パート3 食品の安全性確保に関する国際的取組み ◆ 食料の国際流通における安全性確保に、どのような方法と社会的仕組みが必要とされているのか?

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追加資料 補足説明資料 大阪府薬事審議会  医薬品等基準評価検討部会 平成30年1月16日.
危害の発生: 調理、摂食、ならびに汚染拡大の要因 Robert V Tauxe, M.D., M.P.H. 病原体低減のための意見交換
~ 生産者の皆さん、抗菌剤の慎重使用等対策を進め、
農場からフォークまでの食品の安全性: 放射線照射の役割
「リステリア」による食中毒を 防ぐために衛生管理を徹底しましょう
問13. デング熱 の地理的分布に関する最近の知見では、従来の生物地理区の説明とは違っているので、再確認する。
【事業名】 【事業代表者】㈱○○ ○○ 【実施予定年度】平成29~○年度 平成29年 月 日 (1)事業概要
疫学概論 疫学研究の目的 Lesson 1. 疫学研究 §A. 疫学研究の目的 S.Harano,Md.PhD,MPH.
食品の機能性表示に取り組む事業者の方へ 食品の機能性表示制度とは 支援員の活動内容について 機能性表示のご相談について
食品添加物とは? ≪定義≫ 食品の製造の過程において又は食品の加工若しくは保存の目的
衛生委員会用 がんの健康講話用スライド.
○ 大阪府におけるHACCP普及について S 大阪版 評価制度を設ける 大阪府の現状 大阪府の今後の方向性 《従来型基準》
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パート3 食品の安全性確保に関する国際的取組み ◆ 食料の国際流通における安全性確保に、どのような方法と社会的仕組みが必要とされているのか? ◆ 国際流通における国家と民間経済活動の違いは何か?

自由貿易の枠組み(WTO)と衛生基準の関係概念図 危害因子についての国の衛生基準 B国 A国 非関税障壁 (WTO訴訟) 国 際 基 準 E国 C国 D国 自由貿易の枠組み(WTO)と衛生基準の関係概念図 衛生および食物検疫措置の適用に関する協定(SPS協定) 貿易の技術的障壁に関する協定(TBT協定)

コーデックス委員会 執行委員会 事務局 一般問題部会(9) 個別食品部会(11) 特別部会(2) 一般原則 食品衛生 食品表示 ( FAO/WHO 合同食品規格委員会) ( ):部会数、 〔 〕:休会中 執行委員会 事務局 一般問題部会(9) 個別食品部会(11) 特別部会(2) 一般原則 食品衛生 食品表示 分析・サンプリング 食品輸出入検査証明制度 食品添加物・汚染物質 栄養・特殊用途食品 残留農薬部会 残留動物用医薬品 乳及び乳製品 食肉・食鳥肉衛生 魚類・水産製品 生鮮果実・野菜 加工果実・野菜 油脂 〔ココア製品・チョコレート〕 〔糖類〕 〔穀物・豆類〕 〔植物タンパク質〕 〔ナチュラル・ミネラル・ウォーター〕 果実・野菜ジュース 動物用飼料 地域調整部会(6) アジア アフリカ ヨーロッパ ラテンアメリカ・カリブ海 近東 北アメリカ・南西太平洋 専門家会議 食品添加物(JECFA) 残留農薬(JMPR)

危害(Hazard)とリスク(Risk)  「危害とは、ヒトに障害を起す可能性のある食品の、生物学的、化学的、あるいは物理学的因子、もしくは状態をいう。  他方、リスクとは、食品中の危害の結果として起こる、暴露集団の健康に対する悪影響の発生確率と重篤度の推定値である。」  「危害を減らすこととリスクを減らすことの関係を理解することは、適切な食品の安全性制御を発展させる上でとくに重要である。 不幸なことに、食品について『ゼロ・リスク』のような事態はありえない(その他の何についても言えることだが)。」 「食品の品質と安全性システム」 FAO: Food Quality and Safety Systems - A Training Manual on Food Hygiene and the Hazard Analysis and Critical Control Point (HACCP) System. 1998

