動学的一般均衡モデルについて 2012年11月9日 蓮見 亮
マクロ経済学のテーマ 目的 1)GDP(国民所得) の最大化 2)物価のコントロー ル 3)失業率のコント ロール 手段 A)財政政策(税制の 変更を含む) B)金融政策 分析のためのツール =モデルが必要 今回は除外
動学的一般均衡モデルの進化 ソローモデル 最適成長モデル リアルビジネスサイクル・モデル ニューケインジアン・モデル 単純な経済成長論のモデルだが、いまでも長期予測に用いることがある ソローモデル ノート1 ソローモデルを基礎に家計の異時点間の 最適化行動を導入したモデル 投資率内生なので、財政政策分析に利用可能 最適成長モデル ノート2, 3 リアルビジネスサイクル・モデル 技術ショックの導入 労働の内生化 ノート4 一般物価の内生化(硬直価格理論) → Taylorルールの導入が可能に 金融政策分析の有力なツール ニューケインジアン・モデル ノート5
動学的・確率的一般均衡モデル DSGEモデル(Dynamic Stochastic General Equilibrium Model)ともいう 最適成長モデル(それを改良したモデルを含む)に誤差項を付加して、実証分析・予測を可能にしたモデル 誤差項(ショック項)には、現実データとモデルの理論値の差を埋める役割がある―パラメータ推定が可能に 予測・シミュレーションの段階では、誤差項はあくまでおまけであり、確率的側面はそれほど重要ではない 一般に、モデルは線型近似するので、確率論的か決定論的かの差異が残らない。近似しない場合、連続時間モデルの二次の項には差異が出て(伊藤積分)、これならば現実的な時間で計算可能
ニューケインジアン・モデルの例 ノート5の最後で説明する対数線型近似版 物価上昇率 GDPギャップ ニューケインジアン・フィリップス曲線 ニューケインジアン・IS曲線 Taylorルール(名目金利を決める) 金融政策ショックの遷移式 技術水準の遷移式
Mankiwはニューケインジアン? 産出量の供給量=自然産出量水準 +a(実際の物価水準-期待物価水準) という記述がある(マンキュー経済学II、p.458) 前頁の(1)式は以下のように変形できる (物価が伸び率か水準かの違いはあるが)両者は基本的に同じものである GDPギャップ の定義 期待物価上昇率
硬直価格理論 メニューコストとは、価格調整に必要なコストや時間をいい、例えばカタログの印刷・配達の費用や値札を変えるのに要する時間をいう メニューコストが存在する場合、予想外の物価下落が生じると、企業は高すぎる価格を一時的に維持し、販売量すなわち生産量が減少する(硬直価格理論) 一般に、右上がりの短期の総供給曲線(前頁の数式で表される)は、硬直価格理論により説明できる 5ページのニューケインジアン・モデルのニューケインジアン・フィリップス曲線も(メニューコストではないが、それに似た)硬直価格理論に依拠して導出される 硬直価格理論により、一般物価が内生化できる
マクロ経済学とミクロ経済学 ミクロ経済学には、一般物価という概念がない 存在するのは相対価格のみ 現代のマクロ経済学はミクロ経済学の理論を多く取り入れているが、一般物価の内生化というニューケインジアン・モデルの特徴は、マクロ経済学の理論に特有である ニューケインジアン・モデルの複雑さは、一般物価という概念の特殊性に起因する