セブンイレブンの発注・納品時間変更による 廃棄物量と店舗利益への影響 セブンイレブンの発注・納品時間変更による 廃棄物量と店舗利益への影響 流通情報工学課程 2002723 杉山雷蔵 研究題目をセブンイレブンの発注・納品時間変更による廃棄物量と店舗利益への影響としまして杉山雷蔵が発表させていただきます。
研究背景 生ごみの発生を抑制するべきである。 現在では大きく普及しているコンビニエンスストアですが、一方で大量の廃棄物を排出しているという問題点もあります。 大手3社の平均でも1店舗1日あたり約60キロのごみを排出しています。 そのうち多くを占めるのが生ごみ23.5%と有価物、主にダンボール28%です。 これらダンボールに関しては削減の取り組みがなされていますが、生ごみにはそのような取り組みがなされていません。 そこで生ごみの発生を抑制するべきだと考えました。 生ごみの発生を抑制するべきである。
店舗における利益最大化について検討する。 研究目的 廃棄を出さないためには発注が重要である。 セブンイレブンでは発注・納品時間の変更があった。 セブンイレブンの行った変更について、廃棄物量と店舗利益に与える影響について検討する。 新方式の発注・納品時間に対応した、 店舗における利益最大化について検討する。 コンビニエンスストアにおける生ごみとは販売期限切れの弁当、いわゆる廃棄で、これらの発生を抑制するためには発注が非常に重要になります。 その発注に関する変更がセブンイレブンで行われました。 そこで本研究ではセブンイレブンの行った変更について廃棄物量と店舗利益に与える影響について検討します。 また新方式が導入された際の発注・納品時間に対応した店舗における利益最大化について検討します。
セブンイレブンの発注・納品時間変更 従来方式 新方式(2005年11月導入) セブンイレブンの行った発注・納品時間の変更について説明します。 おもな変更点は、発注時間では当日発注だった3便も含めて、前日の一括発注になったことが挙げられます。 これにより3便のリードタイムが5時間から27時間と大幅に延長されました。 次に納品時間では1便を遅く、3便を早く到着するようになっています。
必要在庫量の計算式 必要在庫量= 廃棄量が増加する! 発注・納品時間変更後、3便のリードタイムは22時間増加している。 安全在庫 リードタイム中の需要の平均値 L:リードタイム μ:単位期間中の需要の平均値 k:安全係数 σ:単位期間中の需要のバラツキ 発注・納品時間変更後、3便のリードタイムは22時間増加している。 バラツキの増大に伴い安全在庫が増加する。 この変更の影響を必要在庫量の式から説明します。 主な変更点のひとつである1・2・3便の一括発注により、3便のリードタイムが22時間増加しています。 これに伴いバラツキが大きくなり、欠品率を一定に保とうとすると、持つべき安全在庫が増加し、結果として廃棄量が増加します。 廃棄量が増加する!
本社と店舗の主張 店舗の主張 本社の主張 欠品率を下げると 夕食時の欠品を抑えたい。 廃棄が増加する。 欠品率を下げることで売上を伸ばしたい。 廃棄は出したくない! 今回の変更の本社の意図は、客単価の高くなりやすい3便の時間帯である夕食時の欠品を抑えることにあります。 というのも従来方式では3便が当日発注なので店舗では売り場の商品残を見て、廃棄を減らすために発注を絞る傾向があるからです。 つまり今回の変更の本社の狙いは欠品率を下げることで売上を伸ばすことにあります。 それに対して店舗では欠品率を下げることで廃棄が増加することを懸念しています。 ここでいう店舗は本社の直接運営する直営店ではなく、独立した経営者の運営する加盟店をさします。 この店舗で廃棄がでた場合、店舗の経営に係る損失は仕入価格と廃棄の処理費用がありますが、一般的な契約ではこの両方ともが店舗の負担になります。 なので店舗では廃棄を出したくないという意識があります。
従来方式と新方式の比較 ①廃棄数量 ②店舗利益 従来方式 検討項目 新方式 比較 3便の発注を抑えた場合 3便の発注を積極的にした場合 以上を踏まえて従来方式と新方式をシミュレーションを用いて比較します。 新方式は本社の狙い通り3便の発注を積極的に行った場合と従来どおり、廃棄を出さないために3便の発注を抑えた場合に分け比較します。 3便の発注を積極的に行った場合と抑えた場合は、欠品率の大小によって区別します。 その際検討する項目は一つ目として廃棄数量、二つ目に店舗における利益とします。 3便の発注を抑えた場合 新方式 3便の発注を積極的にした場合
条件の設定(リードタイムと需要) 便ごとのリードタイムと受持つ時間 需要の変動 1時間あたりの需要の平均と標準偏差 単位:時間 需要の変動 1時間あたりの需要の平均と標準偏差 従来方式と新方式の比較のために店舗における販売と発注を模したシミュレーションを行います。 シミュレーションの条件の説明をします。 便毎のリードタイムと需要を受持つ時間はこのように設定しています。受持つ時間というのはある便が納品されてから次の便が納品されるまでの時間で、従来方式の3便なら15時から21時の6時間となります。 需要は正規乱数によってランダムに発生させます。また需要は一様に分布しているものとします。以下はある店舗のデータをサンプルとして設定した1時間あたりの平均と標準偏差です。
