2019/3/13 強度行動障害の理解 (0:00)9:45 (講師の自己紹介をします。研修やこの講義についての想いや意気込みなどを伝えてもらってもいいと思います。)
この時間で学びたいこと 強度行動障害は生まれつきの障害ではなく、周 囲の環境や関わりによって現れる状態です。 2019/3/13 この時間で学びたいこと 強度行動障害は生まれつきの障害ではなく、周 囲の環境や関わりによって現れる状態です。 この時間では、強度行動障害がなぜ現れるのか を知り、強度行動障害を予防することの重要さ や改善するための考え方を学びます。 そして、強度行動障害が改善されることが最終 目標ではなく、強度行動障害が現れている人、 強度行動障害が現れやすい人たちが、地域社会 のなかで安心して幸せに生活してもらうことだ ということを確認します。 この研修では、「強度行動障害」が現れている方たちへの、支援の考え方や方法を、皆さんと一緒に学んでいきます。 「強度行動障害」と聞いて皆さんはどのようなことを思い浮かべるでしょうか? 普段「強度行動障害」が現れている方たちと接している方はイメージができるかと思いますが、普段あまりそのような方たちと接する機会がない方たちにとっては、「強度行動障害」と聞くと、必要以上にすごい状態の人たちを想像してしまい、もしかしたら少しこの研修を受けるのも心配になっている人もいるかもしれません。 また、この研修の名称が「強度行動障害支援者養成研修」といいますので、研修の名前だけを聞くと、すごい状態の人たちを特別な手法を使ってピタッと収めるための研修だと思っている人もいるかもしれません。 この研修の対象となる「強度行動障害」は、行動上に非常に難しい状態となっている人たちだけでなく、地域の事業所や学校などにも多くいらっしゃるような方たち、皆さんの身近にいらっしゃる方たちも含みます。 また、この研修で皆さんと一緒に学んでいくことは、何も特別な魔法のような手法ではありません。 この研修は、これまで全国で「強度行動障害」が現れている方たちへの支援を真摯に実践されてきた事業所・関係機関、難しい行動でつらい思いをしている人たちを何とかしたいという気持ちで研究に取り組んでこられた先生方が積み重ねられてきたことを、全国の支援現場で実践できるように研修として組み立てられたものです。 その内容は、特別な人しかできないというものではなく、障害のある人たち全般にも通じるような、支援の基本的な考え方やプロセスとなっています。 全国で強度行動障害が現れている人たちを地域で支えていく実践が広がっていますが、実際に支援に取り組んでいる方たちが口をそろえて言われるのが、「基本に忠実に、地道に実践を積み重ねていく」ということです。 この研修では、その基本や、支援を組み立てて実施するためのプロセスを学ぶことができるようになっていますし、その内容は何も強度行動障害への支援のみならず、様々な障害への支援に通じるものです。 ですので、できれば皆さんが普段関わっている方たちを思い浮かべながら、この研修を受けていただければと思います。 特に、普段の支援に悩んでいる人たちにとっては、この研修を通じてきっと何かしらのヒントを得ることができるのではないかと思います。 ※最初にお断りしておきますが、「強度行動障害」を現わす方の多くは自閉スペクトラム症の方たちだと言われています。 ですので、この研修では自閉スペクトラム症のことを多く説明します。 現段階での正式な名称は自閉スペクトラム症ですが、通称としてまだまだ自閉症でも通じるかと思いますので、この講義では自閉症と呼ばせていただきたいと思います。 では、スライドを説明していきます。 最初の講義では、この研修を受講していただくにあたって、以下のようなことを皆さんと確認していきたいと思います。 (この時間で学びたいこととして、スライドの内容を読み上げます。)
この時間の流れ 映像視聴 講義 ①強度行動障害とは(映像視聴) ②なぜ強度行動障害が生じるのか ③行動は学習の結果 ④児童期の予防の大切さ 2019/3/13 この時間の流れ 映像視聴 講義 ①強度行動障害とは(映像視聴) ②なぜ強度行動障害が生じるのか ③行動は学習の結果 ④児童期の予防の大切さ ⑤適切な関わりをするために ⑥強度行動障害と社会参加 ⑦誰もが幸せに生きていくことができる社会に (強度行動障害支援の意義) この講義の内容と流れです。 この時間はこのような内容をお伝えしていきたいと思います。 まずはじめに、①「強度行動障害とは」ということをお伝えします。 この時間には、強度行動障害について知ってもらうために、はじめに映像を見てもらいます。 見ていただく映像は、2017年度に国立のぞみの園で作成されたDVDで、強度行動障害への支援について分かりやすく説明されたものです。 映像を視聴していただいたうえで、強度行動障害支援について基本的なことを説明していきます。 内容としては、 ②「なぜ強度行動障害が生じるのか」 ③「行動は学習の結果」 ④「児童期の予防の大切さ」 ⑤「適切な関わりをするために」 ⑥「強度行動障害と社会参加」 ⑦「誰もが幸せに生きていくことができる社会に(強度行動障害支援の意義)」 となっています。 では、さっそく内容に入っていきたいと思います。
2019/3/13 ①強度行動障害とは 最初は、「強度行動障害とは」という内容です。
