経営学特講 第3章 組織構造の構築 法政大学教授 洞口治夫
第3章 組織構造の構築 ①意思決定 ②経営管理 ③組織構造 ④職能別組織 ⑤事業部制組織 ⑥マトリックス組織 ⑦ネットワーク組織 第3章 組織構造の構築 ①意思決定 ②経営管理 ③組織構造 ④職能別組織 ⑤事業部制組織 ⑥マトリックス組織 ⑦ネットワーク組織 ⑧日本的経営 ⑨分化と統合 ⑩コンフリクト
この講義のねらい 企業の管理は、どのような組織のあり方でささえられているか、を理解する。 企業の成長につれて、組織は巨大化し、専門化し、複雑になるが、それを効率よく把握するための工夫は何か、を理解する。
①意思決定 組織の機能=意思決定を行うときに、間違いを少なくする。 近代組織論、バーナードとサイモンには、意思決定がいかに行われるか、という問題意識がある。
バーナードの理論 バーナード(Chester I. Barnard) The Functions of Executive (『経営者の役割』)1938. 誘因と貢献のバランス 公式組織の定義 協働意欲 共通目的 コミュニケーション
サイモンの提起した概念 サイモン (Harbert A. Simon) Administrative Behavior, (『経営行動』)、1945. 「限定された合理性」 満足化基準 情報処理をする組織 ⇔知識創造をする組織
ハーバート・A・サイモン カーネギー・メロン大学 意思決定 人工知能 企業規模分布
②経営管理 経営者=管理者の職務 意思決定をいかに行うか。 不確実な将来に対して、新たな事業計画を立案する。 将来の不確実性を「知識」によって削減する。(例)天気予報
③組織構造 法的な重要性:2006年5月・改正会社法 実務的な重要性:誰に、何をしてもらうか。製造部・鮮魚部・会計課・営業部・財務部 組織内の利益配分:事業部制、カンパニー制、持ち株会社
④職能別組織
⑤事業部制組織
⑤事業部制組織+地域別組織=⑥マトリックス組織
⑥マトリックス組織 製品 地域 製品A 製品B 製品C ・・・ 北米 アジア 欧州
マトリックス組織の問題点 報告義務の二重性 意思決定の遅さ 利害の相反
⑦ネットワーク組織 公式組織にこだわらずに、人と人との関係を重視していく。 情報交換のために組織をフラットにする。
ネットワークをつくる
⑧日本的経営 アベグレン 三種の神器 1950年代後半 年功序列賃金・年功昇進⇔能率給 終身雇用 ⇔転職と起業 企業内組合 ⇔産業別組合
1980年代の日本的経営 多能工化 ジョブローテーション QCサークル 提案制度 昇進による競争
暗黙知=熟練への着眼 ポランニー『暗黙知の次元』 言葉にできること以上のことを知っている。 形式知:言葉にして表現された知識 (プログラミング) 暗黙知:言葉にして表現されない知識 (人間の顔の認識)
野中郁次郎・竹内弘高 知識の変換モード 出力 暗黙知 形式知 暗黙知 形式知 入 力 共同化 Socialization 表出化 出力 暗黙知 形式知 暗黙知 形式知 共同化 Socialization 表出化 Externalization (新製品開発) 内面化 Internalization 連結化 Combination 入 力
知識スパイラル 共有化された暗黙知を形式知にする →組織全体で使う 対話 形式知の結合 場作り 共同化 Socialization 表出化 Externalization 内面化 Internalization 連結化 Combination 行動による学習
⑨分化と統合 職能別→事業部制→マトリックス組織、という流れは、組織が分化して専門化していく過程と捉えることができる。 経営者の立場からは、これらを統合して理解する必要がある。
コンティンジェンシー理論 環境適合理論、状況適応理論 企業組織は、企業のおかれた技術的環境、市場環境によって異なる。 ローレンス=ローシュによる「分化と統合」
⑩コンフリクト ある部門では有利なことが、別の部門では不利になる。 例。販売は一日でもはやく製品が欲しい。工場では、生産計画どおりに製品を製造したい。 例。営業部門は接待費が欲しい。経理部門では、不透明な支出を許したくない。
部分最適と全体最適 コンフリクトを解消するには、企業を全体として理解して、各部門にとっての有利・不利を優先させない。 プロジェクト・グループによって、部門間を超えた情報交換を行い、組織の持つ知識を出し合う。 集団の持つ知識は、サイバーネットワークに蓄えることもできる。ネットにQ&Aを蓄える。