Tooth Wear ―臨床現場からの報告― 平成21年3月8日 東海地区歯科医学大会
症例 1963年8月11日生 男性 職業:郵便局勤務
1998.04.21 34歳 歯が擦り減ってきた 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008
1998.08.11 35歳 歯冠修復で対応 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008
原因が分からなかったので経過観察することにした 1999.09.07 36歳 前歯も擦り減ってきた 原因が分からなかったので経過観察することにした 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008
2000.04.25 36歳 間隙がさらに大きくなっている 側方運動させても全く接触しない 2000.04.25 36歳 間隙がさらに大きくなっている 側方運動させても全く接触しない 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008
頬粘膜には咬みしめに よって生じたと思われる 咬合線を認める。 頬粘膜には咬みしめに よって生じたと思われる 咬合線を認める。 ギシギシ 顎が変形するくらい大きな 力でのブラキシズムが 咬耗の原因と考えていた 顎関節症の症状は無かったが 咬耗を防止するため ナイトガードを装着した
2001.05.16 37歳 ナイトガード装着(1年後)したが、「咬耗」はさらにすすみ 咬合接触の喪失は前歯部から臼歯部にまで拡がる 2001.05.16 37歳 ナイトガード装着(1年後)したが、「咬耗」はさらにすすみ 咬合接触の喪失は前歯部から臼歯部にまで拡がる 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008
開咬状態になってきた 下顎位が変ったのか? 2001.09.11 38歳 開咬状態になってきた 下顎位が変ったのか? 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008
咀嚼障害の訴えも出るようになったが・・・ 2002.08.19 39歳 咀嚼障害の訴えも出るようになったが・・・ 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008
2003.04.16 39歳 原因が分からず経過観察をするだけだった 2003.04.16 39歳 原因が分からず経過観察をするだけだった 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008
2004.03.24 40歳 咬合調整はしてみたが・・・ 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008
HJKを試験的に装着したが咬耗も破損も生じない 2005.02.09 41歳 HJKを試験的に装着したが咬耗も破損も生じない ブラキシズム以外に原因があるのでは? 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008
最近のTooth Wearの知見に触れる 酸蝕症ではないか?
2005.10.12 42歳 改めて問診をしなおすと・・・ 郵便局に就職(1990年)して以来、汗をかき喉が渇いたら 2005.10.12 42歳 改めて問診をしなおすと・・・ 郵便局に就職(1990年)して以来、汗をかき喉が渇いたら 缶ジュース、缶コーヒー、缶コーラを飲んでいた。 朝500cc、昼500cc、夜500ccのペース (当時は缶のお茶がなかった、水筒は持って行かなかった。) しかし、太ってきたために、これらの飲み物を止め、今年の 1月からポカリスエットを飲むようになった。 (就職してから現在まで、15年間で30Kg体重が増えている。) また、5年ほど前より毎日夜勤(午後3時~9時)をするように なる。帰宅は午後11時頃でそれから夕食をとり12時頃に 寝るという生活。 朝、胃酸が上がってくるため、内科で薬を貰って飲んでいる。現在は薬の効用で上がってこない。
2006.03.08 42歳 生活習慣について指導を行なう 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008
咀嚼機能障害への対応として歯冠修復に着手 2007.04.18 43歳 咀嚼機能障害への対応として歯冠修復に着手 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008
