平成15・16・17年度 文部科学省教育研究開発学校指定 平成15・16・17年度 文部科学省教育研究開発学校指定 総合制・地域制の養護学校における 教育課程はどうあるべきか ~障害種別の枠を超えた教育課程のあり方に関する研究~ ● 特別支援教育の取組 ー 障害のある子どもの「生きる力」と 保護者への生涯にわたる支援 - =京都市立総合養護学校の取組= ただ今ご紹介頂きました京都市の研究開発学校企画委員会副委員長を勤めております。白河総合養護学校の校長の森脇と申します。 どうぞよろしく,おねがいいたします。 本日は,「京都の底冷え」と言いまして,一年で一番寒い時期に,私たちの文部科学省指定の中間報告会のために全国より沢山の方がお越し頂きありがとうございます。 さて,本研究は,平成12年度に始まり,平成14年度に第1次の指定最終報告会を行いました。しかしながら,3年間では研究が終わらない内容であったことから,継続して第2次の指定を頂き,今年で5年目を迎えることになりました。 また,研究開発学校の趣旨は,現行の法の枠を超えた先行的な実践を行い,次の,学習指導要領の改訂に資するための基礎研究でもあります。 提 案: 企画委員会委員長 朝 野 浩 京都市立西総合養護学校長
障害のある子どもの「生きる力」と 保護者への生涯にわたる「支援」 障害のある子どもの「生きる力」と 保護者への生涯にわたる「支援」 ★ 「 個 別 の 包括支援プラン 」 さて,平成12年度より取り組んでまいりました, 「障害種別を超えた教育課程のあり方に関する研究」を進めるに当たり, その基本理念を「障害のある子どもを地域や家庭で暮らす1人の生活者として捉え」 , 「個」に視点をあてた「個」から出発する教育の具体化と,「障害のある子どもが地域や家庭で「生きていく力」を育み,本人・保護者への生涯にわたる支援のあり方を明らかにしていくことだと考えております。 本研究は,その意味から,養護学校に求められている3つの要素が協働する運用システムの研究であります。 1つは,障害種別によらないカリキュラム開発に関する研究 ⇒「個のニーズから出発する」総合制・地域制養護学校を意味します 2つ目に,「生涯にわたる支援システムのあり方に関する研究 学校での学習が家庭や地域で生きたものになっているのかということ 3つ目に,教育活動と地域を結ぶための学校運用システムに関する研 究です。 多様なニーズに応えていくためのインクルーシブな教育をどのようにすればよいのという視点、そのためのマネジメントのあり方 この三つの研究内容を具体化していくために、京都市では「個別の指導計画」をツールとして活用してきました。 今年の2月から名称を「個別の包括支援プラント」呼ぶことにしました。 その考え方は後ほどご説明いたします。 サポート 生涯にわたる支援 ★ カリキュラム マネージメント 内と外に向けた連関 障害種別にとらわれない教育課程 総合育成支援教育相談センター
1.はじめに 本市養護学校の再編の経緯 ◆平成11年11月 「養護育成教育の今後のあり方」 <報告> ◆平成12年度~14年度 文部科学省教育研究開発学校(第1次指定) 研究の経緯について 京都市では,平成11年11月に「養護育成教育の今後のあり方について ~養護学校の再編に向けた基本的方向~ <報告>」と言う形で,答申が出されました。 そのため,養護学校校長会においても,総合制・地域制養護学校構想についての先行研究を行ってきました。 おりしも,平成12年度に,文部科学省研究開発学校指定において,初めて特殊教育部門の募集があり,「総合制養護学校の教育課程のあり方に関する基礎研究」として指定を受けることになりました。 研究開発学校は現行法の枠組を超えた先行的な研究に主旨がおかれていることから「新たな養護学校構想の実現に向けて」の理念整理と試行実践に取りかかりました。 平成14年度の最終報告の後,京都市におきましては,「障害種別の枠を超えた教育課程の研究」の理念の実現に向けて」学校と行政そして保護者が一丸となって,初めての総合制・地域制養護学校の開校に向けて一つ一つ問題を解決しながら, 昨年,平成16年4月に京都市の養護学校の再編を完了しました。 今日は,その辺の経過も踏まえ,ご報告させて頂きたいと考えております ◆平成15年度~17年度 文部科学省教育研究開発学校(第2次指定)
