「岩手県周産期医療情報システム(いーはとーぶ)による地域連携 ー東日本大震災の経験を踏まえてー」

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「岩手県周産期医療情報システム(いーはとーぶ)による地域連携 ー東日本大震災の経験を踏まえてー」 「産婦人科医療における格差是正に向けて」 -各地域からの報告- 「岩手県周産期医療情報システム(いーはとーぶ)による地域連携 ー東日本大震災の経験を踏まえてー」 岩手県は北海道に次ぐ面積を有し、四国4県と同等の面積である。山岳地形・北国気候のため峠道が多く、冬は道路が凍結するため、さらに交通アクセスが悪くなるため医療の地域化・ネットワーク化が非常に困難な地域である。また、産婦人科医師不足のため、早くも平成14年から分娩取り扱い医療機関の減少が始まった。県内9病院の産婦人科休診により、妊婦が通う周産期医療機関までは、はるか遠く4輪駆動車で1時間~2時間の通院を余儀なくされている。  岩手県のような地域では、病院、診療所、市町村、県がIT技術を活用した妊婦情報および胎児情報を共有・連携することが非常に有効である。  現在、岩手県ではインターネットを利用した岩手県周産期医療情報ネットワークシステム“いーはとーぶ”を構築している。構築中のネットワークシステムは総務省のU-japan大賞を受賞した。そこで本稿では新しい情報ネットワークシステムについて解説する。 岩手県立大船渡病院産婦人科 小笠原敏浩

岩手県の風土・気候 厳しい地形・気候条件 1)距離の壁(面積が広大) 2)地形の壁(山岳地形) 3)気候の壁(北国気候)

岩手県の出産施設 常勤医師 1名体制 集約化・拠点化で12病院で出産可能 診療所は26診療所で出産可能 院内助産システム 県立大船渡病院より 県立二戸病院 県立久慈病院 診療所1 診療所1 集約化・拠点化で12病院で出産可能 診療所は26診療所で出産可能 診療所10 県立中央病院 診療所2 岩手医科大学 盛岡赤十字病院 県立宮古病院 診療所1 北上済生会病院 院内助産システム 県立大船渡病院より 医師1名派遣体制 県立中部病院 診療所3 県立釜石病院 診療所3 県立大船渡病院 気仙地域には 診療所が0 県立磐井病院 一関病院

岩手県の出産可能26診療所医師の高齢化

岩手県の現状 面積が広大で、医師1人が請け負う地域が広い 沿岸地域は総合周産期センターまで陸路で2時間以上要する 北国気候・山岳地形で冬は更にアクセスが悪い 開業医の高齢化が著しく、新規開業がない 気仙地区(大船渡・陸前高田)では開業医が0で県立大船渡病院1施設である 病院の集約化・拠点化が進み、広い県土で12病院となり、ネットワーク化(いーはとーぶシステム)が進んだ

産婦人科医療施設を結ぶネットワーク 2009年4月から運用

⑤統計情報 ⑥情報提供 ⑦指導依頼 ⑧受診券請求 高度医療 いーはとーぶ システム 連携 母子健康手帳 連携 総合周産期母子医療センター 市町村 周産期医療情報センター ①妊娠届出情報 いーはとーぶ  システム ⑨妊婦台帳管理 周産期サーバー モバイルCTGサーバー ⑩受診券管理  連携 支援 参加同意書 説明・交付 妊娠届出 地域周産期母子医療センター ②健診情報 搬送・紹介情報 ③分娩情報 母子健康手帳 「いーはとーぶ」は、岩手県内の市町村や周産期医療機関をセキュリティの確保された情報ネットワークで結び、妊娠届出から妊婦健診・分娩・産後までの一連の経過を複数の医療機関で共有することによって、妊婦や胎児の情報が迅速に伝達され、ハイリスク妊婦や新生児のスムーズな紹介・搬送が可能である。また、市町村と妊婦健診情報を共有することで、リアルタイムに情報交換ができ、産前産後の必要時にスピーディな支援、相談、訪問が実現できる。特に産後育児支援、メンタルヘルスケアには早期の支援が不可欠であるため、医療機関と市町村がリアルタイムに情報共有することは効果的である。  このように「いーはとーぶ」は、安心安全な妊娠・出産・育児を支援するための新しい周産期医療情報システムといえる。 また、妊婦がこのシステムへの登録をするには妊婦の同意と同意書が必要である。 ④退院情報 連携 ⑤統計情報 ⑥情報提供 病院・診療所・助産所 ⑦指導依頼 ⑧受診券請求

周産期医療情報システム“いーはとーぶ” ブラウザのトップ画面である。IDとパスワードでログインする。」

母体搬送入力画面  第22回長野県周産期研究会

搬送受入れのメールが届く  第22回長野県周産期研究会

搬送受入れのメールが届く  第22回長野県周産期研究会

携帯電話でも受信できる  第22回長野県周産期研究会

周産期医療情報システム“いーはとーぶ” 母体・胎児及び新生児紹介搬送情報のネットワーク化 母体・胎児情報の施設間共有によるスムーズな救急搬送・紹介 母体・胎児及び新生児情報のデータベース化