映像視聴 2019/3/13 ここでは先ほど言いましたように、まず映像を視聴してもらいます。 のぞみの園で作られたDVDのなかの一部を見てもらいたいと思います。 約12分ぐらいの映像となります。 (映像の視聴)
本研修の対象となる強度行動障害 推計0.8万人 障害支援区分3以上+行動関連項目10点以上 (行動援護対象者) 2019/3/13 本研修の対象となる強度行動障害 障害支援区分3以上+行動関連項目10点以上 (行動援護対象者) 行動上著しい困難を有する障害者等であって常時介護を有するもの 推計2.5万人 強度行動障害判定基準20点以上 (旧強度行動障害者特別処遇事業対象者) 自傷、他傷、こだわり、もの壊し、睡眠の乱れ、異食、多動など本人や周囲の人のくらしに影響を及ぼす行動が、著しく高い頻度で起こるため、特別に配慮された支援が必要になっている状態 推計0.8万人 いかがだったでしょうか。 では、見ていただいた映像を踏まえて、強度行動障害支援について説明していきます。 まずはじめに、この研修の対象となる強度行動障害について確認したいと思います。 この研修の対象となる「強度行動障害」とは、障害支援区分で言えば3以上、かつ、行動関連項目というスコアで10点以上の方たちです。 いわゆる行動援護というサービスの対象者になります。 最初に、皆さんの身近にいらっしゃる方も含むと言いましたが、行動援護の対象となるような方たちは比較的皆さんの身近にもいらっしゃるのではないかと思います。 そして、その中には、強度行動障害判定基準という評価項目で20点以上の方たちも含まれていて、ここに書かれているように、自傷、他傷、もの壊しなどの激しい行動を現わす人たちも対象となります。 この研修における「強度行動障害」には、非常に激しい行動を現わしている方たちだけでなく、支援現場に比較的多くいらっしゃるような方たちも含まれていることまず確認しておきたいと思います。
強度行動障害はもともとの障害ではなく、その人の状態のことです。 2019/3/13 自傷、他傷、こだわり、もの壊し、睡眠の乱れ、異食、多動など本人や周囲の人のくらしに影響を及ぼす行動が、著しく高い頻度で起こるため、特別に配慮された支援が必要になっている状態 強度行動障害はもともとの障害ではなく、その人の状態のことです。 そのうえで、「強度行動障害」という言葉が表す状態についてお伝えしておきたいと思います。 強度行動障害の一群には、いまお伝えしたような激しい行動を現わす方たちがいらっしゃいますが、その説明には、「自傷、他傷、こだわり、もの壊し、睡眠の乱れ、異食、多動など本人や周囲の人のくらしに影響を及ぼす行動が、著しく高い頻度で起こるため、特別に配慮された支援が必要になっている状態」と書かれています。 ここで注目してほしいのは、強度行動障害が「特別に配慮された支援が必要となっている状態」であるということです。 つまり、強度行動障害とは、もともとの障害ではなく、その人の状態のことを指すということです。 状態ですので、良くなったり悪くなったりしますし、強度行動障害が現れたり消失することもあります。 見ていただいた映像では、みさきさんが自分の髪を抜いたり、服を破ったりする映像がはじめに出ましたが、みさきさんに合った適切な支援をすることで、最後のほうではとても穏やかな状態で過ごされている様子が出てきました。 みさきさんの本来の姿は、最後の穏やかな状態です。 それが、様々な原因によって状態が悪くなってしまった様子が「強度行動障害」の状態ということになります。
2019/3/13 ②なぜ強度行動障害が現れるのか 次に、「なぜ強度行動障害が現れるのか」を考えてみたいと思います。
あるショッピングモールでの出来事。 困っているのは誰か? BさんやCさんは困っています。 2019/3/13 このイラストをご覧ください。 自閉スペクトラム症のAさん このイラストをご覧ください。 あるショッピングモールでの出来事です。 放課後等デイサービスの活動の一環で、数人の子どもたちでお買い物体験に来ていたと想定します。 自閉症の男の子Aさんは、ショッピングモールでたまたま通りがかった男の子Bさんを押してしまいました。 このとき、困っているのは誰でしょう? もちろん、たまたま通りがかって何が何だか分からないまま押されてしまったBさんは困っています。 Aさんを連れてきたスタッフのCさんも、「押された男の子にケガはないかな?」とか、「男の子の保護者さんに謝罪しないといけない。」など考えながら、困った様子です。 ですが、困っているのはBさんとCさんだけでしょうか? 連れてきたスタッフのCさん BさんやCさんは困っています。
あるショッピングモールでの出来事。 困っているのは誰か? 実は、Aさんも困っています。 2019/3/13 あるショッピングモールでの出来事。 困っているのは誰か? うるさいのが苦手。 いつまでいるのかわからない。 目の前に通った子を押すという行動で自分の気持ちを表す。 たまたま通りがかったBさん 自閉スペクトラム症のAさん その場から離れたいことを言葉で上手く伝えられない。 (クリック) Aさんは、うるさいの環境が苦手です。 しかし、夕方のショッピングモールで、人がたくさんいるざわついた環境にいます。 ほかのお子さんたちもいるので、なかなか帰ることができませんし、Aさんは自分ではいつまでいればいいのか分かりません。 Aさんは、「ここはいやだよー。」「はやく帰りたいよー。」と思っていても、自分の気持ちを言葉で上手につたえることがきでません。 そこで、Aさんはやむにやまれず、目の前に通った男の子を押すという行動で自分の気持ちを表したのです。 じつは、Aさんも困っていたのです。 Aさんを連れてきたスタッフのCさん 実は、Aさんも困っています。