「期 待」 に 保護者の不安 再編の様子 ・「個別の指導計画」(京都版) ・通学圏が変わること ・障害が異なる集団になること ・給食や健康管理に関すること ・指導体制が変化すること など 保護者の不安 ・「個別の指導計画」(京都版) による事前準備 ⇒ 指導の継続性 ・試行通学 ⇒ 学級編成 ・PTA共催の給食試食会 ・看護師の4校配置 など 昨年4月の再編時の様子でありますが,通学する学校が変わることや,障害の異なる子ども同士が一緒になること,個に応じた給食や医療的ケア等の必要な子ども達の健康管理に関することに,保護者は,大変不安をもっていました。 また,今まで受けてきた教育環境の変化から,指導体制が変わることへの不安もあり,大変混乱するのではないかと、心配されたわけですが,非常にスムーズに総合制・地域制に移行できました。 それは,新たにスタートする総合養護学校では、どの様な集団になり,どの様な支援が必要なのかを,「個別の指導計画」をもとに各学校ごとに開校前から指導計画ができていたことが,指導の継続性の観点からも不安を取り除けた一番大きな要因だと思っています。 さらに,事前の新たな集団での試行通学や、 PTAと共催の8回に及ぶ給食試食会や、 医療的ケアーの必要な子どもに対する4校への看護師の配置などを実施してきた結果, 今までの保護者の「不安」は,今では「期待に」変化してきております。 「期 待」 に
2.カリキュラム開発に関する研究 教育改革 「生きる力」の定義 「個」の視点からの出発 障害のある子供の教育の「場」の見直し ●従前の教育システムの見直し 障害種別の学校設置と教育課程 「個」の視点からの出発 教育改革 はじめに,「カリキュラム開発に関する研究」についてご報告いたします。 前回の最終報告で,私たちは,「障害のある子供たちを,一人の児童生徒として見る前に,まず一人の「生活者」として、地域の中で生活していると言う」視点をもつこと。 即ち,ノーマライゼーションの理念が研究を進めていく原点であることを提言しました。 そして,その理念で教育の場を見つめ直した時,従前の教育システムである障害種別の教育の「場」ではなく, 学ぶ側の「主体性」を重んじるインクルーシブな教育環境を総合制・地域制の創造に求めていきました。 即ち,「個」の視点から出発することを,教育改革として進めてまいりました。 そこで,新たなカリキュラムを開発していくためには,障害のある人が一人の市民として「生きていくための力」を新たな教育の視座とし、障害のある子供の「生きる力」について定義し新しいカリキュラム編成の基準についての検討に入りました。 障害のある子供の教育の「場」の見直し 「生活者」としての捉え直し 「生きる力」の定義
「生きる力」の定義 「四つの生きる力」の視座 と 京都市版「個別の指導計画」 1 「生命として生きる力」 2 「生きて生活する力」 と 京都市版「個別の指導計画」 1 「生命として生きる力」 2 「生きて生活する力」 3 「生きて働く力」 4 「ともに生きる力」 「個別の指導計画」(京都市版)改称: 個別の包括支援プラン そこで,障害のある子どもの「生きる力」を4つの視点で捉え直しました。 ①生命として生きる力 ②生きて生活する力 ③生きて働く力 ④ともに生きる力 であります。 この視座が,カリキュラム開発の原点であり、基準であります。 この視座で「個別の指導計画」を作成し,実践していくことに取りかかりました。 ですから,始めに指導内容があり,それを「個別の指導計画」に整理し直したものではなく,「個々の子どもと、保護者」への生涯にわたる支援のためのツールとして,考えることにしました。 これが京都市版「個別の指導計画」の発想であります。 従って,障害種別を超えた,カリキュラムの創造のためだけではありません。 組織運用のためのツールでもあります。 ●カリキュラムの創造ーーー 障害種別をこえた教育…特別支援教育 ともに ●教育の「場」の見直しーー 生涯にわたる支援…連続・継続性 ●組織運用システムーーーー- センター機能…内・外(小・中など)支援
「四つの生きる力」を育む視座 (1)学校全体で育む視座 (2)学校のある地域社会で育む視座 (3)学校を含む社会全体で育む視座 WHOの言う新しい障害観から障害のある子どもの生きる力を「四つの生きる力」として定義し,カリキュラム開発をする中で 見えてきたことは, 学校全体で育み,地域が学習の場となり,社会全体で障害のある子どもを育んでいく視座を持ち,情報を発信していくことであります。 そのために,「個別の包括支援プラン」に基づく、授業実践の中で、日々の子どもの変化をキチッと捉えていく目と取り組みを充実させていくことがベースであると考えております。 あすは,各総合養護学校での授業公開がございます。忌憚のないご意見ご指導をよろしくお願いいたします。 最後になりましたが,文部科学省及び京都市教育委員会の皆様方,そして,私たちの研究を支えて頂きました運営指導委員会の皆様方,心よりお礼申し上げます。 そして,この後ご講演頂きます,上越教育大学教授の藤原先生ありがとうございます。 以上で私からの提案はおわります。 長時間のご静聴ありがとうございました。 (3)学校を含む社会全体で育む視座
