人を軽しめない修行者 不軽菩薩の話 シナリオ台本
キャスト 祖母 伊賀上 貴生子 孫 斉尾 桜 お母さん 飯田七菜 こども1 松岡 莉桜 こども2 丸岡ひかり 不軽菩薩 名嶋 航世/吉岡琉空 祖母 伊賀上 貴生子 孫 斉尾 桜 お母さん 飯田七菜 こども1 松岡 莉桜 こども2 丸岡ひかり 不軽菩薩 名嶋 航世/吉岡琉空 病気の人 飯田 圭唯 働く男 生駒 遥 夫婦 丸岡こころ/名嶋淳人 こども3 藤田桃子 こども4 松本華蓮 こども5 飯田 鈴 修行者 田中清忍師 聴衆 出てきてた人 威音王仏 音声 ナレーター 松本 裕歌
おばあちゃんが御宝前で御看経をしている。さくらが帰ってきて、いったん御看経をやめて御宝前から声をかける。 ★ 祖母の御看経 ドアの開く音 音響 設定【小学生とおばあちゃん】 ■学校で(中学生は適宜小学生の内容に変更する) 女子中学生2年生。勉強もクラブもコツコツとまじめにするタイプ。バレー部のキャプテンになってチームのみんなとなかよく、もっとうまくなりたいと向上心がある。 一方で、一生懸命すればするほど一部の同級生や後輩から「しんどい練習したくない。」「そんなにがんばっても自分達が全国大会にでられるはずない。」「ひとりでがんばって生意気」といわれ、落ち込んでいる。ついてきてくれる友人もいるけど、自分じゃだめなのかなとあきらめ気味で家に帰ってきた。 ■家に帰ってきたさくらちゃん■ おばあちゃんが御宝前で御看経をしている。さくらが帰ってきて、いったん御看経をやめて御宝前から声をかける。 ■舞台には、お戒壇の前におばあちゃんが座っている。机があり、座布団を置いておく。 設定・効果・設備 ★祖母 ●●ちゃん、おかえり ★孫 ただいま、おばあちゃんまた南無妙法蓮華経してんの。 そうよ。●●が最近クラブがんばってるから、上手になりますようにってお願いしてるんよ そんなんしても無駄、意味ないし・・・ そんなことないよ、お願いしたらきっと仏様が助けてくれはるよ。●●も小さいとき、一緒にしてたでしょ。なんでそんなこというの ・・・・・。(無言。ちょっとさみしそうで泣きそう) 学校でなんかあったん みんなわかってくれへんねん。がんばってみんなで全国大会行きたいと思って練習しようっていっても、しんどい練習したくないっていうし、ひとりでがんばってあほみたいっていわれたりするし・・・、もういやや。 セリフ
音響 プロジェクターを降ろす? ■舞台転換 御宝前、机、座布団を下げる。 設定・効果・設備 ★祖母 そうか、それで●●はどうしたいの ★孫 みんなで楽しくしたい。試合に勝ちたい。 そうか、おばあちゃんもがんばってるのにうまくいかないことがあったわ。そんな時にいつも思い出す詩があるの。「雨にも負けず、雨にも負けず」っていう詩。知ってる? 知ってるよ。宮沢賢治の詩やろ そう、宮沢賢治さんもみんなが笑顔で幸せになるようにって、学校の先生をして、詩を読んだり、童話を教えたり、音楽を演奏したり、農家の人が困っていたら一緒に農業をしてがんばっていた人やったんよ。それで、自分を励ますために「雨にもまけず、風にもまけずって詩を書いてはったん。 へえ、そうなん。詩は知ってるけど、そんな人やってしらんかった。 そうなんよ。この「雨にもまけず」は、ひとりのお坊さんのことをうたってはったん。それで賢治さんも「そういう人に私はなりたい」って。 へえ、お坊さんなん? あんまり知らんわね。そのお坊さんの話聞く? うん、ちょっと興味あるし、聞かせて セリフ
音響 効果 ★ナレ むかしむかしのお話です。 あるところに、大変かわった修行者がいました。この修行者の名前を誰もしりません。 周りの修行者は、何日も食べ物を食べなかったり、山野中をずっと歩いてまわったり、何週間も変わったポーズをとったりして、修行をしていました。 でも、この名もない修行者は、違います。男の人でも女の人でも、貧しくてもお金持ちでも、誰を見ても、だれに会っても、その人に向かって合掌し、拝んでいました。 そして次のように語りかけるのです。 「わたしはあなたをお敬します。決してあなたをばかにしたり、嫌ったりしません。 あなたは、菩薩の修行をして、将来必ず仏様になる大切な方です。みんなのほんとうの幸せのために生きましょう。南無妙法蓮華経」 名もない修行者は誰に会っても、いつも相手に合掌して、いつもこの同じ言葉を繰り返していたのです。 セリフ
