1 総合学習のカリキュラム開発と指導 法 ー奈良女子大学附属中等教育学校の場合ー 吉田 隆. 2 発表の概要 総合教科「奈良学」「環境学」創設の経緯 総合教科の枠組み 総合教科の変遷 現在のカリキュラムの課題 総合学習カリキュラム改訂の考え方 今後の展望.

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1 総合学習のカリキュラム開発と指導 法 ー奈良女子大学附属中等教育学校の場合ー 吉田 隆

2 発表の概要 総合教科「奈良学」「環境学」創設の経緯 総合教科の枠組み 総合教科の変遷 現在のカリキュラムの課題 総合学習カリキュラム改訂の考え方 今後の展望

3 1 年生宿泊行事の様子

4 前期課程・後期課程生徒会の活動~自由・自主・自立 ~

5 学園祭の様子

6 グローバルクラスルーム( GC ) ~ 6 ヶ国の高校生が集まって現代社会の課題を議論~

7 スーパーサイエンスハイスクール( SSH ) 2007 年度文部科学大臣奨励賞を受賞

8 総合教科「奈良学」「環境学」 創設の経緯 (1) - 1970 年代~ 1980 年代ー 『研究紀要』を基にして学校の歴史を ふり返る 1978 年『研究紀要』 「授業を見直すー教科教育改造の視 座ー」(松村正樹) 1981 年『研究紀要』 「自由教育運動から学ぶこと」(松村正 樹)

9 松村の論考より 教育方法に弱い高校教師 「高校教師の教科専門性と専門家意識、 教える内容と水準にプライドをもち、 方法や指導技術を低く見る姿勢からく るのだろう」 「技術主義」をめぐって 「児童中心の問題解決学習を『技術主 義』だと批判し、系統学習をこれに対 置する動きが強まった」

10 問題解決学習にもいくつかの弱点はある。「いかに」 教えるか、「いかに」学ぶかという方法に力点がおか れて、「何を」教え、学ぶのかという系統的内容の追 求があいまいになりやすい。内容までもが方法からひ とりでに導き出されてくるかのような傾向がある。こ どもの外にあってこどもの内からは出てこない文化 (科学・芸術・技術)の諸要素を、どのように精選・ 系統化して学ばせ、どこまで到達させるのかはっきり させないままで「個性をのばす」、「主体性を育て る」などの方向目標しか示さないため、学習の到達目 標を欠き、学び方を身につける、学ぶ態度をつくると いう「態度主義」に陥っているーというのが系統学習 論の側からの批判の要点だ。 「技術主義」をめぐって ーつづきー

11 自由教育運動から学ぶこと 教育「内容」の視点を 「『内容』(何を)と『方法』(いか に)は車の両輪の如きもので一方がだ めなら他を殺してしまう関係にある」 教師の指導性 「こどもが中心でこどもの活動を教師が 『助長的』に指導するだけというのも 正しくない。」

12 教師の指導性とこどもの自発性とは二律背反的に とらえるべきものではなく、そのぶつかりあいが 教育なのではなかろうか。いわば教師の指導性・ 教育内容の論理とこどもの論理(自発性・興味・ 意欲)の相克が教育の場なのであろう。そして教 師には、必ず身につけさせねばならなぬ教育内容 について、こどもの内部に「学びたい」という自 発性と意欲をほり起こすという難しくきびしいし ごとがある。 教師の指導性 ーつづきー

13 総合教科「奈良学」「環境学」 創設の経緯 (2) - 1990 年代ー 1992 年『研究紀要』 「カリキュラムと総合教科」(松本博史) 総合教科のねらい [内容] 問題解決の過程に生徒をまきこみ、〈奈良から 学ぶ〉〈環境から学ぶ〉ことをめざす [方法] フィールドワークを取り入れる

14 総合教科の枠組み 複数の教科が関わって学際的内容を学 習する取組や問題解決学習、学び方を 学ぶ学習、調べ学習、総合教科を総称 する呼称 総合学習とは

15 総合教科の枠組み 総合学習のうち、教科としての目標が 明確に規定されているものの呼称 総合教科とは

16 総合教科の枠組み 生徒の自主的・主体的な探究活動を中 核とする学び方を学ぶ学習の呼称 総合的な学習とは

17 総合教科の変遷 3 年「奈良学」 1990 ~ 1998 年度まで実施 社会・英語・国語・美術工芸の 4 名が担当 1990 ~ 1992 年度 4 教科必修による合科 1993 ~ 1994 年度 選択的合科( 4 分野からの選 択) 1995 年度 班内担当別総合化 1996 ~ 1998 年度 選択テーマ制での総合化 *「総合」の意味を問いかけた変遷

