社会的包摂への課題 -雇用システムの変動と 若年世代に着目して-

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公的年金 財政学(財政学B) 第 6 回 畑農鋭矢 1. 年金の分類 運営主体による分類 公的年金と私的年金 給付期間による分類 定期年金と終身年金 対象者による分類 国民年金、厚生年金、共済年金など 保険料と給付の決定方式による分類 確定給付型と確定拠出型.
関西学院大学 村田ゼミ 立論 衣斐、岸田、鈴木、高田、長谷川、大森、藪本、村上. 立論① 非正規雇用を廃止し正規化 により、賃金収入が増加。
09ba390l 山村美帆. 内需不振の正体 地方圏 青森県では、バブル崩壊期の 90 年代前半には増加していた個人所得と小売 販売額が、戦後最大の好景気となった時期である 00 年代前半からみるみる 減少し始めた。この間に起きた構造変化とは? この就業者の減少こそが 00~05 年の個人所得、小売.
1 公債政策の推移② -バブル経済崩壊後から現在まで-. 2 ( 第 18 講の再説 ) 公債政策の推移 … 資料 18-2 ,資料 18-3 ,資料 18-4  1947 年の財政法制定 =国債の発行に厳しい制約  財政法制定~ 1965 年度当初予算 ⇒国債発行禁止規定 ( 財政法第 4 条.
地域社会論 第9回 _2 ⅩⅠ.自立する世帯 12 月 14 日. 1.大きな世帯.
1 財政-第 22 講 6. 社会保障財政 (3) 2008 年 6 月 24 日 第 2 限. 2 公的年金③  今後の課題-公的年金制度全般に関して-  将来の給付水準見通し  厚生年金と共済年金の一元化  社会保険方式から税方式への移行  制度上の問題点  未納・未加入問題.
ゆとりある生活を送る ためには. 老後生活に対する不安 80 %以上の人々が老後生活に不安を感じています 出所:生命保険文化センター平成 16 年.
~国民経済的な視点から見た社会保障~ 2000/6/14 木下 良太
定年制とは 1.定年制 ①定義: 従業員が一定年齢に到達した時に自動的かつ無差別的に雇用関係を終了させる仕組みのことである。
4.定年制 *戦後⇒50歳や55歳が一般的。 定年制・・・従業員が一定年齢に到達した時に自動的かつ 「終身雇用」の用語が当てはまる。
ちょっと待った! 65歳定年制 ~知ってるようで知らない雇用の話~
最低賃金1000円の是非.
非正規雇用の現状 MR1051 アキ.
派遣制度の是非 否定派 山下・柏嶋・小瀬村.
静岡県内の生活困窮者実態に関する基礎資料
日本的経営企業と外資系企業 日本的経営の特徴と将来
日本消滅 ~若者の失業の先に~ 龍谷大学 小峯ゼミナール第2班 平成18年10月28日.
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グローバル化に対応した 日本の雇用制度改革
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森町まち・ひと・しごと 人口ビジョン概要 15/08/31【資料1】 森町人口ビジョン(抜粋) 総合戦略へ向けた、現状・課題の整理(案)
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第6講 「人口の波」が語る日本の過去半世紀、今後半世紀
わが国の社会福祉現場における 人材確保の動向と今後の展望
大阪における雇用実態把握調査 〔中間とりまとめ〕 集計結果から見える特徴点
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1999年度秋学期 香川敏幸研究会 個別研究 兼 卒業制作 日本の介護福祉の在り方について
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介護従事者確保総合推進事業について(H28) 目的       介護を必要とされる方々が地域で安心して暮らし、必要な介護サービスが提供されるために、介護現場における人材 の  の安定的な確保と離職防止に向け、幅広い施策を総合的に推進する。 施策・取組 多様な人材の参入促進.
『大阪府人口ビジョン(案)』の概要 ■はじめに ■人口の将来見通し(シミュレーション) ■大阪府の人口の潮流 c ■基本的な視点
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ベーシックインカム導入の是非  仲野謙心.
「就労支援に係る相談支援機関」 障害者就業・生活支援センター 障がい者 自立・安定した職業生活の実現 雇用と福祉のネットワーク 福祉施設等
経済情報入門Ⅱ(三井) 公共事業と社会保障.
第2回 福祉の現在・現在 厚生労働省(2018) 障害者白書 厚生労働省(2016) これからの精神保健福祉のあり方に          関する検討会資料.
変化の中の雇用システム                    仁田道夫著 東京大学出版会2003年                                 E040064植田慎司.
若年性認知症支援コーディネーター設置等事業
2018/11/9 第7章  非正規従業員と派遣労働者 E班 岩橋・片山・高倉・水上・森下.
バブル崩壊後の日本経済の 貯蓄率低下について
労働時間短縮の課題 課題 ②所定外労働時間の短縮 ③有給休暇の所得率を上げる +職業生涯でみた労働時間の短縮 →これらを実現するためには?
「ニート」って言うな! 第一部 第二章 岸本 可奈子
60歳台になった団塊世代の経済行動 長谷川 正 学籍番号 
制度経済学Ⅰ⑦ DVD質問 Q1 多重派遣とは? Q2 なぜ違法派遣が増えている? Q3 社会保険に未加入の派遣は違法か?
長岡京市就労支援フロー図(福祉なんでも相談室)
深津・高島・上田・安藤・釆元・河野・西野
第7回 社会福祉の法制度.
財政-第12講 4.租税理論と税制改革(6) 2008年5月20日 第2限
労働経済学 男女雇用機会均等法、育児・介護休業法
© Yukiko Abe 2015 All rights reserved
資料1-3 若年未就業者の状況について.
(C)2011女性にやさしい職場づくりナビ.
「雇用と社会保障の密接な連携」を通じた介護分野の成長戦略
5本柱 運動推進の 時代の変化に即応した、金属運動のさらなる強化と発展の追求 勤労者に安心・安定をもたらす雇用をはじめとする生活基盤の確立
<労働需供の推移に影響する要因> 企業の人事制度は、その時々の経済情勢や社会情勢によって左右される。
21年度から実施する施策~雇用保険のセーフティネット機能を強化します。
財政-第24講 6.社会保障財政(5) 2008年7月1日 第2限.
第6章 デフレの鍵は賃金 ー「なぜ日本だけが?」の答え
若年性認知症の人への支援 若年性認知症支援コーディネーター これらの支援を一体的に行うために を各都道府県に配置
厚生労働省・茨城労働局・ハローワーク常陸鹿嶋
厚生白書 人口減少社会の到来と少子化への対応 971221 波多野宏美.
深津・高島・上田・安藤・釆元・河野・西野
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社会的包摂への課題 -雇用システムの変動と 若年世代に着目して- 慶応義塾大学 駒村康平

