§6.無衝突ボルツマン方程式の平衡解 ★無衝突系の例: 楕円銀河  定常状態としたらどのような  状態か?(平衡解)            現在の力学構造.

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§6.無衝突ボルツマン方程式の平衡解 ★無衝突系の例: 楕円銀河  定常状態としたらどのような  状態か?(平衡解)            現在の力学構造

★平衡解:以下を満たす解      (strong)Jeans定理を応用 

★運動の積分 ◎意味があるのは、孤立積分(isolating integral) 積分量に対してある値を満たす軌道を考えたとき、  位相空間でのその軌道の次元が全体に比べて減るとき  例:エネルギー、運動量、角運動量  反例:

○積分の例: 作用ー角変数         Jが積分量   例:1次元調和振動子

○CBEの任意の定常解 運動の積分を通してのみ ★Jeans Theorem ○CBEの任意の定常解    運動の積分を通してのみ                      位相空間座標に依存   ○運動の積分の任意の関数     CBEの定常解 証明:

★Strong Jeans Theorem ほとんどすべての軌道が、規則的(regular)であるとき、  定常状態の分布は、3つの独立な孤立積分の関数として  あらわされるだろう。  *ただし、3つの基本周期が、通約できない(incommensurable)場合に限る  

◎証明

○ほとんどすべての星が規則的運動 位相空間の至る所で、作用ー角変数が存在 例:1次元調和振動子

★定常解の例(Jeans定理の応用) I.球対称

一般には、self-consistentでなくてはいけない。 ★定常解の求め方   一般には、self-consistentでなくてはいけない。   つまり、どんな関数形でも解になるのではなくて、   ポアッソン方程式を満たさなくてはならない。

★Eddington’s formula   前式を次のように書き直す。

★具体例  (1)PolytropesとPlummerモデル

  Lane-Emden equation   星の構造を解くときにもよく用いられるもの

一般には、数値計算で解く。 しかし、解析解も存在。 ○n=5の場合:  Plummerモデルと呼ばれる  *いくつかの球状星団とは一致。   銀河とは合わない

○等温解(isothermal solution)

○Kingモデル *質量が無限大になる等温分布を補正したもの ○Hernquistモデル   *楕円銀河の密度分布をかなり良く再現

○Jaffeモデル

○球対称非等方速度分散のモデル  例:Osipkov-Merrittモデル

○球対称でない場合(一般)  *軸対称モデル   例:Evansモデル  *3軸不等楕円体(大きな楕円銀河)        Stackel Potentialモデル 後述

*高精度位置天文観測データがでれば、directに位相空間分布 ◎fの例(今までは簡単な例。一部は正しいかも) ★現実の力学構造は?   観測データとの比較            観測データとの比較    *高精度位置天文観測データがでれば、directに位相空間分布      が比べられる。  ◎fの例(今までは簡単な例。一部は正しいかも)    実際のバルジ、ディスク、ハローは?   一般的なモデルを作成する必要性あり  *ハミルトニアン(重力ポテンシャル)をgiven     積分量を評価(Torus construction法など)        fの関数形を仮定   モデル作りが必要:力学構造の構築法の開発

§7.緩和と力学構造 例:楕円銀河    十分良い近似で自己重力多体系とみなす。     さらに、             無衝突系    二体散乱による緩和は起こっていない!

しかし、・・・・ *楕円銀河:2体緩和していないが、楕円銀河には いくつかの共通点がある ○密度分布は、ドゥボークルールの1/4則         いくつかの共通点がある  ○密度分布は、ドゥボークルールの1/4則  ○回転サポートではない     速度分散の  ○ 3軸不等楕円体         非等方性       重力~速度分散による“圧力”  力学構造の詳細は分からないが、共通の特徴がある        ある種の“緩和”が起こっている                 どういう緩和?

