5章-6章の復習 ●外界と系(孤立系、閉じた系、開いた系) ●熱化学反応(発熱反応、吸熱反応) ●熱力学第一法則    ●エンタルピー ●水素結合

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物理化学 福井工業大学 工学部 環境生命化学科 原 道寛. 物理化学: 1 章原子の内部 (メニュー) 1-1. 光の性質と原子のスペクトル 1-2. ボーアの水素原子モデル 1-3. 電子の二重性:波動力学 1-4. 水素原子の構造 1-5. 多電子原子の構造 1-6.
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熱流体力学 第4章 番外編 熱力学的系 状態方程式 熱力学で扱う偏微分公式 熱力学の第一法則(工学系と物理系)
1 重力 力に従って落下 → E P 減少 力に逆らって上昇 → E P 増加 落下・上昇にともなう重力ポテンシャルエネルギー 変化 P32 図2-5 力が大きいほど E P の 増減は大きくなる. ポテンシャルエネルギーと力の関係.
1 今後の予定 8 日目 11 月 17 日(金) 1 回目口頭報告課題答あわせ, 第 5 章 9 日目 12 月 1 日(金) 第 5 章の続き,第 6 章 10 日目 12 月 8 日(金) 第 6 章の続き 11 日目 12 月 15 日(金), 16 日(土) 2 回目口頭報告 12 日目 12.
今後の予定 7日目 11月 4日 口頭報告レポート押印 前回押印したレポートの回収 口頭報告の進め方についての説明 講義(4章),班で討論
FUT 原 道寛 名列___ 氏名_______
4・6 相境界の位置 ◎ 2相が平衡: 化学ポテンシャルが等しい     ⇒ 2相が共存できる圧力と温度を精密に規定     ・相 α と β が平衡
相の安定性と相転移 ◎ 相図の特徴を熱力学的考察から説明 ◎ 以下の考察
1.ボイルの法則・シャルルの法則 2.ボイル・シャルルの法則 3.気体の状態方程式・実在気体
◎ 本章  化学ポテンシャルという概念の導入   ・部分モル量という種類の性質の一つ   ・混合物の物性を記述するために,化学ポテンシャルがどのように使われるか   基本原理        平衡では,ある化学種の化学ポテンシャルはどの相でも同じ ◎ 化学  互いに反応できるものも含めて,混合物を扱う.
医薬品素材学 I 1 物理量と単位 2 気体の性質 1-1 物理量と単位 1-2 SI 誘導単位の成り立ち 1-3 エネルギーの単位
電磁気学C Electromagnetics C 7/27講義分 点電荷による電磁波の放射 山田 博仁.
医薬品素材学 I 3 熱力学 3-1 エネルギー 3-2 熱化学 3-3 エントロピー 3-4 ギブズエネルギー 平成28年5月13日.
医薬品素材学 Ⅰ 相平衡と相律 (1) 1成分系の相平衡 相律 クラペイロン・クラウジウスの式 (2) 2成分系の相平衡 液相―気相平衡
平成18年度 構造有機化学 講義スライド 復習: 混成軌道 軌道のs性とその応用 奥野 恒久.
化学反応式 化学反応:ある物質が別の物質に変化 反応物 → 生成物 例:酸素と水素が反応して水ができる 反応物:酸素と水素 生成物:水
物理化学(メニュー) 0-1. 有効数字 0-2. 物理量と単位 0-3. 原子と原子量 0-4. 元素の周期表 0-5.
共有結合(covalent bond), 共有結合結晶 とカルコゲン、窒素、リン、ヒ素、炭素、ケイ素、ボロンなどの非金属元素
x: 質量モル濃度を mol kg-1 単位で   表した時の数値部分 上の式は実験(近似)式であり、 ½乗に物理的な意味はない。
金箔にα線を照射して 通過するα線の軌跡を調べた ラザフォードの実験 ほとんどのα線は通過 小さい確率ながら跳ね返ったり、
医薬品素材学 I 4 物質の状態 4-1 溶液の蒸気圧 4-2 溶液の束一的性質 平成28年5月20日.
5章 物質の三態(気体・液体・固体)と気体の法則 2回
アンモニア(アミン類) 配位結合:結合を形成する2つの原子の一方からのみ結合電子が分子軌道に提供される化学結合。
福井工業大学 工学部 環境生命化学科 原 道寛 名列____ 氏名________
一成分、二相共存系での平衡 一成分 固液共存系    氷-水.
3章 イオン結合とイオン結晶 3回目(最終) まず 復習 (2R+2r)/2R=3
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セラミックス 第4回目 5月 7日(水)  担当教員:永山 勝久.
基礎無機化学 期末試験の説明と重要点リスト
物理化学III F 原道寛.
◎ 本章  化学ポテンシャルという概念の導入   ・部分モル量という種類の性質の一つ   ・混合物の物性を記述するために,化学ポテンシャルがどのように使われるか   基本原理        平衡では,ある化学種の化学ポテンシャルはどの相でも同じ ◎ 化学  互いに反応できるものも含めて,混合物を扱う.