「麗しの時代」と転換期の90年代 1960年代から1990年前半まで安定した日本の4つ の社会経済システム(職・家族・住居の保障) 1)雇用システム:日本型経営・日本型雇用(職場に おける身分の保障、終身雇用、年功賃金) 2)家族システム:ひとり働き(専業主婦モデル、持ち 家政策) 3)社会保障・税システム:皆保険・皆年金 4)教育システム:学校から職業への移行 偶然:歴史上まれな自然災害の少なさ(1960-95) →忘れられた「貧困」、限定的な社会的排除

経済成長の長期動向(内閣府SNAより作成)

例外的に自然災害の少ない時期:1960-1990年 出典:「平成21年防災白書」http://www.bousai.go.jp/hakusho/h21/bousai2009/html/zuhyo/zuhyo002.htm

被保護世帯数、被保護人員、保護率の年次推移  被保護世帯数、被保護人員、保護率の年次推移

二つの世代(親子世代)対比 1:団塊世代(1947-49年生まれ) オイルショック:1973年(団塊世代22-26歳)→安定 成長、日本型雇用、持ち家政策 2:団塊ジュニア(1971-79年生まれ) バブル崩壊1990年、93年就職氷河期(団塊ジュニア 14-22歳) アジア通貨危機(1997年:団塊ジュニア18-26歳): 正社員になれない大卒の急増 グローバル経済への対応 →職の不安:非正規労働者(ワーキングプア)、家族 形成できな(未婚者の急増)、住居の不安

学校から就職の掛け橋の劣化 出典:日本学術会議「大学と職業の接続のあり方について」

・世帯主が就労していて、世帯の合計所得が生活保護以下の貧困世帯(ワーキングプア世帯率) 若い世代で増加するワーキングプア ・世帯主が就労していて、世帯の合計所得が生活保護以下の貧困世帯(ワーキングプア世帯率) ・1999年から2004年の間で若年世帯の貧困率が上昇 全国消費実態調査より著者ら推計

世帯構成の変化 単身世帯が多数派に。家族機能の低下 資料:国立社会保障人口問題研究所「日本の世帯数将来推計より「作成」

社会的包摂への課題 若い世代の職・家族・住居での不安低下→深 刻になる孤立化、貧困・排除の世代間連鎖 政府の対応:貧困の確認、求職者支援制度 の創設、労働法の改革 生活保護と求職者支援の連携の欠如 雇用システムの課題:正規・非正規労働者の 処遇問題 所得保障制度の課題:社会保険中心の限界 弱体化する福祉行政(スキル、人数の不足) 地域、自治体の取り組み(釧路市、埼玉県等) 社会的包摂の新しい担い手