食育支援ガイド 小学校編 (社)浜松市歯科医師会 1
このガイドは小学校における食育に携わる関係者お よび子どもに対して歯科からみた食べ方や気をつけた い食習慣について提示しています。 歯科からの 食育支援ガイド このガイドは小学校における食育に携わる関係者お よび子どもに対して歯科からみた食べ方や気をつけた い食習慣について提示しています。 そして口の健康をまもり、楽しく、おいしく、上手に食 べることができる食育を推進する参考資料として活用さ れることを期待しています。
子どもと「食育推進」 歯科保健からのアプローチ 「食」の課題は、すべてのライフステージに関わっている。 とくに子どもについては、 歯科保健からのアプローチ 「食」の課題は、すべてのライフステージに関わっている。 とくに子どもについては、 1) 「次世代を担い継承する」 2) 「社会の変化によるひずみを最も受け易い」 3) 「生活習慣確立のスタートにある」 子どもたちへの支援・指導を重視し、保健医療・教育関係者は、 家庭、保育所、学校、地域などへの働きかけが緊急の課題である。
子どもと食育 子どもが豊かな人間性を育み、「生きる力」を身に つけていくためには、何より「食」が重要である。 子どもが豊かな人間性を育み、「生きる力」を身に つけていくためには、何より「食」が重要である。 「食育」は生きる上での基本であって、“知育”“徳育” “体育”の基礎になるものである。 子どもへ「食育」の目的は、“子ども一人ひとりが、食 べることの意味を理解し、自立(律)的に食生活を営む 力(食べる力)を育てること、さらに、それが実現しやす い食環境づくりを目指す“といってよい。 (食育基本法、2005年)
食育とは 食 良 人 を くする 食事を通して健康な心身を育てる 食の楽しさを共有、食の文化を豊かに育む
食べることの意味 昔の食べ方 「やっと手にした食物を皆で分かち合い、ゆっくり大切に食べる喜び」 現代の食べ方 「短時間で効率よく摂取する食べ方」 食べることの価値や意味が軽減 無事収穫できた農作物や、生あるものを頂くことに感謝すること 食べるものと食べさせたいものとの相互作用により食べるという生活の根源的基盤が確立 テレビを見ながら食事をすれば生きるためにただ栄養補給しているだけ これでは食べることに対する感謝など生まれてくるわけがない。母乳保育中の母親のテレビ や携帯電話と同じことである。 「食わせる」ための介護なら拒絶したい 「食う」は生存のための本能的行為、餌
子ども達の現状 朝食欠食 孤食 肥満傾向 地域への理解や食文化継承必要性が高まっている。 小中学校の児童生徒の約20%が1週間のうち朝食を食べないことがある。 独立行政法人日本スポーツ振興センター 「平成12年度児童生徒の食生活等実態調査」 孤食 子どもだけで朝食を食べている割合が約31% 厚生省「平成5年国民栄養調査」 肥満傾向 全ての学年において、肥満傾向の子どもの割合が増加している。 文部科学省「学校保健統計調査」 地域への理解や食文化継承必要性が高まっている。
朝食の欠食率 「朝食をとらない」子ほどよくキレる 以前、広島県で小学5年生から中学3年生の1万2千人の生徒を調べたら、朝食をとらない生徒は約20% もいたといいます。また、質問の中で「よくキレることがある」と答えた生徒のうち、26%が「朝食をとらない」と答えていたといいます。 朝食をとらない学生は学業成績が伸びない 入学時に同じ程度の学力の学生であっても、食習慣の差によって差がつく。つまり、脳は常に活動しエネルギーを消費しているから、それを補給しなければならない。朝食を抜いたり、噛まなかったりすれば 脳の働きが悪くなるのは当然である。
肥満傾向児の割合 今時の食べものは軟らかくて噛まなくてもよく、塩分と脂 が多く使われているので、たくさんかつ早く食べてしまう。 したがってファーストフードは食べ過ぎてしまい、肥満の 原因になる。 肥満傾向の子どもが増加している(学校保健統計調査)
いまどきの食べ物 はやく →手間がかからない やすく →大量生産の同じ味 軟らかい →噛まずに食べられる とろける →脂肪過多 はやく →手間がかからない やすく →大量生産の同じ味 軟らかい →噛まずに食べられる とろける →脂肪過多 おきまり →旬や地の味のない おいしさ →旨味過多の単純な味 食べるに値する感性が育たない
生活習慣病の増加 食生活は私たちの健康の基本です。 食生活は私たちの健康の基本です。 近年、生活習慣病が増加していますが、その予防のためには適切な運動とともに、食生活を改善していくことが大切です。