リスク・アナリシスの構図 リスク・アセスメント リスク管理 リスクの情報交換 危害の特定 危害の特性解明 暴露査定 危険性の特性解明 Risk Assessment 危害の特定 Hazard Identification 危害の特性解明 Hazard Characteristics 暴露査定 Exposure Assessment 危険性の特性解明 Risk Characterization リスク管理 Risk Management 危険性の評価 Risk Evaluation 管理措置の査定 Management Option Assessment 管理措置の実行 Option Implementation 監視と再吟味 Monitoring and Review リスクの情報交換 Risk Communication リスク・アナリシスの構図 Structure of Risk Analysis. Risk Management and Food Safety. FAO, Rome, 1997

国際食品微生物規格委員会(ICMSF)による 食品の微生物学的危害因子 危害因子 危害特性 食品例 乳幼児、高齢者、虚弱者または免疫力の低下したヒトのために作られた製品 A B 微生物の増殖を支持する成分を含む 生の魚介類や食肉 調理パン、ケーキ、惣菜 C 製造過程に管理された殺菌工程がない 加工後包装までに再汚染される可能性がある 弁当、カットハム、 カット野菜 D 輸送や消費者の誤った取り扱いで増殖する可能性がある 生の魚介類、食肉、卵。調理パン、惣菜 E 包装以降、最終消費の際に加熱工程がない F 生の魚介類や食肉

国際食品微生物規格委員会(ICMSF)による 食品の微生物学的危険度分類 カテゴリー 食品の性状と危害特性 食品例 Ⅵ 危害因子 A 乳児食、老人食、特定の病人食 刺身、幕の内弁当、洋菓子、生野菜サラダ Ⅴ B~Fの危害因子を 5個 Ⅳ B~Fの危害因子を 4個 握り飯、ポテトサラダ、惣菜 Ⅲ B~Fの危害因子を 3個 ハム、ソーセージ、無包装蒲鉾 Ⅱ B~Fの危害因子を 2個 スライスハム、調理パン、 Ⅰ B~Fの危害因子を 1個 食パン、包装蒲鉾、乾燥麺 インスタントコーヒー、煎餅、乾し海苔、調味料 0 危害発生の恐れがない ◆ 数値が大きいほどリスクが高くなる。 ◆ 「乳幼児、高齢者、虚弱者、免疫力の低下したヒト」は死亡を含む重大な健康障害を惹き起こすために、特別な配慮する必要がある。

米国の食品規格コード(Food Code ) 日本においても、ハイリスク集団(健康弱者)に関する法的根拠を設けることが重要である 1-201 用語の定義と適用範囲 (44)高感受性集団(Highly susceptible population)とは、次の理由で、一般集団の人より食品媒介性疾患に罹りやすい人をいう。 (i) 免疫低下者、就学前児童、老人 (ii) デイケア施設、腎臓透析センター、病院または療養所、看護付老人ホームなどの健康管理または補助生活を受けている人。 日本においても、ハイリスク集団(健康弱者)に関する法的根拠を設けることが重要である

国際食品微生物規格委員会による ロット検査法 国際食品微生物規格委員会による ロット検査法 食品の微生物学的汚染の分布状況 空港の手荷物検査ではX線装置を通過した品物は引き続き使用できる。他方、食品では検査時に磨り潰してしまう(破壊検査)ため、全てを検査することは不可能である。 汚染菌数 m M ロット: 同一工場の、製造過程が等しく、 同じ日に作られた製品 汚染菌数 n: 1ロット当りのサンプル数 3階級法: M以上のサンプルがあれば不可。m~Mの間のサンプル数が c 個以上あれば不可。汚染指標細菌に主に適用。 2階級法: m以上のサンプルがあれば不可。病原細菌に適用。

n: サンプル数、C: mとMの間のサンプル数、2階級法ではc=0 ロット毎のサンプリングおよび判定方式と菌数の基準 判定方法 菌数/g 食品の種類 検査項目 階級  n  c m    M 一般生菌数  3   5  2 104    106 乾燥卵製品 大腸菌群数  3   5  2 10     103 サルモネラ  2  10  0 0     ー 一般生菌数  3   5  2 5X104    105 乾燥乳 大腸菌群数  3   5  2 <3     102 ブドウ球菌  3   5  1 10     102 一般生菌数  3   5  3 106    107 冷凍生肉 サルモネラ  2   5  0 0     ー 一般生菌数  3   5  2 103    104 乳児用乾燥食品 大腸菌群数  3   5  1 <3     20 サルモネラ  2  60  0 0     ー n: サンプル数、C: mとMの間のサンプル数、2階級法ではc=0

