社会保障と税の一体改革 地域文化論講座 c 渡邉 裕貴
目次 問題意識 政策提言と展望 『社会保障と税の一体改革』とは 現状と課題 まとめ 論点
今回の消費税増税法案に関して 消費税の使途(平成 23 年度予算) 出所:財務省
問題意識 社会保障費を消費税で賄うのはおかし い。 – 消費税を財源に充てた時の問題点⇒逆進性 – 単なる軽減税率も効果的ではない⇒所得の高 い人のメリットになりがち – 諸外国の政策に反する。イギリスなどの事 例:基本的に再分配機能のある税で賄う。⇒ 給付付き税額控除 社会保障費は本来所得税や法人税など 「再分配」機能があるものから賄われる べき。
消費税の有効性 安定した税収入 高齢者にも負担してもらえる。 – お金持ちな老人は保障を受けるだけで無く、 払う側にも回るべき。 – 世代間格差の是正
景気に左右されない税収が見込め る消費税 (注)平成22年度までは決 算額、平成23年度は予算額 です。 出所:財務省 一般会計税収の推移
世帯年収 500 万円以下 世帯年収 500 万 円〜 1000 万円 世帯年収 1000 万円以上 消費税率 6%8% 10 % 対象品目:生活必需品に限る。(食べ物、 衣類など) カードを世帯単位で発行。 世帯年収で計算 – 世帯年収の平均は約 550 万円。高齢世帯で約 300 万円。児童のいる世帯で約 700 万円 (平成 22 年国民生活基礎調査より)
政策の基本方針 カードが無い人は基本的に生活必需品を 買えなくなる。 – 政策実行の半年前より配布を開始する。 店舗の限定。 – スーパー、衣料品などを「軽減税率」対象店 として政府が認可。そこで売られているもの 全てが軽減税率対象。
こうすることで例えば我が生まれ 故郷吉良町の税収はこう変わる! 吉良町の世帯数 7030 世帯 人口約 22,000 人 ( 2012 年7月1日現在) 世帯年収 500 万円以下 世帯年収 500 万 円〜 1000 万円 世帯年収 1000 万円以上 消費税率 6%8% 10 % 約 1000 世帯 6,000 人 約 4000 世帯 14,000 人 約 2000 世帯 2,000 人
食料品 + 衣料 = 3万円とすると …… 今までは …… 3万円 ×0.05=1,500 円 1,500 円 ×22,000 人 = 33,000,000 円 これからは …… (3万円 ×0.06×2000 人) + (3万円 ×0.08×14,000 人) + (3万円 ×0.10×6,000 人) = 55,200,000 円 ① 税収アップと逆進性の解消に繋が る! ② 再分配機能を消費税にもたせること に繋がる! ⇒社会保障の財源へ
ちなみに・・・・・・ 現行の政策(一律8%)の場合 3万円 ×0.08×22,000 人= 52,800,000 円 8%の場合と大きな金額 的差異は無し!
「社会保障と税の一体改革」 2012 年6月26日衆議院通過 賛成 363 票、反対 96 票 項目現行改正案実施時期 相続税基礎控除 5000 万円 + 法定相続人数 ×1000 万円 3000 万円 + 法定相続人数 ×600 万円 2015 年1月以後の相 続 税率 1000 万円以下 …10 % 3000 万円以下 …15 % 5000 万円以下 …20 % 1億円以下 …30 % 3億円以下 …40 % 3億円超 …50 % (1億円以下は現行と 同じ) 2億円以下 …40 % 3億円以下 …45 % 6億円以下 …50 % 6億円超 …55 % 2015 年1月以後の相 続 所得税最高税率 40 % (課税所得 1800 万円超) 45 % (課税所得 5000 万円超) 2015 年分の所得税か ら適用 金融所 得課税 上場株式など の配当・譲渡 所得等課税の 税率 10 % 20 % 2014 年1月から 消費税税率5% 14 年4月から 8 %、 15 年 10 月から 10 % 出所:政府「社会保障・税一体改革素案」を元に作成
確かに増税は避けられない 社会保障費は増える一方 どこかで増税をしなくてはいけないことは明 らか。 出所: 2000 年度以前は「平成 15 年度 社会保障給付費」(平成 17 年9月 国立 社会保障・人口問題研究所),「国民経済計算」(内社会保障給付費)。 2006 年度以降は「社会保障の給付と負担の見通し」(平成 18 年5月 厚生労 働省)の A (並の経済成長)ケース。
社会保障費とは 給付費:約 100 兆円 – 内訳:医療約 30 兆円、年金 50 兆円、その他 – 今後は高齢者への負担が増大していくとの予 想。 「所得を再分配する」という側面。 – 本来財源は累進課税によるもの。 – つまり「所得」にかけられて来た。 社会的弱者 の救済!
消費税=社会保障費は? 消費税の逆進性⇒金持ちが庶民の半分以下の税 負担率になる可能性も。 軽減税率の非有効性⇒高所得者も恩恵を受ける。 給付付き税額控除導入にまだ時間がかかる。 所得税増税はされても収入増加に限界がある。 – 仮に現在 40 %所得税を払っている人が 80 %払うよう になっても1.4兆円の税収増にしか繋がらない。 ⇔消費税は1%で 2.4 兆円の税収増 社会保険負担費が従来労使折半だったものが労 働者側だけの負担になる。 社会的弱者自身が 費用を負担する割 合が増えて行くと いう事態が発生!
消費税の逆進性 出所:総務省統計局「家計調査(勤労世帯対象)」 9万 円 23万 円 所得の高い人 ほど消費税負 担率が低くな る!
まとめ 社会的弱者が社会保障費を割合的に多く支払って いるのはおかしい。 再分配機能が必要。 所得税増税では賄いきれない。 問題意 識 改・軽減税率⇒収入に応じて変化する消費税。 逆進性の解消 / 長期的に収入増加が見込める。 政策提 言 増税は避けられない。⇒様々な税で増税。 社会保障費は改・軽減税率によって賄われたお金 + 所得税 / 法人税で対応。 来る超少子高齢化に伴う社会保障費増大に対応す る。 展望
参考文献 丸山和夫『経済成長は不可能なのか 少 子化と財政難を克服する条件』 2011/ 中公 新書 持田信樹『財政学』 2009/ 東京大学出版会 石弘光『消費税の政治経済学 税制と政 治のはざまで』2009 / 日本経済新聞出 版社 三木義一『日本の税金新版』 2012/ 岩波新 書 諏訪園健司『図説日本の税制 平成 23 年 度版』 2011/ 財経詳社
論点 消費税が社会保障費にあてられることの 是非。 社会保障費の増大を受けて、どのような 税制をとるべきか。