本市における「個別の支援計画」の考え方と名称 「個別の指導計画」(京都市版)から 「個別の包括支援プラン」 小 中 高 乳児期 幼児期 青年期 壮年期 老年期 ここで,従来から使っていました京都市版「個別の指導計画」の考え方の整理をいたします。 今までご説明しましたように,京都市の考えている「個別の指導計画」は学校教育の場面だけでなく生涯にわたる支援の計画までを本研究の当初よりめざして来ました。ですから,単に個別の授業計画に留まらない,また自立活動や重度重複児童生徒だけを対象としたものではありません。 その意味では,国レベルで最近言われています「個別の教育支援計画」やさらに「個別の支援計画」と重複しているように思える概念でありますが,学齢期にあっては,後ほど詳しくご説明いたしますが,「カリキュラム編成のためのツール」でもあり,もちろん「指導のためのツール」であります。 さらに、「保護者への支援のためのツール」でもあり,また,相談センターとして「地域支援をしていくためのツール」でもあります。 学校と,家庭・地域との学習内容の連続性と関係機関との協働・連携コラボレイションを図るツールを目指すものです。 そのように,様々な要素を包括しております。ですから,京都市版という言葉で区別しておりましたが,長い間検討してきた結果今回そのような意味から,「個別の包括支援プラン」と言う積極的な意味を込めて呼び方を改正することにいたしました。 個別の移行支援計画 個別の指導計画 個別の教育支援計画 ★「個別の包括支援プラン」 個 別 の 支 援 計 画 就学前 学齢期 卒業後
「生きる力」の視座からカリキュラム編成の試行① 三者の願い 「四つの生きる力」の視座でみた 長 期 目 標 「四つの領域」の視点で実態把握と分析 さて,その「個別の包括支援プラン」に基づくカリキュラム編成とその運用システムに話を進めます。 京都市の総合制・地域制の4校では,昨年4月より,「個」のニーズから出発するカリキュラム編成で授業を行っております。ここに至るまでには,いくつもの試行を繰り返してまいりました。 カリキュラムを編成する前に,「四つの生きる力」の視座で「本人・保護者・指導者や社会のニーズ」の3者の願いついての分析を行い「長期目標」を立てます。そこから,より具体的な行動目標にするために、環境・スキル・意欲主体性・社会性という「四つの領域」の観点で分析を行い「短期目標」を立てます。この分析の方法について,今日この後ご講演いただきます上越教育大学教授の藤原先生に大きな示唆を頂きました。右回りスパイラル構造仮説と呼ぶものであります。 このようにして,具体的な行動目標としての「短期目標」を導き出しました。 カリキュラムとして「まとまりのあるもの」にしていくためには、「基準となるもの」と「編成していくための枠組みや手順」が必要となります。 平成14年度から,その基準となるカリキュラムのデータベースづくりとカリキュラム編成の方法についての試行を行ってきました。 行動 ★【環境】 【スキル】 他者 自己 【社会性】 【意欲・主体性】 心理 ★右回りスパイラル構造仮説 「短期目標」の設定
「個別の包括支援プラン」に基づく カリキュラム編成の手順 「個別の包括支援プラン」に基づく カリキュラム編成の手順 本人・保護者・指導者の願い 三者の願い 現在の姿 4つの領域と右回りスパイラル構造仮説 長期目標 短期目標 この表は「個別の包括支援プラン」に基づくカリキュラム編成の手順です。 平成14年度から、このような方法でカリキュラムを編成することが可能かどうかを、実際に試行しながら,地域制4校の養護学校のカリキュラムを再編前に作成し試行実践してきました。 考え方を整理しますと「カリキュラムベース」とは「四つの生きる力」の視点と発達の視点から導き出された「学習内容の要素の一覧表」でありデータベースであります。 ユニットとは,短期目標とカリキュラムベースとを照合しまとまりのある学習活動にしたものであります。 ●導き出された「短期目標」を「カリキュラムベース」を利用して、 目標を達するために適した学習内容を選び出します。 ●そして,「中心となる課題によってまとまりのある学習活動にし たもの」を「ユニット」として構成します。 ●さらに,学習内容を集約する作業を通して 学部や学年,グループ別の「カリキュラム作成方針」を立て, 「ユニットの一覧」と「学習集団」を決定していきます。 ●そして,一人一人の「個別のカリキュラム表」にまとめていくと いうのが一連の流れであります。 「四つの生きる力」の視座 カリキュラムベース ユニットの編成 カリキュラムベースマップ 個別のカリキュラム表 実行プログラム= 授業