2007.10.17 44歳 上顎前歯部の審美障害への対応として 前装鋳造冠及びコンポジットレジンによる歯冠修復を行う 前装鋳造冠及びコンポジットレジンによる歯冠修復を行う 下顎前歯部については希望されなかったので 歯冠修復は行わなかった 2007.10.17 44歳
2008.06.27 44歳 最小限の介入で機能回復を図った 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008
1998.04.21 34歳 2003.04.16 39歳 2004.03.24 40歳 2005.02.09 41歳 2006.03.08 42歳 2002.08.19 39歳 2001.05.16 37歳 1998.08.11 35歳 2001.09.11 38歳 1999.09.07 36歳 2000.04.25 36歳 時系列で診てみると
1998.04.21 34歳 10年前の歯冠長に修復 2008.06.27 44歳
[ Tooth Surface Loss (TSL) ] Tooth Wear う蝕・歯周病に次ぐ第三の疾患として注目 [ Tooth Surface Loss (TSL) ] (歯質表面損失症候群) という概念で体系づけられている
Tooth Surface Loss の病態 咬耗 磨耗 酸蝕 T S 咬合応力ひずみ(Abfraction) L 歯根露出 医原性TSL Tooth Wear 咬耗 磨耗 酸蝕 その他 咬合応力ひずみ(Abfraction) 歯根露出 医原性TSL 過度なSRP、PMTC ホワイトニング ザ・クインテッセンス 2008 vol.27 no.4 吉山昌宏/中田 貴/西谷佳浩より
治療室付近 様々なTSLの症例 治療室の窓より
咬耗(Attrition) 歯と歯の接触による物理的なすり減り (Tooth-Tooth Contact)
磨耗(Abrasion) 歯以外の因子による 物理的なすり減り 例① 歯ブラシによるもの
咬耗が進むとチップが起こり象牙質が露出する 磨耗(Abrasion) 歯以外の因子による 物理的なすり減り 例② 咬耗、磨耗の混在ケース 咬耗が進むとチップが起こり象牙質が露出する 象牙質が露出すると磨耗が始まる エッジがシャープ
磨耗(Abrasion) 歯以外の因子による 物理的なすり減り 例③ 咬耗、磨耗の混在ケース 酸蝕も混在する場合はエッジに丸みがある 歯以外の因子による 物理的なすり減り 例③ 咬耗、磨耗の混在ケース 酸蝕も混在する場合はエッジに丸みがある 食物だけではこれほど深く凹まない
酸蝕(Erosion) 酸による歯の化学的溶解 例① 清涼飲料水 充填物が突出してくる
酸蝕(Erosion) 酸による歯の化学的溶解 例② 胃酸の逆流による(胃食道逆流症:GERD)
咬合応力ひずみ(Abfraction) 咬合応力の歪がエナメル質に微細なクラックを生じ少しずつ アパタイトが消失した状態(abfraction theory 1991年) 例① 歯ブラシではこのような状態にはならない
Abfraction単独では起こらない、磨耗がある所に起こる 例② 楔状欠損 Abfraction単独では起こらない、磨耗がある所に起こる
咬合応力ひずみ(Abfraction) Abfraction、磨耗の混在ケース 例③
咬合応力ひずみ(Abfraction) セメント質、象牙質にも? 例④ 歯根の無機質が脱灰されたような状態?
金属修復物に認められる 皺襞の観察と考察
症 例
19年前に装着したクラウンに生じた皺襞
9~12年前に装着したクラウンに生じた皺襞
24年前に装着したクラウンに生じた皺襞
気をつけて探してみると次々に・・・
コーヌスの内冠にも!
出現部位 部位 咬 頭 辺縁隆線 上顎 3例 4例 下顎 1例 16例 コーヌス 1例 機能していない咬頭 右側 1例 左側 15例 部位 咬 頭 辺縁隆線 上顎 3例 4例 下顎 1例 16例 コーヌス 1例 右側 1例 左側 15例 左側でのブラキシズムが多いのか? 顎関節症や歯根破折などに左右差があるのか? 今後の研究課題にしたいと思います 23名25ヶ所
考 察 ・金属歯冠修復物に生じる皺襞の原因は 天然歯にAbfractionを起こす咬合応力と 同種の力ではないだろうか? 考 察 ・金属歯冠修復物に生じる皺襞の原因は 天然歯にAbfractionを起こす咬合応力と 同種の力ではないだろうか? ・大野教授(愛院大歯学部口腔解剖学)助言 基底結節、介在結節、カラベリー結節、 プロトスタイリッドなどの結節や咬頭は Abfractionを起こす咬合応力に誘発されて 発生したのではないか?
ご静聴ありがとうございました