~子どもたちの未来のために;小児科医からの提言~

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~「依存症対策のあり方について(提言)」(平成29年3月)と府の対応~
2019年度 すべての教職員のための授業改善研修 本研修の背景とねらい
・特別支援教育について ・発達障害等の特性 ・教育環境等の整備
Presentation transcript:

~子どもたちの未来のために;小児科医からの提言~ 子どもから学ぶ! 聴く! そして育む ~子どもたちの未来のために;小児科医からの提言~ シンポジウム (スライド1) 今回、私たちは第24回日本小児科医会総会フォーラムを主催させていただきました。 (クリック)その中で、シンポジウム「子どもから学ぶ、聴く、そして育む、~子どもたちの未来のために;小児科医からの提言~」を企画しました。

シンポジウムの背景 子どもたちを取り巻く環境の劣悪化 子どもたちのより良い未来への願い 子どもたちの代弁者として訴える このシンポジウムの根底には、以下のような私たちの思いがあります。 (クリック)まず、近年の子どもたちを取り巻く社会環境は、ますます悪化してきている状況にあります。その事実は、私たち小児科医が日常診療で出会う子ども達やその保護者、家庭を目の前にして、日々実感することではないでしょうか。 (クリック)その社会にあって、私達小児科医は、1人1人の子どもたちにより良い未来を提供してあげたいと強く願っています。 (クリック)そこで今回のシンポジウムでは、私達小児科医が子どもたちの代弁者として、その思いを社会に強く訴えることを目的としました。

プログラム 子どもを大切にしない国への警鐘 小児科医だからこそできる親支援 小児科医による究極の育児支援とは  ~ワクチンを通して見る日本の子育て事情の問題点~ 小児科医だからこそできる親支援  ~診療を通して「親の育ち」を見守る~ 小児科医による究極の育児支援とは  ~小児救急から病児保育まで~ プログラムでは、3人の先生方にお願いして、日常の診療から感じる不条理や思いについて訴えていただきました。 藤岡先生からは、「子どもを大切にしない国への警鐘、ワクチンを通して見る日本の子育て事情の問題点」としてご講演をいただき、VPDのリスクから十分に守ることのできない我が国の予防接種システムの不合理について訴えていただきました。 仲野先生からは、「小児科医だからこそできる親支援、診療を通して親の育ちを見守る」というタイトルでご講演をいただき、発達障害の子ども達とその親支援というご自身の診療経験から、現在の社会制度の不備について訴えていただきました。 そして木野先生からは、「小児科医による究極の育児支援とは、小児救急から病児保育まで」としてご講演をいただき、小児救急医療や病児保育の現場から見えてくる法整備の必要性について訴えていただきました。 いずれの先生方からも、ご講演の最後に、「小児科医からの提言」として、最も訴えたいことを述べていただきました。

~子どもを大切にしない国への警鐘~ 小児科医からの提言 子どもたちの未来を       感染症から守れ ワクチン接種は子どもの権利 感染症対策は国の責任で 藤岡先生からは、①子どもたちの未来を感染症から守れ、②ワクチン接種は子どもの権利、③感染症対策は国の責任で、という3つの提言をいただきました。 私達小児科医は、毎日のように予防接種を行っており、また感染症の患者さんを多く経験しています。先生からの提言は、私達小児科医が日常感じているそのものであると思います。 世界の子ども達が普通に受けているワクチンを、何故この国の子ども達は平等に受けられないのでしょうか?何故、水ぼうそうやおたふくかぜは、お金を出せる人しか受けられないのでしょうか? 私は、中学1年生のMRワクチン接種率を上げるために学校での集団接種を提案したことがあります。役所の健康増進課では賛成しますが、教育委員会とりわけ学校現場は最後まで反対で実施できませんでした。また国は接種することだけを決定して、財源を含めて全てを地方に丸投げしています。その結果、本来なら子ども達は何時でも接種できる財源が確保されているはずですが、地域での対応をみると必ずしもそうではないようです。国と地方の考えが一本化されておらず、また連携もできていません。MRワクチンを通じて、厚労省と文科省の縦割り意識も接種率向上の妨げになっていることを実感しました。

