政策提言の作り方のポイント.

Slides:



Advertisements
Similar presentations
関西学院大学 村田ゼミ 立論 衣斐、岸田、鈴木、高田、長谷川、大森、藪本、村上. 立論① 非正規雇用を廃止し正規化 により、賃金収入が増加。
Advertisements

日本の就職、失業問題 湯澤 脩平. 高卒就職の厳しさ 大学進学率の急上昇 (2011 年には 54.4 % ) とも相 まって、同世代の中での高卒就職者は、現在で は少数派( 15.9 %)に属している。 しかし、逆に言えば、高卒の就職難という状況 こそが、大学進学率を押し上げる要因となって.
高年齢者における雇用開発の分析 国際経済学部 国際経済学科 4年 大貫 宣弥 2004/10/23.
第6章 労働時間管理 労働サービスの供給量とタイミングの管理
社会保険の適用拡大について.
最低賃金1000円の是非.
第11章 プレゼンテーションの基本スキル 1 プレゼンテーションとは 2 プレゼンテーションの種類と特徴 3 プレゼンテーションツール
非正規雇用の現状 MR1051 アキ.
2014年6月男女平等月間 学習会資料 連合総合男女平等局
第8章 非正規社員と派遣労働者 ~コンティンジエント・ワーカーの活用~
社会保険ワンポイント情報 15号 パートタイマーへの社会保険適用拡大 社会保険加入対象者の新しい要件 適用拡大の対象となる事業所は?
~従業員の雇用を守る事業主を福井県が応援します~ (平成21年4月施行)
企業における母性健康管理体制の現状と課題についてお話いたします。
課題1:限定正社員 「限定正社員」のような雇用の形態のメリットは何か?労働者個人にとってのメリット、企業(または雇用主)にとってのメリットが何であると考えるかについて、論旨を明確にしながら説明しなさい。加えて、労働者個人・企業(雇用主)を除く社会にとってもメリットがあると考えるならば、それについても議論しなさい(可能であれば、最適化のモデルなどを使って示すと望ましい)。
若者の採用・育成に積極的な中小企業の皆さま
実証分析の手順 経済データ解析 2011年度.
1日目 10:25 【演習】 情報の収集とチームプレイの基本 -オリエンテーション- 松本 亜希子 障害者支援施設 虹の家.
 授業を設計する(その4) 情報科教育法 後期5回 2004/11/6 太田 剛.
社会保険ワンポイント情報 3号 年金事務所の調査とは? 年金事務所調査のポイント 年金事務所の調査に持参する物
2.非正規従業員の活用 非正規従業員の雇用量と構成 非正規雇用・・・雇用期間に定めのある(有期契約)労働者
●レポートを書くこと→主張の根拠を示して、他の人を説得するため ●最初から順に読んで分かるように書く ●
3.労働時間の弾力化と課題 ◇新しい労働時間制度の導入◇ ◇弾力的な労働時間制度とは◇ 1987年、93年、98年
東北地方太平洋沖地震被害に伴う 雇用調整助成金の活用Q&A
ハイパー氷河期の時代 ハイパー氷河期の時代(プレゼンテーション)
日本の就職、失業問題と雇用保険  湯澤脩平.
第10章 失業と自然失業率 失業率はマクロ経済学においてGDP(5章)、インフレ率(6章)と並び重要な指標 各国の失業率(2012年、%)
2007年度後期 労働法政策 第7講 労働時間制度 ホワイト・エグゼンプション.
平成28年10月 公共事業労務費調査 様式-2(各種手当内訳票)の 作成方法 ●説明
「働き方」に関する詳細・お悩みは【相談窓口】へ 改正法の詳細は厚生労働省HP『「働き方改革」の実現に向けて』をご覧ください。
お金を使う ①お金はどこからやってくる?.
高年齢者における雇用開発の分析 国際経済学部 国際経済学科 4年 大貫 宣弥 2004/10/23.
「働き方」に関する詳細・お悩みは【相談窓口】へ 改正法の詳細は厚生労働省HP『「働き方改革」の実現に向けて』をご覧ください。
看護現場における 労務管理の法的側面① <労働法と労働契約>