「生きる力」の視座からカリキュラム編成の試行② 平成15年度に「短期目標」からカリキュラムベースとして集約 機能からみた学習内容の系 Ⅰ 群 生命として生きる力 Ⅱ 群 ユニット ■■■■■ 生命として生きる力 ・生きて生活する力 「4つの生き力」の視座 ■■■■■ ■■■ ■■■ Ⅲ 群 カリキュラム編成の基準のとなるカリキュラムベースについてもう少し詳しく説明します。 「短期目標」を 縦軸に 「四つの生きる力」の視座からまとめた機能から みた学習内容の系と, 横軸に,発達から見た学習内容の系の 2つの軸のマトリックスで分類したものを,「カリキュラムベース」と呼んでいます。 またこの度,学習指導要領に示されている各教科の内容もこの考えで分類し併せて記載しました。 そして,先ほど説明しました「短期目標」が集中している固まりを見つけ出し、中心となる学習活動を導き出したものがユニットとなります。 平成14年からこのような方法で,3者の願いから出発する「個別の包括支援プラン」を用いて、導き出された学習内容の要素を蓄積し「カリキュラムベース」を作成してきました。 この度「経営の手引き(応用編)」に全てを載せておりますので,後ほど,手にとってご覧頂けたら幸いです。 ■■■■ 生きて生活する力 Ⅳ 群 生きて働く力 第1段階 第2段階 第3段階 第4段階 ■■=短期目標 発達からみた学習内容の系
カリキュラムベースの例 機能からみた学習内容の系 「四つの生き力」の視座 発達からみた学習内容の系 学習内容要素一覧(活動による表記) これが,カリキュラムベースの一例です。 縦軸に「四つの生きる力」の視座による機能からみた学習内容 の系の4群 と 横軸に発達からみた学習内容の系(4段階)によって分類され た「学習内容の要素となる活動の」一覧表の例です。 発達からみた学習内容の系
カリキュラム編成とケース会議の役割 ●カリキュラムづくりに保護者が参画 ユニット一覧表の提示 ケース会議 本人・保護者のニーズ アカウンタビリティー と インフォームドコンセント ケース会議 今まで,カリキュラム編成の手順の概要について、ご説明してきました。 カリキュラムを編成していく上で,特に大切にしていることは,カリキュラムを作成する過程の中に保護者が幾度も参加していることです。 ケース会議はその様な機能を持っております。 例えば,「ユニットの一覧表」を見せて,本人・保護者のニーズと合っているのかを確認します。 保護者や本人がカリキュラムづくりに参画することによって,目標と評価の共有化が図られ,授業そのものの質の向上につながっていくと考えています。 本人・保護者のニーズ 授業の質の向上 目標と評価の共有化
個別週予定の例 そして,最終的にこのような個別の週予定表として各家庭に配布されます。
2.学校経営システムに関する研究 機能の分化 マネジメント部門 ティーチング部門 組織の改革 サポート部門 2.学校経営システムに関する研究 ☆養護学校=>本来:教育・指導機能 + センター機能 マネジメント部門 ●組織マネジメントとクライシスマネジメント 次に学校経営システムについてご説明します。 障害種別を超えた総合制・地域制養護学校への転換は,従前の教育システムからの教育改革であります。 個のニーズから出発するカリキュラム編成と学習集団の編成,そして多様なニーズに柔軟に対応できる指導を可能にしていくためには,従前の組織から,学校の組織全体を機能分化する必要がありました。 そこで,平成14年度に学校経営システムの基本的な考え方を,「機能」に視点をおいてまとめ,再編の前の年から、できる条件の所から試行実施してきました。 教育の質を高めるための教育課程の管理とともに,「学校の外に対する支援」と「校内に対する支援」が連動するように支援部を設け,サポート機能を充実させてきました。 具体的には,マネジメント部門,ティーチング部門,サポート部門の3の機能で組織された運営システムとして、「組織改革」を行いました。 組織としては,総務部,指導部,支援部とし、担任は分掌を持たずに指導に専念するようになりました。 機能の分化 ティーチング部門 ●実行プログラムにおける授業実践 組織の改革 サポート部門 ●計画のための支援と指導のための支援