年齢、性別に見た患者からのサルモネラ分離頻度  9歳以下の小児と 60歳以上の高齢者が全体の45%を占める 年齢、性別に見た患者からのサルモネラ分離頻度 米国、2001年 女性 男性 不明 計 年齢階層 10,581 33.4% ハイリスク集団への重点対策 安全の価格 より安全な高付加価値商品の開発 第三者認証による安全性保証システムの構築 3,584 11.3%

日本における年齢・死亡原因物質別にみた 食中毒による死亡者数 (1996~2002) 4 2 0~4 5~9 10~14 15~19 20~29 累積死亡者数 フグやキノコによる死亡は、 日本特有の現象 12 :動物性自然毒 :植物性自然毒 :大腸菌 :サルモネラ :ぶどう球菌 :腸炎ビブリオ 10 8 6 4 2 30~39 40~49 50~59 60~69 70~ 年齢 日本における年齢・死亡原因物質別にみた 食中毒による死亡者数 (1996~2002)

法的規制 リスク管理と経費負担のモデル 衛生教育に掛かる費用 低 リスク・レベル 高 商品価格 国民経済として 無駄な経費 個人衛生 低  リスク・レベル   高 衛生教育に掛かる費用  法的規制の水準を上げると、その分、衛生対策費と監視業務の経費を税金で賄わねばならない。赤字国債が問題となっている現状で、実行できますか? 法的規制 自主衛生管理 商品価格 HACCP等の費用 国民経済として 無駄な経費 法的規制 衛生検査と監視に使われる税金 一般健康成人 ハイリスク集団 リスク管理と経費負担のモデル

米国の現状と取組み 1998年12月 「大統領直轄 食品安全評議会」発足 2000年3月 「米国における食品安全システム」刊行 O157、サルモネラ・エンテリティディスなどの多発 1997年 クリントン大統領年頭教書 ➔ 「大統領直轄 食品安全委員会」 「食品媒介疾患を予防するための、省庁を跨る新たな戦略」を骨子とする報告書を提出 1998年12月 「大統領直轄 食品安全評議会」発足 農務長官、商務長官、保健・福祉長官、環境保護庁の行政官、行政管理予算庁総官、科学技術担当大統領補佐官/科学技術政策局総官、内政担当大統領補佐官、ならびに、政府改革国家委員会総官 2000年3月 「米国における食品安全システム」刊行 農場から食卓までの安全性という目標を達成する上で、連邦政府は一部の役割を果たすにすぎません。連邦政府は、州および地方機関、ならびに第三者機関と連携し、食品安全対策を促進し、産業界と消費者の食品安全活動の推進を手助けします。・・・・政府の役割は、適切な基準を設けること、産業界がそれらの基準とその他の食品安全規則に適合していることを認証するために必要なことを定めることである。・・・・・

サルモネラ汚染率の推移 :廃用の種牛と母(乳)牛の枝肉 :去性牛と未経産牛の枝肉 :挽肉 食肉センターへの病原体低減/HACCPシステム導入 (Pathogen Reduction/HACCP Final Rule, July 25, 1996≪61 FR 38806≫) HACCPに基づいた法的検査モデル計画 (HIMP: HACCP-based Inspection Model Project) 8.0 7.5% サルモネラ汚染率(%) 7.0 :廃用の種牛と母(乳)牛の枝肉 6.0 :去性牛と未経産牛の枝肉 5.0 :挽肉 4.0 2.7% 3.0 1.0% 2.0 1.0 0.0 1998 1999 2000 2001 2002 2003 米国の食肉センターおよび食肉取り扱い施設における サルモネラ汚染率の推移