食育推進における重要ポイント図(緑色は歯科関係の部分) 価格 安全性 心身の健康増進 人間形成 栄養価 生産と流通 食材を学ぶ 食の役割を学ぶ 保存法 地場食材の利用 生きる楽しみ 調理法 食育の推進における 重要ポイント 楽しくおいしく 生命の維持 むし歯になりにくい バランス良い食品選択 食に感謝する文化 (いただきます、もったいない) 味覚形成 食べる機能を学ぶ よく噛んで食べる 欠食・個食をなくす 箸の正しい使い方 食文化を学ぶ 食育といえばまず第一に栄養バランスや安全性などの食 材の学習が思い浮かびます。次に伝統的な食文化の継 承など食文化を学ぶことでしょうか。 また、健康増進のための食の役割を学ぶことも重要であ り、家族そろって楽しくおいしく食べることによる人間形成 も大切なことです。 以上のことは食べ物を何でも食べることが出来るという前 提にたっています。しかし現実には上手に食べられない、 噛めない人たちがいるということです。食べる機能を一部 でも失っている人たちは健全な咀嚼機能の回復が必要で す。緑色の部分が歯科関係の部分ですが、良く噛んで上 手においしく食べるためには歯科の役割は重要になって きます。 規則正しい食生活 上手に美しく 食べる 正常な口腔機能の 育成・回復・維持 地域特有の食文化 の継承 摂食咀嚼 嚥下訓練 正しい間食習慣 日本食の見直し むし歯、歯周病 不正咬合の予防と治療 食育推進における重要ポイント図(緑色は歯科関係の部分)
ライフサイクルに応じた食育推進
口にためたまま飲み込まない子の特徴 ・活気がない ・疲れやすい ・新しいことになじみにくい ・不器用である ・ひとり遊びが多い ・運動神経が鈍い ・やせている (村上ほか)
口にためたまま飲み込まない子の生活状況 ・生活リズムが整っていない ・離乳のステップが適切でなかった ・食生活に工夫が少ない ・食内容が偏っている ・食べる経験が不足している ・親が一緒に食べない (村上ほか)
噛まない子(丸飲みする子)の特徴 ・生活リズムが親のペースで整いすぎる ・離乳のステップが適切ではない ・離乳の完了が早い ・食事に工夫が少なく、家族で一緒に食べて いない ・集中力や落ち着きがなく、不安定な傾向 ・肥満傾向 (村上ほか)
噛まない子(丸飲みする子)の親のタイプ ・子どもを急がせすぎる ・母親が忙しすぎる ・父親の保育の参加が少ない (村上ほか)
生体リズム 生体リズム 睡眠・覚醒 運動 排泄 (遊び) 食事(空腹・満腹) 睡眠・遊び・食事・排泄が生体リズムに影響する。全身的な発達、精神的な発達にも影響する。 早寝、早起き、朝ごはんが良い。これが、あまり実行されていない。 食事(空腹・満腹)
「食べる」を育てる条件 おいしく、楽しく、上手に「食べる」 食事の自立援助 健康状態 食事の介助法 家庭環境 食事環境 生活リズム おいしく、楽しく上手に食べるには、健康であり、食べる意欲を育て、家族そろって会話を交えて食事をすることが望ましい。 食事の内容 親子(人間)関係
学童期食育支援 小学校低学年の食育支援 小学校中学年の食育支援 小学校高学年の食育支援
学童期の「食べる機能」の発達支援 1) 歯の萌出との関係 歯の萌出による歯根膜受容器は咀嚼運動のセンサーの役割を課す。 1) 歯の萌出との関係 歯の萌出による歯根膜受容器は咀嚼運動のセンサーの役割を課す。 そこで、歯の萌出状態や交換時には咀嚼の働きが大きく変化し、ときに向上 したり低する。 上下顎第一大臼歯の萌出による咬合接触は、咀嚼機能および咀嚼力が増 加する。 この時期に、出来るだけ噛みごたえ食品を噛むことを経験させる。 切歯交換期は、食べ物をこぼし易く、咀嚼能力が低下する。 こぼすことを叱るだけでなく、口(口唇)をしっかり閉じながら、食べ物を捕ら え噛むことを教える。
学童期の「食べる機能」の発達支援 2) 食器・食具、食事姿勢との関係 それぞれの料理、調理には、合理的な食器、食具を使いながら、伝統的に 2) 食器・食具、食事姿勢との関係 それぞれの料理、調理には、合理的な食器、食具を使いながら、伝統的に 食べ方、食べる姿勢がある。 皿はテーブルに置き、ナイフとフォークを使う。 和食は茶碗とお椀を手に持ち箸を使う。 不合理な組み合わせは食事のマナーを崩し、食事姿勢が乱れるため、正し い食べる機能を引き出すことが出来ない。 そこで大人から子どもへ、これから食事マナーを伝承 し教えるべきである。
食を通じた子どもの健全育成の目標 食生活や健康に 主体的に関わる 食事のリズムが もてる 楽しく食べる子どもに 食事を味わって 食べる 一緒に食べたい 人がいる 食事づくりや 準備に関わる 子どもの健全育成は、楽しく食べる子どもに育てるようにする。
1.小学校低学年の食育支援
《学童期》小学校低学年 生活習慣が定着する時期です。同時に、親離れも始まり生活習慣が乱れ始める時期でもあります。 「早寝、早起き、朝ごはん」を実践し、規則正しい生活リズムを確立させましょう。 家族と一緒に食事を楽しみましょう。
1、よく味わってたべましょう 味にはどんな種類があるかな?
