簿記からはじめる会計学 第 7 回 甲南大学マネジメント創造学部 講師 新井康 平 2012/4/28. mail: 1
【前回の演習の解説】 実施問題 27, 30, 35, 44, 45, 47 2
CASE 77 租税公課 固定資産税 100 円を現金で払った。 租税公課 100 /現金 100 固定資産税や自動車税などは,利益に関係なく発 生する。 このような税金は費用項目である「租税公課(そ ぜいこうか)」で処理する。 3
CASE 78 元入れ (会社の設立に際して)現金 100 円を元入れし た。 現金 100 /資本金 100 会社を設立する際に出資者が会社に提供する資金 を資本金といい,純資産項目となる。 現在は,資本金 1 円以上なら会社が設立できる。 4
CASE 79 資本金の引き出し 店主が個人的な理由で企業の現金 100 円を引き 出した。 資本金 100 /現金 100 問題文に「店主個人の所得税を支払った」とか 「店主の住居用建物の固定資産税(火災保険料) を支払った」などの場合,会社とは関係のない私 的な利用であるため,資本金が引き出されたと考 える。 引出金というマイナスの純資産項目を用いる場合もあ る。 引出金 100 /現金 100 5
CASE 80 引き出しの返金 店主が個人的な理由で引き出した現金 100 円の うち 60 円を返金した。 現金 60 /資本金 60 引出金というマイナスの純資産項目を用いている場合 は次のように仕訳をきる。 現金 60 /引出金 60 6
CASE 81 引き出しの決算処理 引出金の残高 40 円を決算につき資本金に振り 替える。 資本金 40 /引出金 60 7
第 13 章の勘定科目 その他 引出金 資 産負 債 -- 純 資 産 資本金 費 用収 益 租税公課- 8
CASE 82 費用の繰延べ 8/1 に 1 年分の家賃 120 円を小切手で払った。 支払家賃 100 /当座預金 100 来年以降の部分についても,期中はとりあえず費 用処理をしておく。 「支払家賃」勘定は,費用項目。 9
CASE 83 繰延べ費用の決算 12/31 は決算日につき, 8/1 に払った 1 年分の 家賃 120 円を繰り延べる。 前払家賃 70 /支払家賃 70 支払った家賃のうち, 12 - 5 = 7 ヶ月分は前払い しているので費用ではなく,来期の費用とするた めに,一時的に資産としておく。 「前払家賃」勘定は,資産項目。 10
CASE 83 繰延べ費用の翌期首 翌期の 1/1 に前期末に繰り延べた支払家賃を再 振替する。 支払家賃 70 /前払家賃 70 期末には,当期の費用や収益,そして利益を計算 するために繰延仕訳を行った。期が変われば,そ れらをまた,費用として再度認識する必要がある ため,再振替仕訳を行う。 再振替仕訳は,繰り延べの逆仕訳。 11
CASE 85 費用の見越し 9/1 に借入期間 1 年,年利 2% ,利息の支払いは 返済時という条件で 600 円を借り入れた。 現金 600 /借入金 600 すでに学習した通り。 12
CASE 86 見越し費用の決算 12/31 は決算日につき, 9/1 に借入期間 1 年, 年利 2% ,利息の支払いは返済時という条件で 借り入れた 600 円の利息を見越し計上する。 支払利息 4 /未払利息 4 本来なら,この年度に利息分は負担しなければな らないが,実際の支払いは来年のため,その分を 「未払利息」勘定という負債項目で決算処理して おく。 600×0.02× ( 4÷12 )= 4 なお,次の期首には再振替仕訳をする。 13
CASE 87 収益の繰延べ 10/1 に土地を貸し, 1 年分の地代 240 円を受け 取った。 現金 240 /受取地代 240 「受取地代」勘定は収益項目。 14
CASE 88 繰延べ収益の決算 12/31 は決算日につき, 10/1 に土地を貸して 受け取った 1 年分の地代 240 円のうち,来期分 を繰り延べる。 受取地代 180 /前受地代 180 受け取った地代のうち, 12 - 3 = 9 ヶ月分は来期 分なので,「前受地代」勘定という負債項目で処 理をする。 240× ( 9÷12 )= 180 前受収益は,将来のサービスを提供する義務を示 すので,負債となる。 15
CASE 89 収益の見越し 11/1 に借入期間 1 年,年利 3% ,利息の支払い は返済時という条件で現金 800 円を貸し付けた。 貸付金 800 /現金 800 すでに学習した通り。 16