食肉センターの規模と枝肉のサルモネラ汚染率 廃用の種牛と母(乳)牛 4.0 3.0 サルモネラ汚染率(%) 2.0 1.0 0.0 1.0 :大規模 :小規模 :極小規模 去性牛と未経産牛 0.8 0.6 0.4 0.2 0.0 1998 1999 2000 2001 2002 2003 食肉センターの規模と枝肉のサルモネラ汚染率

(NAHMS : National Animal Health Monitoring System) 全国家畜衛生監視システム (NAHMS : National Animal Health Monitoring System)   農場生産段階においては、食品工場のような建物内の作業ではなく、雨や風、暑さや寒さの影響をもろに受ける野外での作業が多い。しかも、家畜にはトイレが使えないので、糞尿の処理が極めて大きな問題となる。そうした状況で家畜の病気が発生するのを防止することは並大抵のことではない。農場生産段階に安全性向上のために、アメリカでは全国家畜衛生監視システムを構築している。生産現場における実情を正確に把握ことによって、より効果的な方策を策定するためのものである。   HACCPの解説書に「Yes―No方式のCCP決定図」が載っているが、それは食品工場には適用できても、複雑な要因が絡んでいる生産段階には使えない。コーデックス委員会の文書でも食肉センターではそのまま使えないとされており、農場段階にそのような単純な図式を持ち込むことは有害である。HACCPの本場であるアメリカにおいても、国のレベルでは衛生監視システムによる分析過程にある。

導入牛の特定方法による事業体と頭数割合 全国家畜健康監視システム 肉牛編 Feedlot ‘99 特定しない 群毎の特定または所有者の特定(ペンの標識札、凍結烙印、焼き印、耳刻など) :大規模(8,000頭以上) それぞれの個体を特定できる耳標以外の方法での個体識別 :小規模(1,000-7,999頭) :頭数割合 それぞれの個体を特定できる識別番号耳票の取付(病畜には付けない) :事業体の割合 20 40 60 80 100 導入牛の特定方法による事業体と頭数割合

去勢牛と若雌牛 に対する雄性ホルモン剤インプラントの 導入時体重317.5Kg (700ポンド)未満 事業体の割合 (%) 導入時体重317.5Kg (700ポンド)以上 1,000-7,999 8,000以上 全事業体 事業体の規模(飼育頭数) 去勢牛と若雌牛 に対する雄性ホルモン剤インプラントの 実施回数別にみた事業体割合 :0回 :1回 :2回 :3回以上

メレンゲステロール を与えた事業体の割合(%) メレンゲステロール を与えた雌牛の割合(%) 70 80 60 60 事業体の割合(%) 40 50 20 40 30 : 1,000-7,999頭の事業体 : 8,000頭以上の事業体 20 : 全事業体 10 1~49 50~99 100 メレンゲステロール を与えた雌牛の割合(%) メレンゲステロール: 雌に解熱剤として働くエストロゲン様化合物であり、1日当り増体量を大きくし、飼料要求率を改善する。

品質計画の種類および事業体の規模別にみた 全事業体 8,000頭以上の事業体 その他の計画 1,000-7,999頭の事業体 従業員の安全性 動物取扱い手順 残留違反 品質保証 20 40 60 80 100 品質計画の種類および事業体の規模別にみた 手引書を含む業務上の従業員訓練計画を実施している事業体割合

病気の牛に関する事項を記録している事業体の割合(%) 転帰(ペンに帰す、死亡、淘汰等) 病状(輸送熱、跛行、肺炎等) 休薬期間 治療内容 治療時の体重 治療日 常に だいたい 時々 しない 体温 20 40 60 80 100 病気の牛に関する事項を記録している事業体の割合(%)

獣医師の診療を依頼した事業体の規模別割合(%) 剖検をしない 20 40 60 80 獣医師 獣医師以外 死亡牛の剖検割合と剖検者 いずれかの形態 必要時に往診を依頼する開業獣医師 定期的または日常的往診のある開業獣医師 : 全事業体 : 8,000頭以上の事業体 従業員として 常勤の獣医師 : 1,000-7,999頭の事業体 20 40 60 80 100 獣医師の診療を依頼した事業体の規模別割合(%) (1999年6月30日までの1年間)