味にはどん種類があるかな? ☆あまい ☆しょっぱい ☆すっぱい ☆にがい エネルギーのサイン ミネラルのサイン 腐敗のサイン 有毒のサイン 27
2、よくかんで食べましょう よくかんで食べると そのほかに どんな よいことがあるかな?
は よく噛むとこんないいことあるよ! ひ み こ い ぜ 肥満予防 味覚の発達 言葉の発音・ハッキリ 脳の発達 歯の病気予防 ガン予防 よく噛むとこんないいことあるよ! ひ 肥満予防 み 味覚の発達 こ 言葉の発音・ハッキリ の 脳の発達 は 歯の病気予防 が ガン予防 い 胃の働きを助ける ー ぜ 全身の体力向上 29
3、楽しく 食べましょう どんなとき おいしく食べられるのかな? 3、楽しく 食べましょう 家族一緒に、お腹をすかせてよく味わって会話を交えて食事をするように努めよう。 どんなとき おいしく食べられるのかな?
2.小学校中学年の食育支援
《学童期》小学校中学年 食生活や健康を自己管理できるように、食に関する正しい知識と基本的な技術を獲得しましょう。 「早寝、早起き、朝ごはん」を実践し、規則正しい生活リズムを確立させましょう。 様々な体験活動を通じて、社会性を養い、命や食への感謝の念を育みましょう。 家族と一緒に食事を楽しみましょう。 歯の生え代わる時期であり食べにくくなりますが、水分で流し込まないでよく噛むこと、食後の歯磨きなど歯や口の健康に気をつけましょう。
3.小学校高学年の食育支援
《学童期》小学校高学年 食生活や健康を自己管理できるように、食に関する正しい知識と基本的な技術を獲得しましょう。 様々な体験活動を通じて、社会性を養い、命や食への感謝の念を育みましょう。 家族と一緒に食事を楽しみましょう。 歯の生え代わる時期であり食べにくくなりますが、水分で流し込まないでよく噛むこと、食後の歯磨きなど歯や口の健康に気をつけましょう。 学校給食では、肥満防止のためにも早食いを避け、五感を生かして味わう食習慣を習得しましょう。また食具の使用法や食べる姿勢など食事のマナーを身につけましょう。
咀嚼(五感)食教育 食べ物をよく噛むことは、食材に特有な味を味わったり、栄養成分をうまく取り入れることと関わっている。 食べ物をよく噛むことは、食材に特有な味を味わったり、栄養成分をうまく取り入れることと関わっている。 奥歯でよく噛み、唾液としっかり混ぜ合わせることで舌奥の味蕾を刺激し、味がよく感じられる。
よく味わうことで、五感を刺激し五感を育む 食を通して「五感(視覚、聴覚、臭覚、触覚、味覚)の啓発・発見」、 「基礎的な味覚の識別・表現」さらに「おいしさ・味の多様性」などを 学習する。また地域物産の食材の味、人により異なる味の閾値など を理解させる。 子どもたちへの「味覚教育」は実際に料理するという体験学習を通 して、すなわち料理すること自体、自ら五感を活用することになり、自 ら食への気づきが養われる。 子どもたちが日頃何も考えずに口にしている食べ物に対し、「匂い」 「固さ」「味」「音」などを意識することによって、食への興味と食べ物 の大切さを感じとってもらう。
「料理」「食べ方」 で五感を豊かに 育む 味 覚 嗅 覚 触 覚 聴 覚 視 覚 噛んで味わう 薄味を感じる 料理の香り 食材の匂い 味 覚 噛んで味わう 薄味を感じる 嗅 覚 料理の香り 食材の匂い 触 覚 食感・喉越し 食材に触れる 「料理」「食べ方」 で五感を豊かに 育む 五感(味覚・触覚・聴覚・視覚・臭覚)を使って、食べることは豊かな食生活を育む。 聴 覚 料理・咀嚼の音 食事時の会話 視 覚 食材の色・大きさ 料理の盛りつけ
おいしく食べるためには 五感 見たり かいだり きいたり 聞く あじわったり ふれる ふれたり かむ + かんだり 38
