医薬品素材学 Ⅰ 相平衡と相律 (1) 1成分系の相平衡 相律 クラペイロン・クラウジウスの式 (2) 2成分系の相平衡 液相―気相平衡

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1 先修科目 42 化学Ⅱ 高校で化学Ⅰ、Ⅱを履修した人が対象。 指定学科は医学部医学科。 定員 100 名を越えた場合は、指定学科 以外の学生は登録できない。 例外は 4 年次学生。 化学Ⅱは、月曜日の 2 限目、木曜日の 4 限目にも開講している。
1 今後の予定 8 日目 11 月 17 日(金) 1 回目口頭報告課題答あわせ, 第 5 章 9 日目 12 月 1 日(金) 第 5 章の続き,第 6 章 10 日目 12 月 8 日(金) 第 6 章の続き 11 日目 12 月 15 日(金), 16 日(土) 2 回目口頭報告 12 日目 12.
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◎ 本章  化学ポテンシャルという概念の導入   ・部分モル量という種類の性質の一つ   ・混合物の物性を記述するために,化学ポテンシャルがどのように使われるか   基本原理        平衡では,ある化学種の化学ポテンシャルはどの相でも同じ ◎ 化学  互いに反応できるものも含めて,混合物を扱う.
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福井工業大学 工学部 環境生命化学科 原 道寛 名列____ 氏名________
ベルリン青染色 Berlin blue stain (Prussian blue stain)
一成分、二相共存系での平衡 一成分 固液共存系    氷-水.
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◎熱力学の最も単純な化学への応用   純物質の相転移
3)たんぱく質中に存在するアミノ酸のほとんどが(L-α-アミノ酸)である。
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HE染色.
◎ 本章  化学ポテンシャルという概念の導入   ・部分モル量という種類の性質の一つ   ・混合物の物性を記述するために,化学ポテンシャルがどのように使われるか   基本原理        平衡では,ある化学種の化学ポテンシャルはどの相でも同じ ◎ 化学  互いに反応できるものも含めて,混合物を扱う.
微粒子合成化学・講義 村松淳司
蒸気圧と沸点 『水の沸点は変化する』.
課題 1 P. 188.
(d) ギブズ - デュエムの式 2成分混合物の全ギブスエネルギー: 化学ポテンシャルは組成に依存
22章以降 化学反応の速度 本章 ◎ 反応速度の定義とその測定方法の概観 ◎ 測定結果 ⇒ 反応速度は速度式という微分方程式で表現
2次元系における超伝導と電荷密度波の共存 Ⅰ.Introduction Ⅱ.モデルと計算方法 Ⅲ.結果 Ⅳ.まとめと今後の課題 栗原研究室
相の安定性と相転移 ◎ 相図の特徴を熱力学的考察から説明 ◎ 以下の考察
FUT 原 道寛 学籍番号__ 氏名_______
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課題 1 P. 188.
(d) ギブズ - デュエムの式 2成分混合物の全ギブスエネルギー: 化学ポテンシャルは組成に依存
低温物体が得た熱 高温物体が失った熱 = 得熱量=失熱量 これもエネルギー保存の法則.
実験21.カルボン酸とエステル 実験方法.
◎熱力学の最も単純な化学への応用   純物質の相転移
◎ 本章  化学ポテンシャルの概念の拡張           ⇒ 化学反応の平衡組成の説明に応用   ・平衡組成       ギブズエネルギーを反応進行度に対してプロットしたときの極小に対応      この極小の位置の確定         ⇒ 平衡定数と標準反応ギブズエネルギーとの関係   ・熱力学的な式による記述.
モル(mol)は、原子・分子の世界と 日常世界(daily life)をむすぶ秤(はかり)
近代化学の始まり ダルトンの原子論 ゲイリュサックの気体反応の法則 アボガドロの分子論 原子の実在証明.
これらの原稿は、原子物理学の講義を受講している
福井工業大学 原 道寛 学籍番号____ 氏名________
(解答) 式(6.12)  Δp = (ΔH / ΔV )×ln (Tf / Ti)
熱量 Q:熱量 [ cal ] or [J] m:質量 [g] or [kg] c:比熱 [cal/(g・K)] or [J/(kg・K)]
物質とエネルギーの変換 代謝 生物体を中心とした物質の変化      物質の合成、物質の分解 同化  複雑な物質を合成する反応 異化  物質を分解する反応 
イミダゾリウム系イオン液体(3)ー分子性液体(2)混合溶液の二酸化炭素溶解度(1)
化学1 第11回講義 ・吸光度、ランベルト-ベールの法則 ・振動スペクトル ・核磁気共鳴スペクトル.
実験22.ベンゼン 実験方法・手順.
相の安定性と相転移 ◎ 相図の特徴を熱力学的考察から説明 ◎ 以下の考察
§3.圧力を変えると.
電解質を添加したときの溶解度モデル – モル分率とモル濃度
V = VW nW + VE nE ヒント P142 自習問題5・1 溶液の体積を 1000 cm3 とすると、 溶液の質量は?
外部条件に対する平衡の応答 ◎ 平衡 圧力、温度、反応物と生成物の濃度に応じて変化する
K2 = [ln K] = ln K2 – ln K1 = K1.
固体→液体 液体→固体 ヒント P131  クラペイロンの式 左辺の微分式を有限値で近似すると?
ヒント.
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医薬品素材学 Ⅰ 相平衡と相律 (1) 1成分系の相平衡 相律 クラペイロン・クラウジウスの式 (2) 2成分系の相平衡 液相―気相平衡 医薬品素材学 Ⅰ 相平衡と相律 (1) 1成分系の相平衡      相律      クラペイロン・クラウジウスの式 (2) 2成分系の相平衡      液相―気相平衡      液相-液相平衡      液相-固相平衡 (3) 3成分系の相平衡 平成26年5月9日