導入事業体において到着時に検疫を実施した割合と日数 去勢牛(離乳後) 肉用種雄牛(離乳後) 乳用種雄牛(離乳後) 肉用の未経産牛と経産牛 乾乳期の経産牛 :検疫日数 泌乳中の経産牛 :事業体の実施割合 交配した未経産牛 乳用雌子牛(離乳後未交配) 離乳前子牛(乳用または肉用) 全国家畜健康監視システム 乳牛編  Dairy 2002 10 20 30 40 50 (日または%) 導入事業体において到着時に検疫を実施した割合と日数

導入時に検査を要求した事業体の規模別割合 要求せず その他 牛結核 牛ウイルス性下痢症 (BVD) ヨーネ病 :大(500頭以上) :中(100~499頭) :小(100頭未満) ブルセラ病 20 40 60 80 (%) 導入時に検査を要求した事業体の規模別割合

導入時にワクチネーションを要求した事業体の規模別割合 要求せず :大(500頭以上) その他 :中(100~499頭) ネオスポラ症 :小(100頭未満) レプトスピラ症 牛伝染性鼻気管炎 (IBR) 牛ウイルス性下痢症 (BVD) ブルセラ病 10 20 30 40 50 60 (%) 導入時にワクチネーションを要求した事業体の規模別割合

導入時に乳房の検査または健康証明を要求した事業体の割合 バルクタンク乳の培養 :大(500頭以上) :中(100~499頭) 個体別の乳の培養 :小(100頭未満) バルクタンク乳の 体細胞数 個体別の 乳中体細胞数 10 20 30 40 (%) 導入時に乳房の検査または健康証明を要求した事業体の割合

生産者が判断した経産牛の健康問題の種類と規模別割合 その他の健康障害 神経病 第四胃変位 乳熱 下痢(48時間以上) その他の繁殖障害(難産、子宮炎) 不妊(出産後150日で未妊娠) 残留胎盤(24時間以上) 呼吸器病 歩行困難 乳房炎 : 全事業体 : 大(500頭以上) : 中(100~499頭) : 小(100頭未満) 5 10 15 20 (%) 生産者が判断した経産牛の健康問題の種類と規模別割合

出荷乳についてのバルクタンク乳体細胞数(BTSCC)の事業体平均 :10万未満 :20万~29.9万 :40万~49.9万 :10万~19.9万 :30万~39.9万 :50万~59.9万 現在の法的基準は体細胞数75万であるが、欧州基準と同じ 40万に引き下げる提案が乳業界において議論されている。 :60万以上 大規模 (500頭以上) 中規模 (100~499頭) 小規模 (100頭未満) 20 40 60 80 100 (%) 出荷乳についてのバルクタンク乳体細胞数(BTSCC)の事業体平均

等級「A」の殺菌乳に係る規則(2003年改訂版) 米国保健社会福祉省公衆衛生局・食品医薬品局 殺菌、超高温殺菌あるいは滅菌処理に供される乳および乳製品用の等級「A」生乳の基準 第1r項.異常乳 第2r項.搾乳用の建物、部屋、またはパーラー:構造 第3r項.搾乳用の建物、部屋、またはパーラー:清潔度 第4r項.牛の遊び場 第5r項.搾乳施設:構造と設備 第6r項.搾乳施設:清潔度 第7r項.便所 第8r項.給水 第9r項.器具と設備:構成 第10r項.器具と設備:清潔度 第11r項.器具と設備:衛生管理 第12r項.器具と設備:保管 第13r項.搾乳:横腹、乳房および乳頭 第14r項.汚染防止 第15r項.薬物と化学物質の管理 第16r項.個人衛生:手洗い設備 第17r項.個人衛生:清潔 第18r項.生乳の冷却 第19r項.昆虫とネズミの制御

