教育心理学 学習と認知プロセス 伊藤 崇 北海道大学大学院教育学研究院
1 「記憶すること」とは? 情報処理過程として見た人間 情報の 選択 計算・ 記憶 入力 実行 行動
2 「記憶すること」とは? リハーサル 情報の入力 行動 短期記憶 長期記憶 記憶のしくみ:保持できる時間の異なる2つの 貯蔵庫がある 少しの間 覚えている ずっと 覚えている
3 「記憶すること」とは? 短期記憶の役割と特徴 一時的に貯蔵し, 長期記憶へ 検索した記憶も 一時的に貯蔵 保持できるのは 数十秒 70 60 50 40 30 20 1 5 10 15 再生率(%) 系列位置 直後 30秒間の遅延 他の言葉で言い換えると? 自分が何かを理解したとどうやってわかる? 他人が何かを理解したとどうやってわかる? 理解はどのようにして起こる? 「理解」を理解することは,あんがい難しい
4 ZMURQMNOAPNLKAHEBROUD CATDOGPIGCOWLIONBIRDZOO 「記憶すること」とは? 短期記憶の容量:5~9個程度のチャンク (Magical Number 7±2) 意味のあるまとまり=チャンク(chunk) ZMURQMNOAPNLKAHEBROUD チャンクが短いと→ 覚えられる量が少ない 他の言葉で言い換えると? 自分が何かを理解したとどうやってわかる? 他人が何かを理解したとどうやってわかる? 理解はどのようにして起こる? 「理解」を理解することは,あんがい難しい CATDOGPIGCOWLIONBIRDZOO チャンクが長いと→ 覚えられる量が多い
5 「記憶すること」とは? エビングハウスの忘却曲線 エビングハウス Herman Ebbinghaus (1850-1909) 他の言葉で言い換えると? 自分が何かを理解したとどうやってわかる? 他人が何かを理解したとどうやってわかる? 理解はどのようにして起こる? 「理解」を理解することは,あんがい難しい
6 「記憶すること」とは? レミニセンス: 記憶した直後よりも,一定程度時間をおいたときの方が想起成績がよくなる現象 他の言葉で言い換えると? 自分が何かを理解したとどうやってわかる? 他人が何かを理解したとどうやってわかる? 理解はどのようにして起こる? 「理解」を理解することは,あんがい難しい
7 知識の構造とはたらき 手続き的記憶 宣言的記憶 意味記憶 エピソード記憶 貯蔵される内容による長期記憶の分類 貯蔵される内容による長期記憶の分類 手続き的記憶 身体技能(例:洗濯機の使い方) 宣言的記憶 言語やイメージ 言語,概念,事実関係 (例:赤ちゃんポストとは) 意味記憶 エピソード記憶 ある時,ある場所の出来事
8 知識の構造とはたらき 知識構造=スキーマ 私たちは,何かを経験する際に, あらかじめもっている知識構造を通して理解する (schema) 私たちは,何かを経験する際に, あらかじめもっている知識構造を通して理解する 知識構造=スキーマ (schema) 何かを新しく知ること=知識構造を組み替えること
ピアジェの知能発達理論 9 形式的操作期 具体的操作期 前操作期 感覚 運動期 ピアジェによる知能の発達段階論 誕生 2歳 6-7歳 11-12歳 ピアジェによる知能の発達段階論 ※あくまでも知能の発達を説明するモデルであり, 他の精神機能(例えば,情動や社会性)を説明する ものではないことに注意
ピアジェの知能発達理論 10 自己中心性 脱中心化 各段階で獲得される主な知的能力 感覚運動期 自分の見えに しばられた理解 前操作期 物の永続性・ 遅滞模倣 自分の見えに しばられた理解 前操作期 象徴遊び・ 直感的思考 (保存概念は未成立) 脱中心化 具体的操作期 保存課題の達成・ 理由のある分類 自分の見えから 自由な理解 形式的操作期 仮説演繹的推論・ 組合わせによる推論 ヴォークレール,J. (2012). 乳幼児の発達 新曜社
知識の構造とはたらき 11 小学生は図形の「高さ」を正しく理解しているか? 日常経験での「高さ」 幾何学概念の「高さ」 小学生は図形の「高さ」を正しく理解しているか? 日常経験での「高さ」 幾何学概念の「高さ」 (高垣マユミ (2000).小学生は高さをどのようにとらえているのか : 日常的経験から得た 高さ」と「平面図形における三角形の高さ」との関連 発達心理学研究,11,112-121.)
知識の構造とはたらき 12 小学生は図形の「高さ」を正しく理解しているか? 新たに得た知識が既存のスキーマに取り込まれる可能性 小学生は図形の「高さ」を正しく理解しているか? 新たに得た知識が既存のスキーマに取り込まれる可能性 学年ごとの割合(%) (高垣マユミ (2000).小学生は高さをどのようにとらえているのか : 日常的経験から得た 高さ」と「平面図形における三角形の高さ」との関連 発達心理学研究,11,112-121.)
まとめ 13 ●「記憶すること」をどのように説明できるか? →短期記憶と長期記憶という2つの貯蔵庫がある →短期記憶の特徴もおさえておこう →短期記憶と長期記憶という2つの貯蔵庫がある →短期記憶の特徴もおさえておこう →長期記憶におさめられた記憶が知識である ●学習において知識はどのようにはたらくのか? →知識は構造化されている (スキーマ) →新しい事柄が既存の構造に組み込まれる=学習 ピアジェの知能発達論を背景とした考え方 →既存の構造が新しい事柄の学習を邪魔することも 他の言葉で言い換えると? 自分が何かを理解したとどうやってわかる? 他人が何かを理解したとどうやってわかる? 理解はどのようにして起こる? 「理解」を理解することは,あんがい難しい