従動側角速度フィードバック による不安定化に基づく 二慣性系の外乱抑制性能の改善

Slides:



Advertisements
Similar presentations
第 7 週目: 周波数伝達関数とボード線図 周波数伝達関数 ボード線図 TUT, System & Control laboratory 1/16.
Advertisements

コンソールの利用 零点・極と時間応答の関係 安定性 過渡応答の特性
ディジタル信号処理 Digital Signal Processing
定在波型熱音響エンジンにおける 臨界温度比推定のための適応制御系の 安定性に関する実験と理論の比較 長岡技術科学大学
24 両端単純支持梁に対する外乱抑制制御系の製作
プロセス制御工学 3.伝達関数と過渡応答 京都大学  加納 学.
フィードバック制御に基づく 定在波型熱音響エンジンにおける 自励発振条件の特徴付け
プロセス制御工学 6.PID制御 京都大学  加納 学.
(ラプラス変換の復習) 教科書には相当する章はない
サーボ機構製作 ~マイコンカーのステアリング機構~
不安定な補償器を用いた 低剛性・高慣性比の 二慣性ねじり振動系における 外乱抑制制御性能の改善
電気回路学Ⅱ エネルギーインテリジェンスコース 5セメ 山田 博仁.
京大岡山 3.8m 望遠鏡 分割鏡制御に用いる アクチュエータの特性評価
機械創造工学課程 08104288 鈴木翔 担当教員 小林泰秀 准教授
電気回路学Ⅱ エネルギーインテリジェンスコース 5セメ 山田 博仁.
合成伝達関数の求め方(1) 「直列結合 = 伝達関数の掛け算」, 「並列結合 = 伝達関数の足し算」であった。
水平板を用いた消波機構における指向性 アクチュエータの境界要素法による性能解析
電気回路学Ⅱ 通信工学コース 5セメ 山田 博仁.
メカトロニクス 12/8 OPアンプ回路 メカトロニクス 12/8.
25 ロバスト制御に基づく柔軟ベルト駆動二慣性系の外乱抑制制御 機械創造工学課程 西村光博 担当教員 小林泰秀 准教授
定在波型熱音響エンジンの共鳴現象に 対するフィードバック制御の効果 長岡技術科学大学 ☆角島 悠太 小林 泰秀, 山田 昇.
28 PICマイコンを用いた能動騒音制御系の制御性能
坂本彰弘(岡山天体物理観測所) 栗田光樹夫(京都大学)
閉ループ系を安定限界に保持する 適応制御に基づく定在波型 熱音響エンジンの定常発振制御
プロセス制御工学 7.多変数プロセスの制御 京都大学  加納 学.
31 ループ管熱音響システムにおける管内圧力の可視化 長岡技術科学大学 機械創造工学課程 梅本康平 担当教員 小林泰秀 准教授
振動体の振幅を目標値一定とする 振動発電機負荷のフィードバック制御 修士論文発表会
機械創造工学課程 西久保智昭 担当教員 小林泰秀 准教授
制御系における指向性アクチュエータの効果
6. ラプラス変換.
ベクトル線図 周波数応答 G(jw) (– < w < ) を複素平面内に描いたものが、ベクトル線図である。
モデルに基づいた PID コントローラの設計 MBD とは モータ駆動系のモデリング モデルマッチング 5.1 節 出力を角速度とした場合
入力付きシステムとラプラス変換 微分方程式がラプラス変換で解けるのなら、 システム (状態変数表現): の解もラプラス変換で求まるはず。
システム制御基礎論 システム工学科2年後期.
基本システムのボード線図 ボード線図による基本システムの同定
高次システムのボード線図 周波数応答によるシステムの同定
26ロバスト制御に基づく片持ち梁の外乱抑制制御系の設計
Simulink で NXT を 動かしてみよう Simulink で NXT を動かす 微分値算出とフィルタ処理 ノーマルモード
AIを用いたドローンの 新たな姿勢制御方法に関する研究
電気回路学Ⅱ コミュニケーションネットワークコース 5セメ 山田 博仁.
第 6 章 :フィードバック制御系の安定性 6.1 フィードバック系の内部安定性 6.2 ナイキストの安定定理
C4 能動騒音制御を用いたループ管熱音響冷却機の製作
22 物理パラメータに陽に依存する補償器を用いた低剛性二慣性系の速度制御実験 高山誠 指導教員 小林泰秀
7.一次元ダクトの消音制御系における低コスト化
30 両端単純支持梁に対する外乱抑制制御系の製作 機械創造工学課程 11307489 古澤大輔 担当教員 小林泰秀 准教授
電機制御工学 定量的制御編 清弘 智昭.
両端単純支持梁の フィードフォワード外乱抑制制御系における 指向性アクチュエータの効果
シミュレーションパラメータの設定 一次系の時間応答 二次系の時間応答
9. ナイキスト線図と安定余裕 教科書 7.2, 7.3.
4. システムの安定性.
熱音響コアが多段接続された 電力フィードバック進行波型熱音響発電機の 発振条件及び実験
ナイキストの安定判別に基づく熱音響システムの自励発振解析における発振余裕と 定常発振状態における圧力振幅の関係
電力フィードバック回路の調整による 熱音響発電機の発振余裕の最大化
低剛性・高慣性比の二慣性系の 外乱抑制制御問題に対して 任意の制御性能を達成する 不安定な補償器
核融合炉における多変数制御、分布制御に向けた制御器設計
ナイキストの安定判別法(簡易版) 安定余裕
振動体の振幅を一定とする 振動発電機負荷のフィードバック制御系の 安定性解析 長岡技術科学大学 ○ 永井 和貴 稲田 千翔之 小林 泰秀
磁気浮上システムの製作と PID制御による制御系設計 に関する研究
高慣性比二慣性系の外乱抑制問題に対する 慣性比 の解析解に基づく 補償器の構成
PI補償器の出力を時変係数とする 定常発振制御系の安定性解析
第 5 章 :周波数応答 5.1 周波数応答と伝達関数 周波数伝達関数,ゲイン,位相 キーワード : 5.2 ベクトル軌跡 ベクトル軌跡
物理学実験 II ブラウン運動 ー 第2日目 ー 電気力学結合系の特性評価 物理学実験II (ブラウン運動) 説明資料.
水平板を用いた消波機構における指向性 アクチュエータの境界要素法による性能解析
第8回 ステップ応答によるシステム同定.
振動体の振幅を一定とする 振動発電機負荷のフィードバック制御 長岡技術科学大学 ○ 永井 和貴 齋藤 浄 小林 泰秀
長岡技術科学大学 大学院 工学研究科 機械創造工学専攻 髙山 誠 指導教員 小林 泰秀 准教授
電気回路学Ⅱ 通信工学コース 5セメ 山田 博仁.
信号データの変数代入と変数参照 フィードバック制御系の定常特性 フィードバック制御系の感度特性
臨界温度比推定のために熱音響エンジンを 定常発振させる時変ゲインを用いた 定エネルギー制御系の安定性解析
各種荷重を受ける 中空押出形成材の構造最適化
Presentation transcript:

従動側角速度フィードバック による不安定化に基づく 二慣性系の外乱抑制性能の改善 Improvement in disturbance suppression performance of two-inertia system by unstabilization with driven-side speed feedback ご紹介ありがとうございます。 表記の題目で岩本が発表させていただきます 長岡技術科学大学 〇岩本 慎太郎 小林 泰秀

外乱抑制性能の改善 研究背景 ・PID補償器 ・ノッチフィルタ 慣性 大 汎用サーボモータ 産業用機械の駆動装置 軽量化・高速化 研究目的 剛性 低 慣性 小 外乱抑制性能 継ぎ手 汎用サーボモータは産業用機械の駆動装置として広く用いられています. 近年,産業用機械の軽量化・高速化が進み低剛性・高慣性比の二慣性ねじり振動系の制御が求められています. しかし,サーボモータで広く使われているノッチフィルタやPID補償器では十分な外乱抑制制御性能が得られるとは限りません. 本研究では外乱抑制制御性能の改善を目標としています. モータ 負荷 研究目的 外乱抑制性能の改善

研究背景:センサの追加 外乱抑制制御: から までの影響を低減させる 従動側 駆動側 影響 補償器 観測 指示 エンコーダ 追加 軸トルク 外乱抑制制御: から までの影響を低減させる 従動側 駆動側 影響 補償器 観測 指示 エンコーダ 追加 軸トルク センサ追加 (1)外乱抑制とは、従動側へ入力される外乱TLから従動側角速度ωLまでの影響を、駆動側のセンサとアクチュエータを用いて低減させる制御です。(2)駆動側角速度ωMを観測し、駆動側トルク指令TMを補償器によって指示しています。(3)より性能を向上させるため、本研究ではセンサを追加する(4)従動側にエンコーダを追加することによってωLを観測し補償器への入力として追加するフルクローズドの装置があるが、従動側へのセンサの追加は設計変更につながり、設置コストが大きくなってしまう場合がある。一方で軸トルクセンサを追加して軸トルクTsを観測した場合、駆動側のみの変更になり、設置コストを小さくすることが出来る。したがって本研究では軸トルクセンサを追加した装置に実装可能な補償器について考える。 設置コスト:大 設置コスト:小 本研究:軸トルクセンサ情報を利用