経営システムの基本的な考え方 ・個に視点をあてた「個別の包括支援プラン」 をツールとした組織運営システム 指導の充実 専門性の向上 総合制・地域制養護学校に求められる機能 ・個に視点をあてた「個別の包括支援プラン」 をツールとした組織運営システム ・個から出発するカリキュラム運営 ・必要な時に,必要な指導と支援 ・P・D・C・Aによる指導システム 指導の充実 経営システムの基本的な考え方ですが, 「個別の包括支援プラン」をツールとした組織運営システムが機能するための「3つの視点」をあげてみました。 1つは、「指導の充実」を図る視点 ・個から出発するカリキュラム運営が可能となるシステム ・必要な時に必要な指導と支援が可能となるシステム ・PDCAサイクルによる指導システムを 作ること 2つ目には「専門性の向上」を図る視点 ・校内支援と校外支援が可能となるシステム ・コーディネーターを配置し「計画段階の支援」と「指導に対 する支援」システム ・専門性を高めるための研修システム を充実すること 3つ目には「マネジメント機能の強化」を図る視点です ・校長のリーダーシップの下、経営方針が明確になるシステ ム ・人材育成のための研修システム ・教育課程の管理も含め,危機管理と責任分担が明確にな る システム などであります。 ・校内支援と地域支援 ・コーディネータの役割と配置 ・研修システムの充実 専門性の向上 ・経営方針の明確化 ・人材養成システム ・クライシスマネジメントの強化 マネジメント 機能の強化
経営システムの検証 35項目についてアンケート調査を実施 対象 : 総合制・地域制4校の教頭・副教頭・学部長・学年主任 A~Dの4段階で評価 対象 : 総合制・地域制4校の教頭・副教頭・学部長・学年主任 A~Dの4段階で評価 このシステムが,機能に沿って、円滑に運用されているかどうかを,検証するために,地域制4校の教頭・副教頭・学部長・学年主任を対象にアンケート調査をしました。 ・調査は,35項目で,総務部,指導部,支援部ごとに4段階で 自己評価してもらいました。 ・調査の項目内容については、報告冊子の91ページ~のせております ので、後ほどご覧ください。 ここでは,「特に評価が高かった項目」(赤の矢印のところです)と 「特に評価が低かった項目」(青の矢印のところです)について報告い たします。 また,各校においては,京都市の学校評価システムによる各校独自の自己評価により分析がされ,改善に活かされています。 報告冊子:第3章第3節(P90)
アンケート調査からの考察① 評価が高い項目について マネジメントに関すること ティーチングに関すること サポートに関すること ・2人教頭制や副教頭・学部長の配置により学校経営機能が強化 ティーチングに関すること ・サポート機能の充実により指導が充実 ・機能分化により担任が指導に専念 まず,「特に評価が高い項目」ですが マネジメントに関する項目では, ・2人教頭制・や学部長の配置により学校経営機能が強化されたこと ティーチングに関する項目では ・サポート機能の充実により指導が充実できたこと ・機能分化により担任が指導に専念できるようになったこと サポートに関する項目では ・看護師の2名配置により保健管理体制が充実したこと ・経営システムの構築により相談センター業務が充実してきたこと と捉えていることが、うかがえます。 サポートに関すること ・看護師の2名配置により保健管理体制が充実 ・経営システムの構築により相談センター業務が充実
アンケート調査からの考察② 評価が低い項目について まとめ 全体のまとめとして 機能の分化による学校運営 ・「個別の包括支援プラン」の運用面での調整の円滑化が必要 ・「個別の包括支援プラン」に基づく実践の評価・更新のあり方 についてさらに検討が必要 ・効率的なケース会議の運営が必要 ・コーディネーターの養成と研修システム充実が必要 ・授業者の授業企画力と指導力を高める研修の充実が必要 逆に,評価が低い項目については ・「個別の包括支援プラン」の運用面での調整の円滑化が必要 ・「個別の包括支援プラン」に基づく実践の評価・更新のあり方 についてさらに検討が必要であること ・効率的なケース会議の運営が必要であること ・コーディネーターの養成と研修システム充実が必要であること ・授業者の授業企画力と指導力を高める研修の充実が必要 等が、課題だと感じていることが、うかがえます。 全体のまとめとして マネジメントに関わることに関しては, ・一人一人の子どもへの指導の質が高まる ・学校全体の課題が見えやすくなる ・業務内容が明確になる 等,高い評価になっている,反面 「運用面」に関しては, ・「個別の包括支援プラン」に基づく評価・更新の在り方や,調整の方法,ケース会議の運営のあり方等、 まだまだ、課題が見られます。 特に,コーディネーターの役割が大きく,より一層の 専門性の向上が求められていると思います。 ・各部門毎の専門性の向上に向けた研修の充実が必要と考えます。 まとめ 機能の分化による学校運営 ・一人一人の子どもへの指導の質を高める ・学校全体の課題が見えやすくなる ・業務内容が明確になる ・研修の充実と専門性の向上が求められている
