金融政策と貸出金利 講義⑮ 目次 設備投資の変化要因 「市場金利」って何?!?! 借入金利とリスクプレミアム 市場金利と短期金利 図が重なっている等見えづらい箇所がありますが、これはアニメを使用しているためです。講義で確認してください。 文字が小さい箇所があります。印刷の際に必要に応じて拡大等してください。 金融政策と貸出金利 講義⑮ 目次 設備投資の変化要因 「市場金利」って何?!?! 借入金利とリスクプレミアム 市場金利と短期金利 金融政策のメカニズム 金融政策と市場金利
設備投資の変化要因① GDP=消費+投資+政府支出+純輸出 GDPは「消費」「投資」「政府支出」「純輸出」のいずれか増加すれば、それだけでもGDPは増加する。 消費は「所得」、つまり、GDPが増加すれば、通常、一定の増加が見込まれる。 投資=設備投資+住宅投資 設備投資が増えるには、設備投資をした結果、企業業績が増加する必要がある。 ここで・・・ 企業利潤=売上-費用 ・・・(1) (1)式より、売上が伸びれば、企業利潤は増加するので、設備投資は増加することが考えられる。 他方・・・ 費用が削減できる、または、削減するのであれば、それだけでも利潤が増加するので、設備投資をする可能性がある。
設備投資の変化要因② 住宅投資を増加させるには・・・ 住宅投資にかかる費用を減らす必要がある。 住宅投資にかかる費用を減らす必要がある。 設備投資、および、住宅投資における費用とは・・・ 借入金利 したがって、市場金利が下がれば、借入金利も下がる。 売上-費用↓⇒企業利潤↑ 同様に、住宅ローン金利が下がれば、住宅投資が増加する。 つまり・・・ 投資(設備投資+住宅投資)を増加させるためには・・・ 借入金利が低下すること。 したがって、市場金利が下がることが大切。
「市場金利」って何?!?! 借入金利≠市場金利 一般に「市場金利」とは・・・ 日本10年国債利回り(現在1.30%程度) 日本10年国債利回り(現在1.30%程度) 国債は「デフォルト」になるリスクは「0」と考えられる(特に、すべての国債が邦貨建てで発行している場合には、当該国の中央銀行と政府が一体である時、デフォルトになるリスクは「0」となる)。 デフォルトとは「金利返済の遅滞」「元本の償還が不能」という事態をいう。 なぜなら・・・ 政府には「徴税権」があるので、国債を返済できないような事態になれば、増税をするなどにより、返済が可能になるからである(但し、外貨建てで発行している場合には、当該外貨を保有する必要があるので、デフォルト・リスクが「0」となることはない)。 以上から・・・ 日本10年国債利回りは、現在の市場における「リスクフリー・レート(無リスク・レート)」として機能することになる。
借入金利とリスクプレミアム① 借入金利=ベース金利+リスクプレミアム ベース金利として「国債利回り」等が使用される。 リスクプレミアムとは 借り手の信用度(安全性、流動性など)によって上乗せされる金利。 <安全性> 借り手企業は金融市場環境や業績動向が変化しても、一般に、債務条件を変更することはできない。 といっても・・・ 企業の状況によっては返済が厳しくなる可能性もある。このような「条件の変更可能性」が低いほど、安全性が高いと考えられる。 したがって・・・ 政府保証や一般担保、物上担保等がついている方が「安全性が高い」と考えられているので、そのようなモノが付いていないような債務、つまり、無担保の債務については、高いリスクプレミアムが付けられることになる。
借入金利とリスクプレミアム② <流動性> 例えば、「債券(債務を化体(カタイ)した証券)」は有価証券なので、市場で売買が可能である。 したがって・・・ (返済の可能性が)危ないと感じた時に、市場で売ることが可能であると考えることができる。 そのため・・・ 市場性のある債務(つまり、債券)の方が、市場性のない債務(銀行借入)よりも有利であるということになる。 また・・・ 市場で売買されるためには、「なるべく大きい会社」「なるべく知名度のある会社」「なるべく発行量の多い債券」の方が有利になる。 このような「有利な債券」ほど「流動性が高い」ということになり、リスクプレミアムが低くなる。 ということは、逆は逆!
市場金利と短期金利① 個別企業によって「リスクプレミアム」が違うため、借入金利自体は違ってくる。 但し、マクロ経済的に考えた場合・・・ 通常の経済であれば、個別企業のリスクプレミアム自体は大きく変化しないことから、全体としてのリスクプレミアムはほぼ「一定」と考えることができる。 他方・・・ 市場金利である国債利回りは、景気動向に応じて変化することが知られている。 つまり・・・ 景気が良くなるに従い、国債利回りは上昇するので、リスクプレミアムが同じであっても、マクロ経済的な借入金利は上昇することになる(逆は逆)。
市場金利と短期金利② <純粋期待仮説> この他に「市場分断仮説」「流動性プレミアム仮説」などがある。 景気動向に応じて国債利回り(市場金利)が変動する理由としては・・・ 「純粋期待仮説」 でいえば、短期金利の変化がより長い金利に影響を与えることになる。 ここで短期金利は、景気が良くなると高くなり、景気が悪化すれば低くなる。 したがって・・・ 好景気の時は、短期金利↑⇒長期金利↑ 不景気の時は、短期金利↓⇒長期金利↓
金融政策のメカニズム 日本銀行 買いオペ 売りオペ (日銀が)債券を買う (日銀が)債券を売る インターバンク市場 資金供給 資金吸収 ブローカー 市中銀行A 資金不足 市中銀行B 資金余剰 IBレートが高い場合 資金不足 > 資金余剰 ⇒IBレート↑ 金利の過度の変動は経済にとって問題 資金不足 < 資金余剰 ⇒IBレート↓ インターバンク市場(無担保コール翌日物金利:現在0.1%に誘導している)を見ながら、インターバンク内における資金量を調整している。
金融政策と市場金利① <好景気状態> 景気が良い場合、物価が上昇することから、日銀は金利を引き上げる方向で政策を行う。 これを「金融引締政策」という。 つまり・・・ 目標となるインターバンク金利の誘導目標を引き上げる対策を採る。 例えば、現状の目標誘導金利が「1%」の場合、「1.25%にする」などをいう。 これによって「短期金利(インターバンク金利)」が上昇するので、純粋期待仮説によれば、長期金利も上昇することになる。 長期金利(国債利回り)の上昇は、企業等のリスクプレミアムが一定の場合、借入金利(または、調達金利)が高まることを意味する。 実際・・・ 銀行等は、自身の調達金利であるインターバンク金利が上昇している場合、企業への貸出金利、および、住宅ローン金利はスライド的に上昇させようとするのは当然である。
金融政策と市場金利② <景気後退局面> 景気後退の状態においては、事業収益が低下しているため、設備投資等を行おうとしなくなる。 そのため、資金ニーズが低下し、企業は借り入れを抑える傾向があり、さらに景気が悪化する可能性が高くなる。 そこで・・・ 日銀は目標誘導レートを引き下げ、短期金利を下げる方向で政策を行う(金融緩和政策)。 これによって、純粋期待仮説より、長期金利が低下するとともに、銀行の調達金利が低下するため、企業等への貸出金利が低下することが予想される。 借入金利が低下すれば、コストが低下することになるので、それに見合った設備投資を行うため、GDPを押し上げることになる。