第5節. 農場と乳製品工場の法的検査 5. 農場は、少なくとも6ヵ月毎に法的検査をする。 第5節. 農場と乳製品工場の法的検査 5. 農場は、少なくとも6ヵ月毎に法的検査をする。  6ヵ月毎という規定は望ましい頻度ではなく、法定最低基準である。要件を満 たすのに困難を経験している農場については、もっと頻繁に訪問すべきであ る。 ・・・・・ 農場の検査は可能な限り搾乳時に実施しなければならない。 執行手順: この節においては、農場が、連続した2回の法的検査において同 一の要件に対する違反をした場合における許可の停止または法的訴えについ て規定する。 殺菌、超高温殺菌あるいは滅菌処理に供される乳および乳製品用の等級「A」生乳 温度 搾乳開始時から4時間以内に10℃以下、搾乳終了時から2時間以内に7℃以下に冷却する。ただし、搾乳開始時とその後の搾乳の混合温度差が10℃を超えない条件であること。 細菌数の限度 他の生産者の生乳と混ぜる前の個々の生産者の生乳は10万/mlを超えないこと。殺菌前の混合生乳は、30万/mlを超えないこと。 薬品 第6節に規定した検査法で薬物残留がないこと。 体細胞数 個々の生産者の生乳は75万/mlを超えないこと。

乳牛や飼料と物理的接触のあった動物種からみた事業体割合 鹿 猫 犬 外来種 : 東南部 肉用牛 : 東北部 山羊 : 西中央部 : 西部 羊 豚 鹿: ヘラジカ、アメリカヘラジカ等 外来種: ラマ、アルパカ、エミュー等 馬 家禽 20 40 60 80 100 乳牛や飼料と物理的接触のあった動物種からみた事業体割合

個体識別の種類別にみた事業体および経産牛の割合 疾病や残留の遡及調査 個体識別の主な実施理由 10 20 30 40 50 乳生産の評価 家畜の健康評価 遺伝的改善の評価 その他 何もせず その他 入れ墨 (ブルセラ病用以外) 埋め込み マイクロチップID 烙印(全ての種類) 写真または絵 : 頭数割合(%) 首輪 : 事業体の割合(%) 耳票(全種類) 20 40 60 80 100 個体識別の種類別にみた事業体および経産牛の割合

個体記録管理システムの種類別にみた事業体および経産牛の割合 いずれかの 記録システム その他のシステム 農場内記録システム 協会以外の 農場外記録システム : 頭数割合(%) : 事業体の割合(%) 酪農改善協会 台帳に手書き 20 40 60 80 100 個体記録管理システムの種類別にみた事業体および経産牛の割合

(Quality assurance programs) 品質保証計画に参加した事業体の規模別割合 (2001年) いずれかのQAP その他のQAP : 全事業体 : 大(500頭以上) : 中(100~499頭) 全国的業界の後援を受けたQAP : 小(100頭未満) 地域の乳業協同組合 /乳業会社の後援を受けたQAP 品質保証計画(QAP) (Quality assurance programs) 州の後援を受けた QAP 10 20 30 40 50 60 70 品質保証計画に参加した事業体の規模別割合 (2001年)

牛成長ホルモン((bST : Bovine somatotropin)を使った 事業体の規模別割合および経産牛の頭数割合 60 : 頭数割合(%) : 事業体の割合(%) (2002年1月1日時点) 50 40 30 20 10 小規模 (100頭未満) 中規模 (100~499頭) 大規模 (500頭以上) 全事業体 牛成長ホルモン((bST : Bovine somatotropin)を使った 事業体の規模別割合および経産牛の頭数割合

最初および最後にbSTを投与した 出産後日数からみた事業体の割合 平均: 270日 200~249日 最後 250~299日 300日以降 200日未満 平均: 81日 31~56日 最初 57~70日 71日以降 30日未満 20 40 60 80 100 事業体の割合 (%) 最初および最後にbSTを投与した 出産後日数からみた事業体の割合

食品の安全性確保に関する国際的取組み まとめ パート3 食品の安全性確保に関する国際的取組み まとめ ◆ 食料の国際流通における安全性確保に、どのような方法と社会的仕組みが必要とされているのか?  輸出入検疫の衛生水準を取り決めるために、FAO/WHO 合同のコーデックス委員会が設けられている。そこで国際基準が作成され、それでも起きる貿易紛争には、WTOが仲裁する仕組みとなっている。 ◆ 国際流通における国家と民間経済活動の違いは何か?  政府がすべきことは、ハイリスク者により高度の安全性を保証する民間システムの法的枠組みを決めることである。衛生対策費を価格として生産者が回収するために、具体的な認証活動は民間しか実施できないことである。