原子核物理学 第4講 原子核の液滴模型.
微粒子合成化学・講義 村松淳司
平成18年度 構造有機化学 講義スライド テーマ:炭素陽イオン 奥野 恒久.
今後の予定 4日目 10月22日(木) 班編成の確認 講義(2章の続き,3章) 5日目 10月29日(木) 小テスト 4日目までの内容
(d) ギブズ - デュエムの式 2成分混合物の全ギブスエネルギー: 化学ポテンシャルは組成に依存
前回の講義で水素原子からのスペクトルは飛び飛びの「線スペクトル」
22章以降 化学反応の速度 本章 ◎ 反応速度の定義とその測定方法の概観 ◎ 測定結果 ⇒ 反応速度は速度式という微分方程式で表現
量子力学の復習(水素原子の波動関数) 光の吸収と放出(ラビ振動)
分子軌道理論(Molecular Orbital theory, MO理論)
課題 熱力学関数 U, H, S, A, G の名称と定義を書け dS, dGの意味を書け ⊿U, ⊿H, ⊿G の意味を書け.
相の安定性と相転移 ◎ 相図の特徴を熱力学的考察から説明 ◎ 以下の考察
連続体とは 連続体(continuum) 密度*が連続関数として定義できる場合
福井工業大学 原 道寛 学籍番号____ 氏名________
学年   名列    名前 物理化学  第2章 1 Ver. 2.1 福井工業大学 原 道寛 HARA2005.
2009年4月23日 熱流体力学 第3回 担当教員: 北川輝彦.
FUT 原 道寛 学籍番号__ 氏名_______
学年   名列    名前 物理化学 第2章 2-1、2-2 Ver. 2.1 福井工業大学  原 道寛 HARA2005.
課題 1 P. 188.
電磁気学Ⅱ Electromagnetics Ⅱ 8/11講義分 点電荷による電磁波の放射 山田 博仁.
(d) ギブズ - デュエムの式 2成分混合物の全ギブスエネルギー: 化学ポテンシャルは組成に依存
低温物体が得た熱 高温物体が失った熱 = 得熱量=失熱量 これもエネルギー保存の法則.
化学1 第12回講義        玉置信之 反応速度、酸・塩基、酸化還元.
◎ 本章  化学ポテンシャルの概念の拡張           ⇒ 化学反応の平衡組成の説明に応用   ・平衡組成       ギブズエネルギーを反応進行度に対してプロットしたときの極小に対応      この極小の位置の確定         ⇒ 平衡定数と標準反応ギブズエネルギーとの関係   ・熱力学的な式による記述.
今後の予定 (日程変更あり!) 5日目 10月21日(木) 小テスト 4日目までの内容 小テスト答え合わせ 質問への回答・前回の復習
モル(mol)は、原子・分子の世界と 日常世界(daily life)をむすぶ秤(はかり)
近代化学の始まり ダルトンの原子論 ゲイリュサックの気体反応の法則 アボガドロの分子論 原子の実在証明.
これらの原稿は、原子物理学の講義を受講している
今後の予定 8日目 11月13日 口頭報告答あわせ,講義(5章) 9日目 11月27日 3・4章についての小テスト,講義(5章続き)
今後の予定 7日目 11月12日 レポート押印 1回目口頭報告についての説明 講義(4章~5章),班で討論
福井工業大学 原 道寛 学籍番号____ 氏名________
宿題を提出し,宿題用解答用紙を 1人2枚まで必要に応じてとってください 配布物:ノート 2枚 (p.85~89), 小テスト用解答用紙 1枚
熱量 Q:熱量 [ cal ] or [J] m:質量 [g] or [kg] c:比熱 [cal/(g・K)] or [J/(kg・K)]
化学1 第11回講義 ・吸光度、ランベルト-ベールの法則 ・振動スペクトル ・核磁気共鳴スペクトル.
相の安定性と相転移 ◎ 相図の特徴を熱力学的考察から説明 ◎ 以下の考察
外部条件に対する平衡の応答 ◎ 平衡 圧力、温度、反応物と生成物の濃度に応じて変化する
K2 = [ln K] = ln K2 – ln K1 = K1.
学年   名列    名前 物理化学 第2章 2-1、2-2 Ver. 2.0 福井工業大学  原 道寛 HARA2005.
固体→液体 液体→固体 ヒント P131  クラペイロンの式 左辺の微分式を有限値で近似すると?
学年   名列    名前 物理化学  第2章 1 Ver. 2.0 福井工業大学 原 道寛 HARA2005.
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5章-6章の復習 ●外界と系(孤立系、閉じた系、開いた系) ●熱化学反応(発熱反応、吸熱反応) ●熱力学第一法則    ●エンタルピー ●水素結合 ●ブレーンシュテッド酸塩基 ●ルイス酸塩基 ●配位結合 ●ハメットのシグマ

