第4課 輻射の方程式 I 平成16年11月1日 講義のファイルは、 第4課 輻射の方程式 I 平成16年11月1日 講義のファイルは、 http://www.ioa.s.u-tokyo.ac.jp/kisohp/STAFF/nakada/intro-j.html 質問は、 nakada@kiso.ioa.s.u-tokyo.ac.jp レポート提出は出題の次の授業が原則ですが、それ以降でも構いません。単位が欲しい人は5つ以上のレポートを提出して下さい。とにかく全部のレポートを頑張って出した人には良い点が与えられます。 M2その他で単位認定を急ぐ人は申し出て下さい。
4.1. 輻射の基礎方程式 吸収断面積 吸収断面積 線吸収 バンド吸収 連続吸収 波長
光学深さ τ dx I(x) I(x)+dI dI=-IσdN= -Iσn dx=-Iκρdx dN=n dX=dX内の粒子数/単位面積 光学深さ τ dx I(x) I(x)+dI dI=-IσdN= -Iσn dx=-Iκρdx dN=n dX=dX内の粒子数/単位面積 n=粒子の数密度 ρ=密度 σ=吸収断面積 κ=質量当たり吸収係数 光学深さ τ: dτ=σn dx=κρdx (optical depth) dI=-Idτ
見通しとτ X(厚み) 正面(面積S)から見ると N=nSX Σ=σN=σnSX=総吸収断面積 =粒子総数 Σ/S=σnX=τ N=nSX Σ=σN=σnSX=総吸収断面積 =粒子総数 Σ/S=σnX=τ τ<<1 : τ=正面から見たときの粒子の被覆率 τ=1 : 重なり合いがなければ、被覆率=1 実験的に e を決められる?
第1課の復習: 体積輻射率ε 体積dVからのエネルギー放射率(全立体角)がεdVのとき、εを体積放射率と呼ぶ dV =dsdX ε dω dS dΩ ds=X2dΩ X dX dVからdSを通ってdΩに放出されるエネルギー率は、微小長さdXからI(X)への貢献を dI とすると、 dIdSdΩ=εdVdω/4π=εX2dΩdXdS/ 4πX2 したがって、dI= (ε/4π)dX である。
Equation of radiative transfer Equation of radiative transfer 吸収: dI=-IσdN= -Iσn dx=-Iκρdx 放射: dI= (ε/4π)dx 吸収と放射の両方を合わせて、 dI(x)/dx= - Iρκ+ερ dI(x)/ρκdx = - I+ε/κ 前ページの(ε/4π)を 今後、ερと置く。 (εの意味がちょっと変わる) I(x+dx) I(x) κρdx= dτ τ = Optical Depth (光学的深さ) ε/κ=S S=Source Function (源泉関数) で、τとSを定義すると、 dI(τ)/dτ+ I (τ) = S(τ) : 輻射の基礎方程式 勿論、 波長表示では、 dIλ(τλ)/dτλ+Iλ (τλ)=S(τ λ) 周波数表示では、 dIν(τν)/dτν+Iν (τν)=S(τν) の意味である。
注意 :天体の表面をτ=0とし、光線がやってくる方向へ(上の図では左) τが増えるようにとる記述もある。その場合、輻射の方程式は τが増えるようにとる記述もある。その場合、輻射の方程式は dI (τ)/dτ- I (τ) = - S(τ) となる。
吸収係数と見通し距離 X λ λ 観測者 大体τ=1までを見通せると考えると、κ大の波長で浅い場所からの光を、 同じ区間でもκ(x,λ)が波長により異なるので、τ(λ)=∫κ(x,λ)ρdx も 波長により変化する。特に吸収線の部分では大きくなる。 大体τ=1までを見通せると考えると、κ大の波長で浅い場所からの光を、 κ小では深い場所からの光が見える。 κ(λ) τ=2 X τ=1 τ=0 λ λ 観測者
4.2.Source Function (源泉関数) : S 源泉関数Sはどう表せるのか? 0 局所熱平衡の仮定: 各点での吸収係数κや放射係数εが温度Tと密度ρ (LTE) で決定される。 ε(x)= εν (ρ,T)、κ= κν (ρ,T) すると、 Sν (τν) =εν (τν) /κν (τν) =Sν (ρ,T) 1 T=T(x) : (Tが場所によって変わる) Ⅰはdxの間に、ΔI=-[Iν (x)-Sν (ρ,T)] dτν の変化を受ける。 I(x+dx) =I(x)- I(x)κ (ρ,T) ρdx+ε(ρ,T) ρdx = I(x) -[I(x)-S (ρ,T)] dτ I(x) (ρ,T) 他のところでは温度は必ずしもTではない。
2 あか その他の点でも温度が一様 にTになった状況を考えて みる。 すると、 Ⅰν (x)はどこでも、Ⅰν =B(T,ν) I(x)=B(T,ν) I(x+dx)=B(T,ν)-[B(T,ν)-Sν (ρ,T)]dτλ I (x)=I (x+dx)= B(T,ν) なので B(T,ν)-Sν (ρ,T)=0 つまり 熱平衡状態では Sν (ρ,T)=B(T,ν) ところが、Sν (ρ,T) は系全体が熱平衡か どうかには関係なく、そこがLTEであれば そこの(ρ,T) から決まるので、 一般に Sν (ρ,T)=B(T,ν) が成立する。 dIλ(τλ)/dτλ+Iλ (τλ)=Bλ[T(τλ)] : LTEの輻射の方程式 あか