不安・緊張 このあとどうなるか分からない。 何をする時間なのか分からない。 何を言われているか分からない。 2019/3/13 このあとどうなるか分からない。 何をする時間なのか分からない。 不安・緊張 何を言われているか分からない。 いやな刺激(音・匂い・温度など)の中にずっといる。 このAさんのように、障害からくる苦手さを持つ人たちはたくさんいます。 例えば、 (クリック) 自分では「何をする時間なのか分からない」とか、 自分では「このあとどうなるのか分からない」とか、 「周りから何を言われているのか分からない」とか、 「自分がいやな刺激、例えば、音や匂いや温度など、そのような中にずっといる」など このような中にいると、当然ながらその人は「不安や緊張」を感じます。
不安・緊張 →行動で自分の気持ちを表す。 不安や緊張を伝えたい。 不安や緊張から逃れたい。 しかし、 言葉ではうまく伝えられない。 2019/3/13 不安や緊張を伝えたい。 不安や緊張から逃れたい。 不安・緊張 しかし、 言葉ではうまく伝えられない。 適切な手段がわからない。 そこで、 (クリック) 「不安や緊張から逃れたい」 「自分の不安や緊張の状態を誰かに伝えたい」 と当然思うわけですが、 「言葉ではうまく伝えることができなかったり、自分の気持ちを伝える他の適切な手段が分からなかったりする」と、 行動で自分の気持ちを表すことになるのです。 →行動で自分の気持ちを表す。
強度行動障害の状態 やむにやまれず行動で自分の気持ちを表す。 それでも事態が改善されないと、激しい行動になり固着化していく。 2019/3/13 やむにやまれず行動で自分の気持ちを表す。 それでも事態が改善されないと、激しい行動になり固着化していく。 そして、 (クリック) それでもその状態が改善されないと、もっと激しい行動になって固着化していきます。 それが、強度行動障害の状態となるのです。 強度行動障害の状態
2019/3/13 ③行動は学習の結果 では、そのような、やむにやまれない行動がどうやって強度行動障害になるのか、もう少し詳しく「学習」という視点から考えてみましょう。 「行動は学習の結果」というお話をします。
強度行動障害といわれる行動のほとんどは、環境とのかかわりの中で学習された行動と言われる。 2019/3/13 強度行動障害といわれる行動のほとんどは、環境とのかかわりの中で学習された行動と言われる。 強度行動障害と言われる行動のほとんどは、環境との関わりの中で学習された行動だと言われます。 どういうことかを、「未学習」と「誤学習」という言葉を使って説明します。
2019/3/13 『未学習』 幼少期や学齢期において、適切な行動を身につける力があるにもかかわらず、周囲の無理解や不適切なかかわりによって身につけることができないままに育ってしまうこと。 未学習であるために、その場に相応しい行動が取れなかったり、自分の希望や気持ちを適切な方法で周囲に伝えることができない。 まず「未学習」ですが、 「未学習」の状態とは、 幼少期や学齢期において、適切な行動を身につける力があるにもかかわらず、周囲の無理解や不適切なかかわりによって身につけることができないままに育ってしまうことです。 未学習であるために、その場に相応しい行動が取れなかったり、自分の希望や気持ちを適切な方法で周囲に伝えることができない。と言われています。 もともとできないのではなく、その子に合った方法で学習する機会を作ってもらえなかったと言うこともできます。 先ほどのAさんの場合は、うるさい環境にいて、そこから逃れたいということを、周囲に伝える方法を学ぶ機会がなかったので、通りがかった男の子を押すことでしか自分の気持ちを現すことができなかったのです。
『誤学習』 未学習のままでいると、本人は何とか自分の希望や気持ちを伝えようとして自分なりの行動を取る。 2019/3/13 『誤学習』 未学習のままでいると、本人は何とか自分の希望や気持ちを伝えようとして自分なりの行動を取る。 その行動が他害や物壊しのようなかたちで現れると、周囲はその行動を止めようと無理やり制止したり、逆に本人の希望することを何でも認めてしまう。 すると、本人はますます激しい行動で自分の希望や気持ちを表したり、どのようなときもそのような行動で自分の希望や気持ちを表すようになってしまう。 (=強度行動障害) そして「誤学習」ですが、 「誤学習」の状態とは、 未学習のままでいると、本人は適切な方法を教えられていないので、何とか自分の希望や気持ちを伝えようとして自分なりの行動を取ります。 その行動が他害や物壊しのようなかたちで現れると、周囲はその行動を止めようと無理やり制止したり、逆に止めることができずに本人の希望することを何でも認めてしまうという対応をしてしまいがちです。 すると、本人はますます激しい行動で自分の希望や気持ちを表したり、どのようなときもそのような行動で自分の希望や気持ちを表すようになってしまう。のです。 そのような「誤学習」の状態が強度行動障害と言われています。 「誤学習」は何も本人が望んでそうなっているのではありません。 本人や周囲が、適切な方法がわからないので、やむに已まれず現れてくる行動だと言えます。 先ほどのAさんが、これからも何も配慮がないまま、また何も教えてもらえないままでいると、自分の気持ちを現すときにはいつも周囲の人を押すようになるかもしれません。 そうすると、Aさんは「強度行動障害」と呼ばれるようになってしまうのです。