系に出入りするエネルギーは熱(heat)+仕事(work) ●熱化学方程式: 化学量論数にしたがって、反応物、生成物、エネルギーを記す 外界、 孤立系、 閉じた系、 開いた系 図5.2 孤立系、閉じた系、開いた系 閉じた系 エネルギー エネル ギー 外界 開いた系 エネルギー エネル ギー 外界 外界 孤立系 ●閉じた系:外界の間で物質のやりとりはないが、エネルギーのやりとるが系を閉じた系(closed system)という。この系での化学反応での発熱、吸熱などは系の温度、圧力を変化させない。 化学で勉強するのは、この系。   系に出入りするエネルギーは熱(heat)+仕事(work) ●熱化学方程式: 化学量論数にしたがって、反応物、生成物、エネルギーを記す

熱化学反応、平衡状態、状態量 ●25℃、1 atm(現在は100 kPa)での反応熱が熱化学方程式に用いられ、化合物1molが同一の温度、圧での成分から生じるときの反応熱を生成熱(heat of formation、発熱or吸熱)という。 ●熱量の単位 J(ジュール) 1N(ニュートン)の力で物質を1m移動させるに必要なエネルギー  1 J = 1 N・m = 1 kg ・m2 ・s-2 1 cal = 4.184 J ●系が平衡状態(equilibrium state)の時、一義的に定まった値を持つ物理量を状態量(quantity of state)と言う。 ●状態量として、物質量に比例する示量性の状態量(体積V、質量m、熱qなど)と、物質量に無関係な示強性の状態量(圧力P,温度T,密度r)がある。