「働き方」 が変わります!! 2019年4月1日から 働き方改革関連法が順次施行されます 時間外労働の上限規制が導入されます!
労働経済学 安部由起子 10月24日 安部ゼミ説明会 労働経済学 安部由起子
人材育成 1.従業員の雇用 1-1 従業員採用への配慮事項 1-2 人材の募集 1-3 労働契約の締結 Appendix-1 労働者保護法規
~この助成金は、厚生労働省の産業保健活動総合支援事業の一環として行われています。~
2018/11/9 第7章  非正規従業員と派遣労働者 E班 岩橋・片山・高倉・水上・森下.
新規学卒者等の募集・採用にあたり、 「地域限定正社員制度」 の導入を検討しませんか?
~労働サービスの供給量とタイミングの管理~ B班・木村・田中・西山・小川・大平
実践型地域雇用創造事業 ≪概要≫ 実施スキーム 事業内容 厚生労働省 地域雇用創造協議会 外部有識者等 都道府県 地域の経済団体 市町村
労働時間相談・支援コーナー を設置しました。 「働き方改革」 への取り組みを支えるため 宮城労働局・労働基準監督署
「働き方」に関する詳細・お悩みは【相談窓口】へ 改正法の詳細は厚生労働省HP『「働き方改革」の実現に向けて』をご覧ください。
 脱・フリーター社会                                      京都大学橘木研究室         
【3.6 実証実験を進める上での課題、明らかにしたい事項】
発表内容の例(5S/小カイゼン発表) 活動から学んだこと . 職場とメンバー紹介 グループの思い テーマと目標 お勧めの改善事例
宣言署名、御連絡先を記入の上労働局にお送りいただければ、HP上に登録いたします。
第151回 リフレクションの簡素化-ゲーミフィケーション的な感じで-(仮)
具体的な発信方法 政策提言 公式Facebook 公式LINE 一般市民 プレスリリース ホームページに政策提言記載 JCメンバー リンク
助成金サポート 3年契約 お 見 積 書 株式会社 ビューティガーデン 御中
2014年6月男女平等月間 学習会資料 連合総合男女平等局
公益社団法人日本青年会議所 2017年度 経済再生グループ 強い産業構造創出委員会
釜石市まち・ひと・しごと総合戦略・長期人口ビジョンの策定体制
5章 労働時間管理 B班 大下内・平野・兵藤・すまだ・渡辺.
「働き方」に関する詳細・お悩みは【相談窓口】へ 改正法の詳細は厚生労働省HP『「働き方改革」の実現に向けて』をご覧ください。
平成30年10月 公共事業労務費調査 様式-2(各種手当内訳票)の 作成方法 ●説明
~求められる新しい経営観~ 経済学部 渡辺史門
年間平均額により随時改定を届出ることができます
「働き方」に関する詳細・お悩みは【相談窓口】へ 改正法の詳細は厚生労働省HP『「働き方改革」の実現に向けて』をご覧ください。
資料提出の際には本ページを削除してください。 プレゼンテーション、およびプレゼンテーション資料に関する注意点
1日目 10:25 テキストp.◯ 【演習】 情報の収集とチームプレイの基本 -オリエンテーション- 松本 亜希子 障害者支援施設 虹の家.
研究開発名称 (対象とする技術のイラストや図) 提案者:○○株式会社 研究開発の概要 概算経費
21年度から実施する施策~雇用保険のセーフティネット機能を強化します。
ワークライフバランス ~働く女性がキャリアアップのしやすい社会を目指す~
厚生労働省・茨城労働局・ハローワーク常陸鹿嶋
58.6% 58.6% 17.8% ママインターンプロジェクト 女性の労働力問題の背景
第2回実務者会議の議論を受けた検討(データWG関係)
研究開発名称 (対象とする技術のイラストや図) 提案者:○○株式会社 研究開発の概要 概算経費
第2回実務者会議の議論を受けた検討 資料14 1 第2回実務者会議での議論の概要 (○:有識者意見、●:関係府省意見) 1
労働時間の構成 所定労働時間 所定外労働時間
Presentation transcript:

政策提言の作り方のポイント

1.これまで作成してきた提言を紹介します これまで強い産業構造創出委員会で作成してきた提言について幾つかご紹介します。作成した時期や提出先などによって若干異なる部分がありますが、基本的には一つの提言について、現状、問題、提言内容、効果を、わかりやすく記載することを心がけています。

例)生産性向上へ向けた労働時間貯蓄制度の導入 以下は強い産業構造創出委員会で作成した提言の一例。まずは概要を記載し、その後、証拠資料を添付している。 例)生産性向上へ向けた労働時間貯蓄制度の導入 関連法令 労働基準法 現状 中小企業が労働者に支払う残業代が大企業並みに引き上げられ、企業の負担が増えると考えられる。 問題点 労働時間は長いが、労働生産効率が伸び悩んでおり、少子高齢化による労働需給減少に対応するために、効率よく生産できる雇用制度が求められている。 提案内容 労働者が労働時間を貯蓄しておける制度。従来の均等配分時間原則とは大きく異なり、通常の労働時間を繁忙期などに配分することを可能にする。 想定される 経済的効果 企業は労働時間を減らさずに、労働需要の短期的な変動に対応する自由度が高まり、残業に必要な追加的な手当の支払いの必要がなくなる。また、人材活用の柔軟度が向上し、生産性向上による企業収益増に繋がる。 3

1-2.現状 中小企業が労働者に支払う残業代が大企業並みに引き上げられ、企業の負担 が増えると考えられる。 時間外労働に対しての ※平成31年4月1日から、中小企業における月60時間超の時間外労働への割増賃金率の適用猶予が廃止される。平成22年の労働基準法改正で1ヶ月あたり60時間を超える時間外労働に対して5割の割増率で計算した割増賃金を支払うことが決定されたが、中小企業は当面の間割り増し率の適用が猶予されていた。平成26年8月ごろから猶予を見直すことが検討されていたが、平成31年の4月1日から割増賃金率の適用猶予の廃止が決定した。 時間外労働に対しての 賃金負担が増大していく。

上記表のように、日本に比べドイツの労働時間は短いが、左記表の通りドイツの生産性は高い 1-3.問題点 労働時間は長く、労働生産効率が伸び悩んでおり、少子高齢化による労働需給 減少に対応するために、効率よく生産できる雇用制度が求められている。 上記表のように、日本に比べドイツの労働時間は短いが、左記表の通りドイツの生産性は高い 出典:(日本生産性本部 http://www.jpc-net.jp/intl_comparison/)

労働時間貯蓄制度の導入企業に制度維持のための補助金支給 1-4.提案内容 労働者が口座に労働時間を貯蓄しておける制度。従来の均等配分時間原則とは 大きく異なり、通常の労働時間を繁忙期などに配分することを可能にする。 ドイツでは、企業と従業員は通常の労働時間の強い拘束から解放された。従業員は時間を積み立て、職場外での活動に自由に使うことが可能となった。他方、企業は残業に必要な手続きや追加的な手当の支払いなどの制約を受けなくてすむようになった。また、労働需要が変動しても、企業は投入する労働力の調整を、従業員数ではなく労働時間の調整によって実現することが可能となったのである。 貯蓄 職場で定めた労働時間と、実際に働いた時間の差を勤務先の口座に積み立て、後から従業員が有給休暇などに振り替えて利用できる仕組み。企業は残業時間を増やさず、生産調整が出来る。 「より短く」から「より柔軟」へ 労働時間貯蓄制度の導入企業に制度維持のための補助金支給

2.提言の作り方 強い産業構造創出委員会がこれまでどのように提言を作成してきたか、手順をお伝えします。ただし、これはあくまで強い産業構造創出委員会が試行錯誤してやってきたことであり、絶対的なものではありません。

