第2章.材料の構造と転位論の基礎. 2-1 材料の種類と結晶構造 体心立方格子( bcc ) 稠密六方晶格子( hcp ) 面心立方格子( fcc ) Cu 、 Ag 、 Au 、 Al 、 Ni 等 Mg 、 Zn 、 Ti 等 Fe 、 Mn 、 Mo 、 Cr 、 W 、 大部分の鋼 等 充填率.

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第2章.材料の構造と転位論の基礎

2-1 材料の種類と結晶構造 体心立方格子( bcc ) 稠密六方晶格子( hcp ) 面心立方格子( fcc ) Cu 、 Ag 、 Au 、 Al 、 Ni 等 Mg 、 Zn 、 Ti 等 Fe 、 Mn 、 Mo 、 Cr 、 W 、 大部分の鋼 等 充填率 74% 充填率 68% 充填率 74%

2-2-1 点欠陥 完全結晶 ( A )原子空孔による欠陥 完全結晶 ( B )侵入型原子による欠陥 ( C )置換型原子(小)による欠陥 侵入原子 ( D )置換型原子(大)による欠陥 置換原子 (温度によっても左右する)

2.2.2 線欠陥 完全結晶 刃状転位( edge dislocation ) 5 マス 6 マス b : バーガスベクトル 垂直 完全結晶 τ τ らせん転位( screw dislocation ) b : バーガスベクトル 平行

転位の移動 τ τ τ τ τ τ すべり面 刃状転位の移動

転位の定義 すべった 領域 すべらない 領域 転位線 転位 ~ すべった領域とすべらない領域の境目をいう。 格子の乱れ 少しずつ移動することにより、すべりが生じる。 転位の定義

混合転位 すべった領域が閉空間である場合 すべった領域 すべらない領域 転位線 b1b1 t1t1 b3b3 t3t3 b2b2 らせん転位 t2t2 b4b4 t4t4 混合転位

面欠陥Ⅰ (結晶粒界) 結晶の核(球状) 核成長 結晶粒各々によって原子の配列が異なる。 核成長後、そこに境界が面としてできる。 粒界 さらに核成長 結晶粒 粒内 面欠陥

面欠陥Ⅱ (双晶境界) (2)機械的双晶( mechanical twin ) ( 750K 時効処理二相ステンレス鋼) Ⅱ.衝撃的負荷を加えたときに起こる τ τ 境界 双晶 (1)焼きなまし双晶( annealing twin ) Ⅰ.熱を加えたときに起こる ( 18Cr-Ni オーステナイト鋼)

面欠陥Ⅲ (積層欠陥①) 面心立方格子 ( fcc ) 稠密六方晶格子 ( hcp ) A B C ABCABCABCABC A B A BABABBABAB すべり面 すべった部分 すべらない部分 b1b1 欠陥の 生じた部分 b2b2 b3b3 積層欠陥 すべらない部分 すべった部分 ABCABABCABCABCABCABCAB 欠陥 ABABABAB

面欠陥Ⅳ (積層欠陥②) 欠陥の 生じた部分 b2b2 b3b3 積層欠陥 すべらない部分 すべった部分 拡張転位 w 拡張転位の幅 w ・ 積層欠陥エネルギ 大 w が狭い ⇒ 変形しやすい w が広い ⇒ 変形しにくい ・ 積層欠陥エネルギ 小 表 2.2 積層欠陥エネルギー

2.3 転位の運動 転位の移動に必要な力を考える F dl すべり面の面積 A τ τ ds 外力 : τA バーガスベクトル b を持つ転位の長さ ds が dl だけ移動 仕事 : 長さ ds の転位に作用する力 単位長さあたりの力 F = τb 転位の運動に関して ① 転位の持つエネルギは長さに比例する。 ② 転位も省エネを考えている。 曲がった転位を真っ直ぐにしようとする。

A B 介在物 A B 転位の増殖機構 ( Frank-Read 源) 転位の増殖機構( Frank-Read 源) 転位 A B A B A B A B A B A B A B A B A B A B A B A B A B A B フランク - リード源の TEM 写真 転位は増殖し、集積していく。

2.3.3 転位の集積( pile up ) n 個の転位 転位はすべり面上を移動 析出粒子や結晶粒界により、転位が集積する 転位の集積による集中応力の影響から、新たな転位源が生じる。 粒界への転位の集積

2.3.4 コットレル固着 侵入型原子 圧縮 引張り 侵入型原子によるコットレル固着 刃状転位 コットレル固着 点欠陥の雰囲気を形成 転位の移動に大きな抵抗を示す 点欠陥と転位の相互作用

2.4 結晶の塑性変形 Ⅰ.塑性変形の原因 ① すべりによる(すべり変形) ② 機械的双晶 ~ 衝撃的な負荷により起こる 主 Ⅱ.すべり線の違い ( a )オーステナイト鋼 ( fcc 構造) ( b )軟鋼( bcc 構造) fcc 構造 bcc 構造 すべり線の密度 すべり線の形状 fcc 構造 bcc 構造 密 疎 直線的 波状的

すべり線の微細構造 すべり線 ~ 1000 原子直径 ~ 100 原子直径 すべり帯 (すべり線が幾つか集まった所) 図 2.22 すべり線の微細構造

シュミット因子 A0A0 A φ λ F F すべり面 せん断応力 τrτr = A FrFr シュミット因子 シュミット因子 cosφcosλ Φ = λ = 45° ⇒ 最大せん断応力 cosφcosλ σ c 〔 MPa 〕 臨界引張応力とシュミット因子の関係 τcτc 大きい ⇒ 強い (例) whisker

まとめ ※ 第二章のキーワード 刃状転位、らせん転位、バーガスベクトル、 結晶粒界、双晶境界、積層欠陥、フランク - リード源、コットレル固着 刃状転位、らせん転位 結晶粒界、双晶境界、積層欠陥、小傾角粒界、小ねじれ角粒界 ・点欠陥 ・面欠陥 ・線欠陥 原子空孔、進入型原子、置換型原子

教科書の訂正 P.34; 式 2.8 cas → cos  cas  → cos 