4.センター機能に関する研究 面(地域ぐるみ)としての支援機能 支援ネットワーク 総合制養護 地域ぐるみでの支援 総合育成支援教育 学校の枠を超える 支援ネットワーク 地域が学びの場 地域ぐるみでの支援 小学校・中学校・高等学校 と養護学校の枠を超える 総合育成支援教育 センター機能 障害種別の 枠を超える 総合制養護 最後に,センター機能に関する研究に関して説明します 養護学校におけるセンター機能を考える発想として,私たちは 養護学校での指導と相談支援機能とを、別の次元で考えるのではなく、同じ視点と機能システムで、捉えようとしています。 障害種別という枠を超えた「個のニーズ」を視点とした教育を推進していくためには,学校だけで完結する教育システムではなく, 地域の小・中・高等学校という枠も超え,よりインクルーシブな教育環境をめざす機能システムが必要であります。 さらに,地域ぐるみで支援し,「地域が学びの場」になっていくための、支援ネットワーク、が必要であります。 このように,学校と家庭や地域生活との連続性をもつことで本当の意味の「生きる力」を育めるのではないかと考えています。 障害のある子どもの生涯にわたる支援をめざすことは,このような「面」としての支援機能を構築していくことと考えています。
地域の特別支援教育センターとしての役割 国の動向 ●平成15年3月「今後の特別支援教育のあり方について (最終報告)」(調査協力者会議) ・「特殊教育」から「特別支援教育」への転換 ・「特別支援教育コーディネーター」の設置 ・「個別の教育支援計画」の策定 地域の特別支援教育センターとしての役割について少し触れます。 始めに,もう既にご存じのように 平成15年3月に「今後の特別支援教育の在り方についての(最終報告)」が出され, ・「特殊教育」から「特別支援教育」への転換 ・「特別支援教育コーディネーター」の設置 ・「個別の教育支援計画」の策定 以降,16年1月には「LD等の児童生徒に対する支援体制整備のためのガイドライン(試案)」が文部科学省 そして,昨年12月に「特別支援教育を推進するための制度の在り方について(中間報告)」が中央教育審議会から出されました。 国レベルにおきましても,「考え方の整理」から、現在は、「制度面の整備」に移ってきております。 養護学校の地域における特別支援教育相談センターとしての役割と機能について検討し,現状の枠の中で出来るところから具体化することが求められております。 その意味で,「特別支援教育は既に始まっている」と認識する必要があると考えております。 ●平成16年1月「小・中学校におけるLD,ADHD,高機能 自閉症の児童生徒に対する支援体制の整備のための ガイドライン(試案)」(文部科学省) ●平成16年12月「特別支援教育を推進するための制度の 在り方について(中間報告)」(中央教育審議会) 養護学校の地域の特別支援教育センターとしての役割
京都市における総合養護学校のセンター機能 特別支援教育はもう始まっている 市の取組 ●平成14年6月に「養護育成教育相談センター」を開設 ●平成16年7月に更に、「総合育成支援教育相談センター」 に名称変更, 「愛称:育(はぐくみ)支援センター」となる ●「個別の包括支援プラン」を基本に据えた センター機能の活用 京都市の養護学校におけるセンター機能の取組みについて 京都市の養護学校では,平成14年6月に「養護育成教育相談センター」を開設し,今年度より小中学校でのLD等特別支援委員会の設置やLD等特別支援主任の設置など整備が進んだことと総合養護学校に再編されたことも踏まえ,昨年7月に「総合育成支援教育相談センター」に名称を変更し,愛称を「育(はぐくみ)支援センター」と呼びやすくしました。 国のいうセンター的機能,即ち,サービスとしてでなく,学校の基礎構造改革を伴う、学校の業務として位置づけたセンターとし,本来の養護学校の指導業務も確立し,しかも地域と連携するシステムを確立したと言うことです。 先ほど申しました,京都市の総合養護学校のセンター機能の基本理念の実現に向けて, 一つは「個別の包括支援プラン」を基本に据えたセンター機能と,もう一つは,学校経営システムと関連づけられた機能の運用を通して,実践を行っています。 それは,学校の中に向けた支援と外に向けた支援を連関させることであります。 地域制の4校におきましては,「LD等の児童生徒に関する支援を含む,総合的な地域支援システム」をとっております。 ●学校経営システムと関連づけられた機能の運用 ●LD等の児童生徒に関する支援を含む,総合的な 地域支援システムの構築 地域制の総合養護学校(北・東・西・呉竹)