①提言のもととなる情報を集める。 様々なメディアから情報収集。以下ではシミュレーションとして石川県金沢市に対しての政策提言を作成する。まずは問題点や改善点、論点などいろいろな情報を集める。金沢についての市が公表している資料や有識者の論文、レポート、個人ブログなどいろいろなヒントから探す。基本的には、最初はアイデアをたくさん出す。徐々に実現可能性が高く、行政に対する提言になりそうなテーマに絞られていくので、最初はとにかく数をたくさん出す。 例) ・宿泊施設が足りない ・新幹線効果が薄れてきている ・大学が多いのでそれを活かしたまちづくりが必要 ・新しい価値と文化の両立が大事 ・若者の流出 ・まちなかに大きなコンベンションセンターがない ・英語の案内サインが少ない ・2度・3度と観光に来る魅力がない なんでもいいので目についたものを、たくさん出す

②様々な問題点等を列挙して提言の候補を選定する 集めたアイデアをメンバーで取捨選択。明らかに提言にならないものなどあれば除外する。「つよさん」でも出したアイデアの殆どが却下になったこともある。 「大学が多いのでそれを活かしたまちづくり」とか「新しい価値と文化の両立」 上記2例のように、論点があいまいなものは、具体的な提言を作りにくいので除外するか論点を明確にしてみる。 例えば、「大学が多い」のに「若者が流出している」という点に着目して「大学が多いのに、学生が卒業後が定着しない」なら、その原因と対策が提言になるかもしれない。

②証拠を探す 提言の候補がいくつか決まったら、それらが正しい情報かどうか根拠を確かめる。ネットの情報には根拠が見つからないもの、数値化できないもの、間違っているものもたくさんある。 例えば以下のような資料が見つかる。これには金沢には大学生が多いのに卒業すると地元に帰ってしまう学生が多い、というような一節がある。 金沢型創造産業を考える研究成果報告書 平成16年10月 http://www4.city.kanazawa.lg.jp/data/open/cnt/3/12482/1/1D.pdf

③さらに証拠を探す 前ページの資料だけでは根拠としては薄弱。出典も不明であるし、データが古いのでさらに補強する資料がないか探してみる。この作業中、あまりに資料がないものや難解すぎる提言は除外することとなる。 今回の例では以下のような資料が見つかった。 金沢市人口ビジョン 平成27年10月 http://www4.city.kanazawa.lg.jp/data/open/cnt/3/22560/1/jinnkoubijyonn.pdf

④さらに調査し提言にしていく ③の資料で根拠は見つかったが、原因がわからないと提言を作ることができないので、提言につながりそうな資料を探す。 今回の例の場合、探してみると「北陸地域における中小企業の雇用に関する調査及び研究(平成28年3月)」という資料がみつかった。 http://www.hiac.or.jp/works/pdf/H27koyou_houkoku.pdf この指摘の妥当性を検討し、事実であるならば、学生への機会の提供を促進するようなアイデアがあれば提言になる可能性がある。

⑤提言を考え、補強する テーマが絞り込まれてきたら、そのテーマについて県外や国外で似通った例がなかったかの事例や、研究論文、造形の深いメンバーがいれば聞き取りするなどして提言内容を補強する。全く前例がない、理論の裏付けもない、賛同する人もいないような突飛すぎる提言に説得力をもたせるのは難しい。 冒頭で紹介した「労働時間貯蓄制度」の提言ではドイツの前例を参考にしています。前例や研究論文の内容を、金沢にあわせて修正するなどして、新たな提言が作れるかもしれない。

⑥提言内容を確定し、まとめる 提言を確定し、それまで集めた資料を元に、提言の背景と効果をまとめる。その後、根拠資料を作成する。

⑦作成した提言をブラッシュアップする。 委員会内で作成した提言を更にブラッシュアップしていく。以下のような方法が考えられる。 ◯ JCメンバーや知人などで、提言内容に該当する業界の方の話を聞いて、妥当な提言になっているのか確認する ◯ 有識者や政治家に確認し、提言内容に不備がないかどうか確認する。 このように外部の意見を聞いて修正する、という作業を繰り返して完成させる