2009年4月23日 熱流体力学 第3回 担当教員: 北川輝彦
4章 熱力学の基礎とその応用 「熱流体力学」の教科目で、重要な分野である熱力学の法則やサイクルについて学ぶ 熱と仕事の関係 内部エネルギ 4章 熱力学の基礎とその応用 「熱流体力学」の教科目で、重要な分野である熱力学の法則やサイクルについて学ぶ 熱と仕事の関係 内部エネルギ 熱力学の第一法則,エンタルピ,第二法則
4章 熱力学の基礎とその応用 「熱流体力学」の教科目で、重要な分野である熱力学の法則やサイクルについて学ぶ 熱と仕事の関係 内部エネルギ 4章 熱力学の基礎とその応用 「熱流体力学」の教科目で、重要な分野である熱力学の法則やサイクルについて学ぶ 熱と仕事の関係 内部エネルギ 熱力学の第一法則,エンタルピ,第二法則
熱と仕事の関係 ジュールの実験: 仕事:一定の割合で熱エネルギに変換できる 機械的仕事と熱は相等しく、機械的仕事は熱に変換でき、逆に熱はその一部を機械的仕事に変換することが可能 変換される部分の両者の比は一定 温度計 滑車 水 羽車 おもり
熱と仕事の関係 熱量:Q (kcal) 仕事:W(J)とすると, Q=AW ; W=JQ とお互いに変換が可能であると証明 ジュールの実験: 仕事:一定の割合で熱エネルギに変換できる 機械的仕事と熱は相等しく、機械的仕事は熱に変換でき、逆に熱はその一部を機械的仕事に変換することが可能 変換される部分の両者の比は一定 熱量:Q (kcal) 仕事:W(J)とすると, Q=AW ; W=JQ とお互いに変換が可能であると証明
熱と仕事の関係 熱量:Q (kcal) 仕事:W(J)とすると, Q = AW ; W = JQ 変換される部分の両者の比は一定 熱量:Q (kcal) 仕事:W(J)とすると, Q = AW ; W = JQ A = 1 / 4186 (kcal / J) J = 1 / A = 4186 (J / kcal) となり, A : 仕事の熱等量(thermal equivalent of work) J : 熱の仕事等量(mechanical equivalent of work) とそれぞれ定義
4 熱力学の基礎とその応用 「熱流体力学」の教科目で、重要な分野である熱力学の法則やサイクルについて学ぶ 熱と仕事の関係 内部エネルギ 4 熱力学の基礎とその応用 「熱流体力学」の教科目で、重要な分野である熱力学の法則やサイクルについて学ぶ 熱と仕事の関係 内部エネルギ 熱力学の第一法則,エンタルピ,第二法則
内部エネルギ エネルギ: 外界に対して何らかの効果(effect)もしくは仕事(work)を与えることのできる能力(ability)であり、熱量を総称した概念
内部エネルギ 4.2 エネルギと内部エネルギ エネルギ:外界に対して何らかの効果(effect)もしくは仕事(work)を与えることのできる能力(ability)であり、熱量を総称した概念 エネルギ : 仕事をする可能性 エネルギの大きさ : 為し得る仕事の大きさ
内部エネルギ 4.2 エネルギと内部エネルギ エネルギの例 ・ 暖かい物体は熱量を保有し氷を融かすという潜在的な能力を保有している 4.2 エネルギと内部エネルギ エネルギの例 ・ 暖かい物体は熱量を保有し氷を融かすという潜在的な能力を保有している ・ 圧縮された空気は熱量を保有し物体を動かすという潜在的な能力を保有している ・ 電気抵抗に流れる電流はジュール熱を発生し外部に何らかの仕事が可能である etc…
内部エネルギ 内部エネルギとは 外界に何らかの効果を与えられる熱エネルギ(熱量)が物体内部に潜在的に蓄えられているとき、このエネルギを内部エネルギという。 内部エネルギの大きさは物体を構成する分子運動の激しさ(分子の力学的運動エネルギ)によって定められる。
同じ温度の物体でも、相によって潜在エネルギに差が発生 内部エネルギ 潜熱とは 物質の相が変化するときに必要とされる熱エネルギーの総量。 融解に伴う融解熱と、 蒸発に伴う蒸発熱(気化熱)の2つをいう。 物質が固体から液体、もしくは液体から気体に相転移するときには吸熱が起こり、逆の相転移のときには発熱が起こる。 同じ温度の物体でも、相によって潜在エネルギに差が発生
