日本の会計制度とは テキスト第4章 田宮治雄 1
会社の種類 (テキスト pp ) 会計学の主な対象 株式会社 株主有限責任 株主は払い込んだ金額以上の責任を負わない 企業内部に関する適切な情報提供がなければ, 無限責 任社員がいる会社形態と比較して投資リスクが高い 情報開示の役割が重要 開示される情報の中心は会計情報 2
株式会社 株式 会社の所有権 1億株の株式を発行している会社の株を1,000株所 有する その会社の 1/100,000 の所有権を持つ 株券 株式を示す「券」 ( 2009 年より電子化され, 紙の株券は廃止 された ) 有価証券のひとつ 株主 株式を所有している人または組織 3
上場会社と大会社 ( pp ) 上場会社 証券取引所で株式の売買ができる会社 金融商品取引法の規制を受ける 上場会社に求められる会計を金融商品取引法会計という 大会社 資本金 5 億円以上または負債 200 億円以上の株式会社 会社法上の会社の分類 会社法会計:株式会社すべてに会社法による会計報告が求められ る 4
会計で使用する用語と会計の役 割 テキスト pp
会計と会計学 (p . 136) 会計 経済活動の結果を関係者に説明 ( Account for) する (報告する) 社会に組織にかかる情報を提供する 会計学 関係者に経済活動の結果を最もよく説明できる 会計情報のあり方を探求する 簿記 会計が役割を果たすための記帳の仕組み 資本主義社会では企業会計が中心的題材と なる 6
会計と経理 明確な区別なし 会計 法律や規則 例:会計基準 学術や学校の科目 例:会計学 経理 組織の名称 例:経理部 どちらも使用 企業での仕事 例:会計伝票、経理伝票 経理規定、会計 規定 7
財務会計と管理会計 (テキスト p.137) 会計 財務会計 =外部報告会計 ≒制度会計 管理会計 =内部報告会計 業績評価会計 意思決定会計 8
会社法会計 テキスト pp
会社法と会計の関係 「会計慣行に従う」と「会計慣行を斟 酌(しんしゃく)する」 「従う」方が強い表現 「斟酌」は考慮する程度の意味 会計に関する事項は会計に任せ、会社 法は規定しないことを明確にした 10
会計帳簿の保存 会計帳簿の電子化の影響 2001年までは, 少なくとも仕訳帳と元 帳は10年間紙で保存しておかなければな らなかった 現在, 仕訳帳、元帳は電子的なファイルを 10 年間保存すればよい スペースコストや管理コストの節減 11
計算書類等 (テキストp. 140 ) 計算書類等 財務諸表に対する会社法の呼び名 財務報告書を何と呼ぶか 実質的には同じ内容 計算書類:会社法での財務報告書 財務諸表:金融商品取引法での財務報告書 決算書:俗称 12
金融商品取引法会計 テキスト pp
金融商品取引法 第1条 この法律は,企業内容等の開示の制度を整備するとともに, 金融商品取引業を行うものに関し必要な事項を定め, 金融商 品取引所の適切な運営を確保すること等により, 有価証券の 発行及び金融商品等の取引等を公正にし、有価証券の流通 を円滑にするほか, 資本市場の機能の十全な発揮による金融 商品等の公正な価格形成等を図り, もって国民経済の健全な 発展及び投資者の保護に資することを目的とする。 企業情報の開示が投資者保護に役に立つ 情報の非対称性の解消 投資者に損をさせないこと・・・ではない 14
有価証券報告書が中心 有価証券届出書 (p.145 ) 発行市場に向けた情報開示・売り出しのときのみ 有価証券報告書 (p.146) 流通市場に向けた情報開示・ 1 年に 1 回 会計情報の中心 情報の適時性は四半期報告書 (3 ヶ月に 1 回 ) により補われる 上場会社について、半期報告書は廃止され、 四半期報告書の機能に吸収される 15
四半期報告書 (p.146) 3ヶ月ごとの財務諸表の開示 財務諸表 貸借対照表, 損益計算書, キャッシュフロー計算書 株主資本等変動計算書は含まない 連結財務諸表のみ開示すればよい 16
