古代の難問と曲線 (3時間目) 筑波大学大学院 教育研究科 1年 石井寿一
1.前回の復習 『螺線について』のなかで接線の明確な定義は述べられていないが、「曲線と1点を共有し、その近くにおいてその曲線全体が直線のどちらか一方にあるような直線」と考えていたと推測される。
2.円積問題 与えられた円の面積と、まったく等しい面積を有する正方形を作ること → 資料1日目 πr2 πr2
解決のカギは… ・螺線の接線 ・1時間目(事前課題)の問c → 「与えられた直線図形に 等しい面積の正方形を作ること」
全ての直線図形は正方形に等積変形できる。 円 正方形 の部分を如何にして行うかが課題
直線図形 円 と面積の等しい の存在をアルキメデスは知っていたのか? アルキメデスの別の著作 『円と計測』を見てみよう。
3.『円の計測』 『円の計測』 命題1 全ての円は、直角を挟んでいる二つの辺のうちの1辺が、その円の直径の半分に等しく、もう一つの辺が円を囲む線に等しいような直角三角形に等しい。
「全ての円」は どんな直角三角形に等しいのか? 「その円の直径の半分に等しく」→ 半径 「円を囲む線に等しい」 → 円周 半 径 = 円 周
【証明の方針】 「円の面積 = 三角形Eの面積」であることを示す。もし、「円の面積 = 三角形の面積」でないなら、次の2つのいずれかが成り立つ。 (1) 円の面積 > 三角形Eの面積 (2) 円の面積 < 三角形Eの面積 これらを仮定してそれぞれの場合で矛盾を導き、「円の面積 = 三角形Eの面積」を得る。
『円の計測』命題1の証明(前半部) を読んで以下について考えてみよう。 1、前半部の証明で仮定している部分はどこだろう。 2、下線a)のようになる過程を不等式で表してみよう。 3、下線b)のようになる課程を不等式で表してみよう。 4、前半部の証明で矛盾している部分はどこだろう。
1、前半部の証明で仮定している部分はどこだろう。 仮定: 円ABΓΔ > 三角形E
2、下線a)のようになる 過程を不等式で表してみよう。 2、下線a)のようになる 過程を不等式で表してみよう。 「引き続いてこの操作を繰り返すと」 円ABΓΔ-三角形E > 円ABΓΔ-内接多角形 よって 内接多角形 > 三角形E
3、下線b)のようになる 過程を不等式で表してみよう。 3、下線b)のようになる 過程を不等式で表してみよう。 NΞ<三角形の1辺(=円の半径) 多角形の周囲<三角形の残りの1辺(円周) これより NΞ×多角形の周囲< 三角形の1辺×残りの1辺 多角形の面積の2倍<三角形Eの2倍 よって 内接多角形<三角形E
4、前半の証明で矛盾している 部分はどこだろう。 4、前半の証明で矛盾している 部分はどこだろう。 矛盾: 内接多角形>三角形E と 内接多角形<三角形E という2つの結論
4.円周に等しい直線 『螺線について』 命題18
『螺線について』 命題18 もし直線が第1回転で描かれた螺線に、螺線の終端で接し、そして螺線の原点である点から回転の原線に垂直にある直線がひかれるならば、ひかれた直線は接線と交わり、接線と螺線の原点との間の線分の長さは、第1円の円周に等しいであろう。
つまり右図の場合 AZ と第1円の円周が等しい。 円周に等しい直線ができる! 『円の計測』命題1より 円と等しい面積の三角形が作れる!
こうなります!!! 半 径 円 周 =
空欄を埋めて 証明(前半部)を完成させよう。 右のページに 現代の数式表記 左のページに 原典の日本語訳
証明 (前半部) (1) ZA >(円ΘKHの円周)と仮定する。 そこで ZA > ΛA >(円ΘKHの円周)となる線分ΛAをとる。 証明 (前半部) (1) ZA >(円ΘKHの円周)と仮定する。 そこで ZA > ΛA >(円ΘKHの円周)となる線分ΛAをとる。 円ΘKH上に点があり、ΘHは直径より小さい。 ①
証明 (前半部) そして ΘA:AΛ > ΘA:AZ (∵ AΛ<AZ) であり、また ΘA:AZ = ΘH/2:(AからHΘへの垂線) 証明 (前半部) そして ΘA:AΛ > ΘA:AZ (∵ AΛ<AZ) であり、また ΘA:AZ = ΘH/2:(AからHΘへの垂線) であるから ΘA:AΛ > ΘH/2:(AからHΘへの垂線) となる。 ②
証明 (前半部) よって命題7より NP:ΘP = ΘA:AΛ となるように ZΘの延長上に点Nをとることができる。 証明 (前半部) よって命題7より NP:ΘP = ΘA:AΛ となるように ZΘの延長上に点Nをとることができる。 それゆえ、AΘ = APより NP:AP = ΘP:AΛ ③ ③
証明 (前半部) ところで ΘP:AΛ < 弧ΘP:(円ΘKHの円周) (∵ ΘP < 弧ΘP、AΛ < 円周) それゆえ 証明 (前半部) ところで ΘP:AΛ < 弧ΘP:(円ΘKHの円周) (∵ ΘP < 弧ΘP、AΛ < 円周) それゆえ NP:PA < 弧ΘP:(円ΘKHの円周)
証明 (前半部) したがって (NP+PA):PA < (弧ΘP+円ΘKHの円周):(円ΘKHの円周) ∴NA:PA <
証明 (前半部) ところで命題15より XA:AΘ = (弧ΘP+円ΘKHの円周):(円ΘKHの円周) ゆえに 証明 (前半部) ところで命題15より XA:AΘ = (弧ΘP+円ΘKHの円周):(円ΘKHの円周) ゆえに NA:AP < XA:AΘ ―① ④ ④
証明 (前半部) しかし、 NA > AX であり、AP = AΘ なので NA:AP > XA:AΘ ―② ①と②は矛盾 よって 証明 (前半部) しかし、 NA > AX であり、AP = AΘ なので NA:AP > XA:AΘ ―② ①と②は矛盾 よって ZA >(円ΘKHの円周) ではない。 ⑤ ⑤ ⑥ ⑥
3日目のまとめ πr2 πr2 πr2
3時間のまとめ 1時間目 アルキメデス螺線 と その性質 2時間目 角の3等分 と 螺線の接線 3時間目 螺線と円積問題 アルキメデス螺線 と その性質 2時間目 角の3等分 と 螺線の接線 3時間目 螺線と円積問題 3日間ありがとうございました