CASE 90 見越し収益の決算 12/1 の決算に際し, 11/1 に借入期間 1 年,年 利 3% ,利息の支払いは返済時という条件で貸 し付けた現金 800 円の利息を見越計上する。 未収利息 4 /受取利息 4 「未収利息」勘定は,当期に受け取るべき収益の うちまだ受け取っていない金額を計上するための 収益項目。 800×0.03× ( 2÷12 )= 4 なお,次の期首には再振替仕訳をする。 17
CASE 91 訂正仕訳 帳簿は重要なので,例え誤った仕訳けであっ ても,二重線などで訂正してはいけない。 買掛金 100 円を現金で支払ったとき,借方 (左)を「仕入」と誤って仕訳してしまった ので,訂正仕訳をする。 買掛金 100 /仕入 100 正しい仕訳 買掛金 100 / 現金 100 誤った仕訳 仕入 100 / 現金 100 誤った仕訳の消滅仕訳(逆仕訳) 現金 100 /仕入 100 正しい仕訳と誤った仕訳の逆仕訳を合わせたものが訂 正仕訳 18
第 14 章の勘定科目 その他 引出金 資 産負 債 前払費用未払費用 前受収益 純 資 産 - 費 用収 益 支払家賃受取地代 19
【演習】 配布の演習問題 仕訳問題は,簿記 3 級試験 の問 1 で出題。 20
甲南大学マネジメント創造学部 講師 新井康 平 /4/28. mail:
実際の帳簿の記入は次のとおり。 仕訳帳 ↓ (転記) 総勘定元帳 ↓ 試算表 ↓ 財務諸表 22 補助簿 精算表による計算
仕訳帳 日付,摘要,元丁,借方,貸方か らなる帳簿で,日々の仕訳を記載。 総勘定元帳 仕訳で登場した勘定科目の全てに ついて作成される帳簿。 摘要欄に,仕訳の相方を記載。 元丁や仕丁のページ数の記入ミス などに注意。 実際の記入方法は case92 を参照。 23
現金出納帳&当座預金出納帳 仕訳帳と総勘定元帳では,だれからどの ように現金が動いたのかが把握できない。 個別に把握する仕組みがあればよいが, 現金出納帳という補助簿がその仕組みと して知られている。 月日,摘要,収入,支出,残高を記入。 24
小口現金出納帳 小口現金専用の出納帳。 受入,支払内容,支払額,内訳(交通費, 消耗品費,雑費など)を記入。 なお,月初(週初)の補給をしている場 合,次週繰越額を含めた支払合計と受入 額が等しくなるようにする。 月末(週末)の補給をしている場合,繰 越の前行に「本日補給」を記載。 25
仕入帳 商品の仕入れを管理するためのもの。 摘要,内訳,金額からなる。 月末に総仕入高,仕入戻し高,純仕入高 を計算。 売掛金元帳 売掛のみを記録。 摘要,借方,貸方,貸/借,残高からな る。 次月繰越を記入後,貸借が一致するかを 確認する。 26
売上帳 商品の売上げを管理するためのもの。 摘要,内訳,金額からなる。 月末に総売上高,売上戻し高,純売上高 を計算。 買掛金元帳 買掛金のみを記録。 摘要,借方,貸方,貸/借,残高からな る。 次月繰越を記入後,貸借が一致するかを 確認する。 27
商品有高帳 商品の在庫を管理するため,そして商品 の単価を計算するために用いられる帳簿。 売上の場合の単価の計算方法には,次の 2 種類がある。 先入先出法 先に受け入れたものから先に売れる とする。なお,受入単価が異なる場 合は,複数行に記載する。 移動平均法 受入のつど,平均単価を計算し,そ の度にそれを払出単価とする方法。 払出合計を売上原価という。 28
受取手形記入帳 手形種類(約手,為手),手形番号,摘 要,支払人,振出人(裏書人),振出日, 満期日,支払場所,手形金額,てん末欄 からなる。 摘要欄には仕訳の際の相手科目を書く。 手形売却損は記載しない。 支払手形記入帳 手形種類(約手,為手),手形番号,摘 要,受取人,振出人,振出日,満期日, 支払場所,手形金額,てん末欄からなる。 摘要欄には仕訳の際の相手科目を書く。 29
帳簿の記入形式は,問 2 で出題。 ときどき,見たこともない帳簿が出題さ れ,受験生を恐怖に陥れる。 基本的には,演習した通りに記入すれば よく,引っかかることは少ないので,問 題によっては高得点が期待できる。 いずれにせよ,検定の際にはここで時間 をとられないように注意すること。 30
甲南大学マネジメント創造学部 講師 新井康 平 /4/28. mail:
資料から,残高試算表を完成さ せるのが第 3 問の問題。 資料には,補助簿情報が載ってい ることがある。 補助簿から仕訳を推測し,簡単な 総勘定元帳を作成する。 簿記の試験では,これを問題のす みっことかに,書いていく必要が ある。これをさぼると,大抵,こ の問題は解けない。 32
資料から,残高試算表を完成さ せるのが第 3 問の問題。 資料には,日別の取引情報が載っ ていることもある。 これも仕訳を行い,その仕訳の結果を 簡単な総勘定元帳を作成・転記してい くことで問題が解ける。 掛金の明細表などを作る問題も掲載され ることがある。 33