1成分系の相平衡 ○ 気相 液相 固相 ○ 融解曲線 昇華曲線 蒸気圧曲線 ○ 三重点 臨界点 ○ 臨界状態 超臨界流体 G L S AT ○ 気相    液相    固相 ○ 融解曲線    昇華曲線    蒸気圧曲線 ○ 三重点    臨界点 ○ 臨界状態    超臨界流体 G L S AT BT CT T C

1成分系の相平衡 1) 相律: F:自由度、 C:成分の数、 P:相の数 ○ 1成分系の最大自由度 = 2 (圧力と温度) 1) 相律:                     F:自由度、 C:成分の数、 P:相の数 ○ 1成分系の最大自由度       = 2 (圧力と温度) ○ 曲線 AT, BT, CT 上の自由度  = 1 (圧力または温度) ○ 点 T の自由度       = 0

1成分系の相図 2) クラペイロン・クラウジウスの式 (相境界の熱力学) > 0 > 0 < 0 クラペイロンの式 2) クラペイロン・クラウジウスの式  (相境界の熱力学)  クラペイロンの式 > 0 l → g s → l > 0 < 0 ○ 気体を理想気体とみなして クラペイロン・クラウジウスの式

2成分系の相平衡 相律: 自由度の最大数は 3 (圧力、温度、成分組成) 1) 液相―気相平衡 蒸留、分別蒸留、共沸 2) 液相―液相平衡 相律: 自由度の最大数は 3  (圧力、温度、成分組成) 1) 液相―気相平衡                蒸留、分別蒸留、共沸 2) 液相―液相平衡                相互溶解、臨界共溶点 3) 固相―液相平衡 3-1 固溶体を形成する場合 3-2 共融混合物を形成する場合 3-3 分子化合物を形成する場合

2成分系の相平衡 液相―気相平衡 1) ラウールの法則 ○ 圧力-組成図では、液相線は常に気相線より上にある。 ベンゼン-トルエン溶液 1) ラウールの法則 X : 0.6 pX: 3.8×0.6+12.7×0.4=7.4 kPa ベンゼン-トルエン溶液 ベンゼンの   蒸気圧 12.7 kPa この蒸気におけるトルエンのモル分率は、 ドルトン分圧の法則より 溶液の蒸気圧 Y : (3.8×0.6)/7.4=0.31 液相線 X Y タイライン トルエンのモル分率 0.6 の混合溶液 トルエンのモル分率 0.31 の混合蒸気 トルエンの 蒸気圧  3.8 kPa 気相線 ○ 圧力-組成図では、液相線は常に気相線より上にある。 