音響 ■舞台で女性が泣いている子どもをあやしている。 効果 ★お母さん よしよし、赤ちゃんおなかが減ったのかい。オムツをかえてあげようか。よしよし ★不軽菩薩 かわいい赤ちゃんですね。いない、いないばぁ どうもありがとうございます。泣き止んだみたいです。 いえ、とんでもない。 わたしはあなたをお敬します。決してあなたをばかにしたり、嫌ったりしません。 あなたは、菩薩の修行をして、将来必ず仏様になる大切な方です。みんなのほんとうの幸せのために生きましょう。南無妙法蓮華経 どうも、ありがとうございます。わたしは修行者の方に敬ってもらえる人間じゃありません。 いえ、私はあなたをお敬いいたします。あなたは菩薩の修行をして仏になる大切な方です。 南無妙法蓮華経 セリフ
音響 ■舞台に病気のおじいさん、もしくはおばあさんが座っている。 効果 ★おじいさん ああくるしい、さむい。目は見えなくなってきたし、足もいたい。力もはいらないし、寒くて動くこともできない。ああくるしい。 ★不軽菩薩 おじいさん、どうしましたか。お布施していただいた服をどうぞ。さあ、手を貸します。一緒におうちにいきましょう。 ああお坊さん、ありがとう。これは助かる。ありがとう。 いえとんでもない。 わたしはあなたをお敬します。決してあなたをばかにしたり、嫌ったりしません。 あなたは、菩薩の修行をして、将来必ず仏様になる大切な方です。みんなのほんとうの幸せのために生きましょう。南無妙法蓮華経 セリフ
音響 ■舞台で女の人が仕事をしている。 効果 ★女の人 今日は日差しがつよい。荷物も重いし疲れたな。 ★不軽菩薩(舞台に登場する) お手伝いしましょう。 おお助かるわ。ありがとう。 ★不軽菩薩 いえとんでもない。 わたしはあなたをお敬します。決してあなたをばかにしたり、嫌ったりしません。 あなたは、菩薩の修行をして、将来必ず仏様になる大切な方です。みんなのほんとうの幸せのために生きましょう。南無妙法蓮華経 ★女の人 嫌そうにどこかにいく。 なんだ、坊さん。なにいってんだ。仏になんてなれないし、なりたくもないわ。人をおだてて変わった坊さんや。あっち行ってくれ。 ありがとうございます。私はあなたをお敬いいたします。 セリフ
音響 ■舞台で夫婦がケンカをしている。 効果 ★奥さん 何よあんた。あんたが悪いんでしょ。 ★夫 なに言ってんだ。俺だって精一杯がんばってるんだ。お前が謝れ! ★不軽菩薩 そうケンカされずに。 なんだ、坊さん。関係ないからあっちいってくれ。 いえ、行きません。ケンカをしてお互い傷つけあっては悲しいではありませんか。 わたしはあなたをお敬します。決してあなたをばかにしたり、嫌ったりしません。 あなたは、菩薩の修行をして、将来必ず仏様になる大切な方です。みんなのほんとうの幸せのために生きましょう。南無妙法蓮華経 ★夫婦 舞台を下りていく。 おかしいんじゃないか。あっちいけ。 セリフ
音響 ■不軽菩薩は舞台に残ったままで、子供達が2~3人やってくる。 ■ 子ども3 馬鹿にして、石を投げる。 ■不軽菩薩 →石をぶつけられながら逃げる。 →逃げながら、叫ぶ 効果 ★子ども1 おい、あの坊さんまたいるぞ。 ★不軽菩薩 私はあなたをお敬いします。決してあなたをばかにしたり、嫌ったり、軽しめたりいたしません。あなたは菩薩の修行をして将来必ず仏様になる大切な方です。南無妙法蓮華経。 ★子ども2 なにいうてんねん。人を拝んでばっかりで何にもできひん坊さんや ★子ども3 変なやつ。何にもできひん、デクノボー。あっちいけ! 私はあなたたちをお敬いします!南無妙法蓮華経 セリフ
音響 ■別の修行者が町の人たちに向かって説法をしている。数人の人だかりで修行者が叫んでいる。 ■修行者1 棒でたたこうとする。 ■聴衆 罵倒しながら追い払うしぐさ ■不軽菩薩 一端遠くに逃げてから遠くから聴衆に向かって叫ぶ 効果 ★修行者1 みんなが平和に暮らすためには、隣の国をたおさなければなりません。みんなで隣の国をたおすためにいのりましょう!チャンチャンバラバラ、バッタバタ!チャンチャンバラバラバッタバタ! ★不軽菩薩 つまらない争いはやめましょう。 わたしはあなたをお敬します。決してあなたをばかにしたり、嫌ったりしません。 あなたは、菩薩の修行をして、将来必ず仏様になる大切な方です。みんなのほんとうの幸せのために生きましょう。南無妙法蓮華経 何をのんきなことを言ってる。そんなことだからダメなんだ! 私はあなたたちをお敬いいたします。あなたは菩薩の修行をして将来必ず仏様になる大切な方です。みんなの本当のしあわせのためにいきましょう。南無妙法蓮華経。 まだいうか。 ★聴衆 あっちいけ。デクノボー。 私はあなたたちをお敬いいたします。みんなの本当のしあわせのためにいきましょう。 南無妙法蓮華経。 セリフ