18 総合教科の変遷 4 年「環境学」 1991 ~ 1998 年度まで実施 社会・理科 (2) ・保健体育の 4 名が担当 1997 年度より家庭科が参入 *教科の境界領域を融合させようとした 変遷

19 総合教科の変遷 4 年「世界学」 1999 年度~現在まで実施 英語科 1 名は必須 国語・社会・数学・理科・創作・保健体 育の教科が担当してきた *国際理解教育、開発教育のプログラム を取り入れようとした変遷

20 総合教科の変遷 5 年「健康」~「生活科学」 2003 ~ 2006 年度まで「健康」を実施 保健体育科の 4 名が担当( 05 年度より家庭科参 入) * 現行学習指導要領の改訂による 2007 年度~現在まで「生活科学」を実施 *SSH 特別枠に指定される 2007 年度:保健体育 (2) 創作 (2) 2008 年度:保健体育 (2) 創作 (1) 理科 (1) *科学的な分析手法を取り入れようとした変遷

21 総合教科の変遷 分節的接合( articulation ) 2001 年度より「世界学」 (1) 年間計画をユニットに分節化 (2) フラット5 → 出店授業(教員の専 門性)

22 総合教科の変遷 1・2年次の総合学習( 2002 年度より実 施) 総合学習「奈良」 → 「探求」( 2006 年度名 称変更) 基本理念:多様な側面から郷土奈良を知り、問 題点や課題を発見して考察し、それを他に伝 える *現行カリキュラムへの移行 *「学び方を学ぶ」学習 *担任が担当する

23 現在のカリキュラムの課題 『研究開発報告書』(平成 13 年度 3 年次) より 教科が3つの領域に分かれるという仮説 (1) 基礎的能力育成に関わる領域 :保健体育科・創作科 (2) 基本的学力に関わる領域 :国語科・英語科・数学科(理科・社会) (3) 多面的学力に関わる領域 :社会科・理科・情報科

24 現在のカリキュラムの課題 総合学習を担当する教科の枠組み → 社会科・理科・情報科なのか? 共同作業の利点と欠点 〔利点〕 → 教科の壁を低くする 〔欠点〕 → 負担が増大する

25 総合学習カリキュラム改訂の考え方 (1) 総合学習を 1 ~ 4 年までにスリム化し、再 構築するカリキュラム (専門性を高める) (2) 現代社会の課題を探究する総合学習を再 構築するカリキュラム ( ESD の課題を追究) (3) 「内容」と「方法」を見直すカリキュラ ム (資質・能力・態度の 3 つの視点) (4) ICT を用いた表現力を育成するカリキュ ラム (情報教育の見直し)

26 総合学習カリキュラム改訂の考え方 -発達段階による2 - 2 - 2制の仮説ー 個 人 体験 集 団 知識 各教科 5・6年 3・4年 1・2年 1 ~ 4 年までに総合カリキュラムをスリム化する

27 総合学習カリキュラム改訂の考え方 ー「生きる力の理念の共有」と学力の3要素ー 文部科学省ホームページより引用 学力の3要素

28 総合学習カリキュラム改訂の考え方 ー学習指導要領改訂のポイントー 「習得」と「探究」を結ぶ「活用」

29 総合学習カリキュラム改訂の考え方 ー学習指導要領改訂のポイントー 各教科と総合的な学習の時間の関係 ESD の課題

30 総合学習カリキュラム改訂の考え方 ー ESD の課題ー

31 今後の展望 現在のカリキュラムの課題 (1) 総合学習「探求」( 1 ・ 2 年)の学習課 題 (2) 総合学習「環境学」「世界学」( 3 ・ 4 年)の再構築 (3) 高度な専門性を活かした教科( 5 ・ 6 年)カリキュラムの構築 (4) 情報教育カリキュラム( 1 ~ 4 年)の構 築(教科「情報」の見直し)

32 おわりに 『研究紀要』第1集( 1958 年発行)か ら第 48 集( 2007 年発行)までの主要文 献を参考にしました。