~小児科医だからこそできる親支援~ 小児科医からの提言 子どもの健やかな成育と親の育ちを見守るために 小児科医が親支援できる  社会システムの構築 母子にかかわる各機関の  連携ネットワークの充実 乳幼児健診と保健指導の充実 仲野先生は、子どもの健やかな成育と親の育ちを見守るために、①小児科医が親支援できる社会システムの構築、②母子にかかわる各機関の連携ネットワークの充実、③乳幼児健診と保健指導の充実、を「提言」に挙げられました。 私達小児科医は、日常の診療で、「ちょっと気になる子」はよく経験します。また一方で、「ちょっと気になる母親や家庭」もよく経験します。こうした「ちょっと気になる親子や家庭」を、誰に、どのようにして、連携してつないでいくことができるのか、国としての体制作りは全くできていません。私の地域でも、市の担当課に連絡しても、保健師は既に手が一杯で、十分な関わりやフォローができていないのが実情です。圧倒的にマンパワーが不足しており、その連携システムもできていません。 また、気になる親子や家庭に気づく機会でもあり、支援の機会でもある乳幼児健診の回数が、何故これほどまでに少ないのでしょうか?妊婦健診は10回以上認められているのに、乳幼児健診は2回程度です。妊娠中から乳幼児期までの一貫した親子支援が必要だと思いますが、妊娠期と出生後が切り離されてしまう現在の健診システムは、まさに連携のないその場限りのシステム作りと言わざるを得ません。子どもの成長と発育に主眼を置いた法の整備が必要ではないかと思います。

~小児科医による究極の育児支援とは~ 小児科医からの提言 病気のときにも、心身の重要な発育を促すために   病児保育施設を地域の包括育児ステー   ションとして活用する。 子どもの権利を守り、育児支援につなぐために   小児医療には、臨床心理士、保育士、   MSWなどを配置し、医療と保健、福祉の   連携システムを構築する。 木野先生からは、①病児保育室を地域の包括育児ステーションとして活用する、②小児医療には、臨床心理士、保育士、MSWなどを配置し、医療と保健、福祉の連携システムを構築する、という2点を挙げていただきました。 軽症患者が多数押し寄せる小児救急も、裏を返せば病児を抱える保護者に安心と安全を提供する育児支援医療とも言えます。また病児保育は、単に親の代わりに病児を見ているだけではなく、子どもの病状に応じた遊びと学びの場となるものであり、親の就労支援というよりは子どもへの直接支援と言えるものであります。大切なことは、小児救急や病児保育を充実させるための方策に、単に小児科医の数を増やすことやお金を投入するだけでは何の解決にもならないということです。各部署との連携がしっかりとれるようなシステム作りが必要なのではないかと思います。 先生が指摘されている、医療と保健、福祉の連携は、縦割りのシステム作りではなく、各部署を横断するような包括的なシステム作りが問題の解決には必須であるということだと理解しました。

3つの「提言」から 子どもの権利が損なわれている 子どもの権利条約(1989年) 1)生きる権利 2)育つ権利 3)守られる権利    子どもの権利条約(1989年)     1)生きる権利     2)育つ権利     3)守られる権利     4)参加する権利 今回のシンポジウムでは、3人の先生方からそれぞれに「提言」をいただきました。 その根底には、「こどもの権利が損なわれている」という考えがあるものと思われます。 (クリック)1989年に制定された「子どもの権利条約」には、以下の4点が記載されています。1)生きる権利、2)育つ権利、3)守られる権利、4)参加する権利 我が国も、この条約に批准していると聞きます。 しかし、実際には批准しているとは言い難い状況であることは、今回の提言からも明らかだと言わざるを得ません。

「法の整備」と「連携」 3つの「提言」から 子どもの権利が損なわれている 共通した「キーワード」 そして、「子どもの権利が損なわれている」という3人の先生方からの提言には、共通したキーワードが読み取れます。 (クリック)それは、「法の整備」と「連携」 です。

「法の整備」と「連携」 成育基本法 個々に「法」を整備するだけではなく、 子ども中心に「連携」できる包括的な 「法(システム)」の整備が必要 子ども中心に「連携」できる包括的な    「法(システム)」の整備が必要 子どもの権利が損なわれないようにするためには、もちろん法を整備することは必要です。しかし、単に個々の法を整備するだけでは、必ずしもうまくいくとは思えません。 (クリック)整備された法が、子どもを中心として、各部署が連携できるような法でなくてはいけません。縦割りされた部署内だけの法ではなく、横断的、包括的に利用できる法でなくてはいけません。 私は、今回のシンポジウムを企画していく中で、そして3人の先生方のご講演を聞くにおよび、子ども達を取り巻く現状に「なぜ?」と感じるような不条理がたくさんあることを強く感じました。今までは「仕方がない」と諦めて、やり過ごすことがほとんどでした。どちらかというと、病児保育を始めたり、個別に行政と折衝したりして、個人的な努力で活動してきたと思います。しかしながら、個人のボランティア精神による活動だけでは、すぐに壁にぶち当たり、多くの子ども達により良い社会を提供することはできないと感じました。恥ずかしながら、昨年までは小児保健法について、その内容を全く知りませんでした。改名して成育基本法となりましたが、その内容を知るようになったのは、この企画を通してでした。 (クリック)私たちのこの思いを実現してくれる法として、成育基本法が存在すると思います。 成育基本法

成育基本法成立 全ての子どもたちの幸せのために 早期の を願います 全ての子どもたちの幸せのために、早期の「成育基本法」の成立をここにご出席の皆さんと一緒に、強く希望したいと思います。 是非よろしくお願い申し上げます。