音響 ■舞台に、年老いた常不軽菩薩。年老いながらも修行をしている。 ■常不軽菩薩が道行く人に向かって言葉をかけている。 ■ひざまずき、四つんばいになり、座り込む常不軽菩薩 効果 ★ナレ 名もない修行者は来る日も来る日も、だれかれかまわず同じ言葉を語り続けました。 どんなことを言われても、どんなことをされても、馬鹿にされても、嫌われても、自分のことは気にもかけず、みんなのところに行って、「私はあなたをお敬いします。南無妙法蓮華経」と同じ言葉を語りました。 すると、いつしか周りの人も根負けをして、次第に相手にしなくなりました。けれども名もない修行者は、あきらめもせず、同じ言葉を繰り返していました。 そのうちみんなはこの修行者を、「いつも人を軽しめない菩薩」という意味で、「常不軽菩薩(じょうふきょうぼさつ」と呼ぶようになっていきました。 ★常不軽菩薩 わたしはあなたをお敬します。決してあなたをばかにしたり、嫌ったりしません。 あなたは、菩薩の修行をして、将来必ず仏様になる大切な方です。みんなのほんとうの幸せのために生きましょう。南無妙法蓮華経 私も年をとってしまった。でも、最後まで人々を敬う修行を続けよう。 あなたをお敬します。決してあなたをばかにしたり、嫌ったりしません。 ある日、いよいよ常不軽菩薩も命が終わる頃を迎えました。 すると、天から不軽菩薩の修行をご覧になっていた威音王仏という仏様が現れました。 ★威音王仏 常不軽菩薩よ。あなたの修行を讃えよう。あらゆる人を本当のしあわせに導くため、あなたの目、耳、鼻、口(舌)、体、心を清らかにしよう。 セリフ
音響 ■老人 驚く老人 ■男性 合掌しながら ■夫婦 思わず手を合わせて拝む 効果 ★ナレ そう告げると眩いばかりの光が、不軽菩薩を包み込みました。 (光の模した何かから不軽菩薩が現れる) 光の中から現れた不軽菩薩は、若々しく寿命を増し、さらに修行に励むことができました。それを見ていた人々は、その御利益に大変に驚きました。 ★老人 おおなんと尊いお姿 ★男性 あの不軽菩薩がこんな尊いお姿に ★夫婦 この様子を目の当たりにした人々は、ことごとく常不軽菩薩を見習って、みんなの本当のしあわせのために、南無妙法蓮華経を唱えて励むようになりました。 これは、昔々のお話。インドに生まれたブッダが、生まれ変わる前の、ずっとずっと前のお話です。 セリフ
音響 ■舞台 効果 ★孫 なあ、おばあちゃん、結局、不軽菩薩は幸せやったん? ★祖母 そうやね。最後は、みんなが、みんなの幸せのために生きてくれたから、それがうれしかったんじゃないかな。 そんなもんかな。ようわからんわ。 でも、人から馬鹿にされたり、無駄だと思っても、あなたが本当にみんなが笑顔で、幸せになると思ってすることなら、不軽菩薩みたいに簡単に諦めないでほしいわ。 いまの自分じゃだめだなと思っても、きっと誰かがみてくれてる。仏様はみてくれてるからね。 そうかぁ。できるかわからんわ。いろいろあるし・・・・・・ なあおばあちゃん、いつもお参りしてるの教えてくれる。 ええよ。一緒に御看経する? 御教歌 われ道にすすむ心を照らしみて 仏は力そへ給ふなり セリフ
音響 ■出演者全員で朗読 効果 雨(あめ)にもまけず 風(かぜ)にもまけず 雪(ゆき)にも夏(なつ)の暑(あつ)さにもまけぬ 丈夫(じょうぶ)なからだをもち慾(よく)はなく 決(けっ)して瞋(いか)らずいつもしづかにわらっている 一日(いちにち)に玄米四合(げんまいよんごう)と 味噌(みそ)と少(すこ)しの野菜(やさい)をたべ あらゆることをじぶんをかんじょうに入れずに よくみききし わかりそしてわすれず 野原(のはら)の松(まつ)の 林(はやし)の蔭(かげ)の 小(ちい)さな萓(かや)ぶきの小屋(こや)にいて 東(ひがし)に病気(びょうき)のこどもあれば 行(い)って看病(かんびょう)してやり 西(にし)につかれた母(はは)あれば 行(い)ってその稲(いね)の朿(たば)を負(お)ひ 南(みなみ)に死(し)にそうな人(ひと)あれば 行(い)ってこわがらなくてもいいといい 北(きた)にけんかやそしょうがあれば つまらないからやめろといい ひでりのときはなみだをながし さむさのなつはおろおろあるき みんなにでくのぼーとよばれほめられもせずくにもされず そういうものにわたしはなりたい 南無妙法蓮華経 セリフ