4 熱力学の基礎とその応用 「熱流体力学」の教科目で、重要な分野である熱力学の法則やサイクルについて学ぶ 熱と仕事の関係 内部エネルギ 4 熱力学の基礎とその応用 「熱流体力学」の教科目で、重要な分野である熱力学の法則やサイクルについて学ぶ 熱と仕事の関係 内部エネルギ 熱力学の第一法則,エンタルピ,第二法則
4.3.1 熱力学の第1法則 仕事や熱が系(気体が充満しているシリンダ)に出入りすると、系の内部エネルギが変化する。 4.3.1 熱力学の第1法則 仕事や熱が系(気体が充満しているシリンダ)に出入りすると、系の内部エネルギが変化する。 内部エネルギの変化は、状態量(温度T、圧力P、体積V)の変化となって現れる。
4.3.1 熱力学の第1法則 「仕事の出入り」とは、ピストンを押したり引いたりすることである。 4.3.1 熱力学の第1法則 「仕事の出入り」とは、ピストンを押したり引いたりすることである。 「熱の出入り」とは、シリンダを暖めたり冷やしたりすることである。 ここで,以下のように仕事と熱の符号を定義する 入る熱 Q > 0 ; 出る熱 Q < 0 入る仕事 W < 0 ; 出る仕事 W > 0
4.3.1 熱力学の第1法則 入る熱 Q > 0 ; 出る熱 Q < 0 4.3.1 熱力学の第1法則 入る熱 Q > 0 ; 出る熱 Q < 0 入る仕事 W < 0 ; 出る仕事 W > 0 対象システム 入る仕事: -W 出る仕事: +W 入る熱: +Q 出る熱: -Q
4.3.1 熱力学の第1法則 内部エネルギu1のシリンダに対し、仕事wや熱qが出入りした結果、内部エネルギu2に変化したとする。 4.3.1 熱力学の第1法則 内部エネルギu1のシリンダに対し、仕事wや熱qが出入りした結果、内部エネルギu2に変化したとする。 このとき、仕事の出入り、熱の出入りと内部エネルギには、以下の関係が成り立つ u1 + q = u2 + w (4.3)
4.3.1 熱力学の第1法則 u1 + q = u2 + w 熱量qについて注目して (4.3)式を整理 q = u2 - u1 + w 4.3.1 熱力学の第1法則 u1 + q = u2 + w (4.3) 熱量qについて注目して (4.3)式を整理 q = u2 - u1 + w
4.3.1 熱力学の第1法則 q = u2 - u1 + w ここで系内部エネルギの変化が微小の場合 u2 - u1 = du として 4.3.1 熱力学の第1法則 q = u2 - u1 + w ここで系内部エネルギの変化が微小の場合 u2 - u1 = du として dq = du + dw (4.4)
4.3.1 熱力学の第1法則 dq = du + dw (4.4) この式は「系に加えられたエネルギdqはその一部が内部エネルギduに、一部が外部仕事dwの変化に変換される」ことを意味する これが「熱力学の第1法則」
4.3.1 熱力学の第1法則 熱力学の第1法則には様々な表現がある 4.3.1 熱力学の第1法則 熱力学の第1法則には様々な表現がある 「系に加えられたエネルギdqはその一部が内部エネルギduに、一部が外部仕事dwの変化に変換される」 「熱はエネルギーの一形態であり、エネルギの総量は不変である」 エネルギの量的な保存関係を規定した法則
4.3.1 熱力学の第1法則 内部エネルギduの変化に注目すると du = dq - dw (4.5) 4.3.1 熱力学の第1法則 内部エネルギduの変化に注目すると du = dq - dw (4.5) 内部エネルギの変化duは,内部の熱量の変化dqと外部への仕事量の変化dwの差に等しい
