企業ファイナンス 2009年9月30日 ガイダンス: 企業ファイナンスとは? 名古屋市立大学 佐々木 隆文
企業ファイナンスが扱う経営問題 資本構成:資金調達をどのように行うべきか?(株式、負債の組み合わせ) 株主還元:稼いだ利益をどのように株主に変換すべきか? 設備投資 研究開発投資 企業価値評価 資本コスト
企業ファイナンスが扱う経営問題(続) コーポレート・ガバナンス:経営者に良い経営を行わせる仕組みは? 経営者報酬 企業の買収、合併 多角化経営 企業の境界(企業の本質とは何か?) 企業の社会的責任
分析アプローチ 経営学的な問題を経済学的なアプローチで接近 問題の本質を抽象的に捉え、より効率的な企業行動を検討する
講義で扱う項目(予定) 株式,債券の評価 実物投資の意志決定 資本コスト 資本構成 配当政策 企業価値評価 業績評価と経営者報酬 M&Aと企業再編 企業再生と倒産処理 ベンチャーファイナンスと新規株式公開 ※皆さんの理解度、興味に合わせて変更することがあります
何が学べるか 下記のような経営問題に明確な指針を与える 企業はどの程度,借り入れを行うべきか? 設備投資をどのように判断すべきか? 設備投資を行う際のハードルレートをどのように設定すべきか? 配当など株主還元のメリットは? 企業価値をどのように評価すべきか?
キャリアプランとの関連 企業ファイナンス理論は、下記のような専門的職業では直接的に重要。 一般事業会社の財務、企画部門 ファンドマネジャー 証券アナリスト M&Aアドバイザー 投資銀行業務 しかし、企業価値評価や投資意志決定などの考え方は、金融機関等のより一般的な職務でも応用可能。
資格等との関連 証券アナリスト:金融機関などで専門的職業に就いている人の多くが所持している資格。通信教育受講後、検定試験がある。証券分析、財務、経済の三科目。一次と二次。通常、2~5年程度で取得。 公認会計士試験の経営学(選択科目)にも関連します
講義資料 講義で用いる資料は毎回配布します 下記ブログからもダウンロードできるようにする予定(来週以降) http://blog.econ2.nagoya-cu.ac.jp/sasaki/ テキスト: 花枝英樹、『企業財務入門』、白桃書房、2005年。定価3,900円。
成績判定基準、連絡先 基本的に期末テストから評価。 また、授業への貢献(練習問題の回答、質問等)も考慮する。特に授業参加者の理解に有益な質問、意見は高く加点します。 卒業に単位が必要な人は積極的に発言して下さい。 オフィスアワー・連絡先 火,水 12:10~13:00(事前のアポイントが望ましい) sasaki_takafumi@econ.nagoya-cu.ac.jp
割引率(資本コスト)と現在価値 < PV=将来受け取るキャッシュフロー(グロスのキャッシュフロー)の現在価値 将来受け取る10,000円の 将来時点の価値 将来受け取る10,000円の 現在時点の価値 < 「割引率(資本コスト」で現在価値(PV)に換算
お金の現在価値:具体例 10年後の現金1万円(現金=安全資産) 割引率(資本コスト)が1%の場合 現在価値=10000÷(1+0.01)10=9053円 つまり、10年後の10000円と現在の9053円は同じ価値
割引率(資本コスト)の構成要素 現在の消費と将来の消費の価値 インフレ率 安全資産利子率 リスクプレミアム→キャッシュフローが変動する場合 将来のご馳走より今日のパン インフレ率 物価上昇による購買力の低下 リスクプレミアム→キャッシュフローが変動する場合 予想される金額(期待値)が同じなら確実性が高い方を望む 期待値が同じなら、確実性が高い方がPVは大きくなる 安全資産利子率
誰が資本コストを決めるのか? 資金提供者(投資家,債権者)が要求するリターン 何%リターンが必要かはお金を出す人が決める 借入金:銀行が決める 増資(株式発行による資金調達):株主が決める 資金提供者の工夫(分散投資)により低減できないリスク(市場リスク)のみがリスクプレミアムの対象となる
リスクと資本コスト 市場リスクが高いほど、資本コストは高い 資本コストは投資家の期待リターンに等しい 債券による調達の資本コスト < 株式による調達の資本コスト 資本コストは投資家の期待リターンに等しい 債券投資の期待リターン < 株式投資の期待リターン