センター機能と支援システム 校内LD等教育支援委員会 地域の学校への支援システムの例 「個別の包括支援プラン」 をツールとしたP・D・C・Aのサイクルで指導 担任等 地域の小・中学校 相談・支援 校内LD等教育支援委員会 保護者 LD等教育支援主任 相談・支援 相談・支援 総合制・地域制養護学校 総合制養護 これは,地域制養護学校4校(北・東・西・呉竹)の「育み支援センター」と地域の小・中学校への相談と支援の流れを図にしたものです。 ・特別支援コーディネータを京都市では 「LD等教育主任」と呼びますが,この人が,地域の学校の窓口になり,養護学校の方は「地域支援コーディネーター」と読み替えますが,これにが当たります。 ・ 育支援センターには,児童精神科医師と発達心理の学識経験者と 元校長による巡回指導員と 教育委員会と 総合養護学校支援部の 5者からなる 「学校サポートチーム」が設けられています。 ・外部との連携による専門的な見地から、支援のあり方についての指 導助言が受けられるよう,支援システム上の機能強化が図られました。 関係機関 連携・協力 (白河・鳴滝・桃陽) 育(はぐみ)支援センター 医 療 育(はぐみ)支援センター 学校サポートチーム 福 祉 職業学科 病弱教育 地域支援コーディネーター
総合養護学校の専門性を活かした支援システム 相 談 総合育成支援教育相談センター(京都市) 個別の包括支援プラン P・D・C・Aによる 総合養護学校の専門性を活用した支援の方法を,簡単にいいますと,地域の小中学校から受けた相談を総合養護学校の「個別の包括支援プラン」を活用し,支援のノウハウを「サポート・パッケージ」として地域の小中学校に提供しようとするシステムです。 直接,総合養護学校の教員が出向いて指導支援することもありますが,基本は,地域の小中学校が,自立して自校の校内委員会等を活用して,校内の教育的ニーズを持つ子供への支援を実施するための援助を行うこととしています。そのことで,地域の学校が支援のためのノウハウを持ち機能していくことになります。 保護者へのサポートに於いても同様のことが言えます。 このように, 「個別の包括支援プラン」をツールとして 点から面としての支援に輪を広げていくことがねらいであります。 支援内容・方法等の分析・プランニング・評価・更新 支援の実施 地域の学校における サポート・パッケージ
…相談から面ぐるみの「支援」へ機能の解放 Point:学校の教えるという本来業務の確保 ③4総合養護学校に「学校サポートチーム」の設置 ●京都市立総合養護学校の取組概要 ①校務分掌組織の基礎構造改革 …「総務」「指導」「支援」の三部体制 Point:行動(役割の明確化)による意識改革 「個別の包括支援プラン」(京都市版)の運用と授業改善 ②サービスから学校業務への機能分化 …相談から面ぐるみの「支援」へ機能の解放 Point:学校の教えるという本来業務の確保 ③4総合養護学校に「学校サポートチーム」の設置 …特殊教育から特別支援教育へ「援護」の要請 Point:小・中学校等の基礎構造(意識)改革へ 生涯にわたる支援計画(ネットワーク)の策定
①「21世紀の特殊教育のあり方について」 (H13.1)②学校教育法施行令の改正 (H14.4) ●特別支援教育に関する動向 ①「21世紀の特殊教育のあり方について」 (H13.1)②学校教育法施行令の改正 (H14.4) ③「今後の特別支援教育のあり方について」 (H15.3) *障害者基本計画ーガイドライン試案 (H16.1) ・特別支援教育体制の整備 *中央教育審議会特別委員会での審議 「特別支援教育を推進するための制度の在り方について」 中間まとめ(H16.11),答申(H16.12) *発達障害者支援法の策定 (H16.9) *学校教育法など関連法案の改正 (H17~) *養護学校での「個別の教育支援計画」の策定 (H17までに)
