IT企業における 知識経営の推進方法とメトリクス

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IT企業における 知識経営の推進方法とメトリクス 静岡大学情報学部情報社会学科 IDプログラム 4年 7021-1053 鈴木優美

研究の背景 近年知識経営というものが注目を集めている カネやモノの増減は財務諸表によって評価 知識経営において「業務に関する知識」を評価したい 知識には暗黙知と形式知があり、全ての知識の状況を体系的に見ることは困難 知識がもたらす成果の測定方法も研究段階 知識経営はうまくいっているのか…?

知識経営 研究の背景 財務諸表 カネ・モノ 業務に関する知識 ??? 近年知識経営というものが注目を集めている。カネやモノの増減は財務諸表によって評価できるが、知識経営において「業務に関する知識」はどのように評価するのかという問題がある。 業務に関する知識 ???

研究の背景 全ての知識の状況を 体系的に見ることは困難 知識がもたらす成果の 測定方法も研究段階 形式知 暗黙知 暗黙知 形式知 暗黙知 知識と一口に言っても、知識には暗黙知と形式知があり、全ての知識の状況を体系的に見ることは困難。また、知識がもたらす成果の測定方法も研究段階であり、確立された方法はないため、知識経営はうまくいっているのかどうかわからない。 暗黙知 形式知 知識がもたらす成果の 測定方法も研究段階

研究の目的 株式会社日立ソリューションズ・クリエイト社との共同研究 知識経営を評価するために、メトリクスを作成する →知識経営の成果の可視化 強みを明確化し競争力を高める

研究の目的 ・知識経営を評価するために、メトリクスを作成する →知識経営の成果の可視化 ・強みを明確化し競争力を高める 株式会社 ・知識経営を評価するために、メトリクスを作成する   →知識経営の成果の可視化 そこで、本研究において、知識経営を評価するために、メトリクスを作成し、知識経営の成果の可視化を図る。また、強みを明確化し競争力を高める、この2点を目的とし、株式会社日立ソリューションズ・クリエイト社との共同研究によって進めていく。 株式会社 日立ソリューションズ・クリエイト ・強みを明確化し競争力を高める

知識経営とは 知識経営とは、個々人の知識や企業の知識資産を組織的に集結・共有することで効率を高めたり価値を生み出したりすることであり、そのための仕組みづくりや技術の活用を行うことである。もしくは、戦略・組織・事業などの経営のあらゆる事柄を知識という視点でとらえ、実践する考え方である。

知識経営とは 暗黙知と形式知が相互に関係することで、 知識の共有化、明確化を図り、作業の効率化や新発見を 容易にしようとする企業マネジメント上の手法。 暗黙知 形式知 経営活用 知識経営とは、戦略・組織・事業などの経営のあらゆる事柄を知識という視点でとらえ、実践する考え方であり、暗黙知と形式知が相互に関係することで、知識の共有化、明確化を図り、作業の効率化や新発見を容易にしようとする企業マネジメント上の手法の一つ。

SECIモデル 暗黙知と形式知が相互に作用し合う時に「共同化」「表出化」「連結化」「内面化」の4つの知識変換プロセスが現れる。 この4つが知識創造プロセスにおける全体のエンジンとなっている。 知識というものの考え方の一つにSECIモデルというものがある。暗黙知と形式知が相互に作用し合う時に「共同化」「表出化」「内面化」という4つの知識変換プロセスが現れる。この4つのプロセスの英表記の頭文字をとってSECIモデルと名付けられた。そして、この4つが知識創造プロセスにおける全体のエンジンとなっている。

知識経営のプロセス 知識経営プロセスの見える化を図るためのメトリクスの開発のために、知識経営のプロセスを8つに定めた。 8つのプロセスをSECIモデルと対応して考えた。 知識経営プロセスの見える化を図るためのメトリクスの開発のために、知識経営のプロセスを「前提・環境の理解」「知識の発見」「定義」「蓄積・公開」「活用」「検証」「育成」「拡大」の8つに定めた。そしてこの8つの知識経営のプロセスをSECIモデルと対応して考えた。 前提・環境の理解 知識の発見 定義 蓄積・公開 活用 検証 育成 拡大 共同化 表出化 連結化 内面化 知識

強み明確化のための活動(1) 強みカード  ・全従業員が作成  ・従業員同士で交換

強み明確化のための活動 ・強みカード ・強み発表会 ・部課長が作成 ・全社に向けて発表  ・部課長が作成  ・全社に向けて発表 HSC社では、強みを明確化するために強みカードと、強み発表会という2つの活動を行った。今回は強み発表会に重点を置いたため、強みカードについては割愛。強み発表会とは、部課長が活動単位、コア・コンピタンスの説明、成長戦略等をまとめたものを作成し、全社に向けて発表する。

メトリクスの開発(1) CMMIの成熟度レベル プロセスにおける到達度目標レベル 各プロセスにおける知識経営の浸透度を計測するためにCMMIの成熟度レベルを採用した。CMMIの成熟度レベルに準拠して、各プロセスにおけるレベル分けをし、プロセスにおける到達度目標レベルを設定した。 CMMIの成熟度レベル プロセスにおける到達度目標レベル

