第6章 子どもを愛すること ー感情と愛着の発達ー

Slides:



Advertisements
Similar presentations
第4章 何のための評価? 道案内 (4) 何のための評価? ♢なぜ教育心理学を勉強するか? (0) イントロダクション ♢効果的な授業をするために (1) 記憶のしくみを知る (2) 学習のしくみを知る (3) 「やる気」の心理学 ♢生徒を正しく評価するために ♢生徒の心を理解するために (5)
Advertisements

第8章 心の病気 生徒の心の問題に対処するために (1) 道案内  なぜ教育心理学を学ぶのか 1  効果的な授業をするために 2記憶 3学習 4動機づけ  生徒を正しく評価するために 5評価  生徒の心を理解するために 6性格 7性格検査  生徒の心の問題に対処するために 9治療 10.
第2回 住育とは 監修 一般社団法人住まい教育推進協会. Copyright 2015 一般社団法人住まい教育推進協会 Contents 2 住育とは … Chapter 5 子どもを育てる.
子どもの成長と社会 「子どもの社会力」にみる子ども への影響と変化 保園 裕騎.
校内研修会資料 キャリア教育の理解と実践に向けて 児童生徒の自立を支援する 「みやぎキャリア教育プラン」 校内研修会資料 キャリア教育の理解と実践に向けて 児童生徒の自立を支援する 「みやぎキャリア教育プラン」 宮城県教育研修センター 平成 19 年度キャリア教育研究グループ.
1 1.「環境」という言葉の意味 と、「環境を通しての保育と は?」 瀧川 光治. 2 1.「環境」という言葉  「環境」という言葉がつく、 3文字、4文字、5文字 の言葉を考えてみよう。
第2章 なぜ発達心理学を学ぶのか? 道案内 1 準備 (0) 授業を始める前に * (1) 発達心理学とはどんな学問か? 2 知覚の発達 (3) 子供に世界はどう見えるか? 3 認知の発達 (4) 子どもはものごとをどう理解するか (5) 子どもは心をどう理解するか 4 感情の発達 (6) 子どもに愛情を注ぐこと.
第 2 章 子どもの成長・発達と看護 3. 幼児期の子どもの成長・発達と看護( 2 ) 学習目標 1 .幼児の睡眠と規則正しい生活の必要性を理解する. 2 .幼児の健康維持に対する取り組みとしての清潔行動確 立に向けた援助を理解する. 3 .幼児にとっての遊びの意義と発達を促すために必要な 遊びへの援助を理解する.
第 10 回:動物も考える? 学習心理学と比較認知心理学. 1 動物は「思考」するか? 大学生 107 人に聞きました ガは光があるとその方向に向かって飛ぶ 考えてる 考えてない その他
第5章 子どもは心をどのように 理解するか? 道案内 (5) 子供は人の心をどう認識するか 1 準備 (0) 授業を始める前に (1) 発達心理学とはどんな学問か? (2) なぜ発達心理学を学ぶのか? 2 知覚の発達 (3) 子供に世界はどう見えるか 3 認知の発達 (4) 子供はものごとをどう認識するか.
第4章 「やる気」の心理学.
平成19年度長崎県国語力向上プラン地区別研修会
mukogawa-u.ac.jp/~kitaguti/
第5章 子どもは心をどのように理解するか?.
2007年6月15日(金) 瀧川 光治(樟蔭東女子短期大学)
8 人間関係の中で育つ −社会性の発達−.
教育心理学 言語能力の発達 伊藤 崇 北海道大学大学院教育学研究院.
第3章 「やる気」の心理学.
心理学 底知れない複雑な分野 12年3組3番  原 優子.
第10章 発達上の心の問題.