強度行動障害が現れている人たちの中に、一定の割合で自閉スペクトラム症の人たちがいる。 2019/3/13 強度行動障害が現れている人たちの中に、一定の割合で自閉スペクトラム症の人たちがいる。 自閉スペクトラム症の人たち・子どもたちは学べないのではない。 学ぶ力は持っているが、本人に分かりやすく学ぶ機会が少ない。 本人に分かりやすい学びかた(学習スタイルとも言う)に合わせて、適切な行動を学んでいくことが大切。 ただ、誰もがこのような強度行動障害の状態になるわけではありません。 強度行動障害が現れている人たちの中には、一定の割合で自閉症の人たちがいると言われています。 自閉症の人たちや子どもたちは、先ほどのAさんのように色々な苦手さを持っていますが、決して社会的なことや生活していくために必要なことを学べないわけではありません。 本来は、一人一人が学ぶ力を持っているのですが、本人に分かりやすい方法で学ぶ機会が少ないと言われています。 そのことが、「未学習」や「誤学習」の状態を作ってしまっていて、「未学習」「誤学習」を積み重ねていくうちに、その人の行動が難しくなっていき、周囲も対応できなくなると、その人のことを「強度行動障害」として扱うことになってしまうのです。 ですので、大切なことは、本人に分かりやすい学び方に合わせて、本人が適切な行動を学んでいくことです。 この、本人に分かりやすい学び方を「学習スタイル」と言ったりもします。
④児童期の予防の大切さ 2019/3/13 このようなことを考えてくると、強度行動障害の支援について大切な視点が明確になってきます。 それが、これからお伝えする「児童期の予防の大切さ」です。
最も行動障害が重篤であった時期の度数分布 人数 2019/3/13 最も行動障害が重篤であった時期の度数分布 人数 25 20 15 10 5 0 この表は、平成24年度に、全日本手をつなぐ育成会(現在の全国てをつなぐ育成会連合会)が厚生労働省の障害者総合福祉推進事業で実施された「強度行動障害の評価基準等に関する調査について」という調査の報告書に挙げられているものです。 強度行動障害が現れた方のご家族を対象として、最も本人の行動障害が重篤であった時期について調べた結果となります。 この表を見ると、中学校、高等学校の時期が突出していることがわかります。 その理由については様々な推測ができると思います。 たとえば、まず思い浮かぶのは、思春期になって自分の体の変化をうまく処理できずに、行動として出てしまっている、ということかもしれません。 確かにそのようなこともあるかもしれません。 または、小さい頃は問題ではない行動でも、体が大きくなって同じような行動を取ることで問題として顕在化したということも考えられるかもしれません。 例えば、本人が急に走り出しても、小さいうちは親や周囲の大人が手を握れば何事もなかったかもしれませんが、自分よりも大きくなった子どもが同じように急に走り出したら、とても止めることはできませんし、非常に危険です。 このようなことで、この中学校・高等学校の時期に行動障害が重篤に感じるようになったということもあるかもしれません。 しかし、この報告書には次のように書かれています。 0~2歳 3~6歳 小学校 前期 小学校 後期 中学校 高等学校 卒業後 ライフステージ 厚生労働省平成24年度障害者総合福祉推進事業「強度行動障害の評価基準等に関する調査について」報告書 社会福祉法人全日本手をつなぐ育成会
2019/3/13 自傷、他傷、物壊し、騒がしさ、粗暴さ、パニックについては、周囲とのかかわりや対応によって学習してきた結果であると考えられる。これらの行動の多くが要求や注目、回避や拒否などのコミュニケーションの機能を有しているとみられ、幼児期からの補助代替手段を含めたコミュニケーションの獲得が望まれる。 (スライドを読む) ここではとても大切なポイントが示されています。 まずは、先ほど説明したように、ここに書かれているような強度行動障害の状態は、「未学習」や「誤学習」として学んできた結果であるということです。 そして、強度行動障害と言われる行動の多くが、 「なになにしたい。」「なになにがほしい。」というように活動や物を要求していたり、 「自分を見てほしい。」「こっちに来てほしい。」というように周囲に注目を要求していたり、 「なになにしたくない。」「ここから離れたい。」というように本人が回避や拒否をしたい気持ちを現していると考えられています。 つまり、それらの行動は本人にとっては自分の気持ちを現すためのコミュニケーションの意味を持っているということです。 でも、自分の気持ちを現すのに、何もこのような激しい行動で現わさなくてもいいのではないでしょうか。 これらの行動が、自分の気持ちを現すためのやむに已まれぬ行動だとすると、できれば幼児期から言葉以外の手段も含めて、その人に合ったコミュニケーションが獲得できていれば、このような強度行動障害のような行動は出さずに済むかもしれません。 厚生労働省平成24年度障害者総合福祉推進事業「強度行動障害の評価基準等に関する調査について」報告書 社会福祉法人全日本手をつなぐ育成会