問題設定:外乱抑制問題 外乱抑制問題 閉ループ系: 物理パラメータ 1.閉ループ系が内部安定 を満たし,を最小化する 2. 補償器を求めること 〇すぐあとで示すように軸トルクの微分を用いることと等価になるため、本論文では従動側角速度を観測出力に追加した問題を考えます。〇閉ループ系は、入力がそれぞれの角加速度〇出力がそれぞれの速度〇制御対象Pチルダ〇補償器K〇伝達関数行列〇Rは慣性比〇ωNは共振周波数〇r>10 この閉ループ系に対して次の外乱抑制問題を考えます。 閉ループ系が内部安定で、H∞ノルムがγ以下のときに、γを最小化する補償器を求める問題です。

軸トルク微分フィードバックによる実装 等価変換可能 が求まれば、 として実装することで 駆動側のセンサのみで実装可能 観測 観測 出力 出力 〇観測出力として従動側角速度を追加することと、軸トルクの微分を追加することが等価であることを示します。 〇駆動側と従動側の角速度を観測出力とした補償器K〇右側が軸トルクの微分とωMを観測出力とした補償器Kts〇この二つの補償器は関係式から、等価変換できる〇これよりKが求まればKtsとして実装することで駆動側のセンサのみで実装が可能になります。〇Kの設計法について扱います。 が求まれば、 として実装することで 駆動側のセンサのみで実装可能

従来研究[3] :比例制御における制約 性能:良 ( :小) 下限 比例補償器: ↓最適な比例補償器 :二点のゲインを一致 (  :小) 下限 比例補償器: :二点のゲインを一致 ↓最適な比例補償器 本研究は従来研究の内容を用いているため,従来研究について示します。 従来研究では、比例制御における制約を明らかにした後に、その制約を改善する補償器を提案しています。従来研究では、こちらの補償器に対応しています。比例補償器の場合Kpをだんだんと小さくしていくと、直流ゲイン側は下げることができますが、高周波数側のゲインが上がっていきます●γは閉ループゲインの最大値と対応しており、ゲイン線図上で下に来るほど良い性能ということになります●γを小さくしようとすると、この解ループゲインと閉ループゲインが一致する点は、KPに関わらず一点となり,下限になります.このときの角周波数をオメガアスタリスクと定義します●ここで,K_Pによって最もγを下げるためには、閉ループ系の直流ゲインとオメガアスタリスクにおけるゲインが一致することを条件にすればよく、これをKPアスタリスクとします。ω*とkp*はこのように求めることができます。●下限を与えている制約について説明します.閉ループゲインはこのように表されます。解ループゲインと分数によってきまる倍率で構成されています。この分数の倍率が1となってしまう、その周波数がωアスタリスクです●こちらは分数の分母と分子を配置した図になります。分数の分子と分母は複素共役になる要素がもつため、このように分子と分母が同じ長さになります。 [3]高山,小林,不安定な二次の補償器を用いた低剛性・高慣性比の 二慣性系における外乱抑制性能の改善,システム制御情報学会論文誌(2017)

従来研究[3] :比例制御における制約の緩和 不安定な補償器を用いて制約を緩和 性能を改善 従来研究においてのこの制約の緩和について示します。 従来研究では、H∞補償器をもとに、不安定な二次の補償器を提案しました。 この補償器を用いることで、分子は短く、分母は長く配置されるようになり、分数の倍率は1を下回るため、オメガアスタリスクにおける閉ループゲインを解ループゲインより下げることができました。 本研究では、従動側角速度フィードバックを追加することによって、補償器の自由度向上から制約の緩和を期待します。実際に、この後示しますが、γを下げることができました。 本研究:従動側角速度フィードバック追加による 制約の緩和を期待 [3]高山,小林,不安定な二次の補償器を用いた低剛性・高慣性比の 二慣性系における外乱抑制性能の改善,システム制御情報学会論文誌(2017)