2成分系の相平衡 液相―気相平衡 (b) 温度-組成図 (沸点図) (a) 圧力-組成図 分別蒸留 L G G A B L B A 液相線 (b) 温度-組成図 (沸点図) (a) 圧力-組成図 分別蒸留 B A 液相線 気相線 L G A B 液相線 気相線 L G

2成分系の相平衡 液相―気相平衡 共沸混合物 実在溶液のラウールの法則からのずれ 正のずれ 負のずれ 異種の分子同士が溶液中で安定化    ↓ 気体として 逃げ出し にくくなる 気体の分 子が減る 蒸気圧が 低くなる 同種の分子同士が強く会合 ↓ 溶液になると会合が弱まる(逃散傾向)    ↓ 気化しやす くなる 蒸気圧が 高くなる

2成分系の相平衡 液相―気相平衡 共沸混合物 正のずれを有する溶液(メタノール―クロロホルム) 蒸気圧曲線に極大点、 沸点図には極小点 (水―エタノール)

2成分系の相平衡 液相―気相平衡 負のずれを有する溶液(水-ギ酸) 蒸気圧曲線に極小点、 共沸混合物 沸点図に極大点

2成分系の相平衡 液相―液相平衡 相互溶解 上限臨界共溶点 1液相 2液相 てこの原理

2成分系の相平衡 液相―液相平衡 相互溶解 下限臨界共溶点 上と下部に臨界共溶点 低温では水素結合 高温では熱運動 例) 非イオン系活性剤と水

2成分系の相平衡 固相―液相平衡 3-1 固溶体を形成する場合 固溶体:化合物(あるいは元素)として存在する物質が固相で完全に溶け合ったもの

2成分系の相平衡 固相―液相平衡 3-2 共融混合物を形成する場合 寒剤 共融点 B 共融混合物 Ⅰ: 溶液 Ⅱ: 溶液+ショ糖 3-2 共融混合物を形成する場合 共融点 B 寒剤 共融混合物 Ⅰ: 溶液 Ⅱ: 溶液+ショ糖 Ⅲ: 溶液+氷 Ⅳ: ショ糖と氷

2成分系の相平衡 固相―液相平衡 3-2 共融混合物を形成する場合 融点効果による湿潤 共融混合物 重量比 50% (モル比 3:2 )

2成分系の相平衡 固相―液相平衡 3-2 共融混合物を形成する場合

2成分系の相平衡 固相―液相平衡 3-3 分子化合物を形成する場合 Ⅰ Ⅳ Ⅱ Ⅲ モル比 1:1 の分子化合物 Ⅰ:溶液 3-3 分子化合物を形成する場合 Ⅰ:溶液 Ⅱ:分子化合物と溶液 Ⅰ Ⅲ:スルファニルアミド と溶液 分子化合物の融点 Ⅳ  Ⅳ:スルファチアゾール と溶液 B Ⅱ A Ⅲ スルファニルアミドと分子化合物との共融点 スルファチアゾールと 分子化合物との共融点 モル比 1:1 の分子化合物

3成分系の相平衡 3成分系の正三角形座標 cA = 0.3 cB = 0.5 cC = 0.2 cA + cB + cC = 1 cB cC A のモル分率: cA B のモル分率: cB C のモル分率: cC cA = 0.3 cB = 0.5 A のモル分率 B のモル分率 cC = 0.2 cB cA + cB + cC = 1 C のモル分率 0.6 の B と C の溶液に A を加えていく cC cA C のモル分率

3成分系の相平衡 酢酸-クロロホルム-水の3成分系の相図 てこの原理 タイライン: ef, e'f', e''f'' 1液相 タイラインが BC と平行にならないのは、 A酢酸が Bクロロホルムよりも C水に溶けやすいからである。 g' 2液相 g

もうひと少し頑張りましょう!!