第2章 記憶のしくみを知る 効果的な授業をするために(1)
      特別支援学校 高等部学習指導要領 聴覚障害教育について.
執筆者:市川伸一 授業者:寺尾 敦 atsushi [at] si.aoyama.ac.jp
心理学測定法 水曜2限 担当:小平英治.
自律学習と動機づけ 教育心理学の観点から 2011/2/19 上淵 寿 (東京学芸大学).
平和研究Ⅰ 第2回 積極的平和と消極的平和 2007年4月18日 広島平和研究所 水本和実.
情報は人の行為に どのような影響を与えるか
対人コミュニケーション 人間 人間 二者間あるいは少人数間の 情報交換の過程 深田 1998.
第9章 自己意識と発達課題.
ちょこっと 視点を変えてみよう!.
第10章 青年期の問題と心理学.
子どもたちが発達段階に応じて獲得することが望ましい事柄
第7章 性格とは何か?.
神栖市家庭教育学級運営委員研修会 「思春期講座」
学級崩壊を考える 学級の様子は変わったのか.
大学生におけるSNSの利用と社会的心理・対人関係との 関連について
塩竈市子ども・子育て支援事業計画 塩竈市子ども・子育て支援事業計画(案) のびのび塩竈っ子プラン ・・・削除 ・・・追加 資料 2
注意と眼球運動.
第4章 子供はものごとを どう理解するか?.
第2章 なぜ発達心理学を学ぶのか?.
第3章 学習のしくみを知る 効果的な授業をするために(2).
神戸大学医学部附属病院 リエゾン精神専門看護師 古城門 靖子
心理学 武庫川女子大学文学部教育学科 北口勝也 http: //www. mukogawa-u.ac.jp/~kitaguti.
軽度発達障害の理解 中枢神経系における脳の機能障害である。 → 脳の発達の遅れ
読書課題 R. Penroseの『皇帝の新しい心』 の第1章 「コンピュータは心をもちうるか」
受講日:   月  日 暗黙知の見える化ワーク 第3回 コミュニケーションと表情.
ピアジェの発生的認識論 ジャン・ピアジェ( ) 人間の適応 日本広く普及する 認知の発達過程の理論
子どもが変わる 親・地域・教師の接し方 聖徳大学 児童学部  鈴木 由美.
執筆者:伊東 昌子 授業者:寺尾 敦 atsushi [at] si.aoyama.ac.jp
(相互に利益を得、円満な関係で良い結果を得る)の関係です。
人の心をつかむ3つのコツ ~子どもたちとのふれあい~
子育て支援だより 大人の期待 子どもの出来ること 嫩幼稚園 ①子どもの成長の過程を知ること 平成28年8月23日
心理科学・保健医療行動科学の視点に基づく
性差と、性別(=ジェンダー)の相違とその調べ方
理論研究:言語文化研究 担当:細川英雄.
理論研究:言語文化研究 担当:細川英雄.
フロイト あるいは自我心理学を通して 妙木 浩之
第6章 性格とは何か?.
【研究題目】 視線不安からの脱却に 影響を与える要因について
理論研究:言語文化研究 担当:細川英雄.
子どもの性格は生まれつき? ー性格の決定因と発達ー
第5章 性格とは何か?.
2011 行動分析学特論 (1)行動分析学と 対人援助(学)
図15-1 教師になる人が学ぶべき知識 子どもについての知識 教授方法についての知識 教材内容についての知識.
文脈 テクノロジに関する知識 教科内容に関する知識 教育学 的知識
感覚運動期(誕生~2歳) 第1段階 反射の修正(出生~約1ヶ月) 第2段階 第1次循環反応(約1ヶ月~4ヶ月)
浜松医科大学附属病院・磐田市立総合病院 チャイルド・ライフ・スペシャリスト 山田 絵莉子
学級崩壊を考える 学級の様子は変わったのか.
Presentation transcript:

第6章 子どもを愛すること ー感情と愛着の発達ー 第6章 子どもを愛すること ー感情と愛着の発達ー

道案内 1 準備 (0) 授業を始める前に * (1) 発達心理学とはどんな学問か? (2) なぜ発達心理学を学ぶのか? 1 準備 (0) 授業を始める前に       * (1) 発達心理学とはどんな学問か? (2) なぜ発達心理学を学ぶのか? 2 知覚の発達 (3) 子どもに世界はどう見えるか? 3 認知の発達 (4) 子どもはものごとをどう理解するか (5) 子どもは心をどう理解するか 4 感情の発達 5 性格の発達 (7) 子どもの性格は生まれつき? 6 社会性の発達 (8) 人間関係の中で育つ (9) 自己意識と発達課題 7 発達上の問題 (10) 子どもに見られる心の問題 8 まとめ (11) まとめ        * (6) 子どもを愛すること

メインメッセージ6 子どもの信頼に答えることが 養育者の責任

1 感情の分化

思い出そう! 発達の一般的方向 (Welner) 未分化→分化

新生児の感情分化 0 快 不快 興味 1 喜び 驚き 悲しみ 2 月齢 3 怒り 4 恐れ 5 6 嫌悪

赤ちゃんの微笑み 生理的微笑(0—2ヵ月)  社会的微笑(2ヶ月以降)

不快感情の分化 悲しみ 自分にとって大切なものが失われた時 2ヶ月頃 あやすのをやめると「悲しげな表情」 受動的欲求

自分がやろうとしていることが妨害された時 不快感情の分化 怒り 自分がやろうとしていることが妨害された時 4ヶ月頃 手を伸ばしてモノをつかめるようになる その頃… 能動的欲求

自分に危険や害をもたらす刺激に出会った時 不快感情の分化 恐れ(不安) 自分に危険や害をもたらす刺激に出会った時 7,8ヶ月頃 人見知り その頃… 愛着の形成

愛着の芽ばえ 人見知り (8ヶ月不安)

1歳以降の感情分化 表象の出現 自己意識 自分が他者からどのように見られているか 自分が他者から何を期待されているか

1歳以降の感情分化 0.5 喜び 驚き 嫌悪 恐れ 怒り 悲しみ 1歳 表象の出現 照れ 2歳 誇り 恥 嫉妬 罪悪感 3歳

サブメッセージ 6.1 認知機能の発達が自己意識を 生み出し、多彩な感情を育てる

感情のコミュニケーション 情報の送り手 喜び 社会的微笑 養育行動のリリーサー

感情のコミュニケーション 情報の送り手 怒り 能動的欲求の表現

感情のコミュニケーション 情報の受け手 社会的参照 養育者の表情から安全/危険を知る

お母さんの表情 視覚的断崖 社会的参照 母親の笑顔 Go! 母親の不安顔 Don’t go

感情のコミュニケーション 情報の交換 感情を表現した時に、言葉でなぞる

サブメッセージ 6.2 乳児期の感情は親子の 信頼関係を作り上げる ためにある

2 愛着理論

Harlow (1961) の実験 アカゲザルの代理母実験 [ビデオ6.1]

Harlow (1961) の実験 実験結果

Harlow (1961) の実験 アカゲザルの代理母 愛着対象に必要なもの 温もり、柔らかさ

(maternal deprivation) Harlow (1961) の実験 母性剥奪実験 (maternal deprivation) 母性剥奪の結果 社会性の欠如

Bowlby (1969) 愛着(アタッチメント)理論 母親と子どもを接近させるように働く、 心理的・情緒的な結びつき

愛着の発達 第1期 (0ー2,3ヶ月) 前愛着 誰にでも視線を向けたり手を伸ばす

愛着の発達 第2期 (3ー12ヶ月) 愛着形成 身近な人にのみ 親しみを示す

環境探索の安全基地 離れると「イヤ」と意思表示 愛着の発達 第3期 (1ー2,3歳) 明確な愛着 環境探索の安全基地 離れると「イヤ」と意思表示

愛着の発達 第4期(3歳以降) 目標修正的 協調関係 養育者の目標、感情、視点の理解

ストレンジ シチュエーション(Ainsworth & Bell, 1970) 愛着の型 ストレンジ シチュエーション(Ainsworth & Bell, 1970)

ストレンジシチュエーション

ストレンジシチュエーション 母親に対して 見知らぬ人に対して 安全基地。不在時には不安 母親がいる時に、積極的な働きかけ 不在時にも泣かない、復帰にも喜ばない 無関心 不在時には激しく抵抗。復帰には怒り 激しい感情的反応 愛着安定型 拒否型 矛盾型

サブメッセージ6.3 子どもは母親を安全基地にして 様々なことを学ぶ

ホスピタリズム (施設病) 4 愛着が形成できない不幸 4 愛着が形成できない不幸 ホスピタリズム (施設病) 1950年代の未整備な孤児院などで見られた、子ども達の運動、知能、言語の遅れ、無感動などの症状

何もしない虐待 ネグレクト (育児放棄) 心と身体の成長に深刻な悪影響を与える  [ビデオ6.2]

サブメッセージ6.4 養育者に対する基本的信頼が あってはじめて人は成長する

メインメッセージ6 子どもの信頼に答えることが 養育者の責任