☆障害種別の枠をはずす ・・・養護学校 ☆軽度発達障害の 児童生徒も対象とする ・・・小・中・高等学校 約1% → 約10% ●特別支援教育ってなぁーに?? ☆障害種別の枠をはずす ・・・養護学校 ☆軽度発達障害の 児童生徒も対象とする ・・・小・中・高等学校 約1% → 約10%
教師の不安,親の不安・・・ 教師・・・ ・ 障害のことなど分からない → ・ 人も予算も増えないでどうしょう → 親・・・ → どう答えていきますか? 教師・・・ ・ また面倒な仕事が増える → ・ 障害のことなど分からない → ・ 人も予算も増えないでどうしょう → 親・・・ ・ 先生の手が足りなくなるのでは → ・ もしかしたら学校が変わるかも知れない →
●親の期待 期待・・・学校が変わる 学校が見える 保護者参画, 関係者のネットワーク ①先生が変わる …「専門性」 期待・・・学校が変わる 学校が見える 保護者参画, 関係者のネットワーク ①先生が変わる …「専門性」 「特別支援コーディネータ」 ②授業が変わる …「個別の指導計画」 「個別の教育支援計画」 ③組織が変わる …「センター化」 「校内委員会」
●小学校,中学校などの不安 ①先生の困っていることと 子どもの困っていることの混同 ・・・つまずきの要因分析が難しい ②保護者対応の難しさ 子どもの困っていることの混同 ・・・つまずきの要因分析が難しい ②保護者対応の難しさ ・・・行動の問題性への対応の ノウハウが少ない ③個に応じた学習方略が作り出せない ・・・専門知識,個人ファイル作成など ④長期展望にたった教育支援のあり方 ・・・校内委員会,構造化など
●盲・聾・養護学校の不安 ①相談・支援体制等の校内体制の 整備がとれていない ②発達障害に関する専門知識や指導経験が 少ない 整備がとれていない ②発達障害に関する専門知識や指導経験が 少ない ③小・中学校などの現在の様子が分からない ④小・中学校などの教科指導に合った アドバイスが可能か分からない ⑤小・中学校などの管理職へのアドバイスをどうすればよいか 例:校内体制の改革等
・目標に準拠した評価の時代 ★外部状況 ・ノーマライゼーション理念の浸透 障害者権利条約案「合理的配慮」2006採択予定 ・法制度の確立 インフォームドコンセント・アカウンタビリィティー ・ノーマライゼーション理念の浸透 障害者権利条約案「合理的配慮」2006採択予定 ・法制度の確立 「障害者基本計画」「新障害者プラン」 「発達障害者支援法」 「中央教育審議会特別支援教育特別委員会中間報告」
●小・中学校などの特性の打破 学級王国 支援体制 チームで考える習慣を作り出す 行動を伴う意識改革 例;ファイルの個別化・・・指導簿(全員) → ケースの掘り起こしと個別の 引継ぎ。継続性…教育支援計画 顔の見える支援の在り方 → 保護者・地域と共に考える
特別支援教育--総合的な教育力の向上(1) 特別支援教育--総合的な教育力の向上(1) 解決・改革への道 × どうしたら良いでしょう? → 丸投げ × 専門家に任せるほうがよい → 問題の気づきの他人任せ 保護者の信頼関係を損ねる原因となる
特別支援教育=総合的な教育力の向上(2) ① 問題の箇所の整理;- 本人・・・障害? 保護者・家庭・・・意識,ニーズ, 障害受容 etc 教師,学級・・・意識,手だて,障害受容 etc 学校,地域・・・意識,機構,組織 etc
特別支援教育=総合的な教育力の向上(3) 皆が本人の行動で 問題だと思っていること・・・ ☆なぜ起るのかwhy? 何時when 何がwhat 記録 何処でwhere ベースライン どの程度how
特別支援教育=総合的な教育力の向上(4) why?の解決のために ☆評価の方法を決めて who誰が when何時 ・・・ 関わるのか ☆評価の方法を決めて who誰が when何時 ・・・ 関わるのか what何に howどのように ☆待つより出て行く ・・・保幼小連携 個別の引き継ぎ 小中連携
特別支援教育=総合的な教育力の向上(5) 一冊のファイルから始まる 特別支援教育 「個別の教育支援計画」 ※ 校内の役割分担の工夫 ※ 専門性の高いグループなどの醸成 ※ 校内授業研究のレベルアップ
「障害種別の枠を超えた教育課程のあり方に関する研究」 平成15・16・17年度 文部科学省教育研究開発学校指定 「障害種別の枠を超えた教育課程のあり方に関する研究」 ● 特別支援教育の取組 ー 障害のある子どもの「生きる力」と 保護者への生涯にわたる支援 - =京都市立総合養護学校の取組= THE END 提 案: 企画委員会委員長 朝 野 浩 京都市立西総合養護学校長