児童期の適切な関わりが重要 最も行動障害が重篤であった時期の度数分布 人数 ライフステージ 25 20 15 10 5 0 0~2歳 2019/3/13 最も行動障害が重篤であった時期の度数分布 人数 25 20 15 児童期の適切な関わりが重要 10 5 0 中学校、高等学校の頃の激しい行動障害が「未学習」と「誤学習」の結果として現れているとすると、幼児期から、本人に合った学び方によってコミュニケーションの方法を身に付けることができれば、激しい行動の表出はもっと少なくできるのではないかと考えられているのです。 つまり、中学校・高等学校のころの対応ではなく、幼児期・児童期の適切な関わりが非常に重要だということです。 0~2歳 3~6歳 小学校 前期 小学校 後期 中学校 高等学校 卒業後 ライフステージ 厚生労働省平成24年度障害者総合福祉推進事業「強度行動障害の評価基準等に関する調査について」報告書 社会福祉法人全日本手をつなぐ育成会
児童期に本人にわかりやすい学び方で、将来の生きていく力(生活スキル、コミュニケーションスキルなど)を学ぶことが大切。 2019/3/13 児童期に本人にわかりやすい学び方で、将来の生きていく力(生活スキル、コミュニケーションスキルなど)を学ぶことが大切。 児童期の適切な関わりが、将来の「強度行動障害の予防」につながる。 成人期においても、適切な関わり方で強度行動障害の予防や改善をすることができる。 繰り返しになりますが、本人は様々なことを学べないのではありません。 児童期に本人にわかりやすい学び方で、将来の生きていく力(生活スキル、コミュニケーションスキルなど)を学ぶことが大切なのです。 つまり、このような児童期の適切な関わりが、将来の「強度行動障害の予防」にもつながるのです。 このことは、ぜひ幼児期・児童期のサービスに関わっている方たち、学校教育に関わっている方たちに意識してほしいことでもあります。 では、成人期になってからではもう遅いかというと、そうではありません。 成人期においても、同じような適切な関わり方によって、強度行動障害の予防や改善をすることができます。 大切なのは、本人に合わせた周囲の適切な関わりにより、「未学習」や「誤学習」の状態にせずに、適切な行動を身に付けることができるように支援していくことなのです。
⑤適切な関わりをするために 2019/3/13 では、どのようにして本人に合った適切な関わりができるのでしょうか。 ここでは、この研修で何度も出てくる「氷山モデル」について紹介します。
行動の背景を知るための「氷山モデル」 氷山の一角 =目にみえる部分 目に見える部分だけに対応をしても問題は解決しない。 2019/3/13 行動の背景を知るための「氷山モデル」 氷山の一角 =目にみえる部分 目に見える部分だけに対応をしても問題は解決しない。 水面下に大きな塊がある =目にみえない部分 目に見えない部分を理解してアプローチすることで、表面に出ている問題が小さくなる。 「氷山モデル」は、その人の行動の背景を知るための、非常に分かりやすい考え方です。 「氷山の一角」と言いますが、氷山のなかで海から出ていて目に見える部分はほんの一部です。 水面下には目には見えませんが、大きな塊があります。 これを本人の行動に置き換えると、私たちの目に見える本人の行動はほんの一部分で、この行動だけに一生懸命対応をしても、見えない部分にこんなに大きな要因が隠されているので問題は解決しません。 例えば、私たちが船に乗って氷山の見える部分だけを見ている状態が、私たちが目の前で難しい行動を目にしている状態です。 氷山を無くそうと、船の上からどれだけ氷を叩いても、目に見える氷山はいっこうに無くならないと思います。 水面下にこんなに大きな氷の塊があるので、表面をいくら叩いても小さくならないのは当然です。 同じように目に見える行動だけを見て、場当たり的な対応をしても、その行動はけっして良くなりません。 それは、その行動の背景に大きな理由があるからです。 目に見える行動を解決するためには、私たちの目に見えない理由の部分を理解してアプローチすることが大切です。 目に見えない部分が解決すると、自然と表面に出ている目に見える部分は小さくなっていき、問題が解決していくことになります。
氷山モデルシート 課題となっている行動 (環境・状況) (本人の特性) 必要なサポート 2019/3/13 この「氷山モデル」の考え方を実際の支援に活かすために使うのが「氷山モデルシート」です。 ここで「氷山モデルシート」について少しだけ説明したいと思います。 一番上の水面から出ている部分に「課題となっている行動」を書くようになっています。 いわゆる私たちに見える本人の具体的な行動を書きます。 そして、水面下の行動の理由のところは左と右の二つに分かれています。 左は「本人の特性」です。 ここには本人の障害からくる特性を記入します。 右は「環境・状況」です。 ここには、課題となっている行動が起きている環境や状況を記入します。 そして、一番下がそれらを踏まえて導き出した「必要なサポート」を書く欄です。