4.3.1 熱力学の第1法則 Gu = U ; Gq = Q ; Gw = W [J/kg] → [J] 4.3.1 熱力学の第1法則 ここまでは気体1[kg]に関しての問題を扱っていた。 エネルギの総量を考えるとき、熱流体の総量をG[kg]として扱う Gu = U ; Gq = Q ; Gw = W (4.6) [J/kg] → [J] 以降,Q:系に加えられたエネルギ,U:内部エネルギ, W:外部仕事の総量 と定義
4.3.1 熱力学の第1法則 Gu = U ; Gq = Q ; Gw = W [J/kg] → [J] dQ = dU + dW 4.3.1 熱力学の第1法則 ここまでは気体1[kg]に関しての問題を扱っていた。 エネルギの総量を考えるとき、熱流体の総量をG[kg]として扱う Gu = U ; Gq = Q ; Gw = W (4.6) [J/kg] → [J] 系全体について(4.4),(4.5)を考慮すると, dQ = dU + dW dU = dQ – dW
4.3.2 気体が外部にする仕事 熱力学の第1法則では dq = du + dw 仕事 = 力 × 距離(変位) 4.3.2 気体が外部にする仕事 熱力学の第1法則では dq = du + dw (4.4) シリンダ内の気体1[kg]が,熱の変化によって 膨張し,外部に成す仕事を例とする 仕事 = 力 × 距離(変位) F(力) = P(圧力) × A(断面積) 仕事 = 圧力 ×断面積× 距離(変位)
4.3.2 気体が外部にする仕事 仕事 = 圧力 ×断面積× 距離(変位) dw = p × A × dx 外部に成す仕事dwは 4.3.2 気体が外部にする仕事 仕事 = 圧力 ×断面積× 距離(変位) dw = p × A × dx (4.8) A × dx :微小な体積変化 dv 外部に成す仕事dwは (4.9) dw = pdv dq = du + dw = du + pdv (4.10)
4 熱力学の基礎とその応用 「熱流体力学」の教科目で、重要な分野である熱力学の法則やサイクルについて学ぶ 熱と仕事の関係 内部エネルギ 4 熱力学の基礎とその応用 「熱流体力学」の教科目で、重要な分野である熱力学の法則やサイクルについて学ぶ 熱と仕事の関係 内部エネルギ 熱力学の第一法則,エンタルピ,第二法則
4.4 エンタルピ 状態量の一種.エントロピとは異なる概念 管路を1[kg]の熱流体が境界①から流動する場合、 4.4 エンタルピ 状態量の一種.エントロピとは異なる概念 管路を1[kg]の熱流体が境界①から流動する場合、 内部エネルギu1とそれを押し込む圧力p1が発生 dw = pdv (4.9) から、外部への仕事w1は圧力pと比容積vの積 w1 = p1 v1
4.4 エンタルピ 状態量の一種.エントロピとは異なる概念 境界②から出る内部エネルギu2, 外部への仕事w2はp2v2 4.4 エンタルピ 状態量の一種.エントロピとは異なる概念 境界②から出る内部エネルギu2, 外部への仕事w2はp2v2 ①②間で加えられた熱量qとすると, q = (u2+p2v2 ) - (u1+p1v1) dq = du + dw (4.4):熱力学の第1法則 補足: dq = u2 - u1 + w2 - w1
4.4 エンタルピ 状態量の一種.エントロピとは異なる概念 h = u + pv q = h2 – h1 4.4 エンタルピ 状態量の一種.エントロピとは異なる概念 q = (u2+p2v2 ) - (u1+p1v1) 途中経路での仕事の出入りは無し 運動,位置エネルギは一定 ここで、系内の状態のみに依存する量,hを定義する h = u + pv q = h2 – h1 つまり,上式は…
4.4 エンタルピ 状態量の一種.エントロピとは異なる概念 h = u + pv (J/kg) 4.4 エンタルピ 状態量の一種.エントロピとは異なる概念 h = u + pv (J/kg) h:比エンタルピ(specific enthalpy)と定義 ここまでは1[kg]の熱流体.G[kg]の流体が保有する 全エンタルピHはVを流体の体積とすると, H = Gh = Gu + Gpv = U + pV U, p, Vはその流体の状態のみで決定するため, 全エンタルピHも状態量の一種である