メトリクスの開発(2) 営業部門 ライン部門 サポート部門 株式会社 日立ソリューションズ・クリエイト 日立ソリューションズ・クリエイト社には多数の部門が存在するため、先ほど作成したプロセスにおける到達度目標レベルだけでは、全部門を測定することが困難であるため、大きくライン部門、営業部門、サポート部門の3つに分類した。そしてその3部門に対し、それぞれ知識経営浸透度判定基準を作成した。 ライン部門 サポート部門 株式会社 日立ソリューションズ・クリエイト

メトリクス測定 強み発表会資料を参考に評価を行う。 作成したメトリクスに基づいて、 評価シートを用いて測定する。 測定を行っていく中で、 曖昧な点を修正していく。 今回の評価は、強み発表会の資料を参考に行った。また、評価を行うにあたり、評価シートを作成した。そして、評価を行っていく中で、曖昧な点を修正し、改善した。

測定結果 40点満点中 最高得点:14点 最低得点:3点 全体平均:6.92点 ライン部門平均:7.21点 営業部門平均:7.67点 サポート部門平均:5.61点 満点は5点×8プロセスの40点満点だが、現状で期待される得点は14点。全部門の最高点は14点、最低点は3点。大まかな部門ごとに平均を見ていくと、ライン部門は7.21点、営業部門は7.67点、サポート部門は5.61点で、営業部門の平均が最も高く、サポート部門の平均が最も低い結果となった。 部門別平均点

測定結果 8つのプロセスごとに得点を見ていく。赤色が最高点、青色が最低点、緑色の折れ線グラフが平均点。平均点から、「前提・環境の理解」「知識の発見」「定義」「検証」の5項目において、約1点の得点がつき、「蓄積・公開」「活用」「育成」の3項目においてほとんど点数がつかない結果となった。 プロセスにおける最高点と最低点

考察(1) 測定結果 ・点数がつくプロセスとつかないプロセスの明確化 ・営業部門:営業の強みではなく商品の強みになっていた 点数がつくプロセスとつかないプロセスが明確になった。しかし、営業部門においては営業の強みではなく、営業が取り扱っている商品の強みとなってしまった。

考察(2) メトリクス ・視点の定義、評価基準が曖昧 ・知識経営プロセスが難解  ・視点の定義、評価基準が曖昧  ・知識経営プロセスが難解 知識経営浸透度判断基準が曖昧であり、評価者によって評価にばらつきが現れてしまった。知識経営プロセスを8つに区分したが、強み発表会資料に含まれている記述内容をどのプロセスに対応付けるかわかりづらい面があった。

考察(3) 強みカード・強み発表会 ・「強み」を考える動機付け ・強みの伝播ができた ・社内ネットワークの増加  ・「強み」を考える動機付け  ・強みの伝播ができた  ・社内ネットワークの増加 強みということを考える良い動機づけになった。また、他者に向けて強みを発信していくことで、自身、自部門の強みを伝播することができ、活動の目的を達成できた。さらに、強みカードの交換では、社内ネットワークを増加させることができた。

結論(1) メトリクスの設定と測定 ・現在の状況の見える化を実現した ・得点における当面の目標は14点 ・「前提・環境の理解」「知識の発見」「定義」「検証」      「拡大」は企業のスタイルによる 現状の見える化を実現した。評価に関して満点は40点であるが、当面の目標は14点に設定することとした。「前提・環境の理解」「知識の発見」「定義」「検証」「拡大」は企業のスタイルによるのだとわかった。

結論(2) 経営改革推進への貢献 ・「蓄積・公開」「活用」「育成」は 強み発表会を通じてレベルアップ ・今後の強化ポイントの策定が容易に   強み発表会を通じてレベルアップ ・今後の強化ポイントの策定が容易に 「蓄積・公開」「活用」「育成」は強み発表会を通じて今後レベルアップさせていく必要があるとわかった。また、点数の差が明確になったことで、今後どこを強化していけばよいのかということが容易にわかるようになった。

今後の課題 ①知識経営プロセス定義の改善 ②知識経営浸透度判定基準の改善 ③知識経営の向上策 ―強みカード交換 ―強み発表会vol2 ④事業成果との関係  今後の課題として4つをあげる。まず、8つの知識経営プロセスが本当にこの8つの分類でよいのか、見直し、改善する必要がある。2つ目に、知識経営浸透度評価基準を改善し、曖昧な点をなくし、評価者によって評価が異なることをなくさなければならない。3つ目に、強みの明確化を図るために行った2つの活動の向上策を考える必要がある。強みカードについては、今度どのように活用していけばよいのか、強み発表会については第2弾を行うことで、再度判定、比較しなければならない。最後に事業成果との関係を明確にしなければならない。今回は事業成果との関係までみることができず、知識が実際事業にどのように影響を与えているのかわからなかったので、そこを明確にする必要がある。