食べる機能の三つの営み 食べる機能 (口腔) 食 物 摂 食 (摂り込む) 咀 嚼 (つぶす) 嚥 下 (のみ込む) 食道 口唇を使って 食物を口のな かに摂り込む 食物をすりつ ぶしながら唾 液と混ぜる 食塊を嚥下反 射が誘発され る咽頭まで移 送する
食品の物性 咀嚼により生じる食物の味や食感覚(食感)は、食物 の美味しさ、「食べること」の楽しさに深く関係している。 咀嚼により生じる食物の味や食感覚(食感)は、食物 の美味しさ、「食べること」の楽しさに深く関係している。 食感に影響する食物の硬さ、柔らかさ、弾力性、粘着性、 脆さなど物理的性質がおいしさを生む重要な因子であ る。 日本の伝統食(和食)は、素材を生かし、歯ざわり、 歯ごたえなど食感覚の多彩さを楽しむことが出来る。
歯科からの子育て支援 口腔疾患 = 一種の生活習慣病 口腔疾患の予防 口腔の健康増進 よりよい生活習慣の確立 こころと身体の 健やかな育ち 口腔疾患 = 一種の生活習慣病 口腔疾患の予防 口腔の健康増進 よりよい生活習慣の確立 フッ化物の応用 むし歯や歯肉炎は細菌感染であるが、観かたを変えれば一種の生活習慣病である。 良い生活習慣は、むし歯や歯肉炎の予防につながる。それが全身の健康につながっていく。 歯科からは、歯みがき指導・正しい食べ方や口に関する悪い癖を指摘改善を図り、規則正しい生活リズムを送ってもらえるよう支援していきたい。フッ素の活用も支援していきたい。 生活リズム こころと身体の 健やかな育ち 歯みがき 口の癖 食べ方
歯科からの健康支援の目標 むし歯ゼロ きれいな歯ならび 硬いものをかめること 口の機能の維持・促進 食事や会話を通じたQOLの向上 口の健康を通じた心身の発育促進 口の健康を通じて全身の健康を支援していきたい。
部活・勉強と同じように歯の健康について関心を持とう 口の病気予防を通じて、歯科から支援していきます。
快適な中学生活を送るために「何を食べるか」と同時に「どう噛むか、どのように食べるか」を考えましょう
子どもの食生活を見直そう! 幕内秀夫氏 1.子どもの飲み物は水・麦茶・ほうじ茶など 水分補給が大事、カロリーのないものに 2.朝ご飯をしっかり食べよう~ご飯とみそ汁 パンの常食はやめよう~砂糖と油と添加物 3.子どものおやつは「食事」一番は「おにぎりやのり巻」 おすすめ :うどん、そば、さつまいも、とうもろこし、せんべいなど スナック菓子と清涼飲料水(スポーツ飲料など)は絶対に買わない 4.カタカナ主食は日曜日 ラーメン、パン、パスタ、ピザなど油型の主食は週1~2回まで 5.食事は楽しく よくない例 「よくかみなさい」、「残さないで食べなさい」、「野菜をたべなさ い」 45
気をつけたい食習慣10か条 1.テレビを消して食事に集中 2.椅子の高さを合わせ、姿勢を安定 3.早食いを避け、ゆっくり味わって食べる 4.前歯で噛みとる習慣 5.1回の取り込み量を少なめに 6.口を閉じて咀嚼する 7.水分で食塊を流し込まない 8.空腹を生む生活習慣を工夫する (遊び・間食・飲料・就寝時刻など) 9.うす味習慣で味覚を育てる(舌温) 10.家族一緒に楽しくおいしく食べる 椅子の高さは肘がテーブルのやや上に来るように調節す る。足は必ず床に着くようにする。 口の中の食べ物は良く噛んで自分の唾液と混ぜて飲みこ みやすくする。水分は食べ物と別にとる。 お腹がすいたという感覚を教えるため、十分遊ばせる。 薄味で育てることが、微妙な味わいを学習する上で重要 である。炭酸飲料は冷たくてさわやかであるので甘くてお いしいが、もし舌の温度と同じで温度で飲めば、甘すぎて おいしくないはずである。
おわり