氷山モデルシート 強度行動障害 課題となっている行動 (環境・状況) (本人の特性) 強度行動障害は特性と環境のミスマッチから生じる 2019/3/13 氷山モデルシート 課題となっている行動 強度行動障害 (本人の特性) (環境・状況) 強度行動障害は特性と環境のミスマッチから生じる 必要なサポート (クリック) 課題となっている行動が、いわゆる「強度行動障害」と言われる行動だとすると、 その行動が出るのは、水面下の本人の特性と環境や状況とのミスマッチが理由だと考えられています。 ですので、この本人の特性と環境や状況のミスマッチを解消するためのサポートを考えることになります。 本人の障害特性に合わせたサポートを考える
氷山モデルシート 課題となっている行動 (本人の特性) 特性と環境のミスマッチが減り、行動障害が改善していく (環境・状況) 必要なサポート 2019/3/13 氷山モデルシート 課題となっている行動 行動障害 (本人の特性) 特性と環境のミスマッチが減り、行動障害が改善していく (環境・状況) 行動障害は特性と環境のミスマッチから生じる 必要なサポート 本人の特性と環境や状況のミスマッチを解消するためのサポートを考え、実施していくことで、 (クリック)(クリック) 本人の特性と環境や状況のミスマッチが減り、水面下の氷が小さくなって、結果として表面上に出ている氷の部分である強度行動障害が小さくなって改善してくことになります。 「氷山モデル」は、目の前の行動に場当たり的に対応するのではなく、行動の理由をしっかりと考えて、その理由の部分に対応していくという、本人の行動にアプローチしてくときの基本的な考え方になります。 「氷山モデル」については、この研修のなかであらためて説明や演習がありますので、その時にまた詳しく学んでいただければと思います。 本人の障害特性に合わせたサポートを考える
2019/3/13 ⑥強度行動障害と社会参加 さて、これまで、「強度行動障害」がどのような状態か、「強度行動障害」が生じる理由、「強度行動障害」支援の基本的な考え方などを説明してきました。 ここで、あらためてですが、私たちはなぜ「強度行動障害」やその支援方法について学ぶのかを考えてみたいと思います。 確かに、「強度行動障害」という難しい行動が本人に現れていると、本人も辛いでしょうし、ご家族も大変です。 支援現場の職員さんたちも日々日々悩みながら支援をしていくことになります。 だから、何とかその行動を改善して、本人が落ち着くために、研修で必要な知識を学んで、現場での支援に活かしていくということが、「強度行動障害」について学ぶ目的になるでしょう。 もちろん「強度行動障害」が改善して、本人が落ち着いて暮らしていくことはとても大切なことですし、そうなればご家族も支援者も安心です。 しかし、私たちの支援のゴールは、その人の行動が改善して本人が落ち着くことだけでしょうか? これから、自閉症の人たちに対して、私たちが必要なことを知らずに本人と接してしまう場合と、自閉症の方たちのことを知って適切な支援を本人におこなう場合について、その人の生活がどのように変わってくるのかを考えてみたいと思います。
適切な支援がない場合 知的障害を伴う自閉スペクトラム症のAさん 「分からない」「伝わらない」「いやな刺激が続く」 適切な手段がわからない。 2019/3/13 適切な支援がない場合 知的障害を伴う自閉スペクトラム症のAさん 「分からない」「伝わらない」「いやな刺激が続く」 適切な手段がわからない。 行動で自分の気持ちを表す=強度行動障害 まずは、私たち支援者が自閉症の方たちへの支援について知らずに本人と接してしまう場合です。 本人にとっては適切な支援がない場合となります。 ここに書かれているプロセスは先ほどの説明と同じですが、 自閉症のAさんにとって、「分からない」「伝わらない」「いやな刺激が続く」という状況にずっといると、本人のなかで不安や緊張が高まります。 本人はできればその状態から逃れたいのですが、自分の気持ちを表す適切な手段がわかりません。 すると、やむに已まれず行動で自分の気持ちを表すことになります。 この行動が強くなったり、固着化することで、「強度行動障害」の状態になってしまいます。 では、「強度行動障害」の状態になってしまうことで、何が一番の問題なのかと言いますと、それは「強度行動障害」ゆえに、本人の社会参加が難しくなってしまうということなのです。 Aさんの社会参加が難しくなってしまう。
知的障害を伴う自閉スペクトラム症のAさん 2019/3/13 知的障害を伴う自閉スペクトラム症のAさん 「うるさいのが苦手」「いつまでいるのかわからない」 苦手な環境が続く。言葉で上手く伝えられない。 自分の気持ちを表すために、近くを通った子を押す。 具体的に、先ほどのAさんの例で考えてみましょう。 ショッピングモールにお買い物体験に来ている自閉症のAさんですが、 Aさんはもともと「うるさいのが苦手」です。 自分で見通しをつけることも苦手で、自分では「いつまでいればいいか分からない」状態でずっとショッピングモールにいます。 そのような苦手な環境にずっといるわけですから、当然のことながら、Aさんはその場を逃れたいという気持ちになっていると思います。 しかし、Aさんはそのような自分の気持ちを言葉ではうまく伝えられませんし、他の適切な手段もわかりません。 そうすると、Aさんは自分の気持ちを表すために、たまたま近くを通った子どもを押してしまいます。 