条件の設定(欠品率の設定) 欠品率は以下のとおりに設定する。 3便の発注を抑えた場合 3便の発注を積極的にした場合 ※ただし 安全係数=1のとき、欠品率10% 安全係数=1.36のとき、欠品率5% 安全係数=1.7のとき、欠品率2.5% 欠品率の設定をご覧のとおり仮定します。 3便の発注を抑えた場合の欠品率を10%、積極的にした場合の欠品率を2.5%とします。
条件の設定(その他の設定) 販売期限を考慮する。 機会損失による客離れ、需要の変化はない。 客は一定の確率で古い弁当を避ける。 弁当に係る価格や費用は以下のとおりである。 その他の設定です。 販売期限はいずれの便でも2便の間とし、その後廃棄になります。 機会損失を起こした際、客離れによる需要の変化はないものとします。 客の購買行動として、一定の確率で古い弁当をさけ新しい弁当を買います。 弁当に係る価格、費用はご覧のとおりです。 単位:円/個
シミュレーションの実行結果(在庫の変動) 新方式 3便に発注を抑えた場合の例(2日間) 1便納品 2便納品 3便納品 1便廃棄 欠品 6 12 18 シミュレーションの実行結果の一例です。 1・2・3便と納品されて需要にしたがって在庫が減っていく様子を表しています。 3便の納品の際に1便の在庫が残っていれば廃棄になります。 またどの便もなくなっているときに需要が発生した場合欠品となります。
①廃棄数量の比較 新方式では1.6倍 の廃棄数! 比較の結果を見ていきます。 一つ目の廃棄数量の比較の結果です。従来方式に比べ新方式のほうが約1.6倍の廃棄が発生していることがわかります。
②店舗の利益の比較 3.5%回復 5%減少 二つ目の店舗における利益の比較の結果です。 まず従来方式で店舗が廃棄を抑えるため3便の発注を抑えたまま新方式が導入されると、店舗の利益は5%減少します。 この原因のひとつに欠品の増加が挙げられます。そこで店舗は欠品により逃した利益を取り戻すため欠品率の設定を小さくします。 それが3便の発注を積極的にした場合です。 3便の欠品率を小さくして積極的に発注を行った場合、3便の発注を抑えた場合に比べて3.5%利益が回復します。 つまり店舗は利益を取り戻すために本社の狙い通りに欠品率を下げると考えられます。
店舗における利益の最大化 利益を決定する欠品率の設定は、重要な経営上の意思決定項目である。 欠品率大 欠品率0% 廃棄によるコストが経営にのしかかる。 本来ならば得られたはずの利益を逃す。 次に新方式の発注・納品時間に対応した店舗における利益の最大化について検討します。 利益を決定する上で欠品率の設定は重要な意思決定項目になります。 欠品率が大きいと本来得られたはずの利益を逃すことになり、結果利益が減少します。 逆に欠品率を0%に保とうとすると廃棄が大量に発生することになりコストが増加します。 つまり欠品率の設定が利益決定の上で重要になります。 利益減少 コスト増加
シミュレーションを用いた欠品率の検討 シミュレーションを用いて新方式導入の際、新たに設定するべき欠品率を以下の項目から検討する。 廃棄による損失 欠品による損失 店舗の利益 条件として、1・2・3便の欠品率は共通とする。 先ほどのシミュレーションを用いて、新たに設定すべき利益を最大化する欠品率を検討します。 条件として先ほどのシミュレーションでは3便の欠品率を別々に設定しましたが、今回は1・2・3便の欠品率を共通にして変動させます。 それ以外の設定は先ほどのままです。
廃棄と欠品の損失と店舗の利益 欠品による損失 店舗の利益 廃棄による損失 約7% 店舗における利益と欠品率の関係を示します。 青い三角が欠品による損失、オレンジの四角が廃棄による損失で左側の軸に対応しています。 緑の丸が店舗の利益で右側の軸に対応しています。 これを見ると欠品率約7%で最大になっています。またこの点は廃棄による損失が緩やかになり始める点とほぼ同じです。 さらに廃棄による損失より欠品による損失のほうが大きい点であることから、店舗ではある程度までの欠品を出してでも廃棄を抑えることで利益が大きくなることがわかります。
セブンイレブンの行った変更は、店舗の経営や廃棄物量に対して悪影響を及ぼすことがわかった。 おわりに まとめ1 セブンイレブンの発注・納品時間の変更に関してシミュレーションを行い、廃棄物量と店舗利益に及ぼす影響について検討した。 セブンイレブンの行った変更は、店舗の経営や廃棄物量に対して悪影響を及ぼすことがわかった。 本研究のまとめです。 セブンイレブンの発注・納品時間の変更に関してシミュレーションを行い、廃棄物量と店舗利益に及ぼす影響について検討しました。その結果セブンイレブンの行った変更は、店舗の経営や廃棄物量に対して悪影響を及ぼすことがわかりました。
今回の設定でのシミュレーションでは欠品率を約7%に設定したとき、店舗の利益は最大となることがわかった。 おわりに まとめ2 新方式の発注・納品時間に対応した、店舗における利益最大化について検討した。 今回の設定でのシミュレーションでは欠品率を約7%に設定したとき、店舗の利益は最大となることがわかった。 次に新方式の発注・納品時間に対応した、店舗における利益最大化について検討しました。 その結果今回のシミュレーションでは欠品率を約7%にしたとき店舗の利益は最大になることがわかりました。
今後の課題 需要の分布を時間帯ごと考える。 売り場の弁当が少なくなったときの客の挙動を設定する。 弁当を複数の種類に分ける。