001.「~っす」は敬語か? 2007年度国語学概説Ⅰ研究発表 野浪正隆
これって敬語っすか? http://www.nhk.or.jp/a-room/kininaru/2004/08/0802.html 「今日も暑いっすねー」こんな言い方を耳にしませんか?この「~っす」は、10年前くらいからひんぱんに使われるようになったようです。 『まじっスカ スカがついてて ていねい語 ~サラ川小町~』 大手生命保険会社が毎年主催しているサラリーマン川柳、第15回(2002年)に入選した句で、若者が丁寧になると思って使うこの「~っすか」を皮肉っているのですね。
語源? この語尾は、柔道や空手の挨拶の「押忍(おす)」が短縮されたものだという説もあるようで、いわゆる体育会系の男性によく聞くようにも思います。 でも、例えば「暑いっす」をたどると「暑いです」、つまり「です」の“で”が弱まって小さい“っ”に変化したのではないでしょうか。
変化 国立国語研究所 今までは形容詞や名詞の後に付けて使っていたのが、最近では「行きます」→「行くっすよ」と動詞にも使われるようになってきていると分析しています。 形容詞や名詞に付く「です」と、動詞に付く「ます」の丁寧語をひとまとめに「っす」として、便利に使っていると考えられます。
誰に使っているか? 社会人4,5年の人に聞いてみたところ、会社の年の離れた上司など目上の人にはあまり使わず、ごく近い先輩に使うと答えてくれました。 敬語では距離を感じてしまうし、また逆に友達同士の口調では丁寧さが無くなる、その中間として上手に「敬意」と「親しみ」をこめて、「っす」を使っているのでしょう。
敬語のおさらい 敬語の種類 文化審議会は2007年2月2日に「敬語の指針」を答申し、その中で尊敬語・謙譲語Ⅰ・謙譲語Ⅱ(丁重語)・丁寧語・美化語と5つに分類している。 •尊敬語 話題中の動作の主体が話し手よりも上位であることを表す語 •謙譲語 話題中の動作の受け手が話題中の動作の主体よりも上位であることを表す語 •丁重語 聞き手が話し手よりも上位であることを表す語 •丁寧語 聞き手が話し手よりも上位であることを表す語尾の「です」「ます」「ございます」など •美化語 上品とされる言い回し・言葉遣い •尊大語 通常の敬語表現とは逆に、相手の側に謙譲語を、自分の側に尊敬語を使う表現。 •侮蔑語 話題中の人物が話し手よりも下位であることを示すために用いられる語彙や言語形式
敬語の基本 品格保持 「私には敬語ぐらい使いこなせるくらいの品格が備わっている」ことを、表現する。 例1 佐々木、今日はAに寄っていくから、いつもより早く迎えに来い。 例2 佐々木さん、今日はAに寄っていきますから、いつもより早く迎えに来てくださいな。
「~っす」は丁寧語だけれど、 どんな品格を保持するのだろう? 使用者=若い男性(体育会系?) アンケート調査が必要。 「です」「ます」を崩した「~っす」 例文 見張りに行くのは誰だった? 俺/俺っす/俺です/私/私っす/私です僕/僕っす/僕です/俺様/俺様っす/俺様です/
俺っす 一人称「俺」が許容される集団内で、相手に対して丁寧な表現を使うべき場合 自分は「相手とのコミュニケーションに対して消極的なんだ」ということを示す場合。 例 佐々木、お前もう1科目欠点だと、留年だぞ! えー、俺っすかー? まじっすかー?