そうなると、職員さんたちも対応に大変です。 他のお子さんを押した子どもとして、Aさんのことがショッピングモールでも問題になるかもしれません。 何とかその場の収拾がついたとしても、Aさんを連れてきた事業所は次もAさんを買い物体験に連れて行ってくれるでしょうか? やはり安全が第一ですから、次の買い物体験からは「Aさんは急に他の人を押して危ないから」という理由で連れて行ってもらえないかもしれません。 そうすると、Aさんは、次からはショッピングモールに行くことができず、買い物が嫌いなわけでもないのに、買い物に行く機会がなくなってしまうのです。 Aさんにとっては自分の気持ちを表すためにやむに已まれず出た行動でですが、その行動でAさんの生活の幅が狭くなっていってしまうのです。 今回のAさんの例は、たまたまショッピングモールで他のお子さんを押して買い物に行くことができなくなるかもしれないという例ですが、これが、他の人を押すことが頻回になったり、事業所内でも他の人を押すようになってしまうとどうでしょうか。 事業所のなかでも活動の場所がどんどん狭くなっていってしまうかもしれませんし、もしかしたら、事業所の利用自体を断られるようになるかもしれません。 また、ご家庭でも誰かを押すことで自分の気持ちを表すようになってしまったらどうなるでしょうか。 兄弟児を押してしまうようになると、ご家族としても、とても困ってしまいます。 そして、Aさんが中学生・高校生になっても、誰かを押すことでしか自分の気持ちを表すことができなかったらどうでしょう。 体が大きくなったぶん危険を伴ってきますし、家庭のなかで頻繁に押すようになると、家庭での生活すら維持できなくなってしまうかもしれません。 このように、本人にとってはやむに已まれぬ行動ですが、そのことによってAさんの生活は、本人の希望とは関係なく、どんどん狭まっていってしまい、社会から隔絶されていくのです。 「強度行動障害」の問題は、行動が落ち着く、落ち着かないという問題だけでなく、その行動により本人の社会参加の機会がどんどん奪われていってしまうことが大きな問題なのです。 次からはショッピングモールに行けない。 買い物に行くことができない。 Aさんの生活の幅が狭くなっていく。
適切な支援がある場合 知的障害を伴う自閉スペクトラム症のAさん 本人に合わせて配慮された環境・支援 「分かる」「伝わる」「快適な環境」 2019/3/13 適切な支援がある場合 知的障害を伴う自閉スペクトラム症のAさん 本人に合わせて配慮された環境・支援 「分かる」「伝わる」「快適な環境」 適切な行動 充実した活動 安定した生活 では、私たち支援者が自閉症のことを知って、適切な支援を本人におこなうことができる場合はどうでしょうか。 支援者が自閉症の方たちのことや支援の方法を知っていることで、自閉症のAさんに合わせて配慮された環境や支援を提供することができます。 すると、本人にとって、「分かる」「伝わる」「快適な環境」のなかで、Aさんは適切な行動を学ぶことができるようになり、適切な行動を取れることで、いろいろな活動にも取り組むことができます。そのことが本人の安定した生活につながっていきます。 そして、Aさんの社会参加や自立が進んでいくのです。 Aさんの社会参加が進む。
知的障害を伴う自閉スペクトラム症のAさん 2019/3/13 知的障害を伴う自閉スペクトラム症のAさん 騒がしくない時間帯にお店に行く。 いつまでお店にいるか本人に分かるように伝える。 うるさくない環境での買い物 予定の見通しがつく買い物 落ち着いて買い物ができる。 ここでもAさんの例で考えてみましょう。 支援者が自閉症の方たちのことを知っていて、Aさんの自閉症としての特性や得意なこと、苦手なことを調べたうえで買い物体験を準備したとします。 Aさんには、「うるさいのが苦手」「自分ではいつまでいればいいのか分からない」という特性があることがわかっているので、「騒がしくない時間帯にお店にいく」「いつまでお店にいるか本人に分かるように伝える」という配慮をすることができます。 すると、Aさんは、うるさくない環境で買い物ができたり、予定の見通しを理解しながら買い物ができるので、落ち着いて買い物をすることができます。 落ち着いて買い物ができた経験により、本人は買い物にもっと意欲が出るかもしれませんし、支援者も安心して、次もショッピングモールでの買い物体験にAさんを連れていくことができるでしょう。 もしかしたら、別のお店での買い物にもチャレンジできるかもしれません。 このようにして、本人も支援者も成功体験を積みながら、Aさんの生活の幅は広がっていきます。 次もショッピングモールで買い物ができる。 別のお店でも買い物ができる。 Aさんの生活の幅が広がっていく。
周囲の配慮によって、強度行動障害は予防や改善ができ、本人の生活の質があがることを知ることが大切。 2019/3/13 強度行動障害のある人や子どもは、 「困った人」ではなく「困っている人」 「困った子」ではなく「困っている子」 周囲の配慮によって、強度行動障害は予防や改善ができ、本人の生活の質があがることを知ることが大切。 このように、やむに已まれぬ行動をとってしまい社会参加が難しくなっていくこともありますし、周囲の理解や配慮によって成功体験を積み、社会参加や自立が進んでいくこともあるのです。 そのようなことを考えると、「強度行動障害」のような行動をしてしまう人や子どもたちは、 「困った人」ではなく、本来は「困っている人」ですし、 「困った子」ではなく、本来は「困っている子」であると考えることができます。 私たち支援者は、私たちの理解や配慮によって、強度行動障害は予防や改善ができ、本人の生活の質が上がるということを知ることが大切なのです。