4.4.1 エンタルピによる 熱力学第1法則の表示 比エンタルピの式 h = u + pv (J/kg) 4.4.1 エンタルピによる 熱力学第1法則の表示 比エンタルピの式 h = u + pv (J/kg) h, u, p, v は状態量 微少量を考慮すると, dh = du + d(pv) = du + pdv + vdp = (du + pdv) + vdp
4.4.1 エンタルピによる 熱力学第1法則の表示 dh = du + d(pv) = du + pdv + vdp 4.4.1 エンタルピによる 熱力学第1法則の表示 微少量を考慮すると, dh = du + d(pv) = du + pdv + vdp = (du + pdv) + vdp 熱力学の第一法則 (4.10) : du + pdv = dq dq = dh - vdp 熱力学の第2基礎式
4 熱力学の基礎とその応用 「熱流体力学」の教科目で、重要な分野である熱力学の法則やサイクルについて学ぶ 熱と仕事の関係 内部エネルギ 4 熱力学の基礎とその応用 「熱流体力学」の教科目で、重要な分野である熱力学の法則やサイクルについて学ぶ 熱と仕事の関係 内部エネルギ 熱力学の第一法則,エンタルピ,第二法則
熱力学の第2法則 クラジウスの表現,トムソンの表現, 第二種永久機関の否定:
熱力学の第2法則 クラジウスの表現,トムソンの表現, 第二種永久機関の否定: クラジウスの表現: 「他に何の変化を残すことも無く、熱を低温の物体から 高温の物体へ移すことはできない」 トムソンの表現: 「1個だけの熱源を利用して、その熱源から熱を吸収し、 それを全部仕事に変えることができる熱機関は存在しない」 第ニ種永久機関の否定: 「1個だけの熱源で運転できる機関、第2種永久機関は成立しない」
熱力学の第2法則 クラジウスの表現,トムソンの表現, 第二種永久機関の否定: 法則や説明に差があるが、全ての本質は同じ TH TL 十分な時間が経過すると… TH> TL 高熱源 低熱源
熱力学の第2法則 クラジウスの表現,トムソンの表現, 第二種永久機関の否定: 法則や説明に差があるが、全ての本質は同じ 熱平衡
熱力学の第2法則 自然の過程におけるエネルギーの流れ 熱は、自然に冷たいもの(低熱源)から熱いもの(高熱源)に流れ込むことはない 熱平衡
熱力学の第2法則 自然の過程におけるエネルギーの流れ 熱は、自然に冷たいものから熱いものに流れ込むことはない 熱平衡
熱力学の第2法則 自然の過程におけるエネルギーの流れ 経験則をまとめて表現したものが 熱力学の第2法則 ①自然界の現象の進行には方向性がある。方向法則 ②自然界の現象の進行は非可逆である。 経験則をまとめて表現したものが 熱力学の第2法則
熱力学の第2法則 自然の過程におけるエネルギーの流れ ①自然界の現象の進行には方向性がある。方向法則 ②自然界の現象の進行は非可逆である。 非可逆現象の例 高温の物体から低温の物体への熱移動 機械的な摩擦による熱の発生 電気回路における抵抗体のジュール熱の発生 物質の濃度の濃いほうから薄いほうへの拡散 etc…
番外:熱力学の第3法則 絶対零度よりも低い温度は存在しない これを「熱力学の第3法則」という場合も。 原子は皆振動している。 振動の度合いが大きい状態を、 マクロの視点で捉えたとき温度が高いと表現。 絶対零度よりも低い温度は存在しない これを「熱力学の第3法則」という場合も。
内部エネルギ 外界に何らかの効果を与えられる熱エネルギ(熱量)が物体内部に潜在的に蓄えられているとき、このエネルギを内部エネルギという。 内部エネルギの大きさは物体を構成する分子運動の激しさ(分子の力学的運動エネルギ)によって定められる。 絶対零度ではこの分子運動が完全に停止している状態⇒これ以上低い温度は存在しない
永久機関 第一種永久機関 外部からエネルギの供給を受けることなく永久に運動し続ける 第二種永久機関 熱源を一つだけ利用して永久に運動し続ける 両方の永久機関は否定されている