4.3.簡単な解 x (i) ε=0 (途中の物質がとても冷たい。) 光源 吸収体 Iλ (x=0) Iλ(x) x=0 dI/dx= - Iρ(x)κ(x) : I(x=0)=I0 I(x) =I0exp ( -∫κ(λ)ρ(x) dx ) = I0exp [ -τ(x)]
入射光 吸収体 出射光 κρ 5 τ 0 I / Io I
この銀河は中心に高温の活動銀河核を持ち、そこからの連続(滑らかな)スペクトルが銀河内星間ガスにより吸収を受けている。 下のグラフは、1995 ApJ 450, 74-89 Forster, Rich and McCarthy による、 活動銀河 Mrk231 のスペクトルである。 この銀河は中心に高温の活動銀河核を持ち、そこからの連続(滑らかな)スペクトルが銀河内星間ガスにより吸収を受けている。 Mrk 231 活動核 連続光 1 星間ガス 吸収を受けた光 波長5980A(=0.598μm)の吸収線はMrk231星間ガス中のNa原子によるもので、D線と呼ばれる。 0 5970 A 5980 A 5990 A 吸収線の深さから Mar231銀河内のNa原子のコラム密度を求めよう。 D線中央の吸収断面積はσ=(2×10 -20 / √T ) cm2 である。 実験室ではTはNaガスの温度を表わす。星間空間ではTは銀河内ガスの運動による視線速度の幅を表わし、吸収線の幅 D=1.1×10-3 √T A である。 上のグラフから D≒1.8Aなので、 √T =1.64×103 となる。したがって、σ=1.22×10-23 cm2 である。
吸収線中央では ( I / Io ) = Exp(ーτ)=0.5 τ=0.7 Na原子のコラム密度を N (cm-2) とすると、 τ=Nσ であった。 したがって、N=0.7/ ( 1.22×10-23 )=5.8×1022 /cm2 この値は、詳しいラインフィットの手法で求めたNaコラム密度とファクター 2程度しか違わない。 このように、吸収断面積を知っていると、吸収体のコラム密度を簡単に推算できる。線吸収の吸収断面積については、後の章で勉強する。
簡単な解(ii) I(x=0) = 0 I=0 I(x,λ) x x=0 (天体の向こう側からは光が来ない。) S(τλ) dI(x,λ)/dx+I(x,λ)κ(λ)ρ(x)=ε(λ)ρ(x) dI(τλ)/dτλ+I(τλ)=S(τλ) I(x,λ) =∫0τλS(t)exp{ - (τλ-t)} dt S(τλ)=So(λ)=const.の時、 I(x,λ) =So(λ) exp( -τλ)[exp(τλ)-1]=So(λ) [1- exp(-τλ)]
Ⅰ LTEが成立し [つまりS(τλ)=Bλ(T) ] 、 かつT=一様の場合、 Iλ =Bλ(T) [1- exp(-τλ)] 0 1 2 3 τ Ⅰ B(T) Iλ =Bλ(T) [1- exp(-τλ)] (1)τλ<<1の時は、 Iλ=τλBλ(T) (2)τλ>>1の時、 Iλ=Bλ(T)
輝度温度(brightness temperature) Tb : Tbの定義 Ⅰ(ν)=B(Tb, ν ) 例えば、 Tc=100Kの星間雲を1.42GHz(λ=21cm)で観測する場合、 x=hν/kTc =1.44 / 210,000 / 0.01=0.0007<<1 B(Tc,ν)=(2h/c2)ν3/[exp(hν/kTc)-1] (2 kTcν2/c2) Reyleigh-Jeans law 光学的深さτ<<1のこの星間雲を観測して、 輻射強度I (ν)を得た。すると、 Ⅰ(ν)=B(Tb,ν) =τνB(Tc,ν) :光学的に薄いから。 (2 kTbν2/c2)=τν (2 kTcν2/c2) : レーリージーンズ領域 よって、光学的に薄くかつレーリージーンズ領域にある波長では、 Tb=τνTc
簡単な解(iii) I(x=0) =Io(λ) 光源と途中の吸収・輻射帯の両方 Sλ (x)=Bλ(T) Io(λ) I(λ) 光源 途中の吸収・放射帯 簡単な I(x,λ) = Io(λ) exp ( -∫κ(λ)ρ(x)dx ) = Io(λ) exp [-τλ ] 解(i) I(x,λ) =∫S(t) exp{- (τλ-t)} dt 解(ii) をあわせて、 I (λ) = Io(λ) exp[-τ(x,λ)]+∫S(τ1λ)exp{- (τλ-τ1λ)} dτ1λ = Io(λ) exp[-τλ] + Bλ(T)[1-exp(-τλ)] τλ <<1の場合には、 I(λ) =Io(λ)(1-τλ)+ Bλ(T)τλ = Io(λ) + [Bλ(T) - Io(λ) ]τλ
例: CaIIのK線の中心部に現れる彩層(chromosphere)輝線 Tchrom(高温) Teff スペクトル 恒星大気 彩層 Teff 6,400 Teff 30,000 6,250 9,800 7,300 5,950