提案手法:可調整パラメータからの計算 :大 :小 :二点のゲインを等しくする 緑 紫、黒 高域で 悪化 から開始して 可調整パラメータ: 閉ループ伝達関数: :二点のゲインを等しくする  :大 緑  :小 本研究で提案する、Kの調整手法について報告します Kの二つの定数K1とK2の和をカ調整パラメータxとします。 こちらの閉ループ伝達関数において、先ほどのkpアスタリスクと同様に、直流ゲインとオメガアスタリスクのゲインを等しくする補償器をKpropとすると、そのパラメータK1とK2はxからこのように決定することができます。 Xと性能の対応として、kpアスタリスクと等しくすると、ほぼ同等の性能がえられ、そこからxを下げていくことで等しくした二点のゲインを下げることができます。緑のプロットまではガンマを小さくすることができていますが、それ以上さげていくと、紫や黒のプロットのように、広域にピークが出てくるため、γが悪化していきます。したがって、x=kpアスタリスクからxに関して繰り返しピークを持たないように調整を行うことで、性能を改善することができます。 紫、黒 高域で 悪化     から開始して  について繰り返し調整を行い 高域にピークを持たないように決定

実験結果 改善 補償器 物理パラメータ 計算結果:閉ループゲイン 実験結果: 正弦波外乱 (目標速度: ) 実際の実験装置を用いて実用性を確認しました。装置の物理パラメータはこのようになっており、そこから設計した結果がこちらになります。駆動側角速度の比例補償器KωMに対して、調整したKpropは設計時に5.3db改善することができました。調整結果をこちらにしめします。こちらが外乱応答の実験結果で、5秒から7秒の間でこちらに示す条件の正弦波外乱が印加されています。Kwmに対してKpropは振幅をおさえることができており。この周波数の外乱に対して性能を改善できていることがわかります。この後は、このように性能が改善できた理由について考えていきます。 実験結果: 正弦波外乱 計算結果:閉ループゲイン (目標速度:      )

理論的根拠:比例制御の制約の緩和 :制約の緩和 フィードバック追加により ・複素共役とならず、制約を緩和 ・制御対象を不安定化する とすると2つの不安定極 →大 とすると極の正実部→ 大 :制約の緩和 まず、閉ループ系をこのように書き直します。 このとき、Pちるだダッシュは、このような従動側角速度フィードバックをマイナーループとして含めた制御対象として考えます。それぞれの伝達関数はこちらになります。分母にK1を含む項が追加されます。Kpropを用いると、こちらの図のように、分子に対して分母のほうが長く配置され、制約の緩和が確認できます。また、このときの制御対象Pチルダダッシュの極は、設計法を用いてK1<0としたとき二つの不安定極をもち、K1を大きくしていくと正の実部が大きくなっていきます。 以上より、従動側角速度フィードバックによって、複素共役とならず、制約を緩和し、制御対象を不安定化しているといえます。   フィードバック追加により ・複素共役とならず、制約を緩和 ・制御対象を不安定化する

理論的根拠:他研究[4]との関連 本研究提案手法: 他研究[4] 目的: 軸トルク微分フィードバックによる 軸ねじれ振動抑制性能の改善 正 本研究提案手法: 符号 負 他研究[4] [4] K.Sugiura and Y.Hori, Vibration Suppression in 2- and 3-mass System based on the Feedback of Imperfect Derivative of the Estimated Torsional Torque, IEEE Trans. on IE, 1996 目的: 軸トルク微分フィードバックによる 軸ねじれ振動抑制性能の改善 手法:振動抑制性能改善するため、負の軸トルク微分ゲイン   を用いてマイナーループで減衰係数を調整 また、提案手法でKtsを求めると、軸トルクの微分に対応するゲインは正となります。ここで、軸トルク微分フィードバックを用いて、軸ねじれ振動抑制性能の改善を行ったこちらの研究では、軸ねじれ振動抑制性能の改善のために負の軸トルク微分ゲインを利用する手法が提案されています・本研究とはゲインの符号がことなることから、本研究の提案手法は新しい結果を与えています。 本研究の提案手法は新しい結果を与えている

結言 従動側角速度フィードバックを追加した 補償器と調整則を提案 ・比例補償器の制約を緩和 ・実験で性能の改善を確認 従動側角速度のフィードバックに対する考察 ・制御対象の不安定化に対応 ・軸ねじれ振動抑制のための軸トルク  のフィードバックとは異なる符号のゲイン 結言です。 従動側角速度フィードバックを追加して補償器と調整則を提案し、  比例補償器の制約を緩和していること  実験で性能の改善を確認していること を示しました。 従動側角速度フィードバックに対する考察として  制御対象の不安定化に対応している  軸ねじれ振動抑制のための軸トルクフィードバックでは得られない ことを示しました。 以上で発表を終わります。

等価変換 より,等価変換可能

性能比較:従来研究

性能改善の詳細

軸ねじり振動の悪化 インパルス応答(計算)の比較 軸ねじり振動を許容して性能向上を図っていることが考えられる 実際の実験で持ちいた入力は定格の3%ととても小さくした 軸ねじり振動を許容して性能向上を図っていることが考えられる

安定条件