熱力学第一法則、内部エネルギー、エンタルピー ●系が外界から吸収する熱・・q 系の体積変化により外界から系にされる仕事・・w  系の内部エネルギー(internal energy)Uの増加・・q + w                           DU = q + w          (5.2)  ●熱力学の第一法則 「内部エネルギーの増加DUは、変化前と変化後の平衡状態に依存し、途中の経路は関係しない」 ●化学反応が一定温度、一定圧力で起こると、仕事wは外界の圧P  による系の縮小(w = PDV)で、定圧での吸収熱をqpとすれば、         DU = qpPDV ●エンタルピー(enthalpy)の定義・・ H = U + PV   (5.3)      定圧(DP=0)でのエンタルピー変化DHは         DH = DU + PDV = qp        (5.4)  ●標準生成エンタルピー:標準状態で単体から化合物1モルが生成するときのエンタルピー変化  DfH ○

●一般に、固体、液体ではDV=0でありDH ≈ DU、   また反応で気体の量がDnモル増加すると                  DH ≈ DU+DnRT         (5.5) 気体の法則 ●アヴォガドロの法則(Avogadro's law)とは、同一圧力、 同一温度、同一体積のすべての種類の気体には同じ数の分子が含まれるという法則である。NA = 6.022 x 1023 mol-1 ●ボイルの法則:一定温度において、一定量の気体の体積Vは圧力Pに逆比例する: PV = 一定、   P1V1 = P2V2 (5.6式), P vs. V, V vs. Pは双曲線(等温線)。 ●シャルルの法則:一定圧力において、一定量の気体の体積は絶対温度T に比例する:V/T = 一定、 絶対温度T1 Kの体積V1、T2 Kでの体積V2とすると             V1/T1 = V2/T2  (5.7式)。

●ボイル-シャルルの法則:一定量の気体の体積は圧力に反比例し、絶対温度に比例する:    PV = nRT, P1V1/T1 = P2V2/T2 (n: mol)       (5.8)  R:気体定数 8.314 kPa dm3 K-1 mol-1 = 8.314 J K-1 mol-1 = 0.08206 atm dm3 K-1 mol-1 ●ドルトンの分圧の法則:混合気体の全圧は成分気体の分圧(成分気体が混合気体と同じ体積を占めた時の圧力)の和に等しい                       P = Spi   (5.9)

●ヘスの法則:化学変化の前後の状態を定めると、その間に出入りする熱量の総和は一定で、変化の経路に無関係 熱力学第一法則以前に見出された(別名 総熱量保存の法則) ●熱力学の第一法則 「内部エネルギーの増加DUは、変化前と変化後の平衡状態に依存し、途中の経路は関係しない」 問題 ボルン・ハーバーサイクルからNaClの格子エネルギーUを求めよ Na+(g)+e-+Cl(g) E : 電子親和力 -349 KJ mol-1 I : イオン化エネルギー 496 KJ mol-1 Na+(g)+Cl-(g) Na(g)+Cl(g) ½ D  解離エネルギー 122 KJ mol-1 Na(g)+ ½Cl2(g) S :昇華エネルギー 107 KJ mol-1 U :格子エネルギー Na(s)+ ½ Cl2(g) F : 生成熱 401 KJ mol-1 NaCl(s)

水素結合(Hydrogen-bond) ●水素原子は、その1s軌道の電子の数により原子(ファンデルワールス、イオン)半径が、H+で10-5 Å、H•で1.2 Å、H-で1.54~2.08 Åと、大きく変化するきわめて興味深い粒子である。 ●水素結合の形成が可能ならば、分子の詰め込みは悪くとも、水素結合エネルギーで利得のある、異方性をもった結晶構造を取る。 ●OH基やNH2基をもつ分子は多くの水素結合が形成されるように結晶化し易く、方向性を持つことから多形が見られる・・・・生体系。 ●水素結合のエネルギー: 10~30 kJ mol-1 (水で33 kJ mol-1)で、ファンデルワールスエネルギーと大差はない。

水素結合の例: 水、生体は水素結合の集合体 蟻酸(formic acid)、酢酸(acetic acid)、蓚酸(oxalic acid)(, 型)、安息香酸(benzoic acid)、分子内水素結合のサリチル酸(salicilic acid) CH3CONH2 アセトアミド( acetoamide)

