が素材,オレンジの物がロール,灰色がマンドレルです. 素管が回転するに従いロール径が増加し素管が圧下されていることが分かります. 計算時間はペンティアムⅡ400MHzのパーソナルコンピュータで約20分でした. このように普通のパソコンを用いても比較的短い時間で計算が出来,実加工への応用が出来ます. PentiumⅡ 400MHz 128MB SDRAM 約20分 ロール
ロール入り口部の盛上がり (a) n=0回転 (b) n=1.4回転 (c) n=2.4回転 v=1.0mm/s R=30% 実験で加工不良となった条件で計算された各断面です. nは素管の回転数です. 送り速度が大きいと加工途中でロール入り口部で盛上がりが大きくなります. (a) n=0回転 (b) n=1.4回転 (c) n=2.4回転 v=1.0mm/s R=30%
ta tb ロール入り口部における盛上がり率の定義 ロール 素材 マンドレル 盛上がり率 盛上がり R:肉厚減少率 n:ロールの個数 実際の加工ではロール進行方向に盛上がりが生じ加工不良となりますが 本計算ではロール入り口から計算が始まるためにこの盛上がりは計算できません. ロール入り口での盛上がりが大きくなるときには ロール前方での盛上がりも大きくなるため, ロール入り口部での盛上がりを計算することにしました. ロール入り口部での盛上がりをこのように定義します. 盛上がり率 R:肉厚減少率 n:ロールの個数 m:総回転数 盛上がり 送り方向
盛上がり率に及ぼす加工速度の影響(R=30%) この盛り上がり率を送り速度を変えて計算した物をしめします. 計算対象の節点が変化するたびに盛り上がり率が変動するので 対数近似処理を行いました. 送り速度が大きくなると盛上がり率が大きくなることが分かります. また送り速度が大きいほど変形を受ける回転数が小さくなることも分かります. 加工が終了した点での盛上がり率で比較を行いました.
盛上がり率から求められた加工限界曲線 実験との比較から盛り上がり率が6%を越える場合を加工不良と判定しました. 肉厚減少率と送り速度を変えて求めた加工限界線図をしめします. 断面内の盛上がりによって近似的に加工限界が予測できることが分かりました.
テーパ状ディスクのしごきスピニング加工 スピニング加工 z r 軸対称近似 + 円周方向のせん断ひずみ z r つぎにテーパ状ディスクのしごきスピニング加工を取り扱いました. 一般化平面ひずみ近似では各断面しか計算しないために製品全体を計算できません. テーパ状のしごきスピニングでは製品径が増加するために 加工全体を計算する必要があります. そのためこのようにマンドレルと直径が増加するダイスによる軸対称鍛造加工に近似します. ロールは素材の一部にしか接触しないため円周方向のせん断ひずみ変形を考慮します ロールが素材と接触している点を含む断面を軸方向から見た図で この円周方向のせん断ひずみについて考えます.
円周方向のせん断ひずみ変形 素材 ロール rc 接触長さLθ r θ vr せん断ひずみ速度 マンドレル 押込み量ΔL vr:半径方向速度 軸対称近似ではダイスが素材全面に当たりますが, このようにロールが素材の一部に当たっているモデルを考えます. ロールと素材の接触長さをLθ, ロールと接触している節点における半径方向速度をvrとすると 円周方向のせん断ひずみ速度γrθはこのようになります. 押込み量ΔL マンドレル vr:半径方向速度
シミュレーション結果 35° φ72 マンドレル 素板 ロール PentiumⅡ 400MHz 128MB SDRAM 約15分 回転数:53rpm 送り速度:v=0.1mm/s 変形抵抗: MPa 計算結果を示します. 計算と実験条件はこのようにしました. ロールはマンドレルと平行に移動するようにしています. 計算はさきほどとおなじぱそこんで約15分で完了しました. ロールによって素材がしごかれている様子が分かります. PentiumⅡ 400MHz 128MB SDRAM 約15分
計算と実験の断面比較 計算 (a)ローラ逃げなし 実験 (b)ローラ逃げあり 計算と実験の断面の比較を示します. 実際の加工ではロール等に逃げが生じたためこのように相違があります. そこでロールの軌跡を実験から求め,ロールの逃げを考慮した計算を行うと このようによい一致が得られました. ロール軌跡を考慮できるシミュレータとなっています. (b)ローラ逃げあり
加工荷重の比較 10 20 30 200 400 600 800 ストロークs / mm 荷重P / N 計算 実験 ストロークs / mm 荷重P / N 計算 実験 ロール送り方向の加工荷重を行いました. 計算では軸対称有限要素シミュレーションによって得られた 加工荷重をロールの接触面積比で補正してしごきスピニング加工の加工荷重として求めました. 実験ではロール軸にロードセルと取り付けて測定しました. 得られた加工荷重と実験から得られた加工荷重の比較を示します. 計算で得られた加工荷重は振動していたのでなめらかな曲線で近似しています. 定常域でよい一致が得られます.
まとめ 円管のしごきスピニング加工の 近似3次元シミュレーション法 円管のしごきスピニング加工について 加工限界を求めた テーパ状ディスクのしごきスピニング加工の 近似3次元シミュレーション法 テーパ状ディスクのしごきスピニング加工の 加工荷重を予測 計算に要する時間は短時間