⑦誰もが幸せに生きていくことが できる社会に (強度行動障害支援の意義) 2019/3/13 できる社会に (強度行動障害支援の意義) 最後に、この研修の大きな目的と言いますか、強度行動障害支援の意義をお伝えします。
2019/3/13 障害者権利条約( 第1条 目的 ) この条約は、全ての障害者によるあらゆる人権及び基本的自由の完全かつ平等な享有を促進し、保護し、及び確保すること並びに障害者の固有の尊厳の尊重を促進することを目的とする。 ここには障害者権利条約の第1条目的の文章が記載されています。 障害者権利条約については、皆さんご存知だと思います。 障害のある人たちの、尊厳と権利を保障するための国際的な条約であり、2006年に国連で採択され、日本も2014年に批准しています。 その目的には、 「この条約は、全ての障害者によるあらゆる人権および基本的自由の完全かつ平等な享有を促進し、保護し、および確保すること、ならびに、障害者の固有の尊厳の尊重を促進することを目的とする」 と書かれています。 つまり、どんな障害があっても、その人の人権や基本的自由が保障され、個人として尊重されるべきであるという基本的な考え方が示されているのです。
2019/3/13 障害者基本法(第1条 目的) 全ての国民が、障害の有無にかかわらず、等しく基本的人権を享有するかけがえのない個人として尊重されるものであるとの理念に則り、全ての国民が、障害の有無によつて分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会を実現する... また、日本のなかでは、障害者基本法の第1条目的に、 「全ての国民が、障害の有無にかかわらず、等しく基本的人権を享有するかけがえのない個人として尊重されるものであるとの理念に則り、全ての国民が、障害の有無によつて分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会を実現する」 と書かれています。 日本においては、障害があってもなくても、分けられることなく、それぞれの人格と個性を尊重し合いながら、共に生きていく社会を作っていきましょうと言われているのです。
強度行動障害が現れているために生活の幅や質が制限されてきた人たちがいる。 2019/3/13 強度行動障害が現れているために生活の幅や質が制限されてきた人たちがいる。 これまで、日本では、特に2006年の障害者自立支援法の施行以降、障害のある人たちが地域で当たり前に暮らすことが進められ、実際に多くの障害のある人たちが、地域で暮らすようになってきました。 しかし、そのような中で、強度行動障害が現れているために、生活の幅や質が制限されてきた人たちがいます。 「地域で当たり前に暮らす」という流れに乗れずに取り残されてきた人たちと言うこともできるかもしれません。
= 「強度行動障害が現れている人」 「合理的配慮が必要な人」 2019/3/13 強度行動障害が現れている人たちの地域生活が進んでこなかった理由として、 これまで、そのような人たちにどのように対応をしていけばいいか分からなかった、ということもあるかもしれません。 また、一部の本当に熱心な施設が頑張ってきて多くの福祉事業所が目を向けてこなかった、ということもあるかもしれません。 しかし、冒頭でもお伝えしたように、これまで全国で、「強度行動障害」支援に真摯に取り組んでこられた事業所・関係機関の実践や、難しい行動でつらい思いをしている人たちを何とかしたいという思いで臨床を重ねられてきた先生方の研究で、「強度行動障害」とよばれる行動への対応方法や、予防の方法が確立されてきています。 (クリック) それらの方法こそが、「強度行動障害」が現れている人たちへの合理的な配慮となるのではないかと思います。 もっと言えば、「強度行動障害」が現れているということは、その人に対して必要な合理的な配慮が足りていないと言えるかもしれません。 この研修で皆さんと一緒に学んでいく内容が、これから多くの福祉現場で実践されることにより、これまで「強度行動障害」が現れているゆえに様々な制限を受けてきた人たちや、これから「強度行動障害」が現れてしまうかもしれない人たちにとって、安心して暮らすことができ、豊かな人生を送ることができる地域社会の実現につながればと思います。
2019/3/13 この研修の目的 支援者が配慮の必要性や方法を学び、実践することで、強度行動障害が現れている人、強度行動障害が現れやすい人たちが、地域社会で権利が守られ、幸せに暮らすことです。 最後に、この研修の目的をあらためてお伝えしたいと思います。 この研修の目的は、「支援者が配慮の必要性や方法を学び、実践することで、強度行動障害が現れている人、強度行動障害が現れやすい人たちが、地域社会で権利が守られ、幸せに暮らすことです。」 どうか皆さん、これから2日間、また実践研修まで受けていただける方は4日間、よろしくお願いします。 これで最初の講義は終わりたいと思います。 ありがとうございました。