プロトン移動と酸・塩基 ブレンシュテッド-ローリーの酸・塩基  ● 1923年: 酸はH+を供与する分子(HAA-+H+)、塩基はH+を受容する分子(B+H+BH+)   酸・塩基反応  HA + B ⇌ A- + BH+       (6.2) ●水中では、H2Oが塩基または酸として働く。     酸   HA + H2O ⇌ H3O+ + A-      (6.3)  pKa=-logKa               (6.4) 塩基  B + H2O ⇌ HB+ + OH- (6.5)   pKb=-logKb                   (6.6) ●共役酸・塩基で    pKa + pKb = 14.0    (6.7) ●気相での絶対的な値は、反応AH ⇌ A-+H+の反応熱H0で示され、H0を内在的酸性度(intrinsic acidity)という

内在的酸性度からわかること ハロゲン化水素の気相での酸性度は  HI>HBr>HCl>HFで、ハロゲンの電気引性度の順 I< Br < Cl < Fの逆 2) アセトンはHFより少し強い酸である。 3) CH2(CN)2 (malononitrile、マロノニトリル)はHClと同程度の強い酸である。 一対の非結合電子対(:で示す)をもつ3配位の炭素陰イオンをカルバニオン(カルボアニオン、carbanion)という。 

ルイスの酸-塩基   ●1923年、八偶説(オクテット則)を提唱したルイスにより提案された ●酸は共有結合を形成するため他の物質から一対の電子対をもらうもの(電子対受容体、ルイス酸)であり、塩基(電子対供与体、ルイス塩基)は電子対を与え、酸および塩基は希ガス型電子配置をとる。 ●配位結合:結合を形成する2つの原子の一方からのみ結合電子が分子軌道に提供される化学結合。電子対供与体(ルイス塩基)となる原子から電子対受容体(ルイス酸)となる原子へと、電子対が供給されてできる化学結合でり、ルイス酸とルイス塩基との結合でもある。 ●オキソニウムイオンR3O+(簡単なものヒドロキソニウムイオン H3O+ ) ●他アンモニウムイオン、三フッ化ホウ素アンモニア錯体

ハメットのσ ●置換基の電子吸引や電子供与の能力を示すパラメータ ●基準とする酸は安息香酸(HA0)で、置換基Xをもつ安息香酸をHAとの間での酸・塩基平衡 HA + A0- ⇌ A- + HA0  の、平衡定数 KHA-A0のうち、O-H結合に関与する部分のみを比較。 ● G = RTlnKHA-A0 = H  TS          生成エンタルピー(H)は結合に関与、 生成エントロピー(S)は溶媒の種類、反応粒子数、 オルト、メタ、パラ置換体などの立体因子に関与     ・・ Sが影響しない実験条件で比較 ● < 0  水素に比べベンゼン核へ電子密度を増加させる置換基(電子供与基)で、塩基性↑  酸性↓  HOMO↑(Ip↓)~ドナー性↑ ● > 0 水素に比べベンゼン核の電子を引きつける置換基(電子吸引基)で、 塩基性↓ 酸性↑ LUMO↓(EA↑)~アクセプター性↑ ここで、矢印の↑、↓は各々増加、減少を示す。

7章 共有結合と共有結合結晶 ●共有結合の典型である水素分子の分子軌道とそのエネルギー:結合性軌道と反結合性軌道 7章 共有結合と共有結合結晶 出典  有機物性化学の基礎 斉藤軍治 化学同人(2006)      Wikipedia   復習と目標  ●共有結合の典型である水素分子の分子軌道とそのエネルギー:結合性軌道と反結合性軌道 ●ベンゼン分子の軌道とエネルギーを、電子間クーロン反発相互作用を無視した1電子問題として解く。これらの計算を厳密に解くのは非常に困難であり,解法の流れと得られる図を重視して説明する。シグマ軌道とパイ軌道 ●sp3、sp2、sp混成軌道