★楕円銀河の密度分布(光度分布)     ◎ドゥボークルールの1/4則

Surma,Seifert and Bender(1990)

★速度分散の非等方性(回転サポートではない) ★速度分散の非等方性(回転サポートではない)     巨大楕円銀河(L>2.5×1010L )は、ローテーション  サポートではなく、速度分散の非等方性により偏平  になっている。

★Tensor Virial Theorem

○Tensor Virial Theoremを用いる ★速度分散、回転速度、偏平度の関係   ○Tensor Virial Theoremを用いる   ○簡単のため、z軸周りの軸対称であるとする。   ○銀河の中心方向への視線はx軸と一致するとする。

   Binney&Tremaine 「Galactic Dynamics」より

★観測との比較    Binney&Tremaine 「Galactic Dynamics」より

◎巨大な楕円銀河は、回転サポートではない。 速度分散の非等方性により、形態が偏平に 維持されている。 三軸不等であろう。 実際、   速度分散の非等方性により、形態が偏平に   維持されている。          一般には、軸対称とは考えにくい。           三軸不等であろう。 実際、   光度分布を2次元平面にprojectした場合、isophotの   twistが見られる。     三軸不等の証拠                Madejsky&Mollenhoff(1990)など

◎以上のように、共通の特徴をもっていることから、   何らかの“緩和”を受けているようである   (しかし、2体散乱による緩和ではない)      “緩和”するメカニズムは?       また、その力学構造は?

★Violent Relaxation: Lynden-Bell(1967) ◎無衝突系の緩和過程         空間的、時間的に激しく振動   microscopic: phase mixing fは保存(Liouvilleの定理)。しかし、それはどんどん小さな    スケールでの運動となる。        macroscopic :coarse-grained distribution function “平衡状態”に落ち着く

 ★Violent Relaxation: Lynden-Bell(1967)   平均重力場の激しい時間的空間的変動による   位相分布のmixing   (ハミルトン系のカオスが起こる機構と同様)

★平衡状態での(coarse-grained)分布関数は? ◎Lynden-Bell統計 ○ “非圧縮流体”のように運動   ○                   “非圧縮流体”のように運動    ○phase mixing fの要素(element)は、位相空間内を複雑に                 運動し、細分化  fを十分小さい要素に分解し、要素は次の条件を満たすものとする。  (1)要素の数は不変  (2)全エネルギーは保存  (3)要素の密度ηは一定:F=η(局所的な密度は非圧縮性のため保存)  (4)要素の体積をωとする。

◎位相空間を多くの微細胞(micro-cell)に分割 *微細胞は、十分小さく、その位相体積は、fの要素の位相体積ωとする。 *micro-cellの中にelementが入れば、micro-cellの密度は、η、  さもなくば、0。 ◎興味があるのは、巨視的構造      micro-cellをν個(ν>>1)集めた巨細胞(macro-cell)

○非圧縮性のため、各要素は同一のmicro-cellを示すことは   できない。     排他律 ○各要素は区別できるものである。      区別化 よって、場合の数は、

あり F-D分布 Lynden-Bell分布 参考:           区別不可     区別可 排他律なし   B-E分布     M-B分布      あり   F-D分布     Lynden-Bell分布 *L-D分布の特徴   分布は星の質量に依らない  (CBEの形は、星の質量に依らないので)

◎いくつかの数値実験 Lynden-Bell分布と ★問題点  ◎いくつかの数値実験     Lynden-Bell分布と                      一致しない    deZeeuw et al(1991), Funato et al.(1992), Yanashiro et al.(1992) などなど  ◎L-D統計ーーー>Maxwell分布ーーー>等温分布   ーーー>全質量が無限大   Lynden-Bell達は、violent relaxationの不完全性に   よって、この問題を回避しようとした   (後ででてくる、安定カオスと関連)

◎Lynden-Bell分布でないとすると、実際は  どんな分布か? ◎緩和過程はどうなっているか?   その続きに行く前に・・・

★r1/4則は説明できるのか?   Jaffe(1987), Makino et al.(1989)