メガデータベースが構築できる

インターネットを利用している 医療機関間で医療情報を共有 医療機関と市町村で情報を共有 小児科と情報を共有 岩手県の周産期医療情報ネットワークシステムは、インターネットでネットワークを構築しているので、パソコンとインターネット接続環境があれば県内(全国)どこでもシステムにアクセスが可能である。病院、診療所は勿論、市町村、将来的には、救急隊、助産院、妊婦自身も必要な情報にいつでもアクセスすることができる。また、救急車やヘリコプターなど緊急搬送中の移動体からも情報共有が可能であり、緊急時の迅速な情報伝達にも有効である。  ネットワークのセキュリティの確保は、VPNサービスを使用したプライベートネットワークにて実現されており、平成22年1月22日のIT戦略本部医療評価委員会でも、インターネットを利用した情報ネットワークシステムへの接続を推奨している。

いーはとーぶのもう1つの側面 医療機関と市町村を繋ぐ 岩手県の周産期医療情報ネットワークシステムは、インターネットでネットワークを構築しているので、パソコンとインターネット接続環境があれば県内(全国)どこでもシステムにアクセスが可能である。病院、診療所は勿論、市町村、将来的には、救急隊、助産院、妊婦自身も必要な情報にいつでもアクセスすることができる。また、救急車やヘリコプターなど緊急搬送中の移動体からも情報共有が可能であり、緊急時の迅速な情報伝達にも有効である。  ネットワークのセキュリティの確保は、VPNサービスを使用したプライベートネットワークにて実現されており、平成22年1月22日のIT戦略本部医療評価委員会でも、インターネットを利用した情報ネットワークシステムへの接続を推奨している。

県立大船渡病院を軸とした病院-市町村連携 周産期医療情報センター 大船渡市 いーはとーぶ  システム 周産期サーバー 陸前高田市 住田町

妊娠届出・妊婦健診・出産・産褥後の情報共有 産婦人科施設 妊婦訪問指導 妊婦健診 母子手帳交付 妊婦一般健康診査受診票 健診情報 検査情報     市町村保健推進課 異常の把握 DB いーはとーぶシステム

病院と市町村保健福祉課との連携 いーはとーぶを利用した 助産師-保健師連携 更に密な連携をすれば 妊婦見守りシステムができる

産後メンタルヘルス・新生児訪問 ① ② ①´ 妊婦 (退院) 医療機関 産後 EPDS 出生届 新生児の訪問指導 ハイリスク通知 市町村長 (戸籍法) 新生児の訪問指導 (第11条) ハイリスク通知 (EPDS9点以上) 市町村長 DB 岩手県周産期サーバ

“いーはとーぶ”での大船渡病院-陸前高田市の連携

“いーはとぶ”で繋がる 助産師ー保健師連携 地域で妊婦を見守る

新周産期医療情報システム“いーはとーぶ”加入状況 県立久慈病院 県立二戸病院 分娩施設(100%)  40施設/40施設 市町村(66%) 23/35市町村 岩手医科大学 盛岡赤十字病院 県立中央病院 県立宮古病院 現在、登録医療施設は40施設(分娩取り扱い施設40施設の100%)で登録市町村23市町村(34市町村の66%)である 県立中部病院 県立釜石病院 県立磐井病院 県立大船渡病院 一関病院

平成三陸大津波 25

いーはとーぶ”の奇跡の概略 陸前高田市は大地震発生から約40分で街が津波になめ尽くされ、市役所の機能もすべて失った。 市役所にある住民情報や妊婦情報もすべて一瞬で失ってしまった。

いーはとーぶ”の奇跡の概略 県立大船渡病院の助産師・医療クラーク・陸前高田市の保健師が協力して岩手県周産期医療情報システム“いーはとーぶ”に入力してきた妊婦情報のデータが盛岡市にあるサーバーに残っていた。

いーはとーぶ”の奇跡の概略 この貴重な妊婦データを陸前高田市に提供できた。 これにより陸前高田市は大津波で失われた妊婦情報を得ることができ、妊婦の安否状況・避難状況の把握や保健指導にも貢献できた。

震災時にも役立つ“いーはとーぶ” 県立大船渡病院を中心に妊婦見守りシステム“いーはとーぶ”を助産師・保健師連携で継続入力していたことや情報サーバーが震災地外(盛岡市)においてあったことが功を奏し、妊婦見守りシステム“いーはとーぶ”が災害に強いシステムであることが実証された。

検索された陸前高田市妊婦一覧 今回の東日本大震災で壊滅状態となった陸前高田市は市役所のデーターもすべてなくなってしまった。そこで、このいーはとーぶシステムに残っていた妊婦データを陸前高田市に提供した。 今回の震災でもいーはとーぶシステムの重要性が示された。

出力された妊婦情報

まとめ 岩手医科大学・岩手県産婦人科医会・岩手県が協力して岩手県周産期医療情報システム“い-はと-ぶ”を構築した 2009年4月から岩手県周産期医療情報システム“い-はと-ぶ”を運用している 岩手県の産婦人科医療施設は100%登録、市町村は66%登録で運用している 総合周産期母子医療センターを軸に救急搬送・紹介に効率よく利用してる 岩手県全体の周産期データベースが構築される 平成三陸大津波で市役所機能を失った陸前高田市に岩手県周産期医療情報システム“い-はと-ぶ”の妊婦情報を提供でき、妊婦の安否状況・避難状況の把握や保健指導にも貢献できた 2012年から産婦人科部門電子カルテとの連携が計画されている