1)中性の状態:電子1がHAに、電子2がHBに配置されたHA(1)••HB(2) と、その逆のHA(2)••HB(1) 7.1) 水素分子と共有結合 7.1.1) 分子軌道の波動関数 ●2つの水素原子H・(HA, HBとし、プロトンをa, bとし、それらの間の距離をRとする)が1個ずつ電子(1,2とする)を出し合い、それを共有して結合をつくり水素分子ができる(図7.1)。 ●考えられる状態 1)中性の状態:電子1がHAに、電子2がHBに配置されたHA(1)••HB(2)             と、その逆のHA(2)••HB(1) 2)イオン性の状態:電子が一方から他方に移ったHA+••HB(1,2)とHA(1,2)••HB+、イオン性の状態は等しい頻度であらわれるので電荷が静的に偏在することはなく、イオン結合性はない。 1 a b ● ra1 rb1 R 図7.1 H2+の陽子a, bと電子1

●目的: 電子軌道、そのエネルギーを求める ●方法:2つの近似法(分子軌道法、原子価結合法)がある。 分子軌道法がわかり易い。 ●目的: 電子軌道、そのエネルギーを求める ●方法:2つの近似法(分子軌道法、原子価結合法)がある。      分子軌道法がわかり易い。 ●仮定:近似を行うため 1. 電子は分子軌道に入る。 2. 位置の定まらない2電子間に働くク-ロン斥力を考慮するのは非常に面倒なので、無視する・・・ 1電子近似。  すると、電子1は、プロトンaおよびbからのクーロン引力ポテンシャル                   {(e2/40)[(1/ra1)+(1/rb1)]} のみを受け、H2+(図7.1)の電子状態となり、1電子問題としてシュレディンガー方程式を解くことができる。 電子2についても同じである。 1 a b ● ra1 rb1 R 図7.1 H2+の陽子a, bと電子1

3.  ●分子軌道の波動関数を, 水素原子A、Bの原子軌道波動関数a、bの線形結合で近似する(原子軌道の線形結合 linear combination of atomic orbital LCAO, 7.1式)  = caa + cbb         (7.1) ca2: 電子がaに見出される確率、 cb2: 電子がbに見出される確率 ●今考えているaとbは、ともに同じ電子状態の波動関数(ここでは1s軌道)であるから、確率ca2とcb2は等しく、7.2式が成立する。  ca = cb               (7.2) 従って、7.1式は 1 = ca(a + b)      (7.3) 2 = ca(a  b)         (7.4) ●7.3式、7.4式の係数は、規格化条件(空間の微小体積をdとして) (7.5)

より求まり、                     (7.6)                     (7.7) ●前者は対称分子軌道、後者は反対称分子軌道である。Sは重なり積分で、原子軌道aとbの重なりを示し、aに属す電子がbに沁み込む確率振幅である。                          (7.8) ●水素の1s軌道関数(=(a03)1/2 exp (r/a0)、a0 = h2/42me2 = 0.529108 cm)と重なり積分S = exp (R/a0)[1 + R/a0 + (R/a0)2/3]、プロトン間の距離R = 1.06 Åを用いて 1(7.6式)と電子の存在確率1*1 = |1|2を図7.2aに、また、2(7.7式)の場合を図7.2bに示す。

a) b) 図7.2. a) H2+の対称分子軌道1と電子密度|1|2、 b) H2+の非対称分子軌道2と電子密度|2|2 結論:1では2つのプロトン間の電子密度は大きく、電子はかなりの時間にわたって2つのプロトンから同時に引力をうけるので結合エネルギーが増加し(結合軌道, bonding orbital)、電子エネルギーは安定化する。一方、2では2つのプロトン間の中点で電子密度はゼロであり、2つのプロトンの外側にはじき出され、電子密度は分子軌道を作る前より減少し(反結合軌道, antibonding orbital)、電子エネルギーは不安定化する。