法規で定められた財務報告書の内容 貸借対照表 損益計算書 キャッシュ・フロー計算書 ( 会社法では要求されない ) 株主資本等変動計算書 注記(注記表 ) 17
連結財務諸表 テキスト pp
従前のわが国の企業関係 親会社 業務の一部 新規事業 子 会 社 地域会社 19
親会社 子会社 A 事業 B 事業 C 事業 多角化した企業関係 20
親会社 日本 子会社 アメリカ 子会社 ヨーロッパ 子会社 アジア 多国籍化した企業関係 21
持株会社 環境の変化に柔軟な組織 持株 会社 A 事業子会社 B 事業子会社 C 事業子会社 D 事業子会社 投資 22
連結財務諸表の役割(1) かつて、わが国の企業関係では、連結情報が 重要視される機会が少なかった 圧倒的に大きな親企業の存在 企業同士の株式の持ち合い 現在のように、グローバルな多角化、多国籍 化が進展すると連結財務諸表中心の開示制度 の意義が増大する 持株会社化の進展 23
連結財務諸表の役割(2) 企業の経営組織の変化 これまでの企業形態では存続が困難 総合化学工業、総合電気、総合商社 etc. 経営資源の集中、変化に弾力的に対応する能力が必要 迅速な意思決定ができる組織に脱皮 統一した戦略業務の下で業務の大幅な分権化ができる組 織 国際的な会計基準統一の動き わが国も連結財務諸表中心の会計制度に転換 + 24
決算短信 テキスト pp
決算短信 世界に類を見ないディスクロージャー 法により強制されたディスクロージャーでは ない 決算発表記者会見・様式が統一された配布資料 証券取引所が公表を要請:決算日後 45 日までに 最も早い決算 ( 会計 ) 情報 金融商品取引法(決算日後 90 日以上) 会社法 ( 決算日後 75 日程度・株主のみ ) 業績予想も公表する 予想が変わった時も公表 26
EDINET 企業 金融庁 利用者 審査 財務情報 提出 財務情報 利用 ネットワーク上で行われる EDINET の概要 データ ベース 管理 インターネットによる開示 覗いてみよう 金融庁の HP ・有価証券 報告書等の閲覧 会社名を入力し、検索 めざす会社を選択 27
ディスクロージャと法規 ( まとめ ) 取引 会計処理 帳簿 計算書類 ( 会社法 ) 財務諸表 ( 金融商品取引法) 会社計算規則 財務諸表規則 連結財務諸表規則など 企業会計原則 会計基準など 公正妥当な会計慣行 28
損益計算と課税所得の計算 テキスト pp
企業に課される税の種類 大別すると A, 企業があげた利益に課税される税 法人税(国税 : 国に納める税 ) 法人住民税、事業税(地方税 ) B, 利益とは別に課税根拠がある税 消費税、酒税、相続税など 固定資産税、自動車税など このうち, 会計と強いつながりを持つのは A 3 つの税のうち、まず法人税の計算が行われ, 他の 2 つはその結果を利用することが多いので, 会計との 関係ではまず法人税が考慮される 30
利益と所得 会計と税務の関係 収益 -費用 当期純利益 益金 -損金 課税所得 本来は別の概念 二重計算は企業に負担 収益 -費用 当期純利益 ± 調整額 課税所得 会計と税務で計算が違う項 目 「別段の定め」 会計で計算した利益に ± する 税務で求める所得を算出す る 調整額: テキスト p.160 の図表 4-10 p.162 の別表四 テキスト p
税金の計算と申告 課税所得に対して所定の税率をかけて法人税額を算 定する 一般的に法人税率は 23.9 %であるが, これに同じく利益 ( 所 得 ) に対し課税される法人住民税と事業税を加えると、利益に 対する税率は 33.06% である 今後、税率は変更される可能性が大きい 申告 納税者が税額を計算して国等に通知し、納付する 申告書には貸借対照表, 損益計算書などを添付する 申告期限:決算期末の翌日から 2 ヶ月 大会社は監査等の関係から実質 3 ヶ月 32