8.逆フィルタ 8.1 逆フィルタの考え方 8.2 近似的実現方法 8.3 適応フィルタ.

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8.逆フィルタ 8.1 逆フィルタの考え方 8.2 近似的実現方法 8.3 適応フィルタ

8.1 逆フィルタの考え方 (1)逆フィルタとは 系 ある系を通したことで変形した信号を 元に戻すフィルタ。 逆フィルタ 復元された 8.1 逆フィルタの考え方 (1)逆フィルタとは ある系を通したことで変形した信号を 元に戻すフィルタ。 復元された 入力信号 入力信号 出力信号 系 逆フィルタ

(2)考慮すべき特性 振幅特性 オーディオ機器では,振幅特性が重視される。 たとえば, スピーカでは振幅特性が平らであれば良好とされる。 (例)オーディオイコライザ    グラフィックイコライザ 振幅特性の平坦化だけでよいか?

位相特性 ヒトの聴覚は定常的な音の位相ずれに鈍感といわれる。 ただし,非定常な音に対して,インパルス応答が長い場合,位相特性の違いを聴き分けることができる。 位相を含めた波形復元が必要

無色残響 (M.SchroederによるColorless Reverberation の例) 入力 x(k) 出力 y(k) + -g 遅延 τ= 0.25 s + (1-g2) 出力 y(k) 入力 x(k) -g g g = 0.5 振幅特性 インパルス応答 使用周波数範囲 (1-g2) (1-g2)g (1-g2)g2 ・・・ f

振幅に関する逆フィルタ いわゆるイコライザでは, 残響などの波形変形は復元不可能 位相特性を含めた逆フィルタが必要

逆フィルタの式表現 出力Y(z)から入力X(z)を復元するフィルタ H(z) = 1 / G(z) H(z) Y(z) = H(z) G(z) X(z) = X(z) Y(z) = G(z) X(z) X(z) = H(z) Y(z) X(z) 系 G(z) 逆フィルタ H(z) 系の入力 系の出力 逆フィルタの出力

逆フィルタの応用例 ①伝達系で変形した信号Y(z)を元の信号X(z)を復元 ②期待する信号が再生できるよう予めフィルタリング G(z) X(z) 逆フィルタ H(z) Y(z) = G(z) X(z) X(z) = H(z) Y(z) ②期待する信号が再生できるよう予めフィルタリング  (FM放送のプリエンファシスと同様の考え方) 伝達系 G(z) X(z) 逆フィルタ H(z) X’(z) = H(z) X(z) X(z) = G(z) X’(z)

(3)Z変換とDFT Z変換:無限の信号長 Y(z) = G(z) X(z) H(z) = 1 / G(z) これで良いはず? DFT:有限の信号長 G(p)は有限長のインパルス応答をDFTにより求めたもの。    H(p) = 1 / G(p) 有限長をそのまま無限長にはできない(工夫が必要)。 H(z) の安定性を 考える必要がある

DFTにおけるG(p)の意味 ① G(p)の p は, p = 1 ~ N の離散周波数点でのみ意味を持つ。 ③ H(p) = 1 / G(p) として逆DFTした場合  時間応答 h(k) は,  本来無限長であるインパルス応答を  サンプル数N個に圧縮(円状折り返し)したもの。 ④ 人工的な円状折り返しの逆フィルタにはなる。

DFTにおける結論 DFT周波数特性G(p)の逆数1 / G(p) は, 正しい逆フィルタにはならない。 ただし,トリッキーな方法を使えば, 近似的な逆フィルタを作る可能性までは否定しない。 しかし,保証はできない。

(4)逆フィルタの安定性に関する考え方 ① 逆フィルタの H(z) は,G(z) の逆数であるため, G(z) の分母・分子が入れ替わる。 ② すなわち,零点 qi がすべて単位円内にある場合 (最小位相系(Minimum phase system)という),   「安定」である。 最小位相系の対語=非最小位相系 (Non-minimum phase system)

非最小位相系(その1) ① G(z)の零点 | qi | > 1 のとき,たとえば(1+q1z-1)で 時間が遅れた部分の方が振幅が大きく なってしまう。 1 1 ② すなわち,信号のエネルギーの主要部分が   遅れた部分に移動することになる。 ③ 「遅れを回復する」=「時間を進める」 これはできない ⇒先行部分を遅くして足並みを揃える。

非最小位相系(その2) ① G(z)の零点 | qi | = 1 のとき, すなわち複素平面の単位円上に零点があるとき。 ゲインが0となる  すなわち複素平面の単位円上に零点があるとき。 ゲインが0となる 周波数がある Ω |G(e j Ω)| 1 逆特性は 無限大に発散